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這
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ば
ふりがな文庫
“
這
(
ば
)” の例文
「おい、あれは、やっぱりほんとうの虎かもしれないぜ。人間が四つん
這
(
ば
)
いになって、いったい、あんなに早く走れるものだろうか」
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
潰してはいられないぞ。三つ股の
兄哥
(
あにき
)
、この道人を引っ
括
(
くく
)
ってくれ。寺社のお係りへ渡して、
鰯
(
いわし
)
を
銜
(
くわ
)
えさして四つん
這
(
ば
)
いに這わしてやる
銭形平次捕物控:104 活き仏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
得石は四つ
這
(
ば
)
いのまま息をひそめた。顔も両手も、着物の前も、叩きつけられた霜どけのぬかるみで、べったりと泥まみれになっている。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
へた
這
(
ば
)
るように、兵は河原で腰をおとした。休め、の令が出たからである。というのは、ここで直義を待ち迎えた
高
(
こう
)
ノ
師泰
(
もろやす
)
の部隊がある。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
庸三は腹ん
這
(
ば
)
いになって
煙草
(
たばこ
)
をふかしていたが、彼女の計算の不正確と、清川の認識不足との
擦
(
す
)
れ違いも
分明
(
わかり
)
すぎる感じだった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
私はもそもそと机の下で四つ
這
(
ば
)
いの形のままで、あまり恥ずかしくて出るに出られず、あの奥さんがうらめしくてぽたぽた涙を落しました。
男女同権
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
尤
(
もつと
)
も僕等が何かの
拍子
(
ひやうし
)
に
四
(
よ
)
つ
這
(
ば
)
ひになつて見たいやうに、
未
(
いま
)
だ生まれざる大詩人も何かの
拍子
(
ひやうし
)
に短歌の形式を用ふる気もちになるかも知れぬ。
又一説?
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もし
噛
(
か
)
みつかれて狂犬病になり、四ツん
這
(
ば
)
いでワンワンなんていう病気にでもなっては大変だということからの恐怖ですが
泉鏡花先生のこと
(新字新仮名)
/
小村雪岱
(著)
例の段々を四五遍通り抜けて、二度ほど四つん
這
(
ば
)
いになったら、かなり
天井
(
てんじょう
)
の高い、
真直
(
まっすぐ
)
に立って歩けるような路へ出た。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、そう云って、私が四つん
這
(
ば
)
いになると、ナオミはどしんと背中の上へ、その十四貫二百の重みでのしかかって、手拭いの手綱を私の口に
咬
(
くわ
)
えさせ
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
恐々
(
こわごわ
)
ながら
巌頭
(
がんとう
)
に四つん
這
(
ば
)
いになると、数十丈遥か下の滝壺は
紺碧
(
こんぺき
)
を
湛
(
たた
)
えて、白泡
物凄
(
ものすご
)
く
涌
(
わ
)
き返るさま、とてもチラチラして長く見ていることが出来ぬ。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
前に言ったような余裕を見せたのは、さすがに見苦しくもありませんでしたが、中には正銘に
狼狽
(
ろうばい
)
して四つん
這
(
ば
)
いの形になった者もないではありません。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
道具屋は画かきの前で
手拭
(
てぬぐひ
)
を
被
(
かぶ
)
つて猫の真似をしたり、四つ
這
(
ば
)
ひになつて
甲虫
(
かぶとむし
)
の真似をしたりした。そして西山氏が腹の底から笑ひ崩れるのを待つてゐた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
学生が鉛筆をなめ、なめ、一晩中腹
這
(
ば
)
いになって、紙に何か書いていた。——それは学生の「発案」だった。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
やがて上品に出来あがった脚がくたびれてしまうと、こんどは両手を使い出して、猛烈に飛び上がってみたり、四つん
這
(
ば
)
いになって逆立ちの稽古をやり始めた。
小波瀾
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
距離
僅
(
わずか
)
に一間ばかりなれど千里を行くの思ひして、容易には思ひ立たれず。やがて思ひ立つて身を起し
辛
(
かろ
)
うじて
四
(
よ
)
つ
這
(
ば
)
ひになる。されど左の足は痛みて動かず。
明治卅三年十月十五日記事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
目隠しをする代りに壁にもたれ、また
四
(
よ
)
つん
這
(
ば
)
いになって、その背に
跨
(
またが
)
