頂辺てっぺん)” の例文
旧字:頂邊
………ソノ時僕ハ第四次元ノ世界ニ突入シタトイウ気ガシタ。タチマチ高イ高イ所、忉利天とうりてん頂辺てっぺんニ登ッタノカモ知レナイト思ッタ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
や、鴉だなと私は向うの電柱の頂辺てっぺんを眺める。無数の白い碍子がいしと輝く電線、それに漆黒の鴉が四、五羽も留っている。紫に見える。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「それから時々、この杉の頂辺てっぺんへ天狗が来て巣を食い、おりおり下界から人をさらって来てこの杉の枝へ突っかけて置くということじゃ」
「なに、海から……毎夜海から上がって、裏の防堤に来る……」と顎骨をガクガク鳴らせながら、検事は頭の頂辺てっぺんまで痺れゆくのを感じた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ようや山林地帯さんりんちたい出抜でぬけると、そこはやま頂辺てっぺんで、芝草しばくさが一めんえてり、相当そうとう見晴みはらしのきくところでございました。
学校をずるけて、船で淡島へ渡って、鳥居前、あの頂辺てっぺんで弁当を食べるなぞはお茶の子だったものですが、さて、この三津、重寺、口野一帯と来ますと
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
曲者は蝋燭を吹消さずに逃去りしと見え燭台の頂辺てっぺん氷柱つらゝの如く垂れたる燭涙しょくるいは黒き汚れの色を帯ぶ、は蝋燭の自から燃尽すまで燃居もえいたるしるしなり。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「ソラ、天狗様の御立腹だ」と、一同は眼玉をまるくする。ヌット雲表うんぴょう突立つったつ高山の頂辺てっぺんの地震、左程の振動でもないが、余りい気持のものでもない。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
また頭の頂辺てっぺんへ剃り残したものを『お芥子』と称える。なお少し年が行くと前へも髪を貯えて『前髪まえがみ』と言う。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
白くかえした其段だらのはらを見ると、彼の勇気は頭の頂辺てっぺんからすうとぬけてしもうて如何しても足が進まぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
三段位ずつ飛びあがって、頂辺てっぺんのガアデン・ルウムに入ろうとすると、ぴったり足がとまりました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
村の鎮守の、大樟おおくすのき頂辺てっぺんに、大きな国旗が、掲げられた。村の「木昇りのじんさん」が決死の覚悟で、危ないところの頂辺まであがって、その大旗おおはたを結びつけたのであった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
うちふしすぎて、かぶと頂辺てっぺんを射られるな。水のうえにて身づくろいすな。物の具に透間すきまあらすな。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところどころしまの消えかかった着物の上に、細帯を一筋巻いたなりで、ともしい髪を、大きなくしのまわりに巻きつけて、茫然ぼんやりと、枝をかした梧桐の頂辺てっぺんを見たまま立っている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「頭の毛なんか薄いんでしょう……」と、のび上って頭の頂辺てっぺんをのぞきに来た。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
一色の青のうちに平らに見える海が、一町ばかりの沖の方から大きな波に高まって、やがて白い波頭をふり立てながらざざざざと寄せてくるかと思うまに、頂辺てっぺんからどっと崩れて捲き返した。
月明 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
その冬らしい表徴とは妙に矛盾した、夏の花でその着物を飾っていた。が、その幽霊の身のまわりで一番不思議なものと云えば、その頭の頂辺てっぺんからして明煌々たる光りが噴出していることであった。
こうして、私たちは国境の天測点へと、草ばかりの一つの丘の頂辺てっぺんを目ざして、泥濘ぬかるみのひどい小径をうねりうねりして登りにかかったのである。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
にもかくにも、すらりとした、背の高い彼の女の総身は、栗色くりいろの髪の頂辺てっぺんから純白の絹の靴の先まで、うろこのようにきらきらと閃めく物がちりばめてある。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
所が、その椅子にかけて、緩く廻って居りますうちに、いきなり私の身体がぞっと凍り付いて、頭の頂辺てっぺんにまで、動悸がガンガンと鳴り響いて参りました
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それから清澄の茂太郎が、逸早いちはやくメイン・マストの頂辺てっぺんに打ちのぼって、本船を離れて行く船長と白雲の一行を、視覚の及ぶ限り監視の役をつとめている。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
余は殆ど堪え兼てかたわらより問を発し「し夫だけの事ならばお前が確に藻西太郎と認めたとは云われぬじゃ無いか」老女はいとあやしげに余を頭の頂辺てっぺんより足の先までくまなく見終り
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ぼくも、杏の実をにぎりしめ、くるくると鉄梯子てつばしごをあがって、頂辺てっぺんのボオト・デッキに出ました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
わたくしおぼえず坐席ざせきからあがって、あきれて上方うえ見上みあげましたが、そのときはモー天狗てんぐさんの姿すがた頂辺てっぺんえだしげみのなかかくれてしまって、どこにるやらわからなくなってました。
肩でこう捻向ねじむいて高く上を視る処に、耳はねえが、あのトランプのハアト形にかしら押立おったったふくろたけ、梟、梟と一口にとなえて、何嶽と言うほどじゃねえ、丘が一座ひとくら、その頂辺てっぺん
