露店ろてん)” の例文
ある停留場ていりゅうじょうのそばには、たくさんの露店ろてんていました。なかには、まごいと、ひごいのきたのをたらいにれて、っていました。
どこかで呼ぶような (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は蓮根の天麩羅を食うてしまって、雁木がんぎの上の露店ろてんで、プチプチ章魚たこの足を揚げている、揚物屋のばあさんの手元を見ていた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
見世物、露店ろてん——鰐口わにぐちの音がたえず聞こえた。ことに、手習てならいが上手になるようにと親がよく子供をつれて行くので、その日は毎年学校が休みになる。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
銀座の通りの、しき石の上には、露店ろてんがずらりとならんで、京橋と新橋との間の九丁の長い区間をうずめている。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
メリヤス屋の露店ろてん。シャツやズボン下をった下にばあさんが一人行火あんかに当っている。婆さんの前にもメリヤス類。毛糸の編みものもまじっていないことはない。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ましてや夕方近くなると、坂下の曲角まがりかど頬冠ほおかむりをしたおやじ露店ろてんを出して魚の骨とはらわたばかりを並べ、さアさアたいわたが安い、鯛の腸が安い、と皺枯声しわがれごえ怒鳴どなる。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ひがしもんからはひつて、露店ろてん參詣人さんけいにんとの雜沓ざつたふするなかを、あふひもんまく威勢ゐせいせた八足門はつそくもんまへまでくと、むかうから群衆ぐんしうけて、たか武士ぶしがやつてた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
石を敷いたみちの右側には白いアセチリン瓦斯ガスがあって、茹卵ゆでたまご落花生らっかせいを売る露店ろてんが見えていた。瓦斯の燈はその露店のうしろれた柳の枝の嫩葉わかばにかかっていた。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
露店ろてんが並んで立ち食いの客を待っている。売っているものは言わずもがなで、食ってる人は大概船頭せんどう船方ふなかたたぐいにきまっている。たい比良目ひらめ海鰻あなご章魚たこが、そこらに投げ出してある。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
年とった女の人たちは戸口とぐちにすわって、紡車つむぎぐるまをつかわずに、ただ一本の糸まき竿ざおで、糸をつむいでいました。商店しょうてんは、ちょうど露店ろてんのようなぐあいに、通りにむかって開いていました。
其街そこには商業家がいずれもみな店を張って居りますので、その店の張り方は別段他の国の遣り方と変った事はない。ことに露店ろてんも道の広いところには沢山あって、それらの売物は大抵日用品のみです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
やはり戦闘帽せんとうぼうにまきぎゃはんをして、復員兵ふくいんへいらしく、一つ一つ露店ろてんをのぞきながら、こちらへちかづき、おじいさんのみせまえまでくると
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
では、新宿の露店ろてんで、この鞄を店に並べて売っていた店員であろうか。いや、彼でもなさそうである。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一年ばかりたつたのち、彼の詩集は新らしいまま、銀座ぎんざ露店ろてんに並ぶやうになつた。今度は「引ナシ三十銭」だつた。行人かうじんは時々紙表紙かみべうしをあけ、巻頭の抒情詩に目を通した。
詩集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
牡蠣船のある方の岸は車の立場たてばになっていて柳の下へは車を並べ、その傍には小さな車夫しゃふたまりもうけてあった。車夫小屋と並んで活動写真の客を当て込んでしいの実などを売っている露店ろてんなどもあった。
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そのとき、あちらに、くら提燈ちょうちんえたのであります。それは、ちょうどてら門前もんぜんであって、まだ露店ろてんているのでした。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
鋪道ほどうには、露店ろてんの喰べ物店が一杯に出て、しきりに奇妙な売声をはりあげて、客を呼んでいた。
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ななめに見た標札屋ひょうさつや露店ろてん天幕てんとの下に並んだ見本は徳川家康とくがわいえやす二宮尊徳にのみやそんとく渡辺崋山わたなべかざん近藤勇こんどういさみ近松門左衛門ちかまつもんざえもんなどの名を並べている。こう云う名前もいつのにか有り来りの名前に変ってしまう。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
縁日えんにちであろう両側に露店ろてんが並んで人の出さかっている街路とおりへ出た。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あるのことです。いつものごとく、露店ろてんにならべられると、かたわらに、あたらしくどこからかられてきた、電気でんきスタンドがありました。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昔ながらの露店ろてんが、いろいろなこまかいものをならべて、にぎやかに店をひらいていた。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
おじさんは、お約束やくそくをしたように、東京とうきょうへやってきたのです。そして、毎晩まいばんのように、露店ろてんへかにと、うみほおずきと、まつしていました。
海へ帰るおじさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
何でも新宿の専売局跡の露店ろてん街において、昼日中ひるひなかのことだが、ゴム靴などを並べて売っている店に一つの赤革の鞄が置いてあったが、この鞄がどうしたはずみか、ゆらゆらと持上って
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けんとははなれぬところへ、あかたまと、しろたまげるおもちゃの噴水ふんすいや、ばね仕掛じかけのお相撲すもう人形にんぎょうる、露店ろてんならんでいたのでした。
青い草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
露店ろてんが、つらなっていました。その一つには、ヒョットコ、きつね、おかめ、などの人形にんぎょうがむしろのうえならべてありました。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
「この時計とけいも、あすこの露店ろてんったのだ。スイスせいのなかなか正確せいかくなやつで。」と、おじさんは、時計とけいをうでからはずして、ぼくたちにせました。
緑色の時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんなさびしい、人通ひとどおりのないばんに、いまごろまで露店ろてんしているなんて不思議ふしぎなことだと、父親ちちおやおもいました。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
不幸ふこうな、この人形にんぎょうは、それからいろいろのめにあいましたが、そのとしなつすえ時分じぶんに、ほかの古道具ふるどうぐなどといっしょに、露店ろてんにさらされていました。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふゆさむばんのことだった。露店ろてん射的しゃてきに、おかみさんがあかんぼうをだいて、カンテラのそばにすわっていた。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
春風はるかぜく、あたたかなばんがたでした。おとうとは、S町エスまち露店ろてんへ、いっしょにいってくれというのでした。二人ふたりは、電車でんしゃって、でかけることになりました。
緑色の時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ばんには、おかあさんや、おとうさんにつれられて、二人ふたりは、まち散歩さんぽて、露店ろてんあるいたのでありました。
海へ帰るおじさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきちは、おてら門前もんぜんに、ただ一つ提燈ちょうちんをつけて、露店ろてんしているひとがあるのをとおくからながめました。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
S町エスまちへつくと、もうくらくなりかけていました。大通おおどおりには、あかりが、ちかちかとついて、おまつりでもあるようでした。なるほど、たくさん露店ろてんていました。
緑色の時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、露店ろてん主人しゅじんは、人形にんぎょう大事だいじにしました。くるませて、はこぶ時分じぶんにも、や、あしをいためはしないかと新聞紙しんぶんしいて、できるだけの注意ちゅういをしたのです。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みちばたの露店ろてんは、たいてい戦災者せんさいしゃか、復員ふくいんしたひとたちの、生活せいかつをいとなむのでありました。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まだ、あちらへ露店ろてんがつづいて、いけば、にぎやかなところがあるようながしました。
どこかで呼ぶような (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるのこと、義夫よしおは、おかあさんにつれられてまちへいくと、露店ろてんならんでいました。
ある夜の姉と弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、そのは、縁日えんにちで、いつもよりかいっそう露店ろてん人出ひとでおおかったのです。
ある夜の姉と弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつものようにぼくは坂下さかした露店ろてんばんをしていました。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)