って、指を立てて問う例もある。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
マドレーヌがその恐ろしい重荷の下にほとんど腹
這
(
ば
)
いになって、二度
両肱
(
りょうひじ
)
と
両膝
(
りょうひざ
)
とを一つ所に持ってこようとしてだめだったのが、見て取られた。人々は叫んだ。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
山男がすっかり怖がって、草の上を四つん
這
(
ば
)
ひになってやって来ます。髪が風にさらさら鳴ります。
種山ヶ原
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
むくむくと持上って、
𤏋
(
ぱっ
)
と消えて、下の
根太板
(
ねだいた
)
が、
凸凹
(
でこぼこ
)
になったと思うと、きゃッという声がして、がらがら
轟
(
ごう
)
、ぐわッと、早や、耳が
潰
(
つぶ
)
れて、
四
(
よつ
)
ン
這
(
ば
)
いの例の一件。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一人が、槍をもって、
甲
(
かぶと
)
をつけた頭を持上げながら、腹
這
(
ば
)
いに進んでいた。その後方から、竹胴に、
白袴
(
しろばかま
)
をつけ、鉢巻をしたのが、同じように、少しずつ、前進していた。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
「坊ちゃん」となれなれしく呼びかける親切な声と、小鳥の声のように晴々した澄みきった子供らしい笑い声とが、耳に聞えた。彼は四つ
這
(
ば
)
いになって路次の中に身を潜めた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私は橋の下に立っているうちに、このことは
予
(
あらかじ
)
め計画しておいたので、少しも
躊躇
(
ちゅうちょ
)
する必要はなかった。で注意深く下駄を脱いで、四つん
這
(
ば
)
いになって、橋の
袂
(
たもと
)
の道を横ぎった。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
シナ家屋のアンペラの上に
俯伏
(
うつぶ
)
して書くか、或いは地面に腹
這
(
ば
)
いながら書くのですから、ペンや鉛筆では
却
(
かえ
)
って不便で、むしろ柔かい毛筆を用いた方が便利だと云う場合もありました。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
四
(
よつ
)
ん
這
(
ば
)
いに這っているのであった。膝頭に
草鞋
(
わらじ
)
が
繋
(
しば
)
りつけてあった。両手に
草履
(
ぞうり
)
が繋り付けてあった。膝と手とで歩いていた。彼はヒョイと顔を上げた。その顔を火の光がカッと射た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
老生既に七十の
齢
(
とし
)
を越えたれば、貴兄の教えらるる如く、今更四ツ
這
(
ば
)
いになって歩くことも致し兼ねると答えたという話がある。動物社会には我々の尊ぶ自由というものはないのであろう。
デモクラシーの要素
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
座敷の真ん中で四つん
這
(
ば
)
いになると、やがて白っぽい
嘔吐
(
へど
)
を吐き下した。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その
人
(
ひと
)
は
古
(
ふる
)
い
穴
(
あな
)
を
調
(
しら
)
べることに
興味
(
きようみ
)
をもち、ある
日
(
ひ
)
七八歳
(
しちはつさい
)
の
女
(
をんな
)
の
子
(
こ
)
を
伴
(
つ
)
れてこの
洞穴
(
ほらあな
)
の
中
(
なか
)
へはひつたのです。
穴
(
あな
)
の
入
(
い
)
り
口
(
ぐち
)
は、
今
(
いま
)
より
狹
(
せま
)
くやう/\
四
(
よつ
)
ん
這
(
ば
)
ひになつて
中
(
なか
)
にはひつて
行
(
ゆ
)
くと、
女
(
をんな
)
の
子
(
こ
)
が
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
彼が四つん
這
(
ば
)
いになって、第八号が仲間にはぐれそうになっているのを引き戻している最中、その
頸
(
くび
)
に、肌とシャツの間に角砂糖が一つ、ちょうどメダルのように、糸で
吊
(
つる
)
してあるのが眼についた。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
腹
這
(
ば
)
いからあおむけになったので、彼は女の顔や手の動きが見える。鼻の
孔
(
あな
)
の形や色が、妙になまなましく感じられた。こんな角度から女の
鼻孔
(
びこう
)
を見るのは、初めてだったので、彼は眼をそらした。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
それが、一枚岩というか
屏風
(
びょうぶ
)
岩といおうか、数千尺をきり下れる大絶壁の底を、わずかな
苔経
(
たいけい
)
をさぐり腹
這
(
ば
)
いながらゆくようなところがある。そこは、鳥も峡谷のくらさにあまり飛ばないところ……。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
四つん
這
(
ば
)
ひ
赤い旗
(旧字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
