ひさし)” の例文
ひさしにちかい庭の若楓が青く影をうつしている廊下を前にして、障子をあけ放した一室から正造の大きな声がもれてきた。
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)
なくばやゝ離れた位置から遠くわが帽子のひさしのあたりに看る方がおもしろい。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
それは二時ごろで、ひる近くから嫩葉曇わかばぐもりに曇っている空を背景にして、大井から大森の人家のひさし藍鼠あいねずみの海に溶けこもうとしていた。眼を落すと嫩葉をつけた梅の幹がいちめんに古怪こかいな姿を見せていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)