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでも露西亜人ロシアじんだけあって、眼にあまる山のことごとくに砲台を構えて、その砲台のことごとくに、馬車をって頂辺てっぺんまで登れるような広いみちをつけたのは感心ですとA君が語られる。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
草色の体躯に黄色い尻尾、頭の頂辺てっぺんから萵苣ちしゃのようなものをやして。あすこに鸚鵡がいるよ。可哀そうなロビン・クルーソーと、彼が小船で島を一周りして帰って来た時、その鸚鵡は喚びかけた。
頭の頂辺てっぺんから足の爪先つまさきまで慾気よくけ満々まんまんとして寸分のタルミも無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
乳緑の葉っぱ、茎、枝、みな水々しく、そして毛ばだっている。咲きかけの折り目のついた紅いつぼみがそれらの頂辺てっぺんにある。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
カーテンの頂辺てっぺんへ登つて行つて綱渡りのやうな軽業をした仔猫の動作が、つい昨日のことのやうに眼に残つてゐる庄造は、腰のあたりがゲツソリと痩せて
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いちばん頂辺てっぺんにまで出ると、はるかサンピイドロの海が眼下にかすみ、沖にはキャバレエになっているという豪華船ごうかせん——当時は禁酒法ドライでしたから——がまめのように、ちいさい。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それから、鐘の横軸を支えている鉄棒は、頂辺てっぺんまで伸びて大十字架になっているんですよ。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
頭髪おぐしあたま頂辺てっぺんつくったもので、ここにも古代こだいらしいにおい充分じゅうぶんただよってりました。
腹が空くと、電信の針がねに一座ずらりと出て、ぽちぽちぽちと中空なかぞら高く順に並ぶ。中でも音頭取おんどとりが、電柱の頂辺てっぺんに一羽とまって、チイと鳴く。これを合図に、一斉いっときにチイと鳴出す。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黒の着物に小倉の袴で、高足駄たかあしだを穿き、鉄扇を持った壮士。小刀の短いわりに、刀は四尺もあらんと思われる大きなのを横に差し、頭の頂辺てっぺんから竜之助を見下ろして進んで来たので
カーテンの頂辺てっぺんへ登つて行つて綱渡りのやうな軽業かるわざをした仔猫の動作が、つい昨日のことのやうに眼に残つてゐる庄造は、腰のあたりがゲツソリと痩せて
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その下流の右岸には秀麗な角錘形かくすいけいの山(それは夕暮ゆうぐれ富士だとあとで聞いたが)山の頂辺てっぺんに細いたての裂目のある小松色の山が、白い河洲かわすゆる彎曲線わんきょくせんほどよい近景をして
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「この道を歩いて行くとあのお山の頂辺てっぺんに出るのだよ。一郎に歩けるかしら」、「そうね、あのお山に登るの」、「うん、そうだとも。だけれど登れるかな」、「登れるヨ」、「きっとだね」
箱根の山 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それがいつもの通り、口をっと結んでいて、そのいりやま形の頂辺てっぺんが殆んど顔の真中辺まで上って来ているのだが、その幾分もたげ気味にしている目窪の中には、異様に輝いている点が一つあった。
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
鼻の下をなおのばして、もう一息、はげ頂辺てっぺんへ扇子をかざして
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
カーテンの頂辺てっぺんへ登って行って綱渡りのような軽業をした仔猫の動作が、つい昨日のことのように眼に残っている庄造は、腰のあたりがゲッソリとせて
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それから、階段廊を離れて、上層の階段を上って行ったが、その時何を思いついたのか、法水は突然奇異ふしぎな動作を始めた。彼は中途まで来たのを再び引き返して、もと来た大階段の頂辺てっぺんに立った。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そうして彼女が櫛の峰を以て首の頂辺てっぺんを打ち叩くとき、自分が叩かれているように考える、———すると、彼の快感は絶頂に達して、脳がしびれ、体中がふるえるのであった。
滝流しの浴衣ゆかたを着た与茂七よもしちが現われると、舞台は陰惨の極から、華麗の頂辺てっぺんに飛び上り、まさに南北特有の生世話きせわだんまり、あのおどろおどろしい声や、蒼白い顔や、引き包まんばかりの物影などは
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
とうとう足を蹈み外して頂辺てっぺんから転げ落ち、急にしくしく泣き出したことがありましたのは。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかし、スリッパの跡はどこまでも消えずに彼等を導いていった。その足許には、雪を踏みしだくような感じで埃の堆積が崩れ、それを透かして、かしの冷たい感触が、頭の頂辺てっぺんまで滲み透るのだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
鉄棒が済むと今度は階段の頂辺てっぺんから倒立ちをして飛び下りたり、一丈に余る竹竿を杖に庭の松の樹の梢より高く跳ね上ったり、………その Jumping の見事な有様は
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一つ、一番頂辺てっぺんに出しておくれ——って
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
(立て直す時テーブルが泥に埋まって重くなっていて、足にからみ着いた)窓の頂辺てっぺんのカーテンの金具をしっかり握っていたが、わずかに首だけが水面から出ている程度であった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
若草山のふもとまで行って、何しろこの前の時とちごて薄曇った暑い日でしてんけど、びっしょり汗きながら頂辺てっぺんまで登って行って、そいから山の上にある茶店で休んでるうちに
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)