本物の毛皮を使った、
贅沢
(
ぜいたく
)
な縫いぐるみ。それが四つん
這
(
ば
)
いになって薄暗い廊下を歩いて行く姿は、生きた虎としか見えなかった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
縁側に
腹
(
はら
)
ん
這
(
ば
)
いになって、
蟻
(
あり
)
の作業を眺めながら、煙草をすっているところへ、いきなりガラッ八がこの判じ物を持込んで来たのでした。
銭形平次捕物控:131 駕籠の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その裾を、鬼六の足に踏まれて、前へのめッた、でも、長い
裳裾
(
すそ
)
はどこからか
断
(
き
)
れて、彼の瀕死な影は、なお、よろ
這
(
ば
)
いつつも逃げていた。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
咲子は押入の前にある電話機に駈けよつて、畳につく
這
(
ば
)
ひながら、
悪戯
(
いたづら
)
さうな表情で受話機を耳のところへ持つて行つた。
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
それは金太で、柱と柱の組み合った下で
四
(
よつ
)
ん
這
(
ば
)
いになってい、水をよけるため横に捻った顔の半分が水につかっていた。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
窓には竹の
格子
(
こうし
)
がついている。
家主
(
やぬし
)
の庭が見える。鶏を飼っている。美禰子は例のごとく掃き出した。三四郎は四つ
這
(
ば
)
いになって、あとから
拭
(
ふ
)
き出した。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
うっかり注射でも
怠
(
おこた
)
ろうものなら、恐水病といって、発熱悩乱の苦しみあって、果ては
貌
(
かお
)
が犬に似てきて、四つ
這
(
ば
)
いになり、ただわんわんと吠ゆるばかりだという
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
薄暗い
隅
(
すみ
)
の方で、
袢天
(
はんてん
)
を着、
股引
(
ももひき
)
をはいた、風呂敷を三角にかぶった女
出面
(
でめん
)
らしい母親が、
林檎
(
りんご
)
の皮をむいて、棚に腹ん
這
(
ば
)
いになっている子供に食わしてやっていた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
山男がすっかり怖がって、草の上を四つん
這
(
ば
)
いになってやって来ます。
髪
(
かみ
)
が風にさらさら鳴ります。
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
或る孤児院へ連れてきた童子などは、
四
(
よ
)
つ
這
(
ば
)
いをして生肉のほかは食わず、うなる以外に言語を知らず、挙動が全然狼の通りであったと報告せられていると示された。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼は両膝と両手で四つ
這
(
ば
)
いになり、犬のように身を揺って、迫害者らをそこに転がした。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
僕はやはり気違いのように雌の河童を追いかけている雄の河童も見かけました。雌の河童は逃げてゆくうちにも、時々わざと立ち止まってみたり、
四
(
よ
)
つん
這
(
ば
)
いになったりして見せるのです。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
やがて、むっくりと起上って、身を飜した半身雪の、
褄
(
つま
)
を乱して、手をつくと、袖が
下
(
さが
)
って、
裳
(
もすそ
)
を
捌
(
さば
)
いて、四ツ
這
(
ば
)
いになった、背中にも一ツ、
赤斑
(
あかまだら
)
のある……その姿は……何とも言えぬ、女の
狗
(
いぬ
)
。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
読ミスギはベッドの下へもぐりこもうと四ツ
這
(
ば
)
いになったが
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
私はそう云って、そこへ四つン
這
(
ば
)
いになりました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
五郎は腹
這
(
ば
)
いのまま答える。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
まっ黒な背広を着た「人間
豹
(
ひょう
)
」は、彼の本性の四つん
這
(
ば
)
いになって、広いテントの白地の上を、縦横無尽に
跳
(
は
)
ねまわっていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
血まみれな
傷負
(
ておい
)
が一人、よろ
這
(
ば
)
いながら彼方より駈けて来て、何か、意味の聞きとれない絶叫をあげながら近づいて来た。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
這
漢検準1級
部首:⾡
11画
“這”を含む語句
這入
這出
這々
這般
四這
腹這
這奴
這上
出這入
這込
這個
這箇
這裏
横這
這入込
這奴等
這麽
夜這
御這入
這廻
...