頃刻しばらく)” の例文
……其だと蔵屋の人数にんずばかりでは手が廻りかねる。時とすると、ぜん、家具、蒲団ふとんなどまで、此方こっちから持運もちはこぶのだ、と云ふのが、頃刻しばらくして美人たおやめの話で分つた。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
頃刻しばらくして夫帰り、午飯をきっした後、妻が夫を悦ばしょうと自室に入り見るに銀なし。どこへ持って行ったかと問うに夫は何の事か分らず、銀を取った覚えなしという。
頃刻しばらくして僧のねぶりをうかがひてしきりにぐものあり。
昔大竜大湖のほとりかわぬぎ、その鱗甲より虫出で頃刻しばらくして蜻蜓のあかきにる、人これを取ればおこりを病む、それより朱蜻蜓を竜甲とも竜孫ともいいえてそこなわずと載せたを見て
さるに町方まちかたの者としいへば、かたゐなるどもとうとび敬ひて、頃刻しばらくもともに遊ばんことをこいねがふや、親しく、優しく勉めてすなれど、不断はこなたより遠ざかりしが、その時は先にあまりさびしくて
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
頃刻しばらく悄乎しよんぼりしてたつけ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)