)” の例文
「おい、あれは、やっぱりほんとうの虎かもしれないぜ。人間が四つんいになって、いったい、あんなに早く走れるものだろうか」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
潰してはいられないぞ。三つ股の兄哥あにき、この道人を引っくくってくれ。寺社のお係りへ渡して、いわしくわえさして四つんいに這わしてやる
得石は四ついのまま息をひそめた。顔も両手も、着物の前も、叩きつけられた霜どけのぬかるみで、べったりと泥まみれになっている。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
へたるように、兵は河原で腰をおとした。休め、の令が出たからである。というのは、ここで直義を待ち迎えたこう師泰もろやすの部隊がある。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庸三は腹んいになって煙草たばこをふかしていたが、彼女の計算の不正確と、清川の認識不足とのれ違いも分明わかりすぎる感じだった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私はもそもそと机の下で四ついの形のままで、あまり恥ずかしくて出るに出られず、あの奥さんがうらめしくてぽたぽた涙を落しました。
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)
もつとも僕等が何かの拍子ひやうしひになつて見たいやうに、いまだ生まれざる大詩人も何かの拍子ひやうしに短歌の形式を用ふる気もちになるかも知れぬ。
又一説? (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
もしみつかれて狂犬病になり、四ツんいでワンワンなんていう病気にでもなっては大変だということからの恐怖ですが
泉鏡花先生のこと (新字新仮名) / 小村雪岱(著)
例の段々を四五遍通り抜けて、二度ほど四つんいになったら、かなり天井てんじょうの高い、真直まっすぐに立って歩けるような路へ出た。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、そう云って、私が四つんいになると、ナオミはどしんと背中の上へ、その十四貫二百の重みでのしかかって、手拭いの手綱を私の口にくわえさせ
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
恐々こわごわながら巌頭がんとうに四つんいになると、数十丈遥か下の滝壺は紺碧こんぺきたたえて、白泡物凄ものすごき返るさま、とてもチラチラして長く見ていることが出来ぬ。
前に言ったような余裕を見せたのは、さすがに見苦しくもありませんでしたが、中には正銘に狼狽ろうばいして四つんいの形になった者もないではありません。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
道具屋は画かきの前で手拭てぬぐひかぶつて猫の真似をしたり、四つひになつて甲虫かぶとむしの真似をしたりした。そして西山氏が腹の底から笑ひ崩れるのを待つてゐた。
学生が鉛筆をなめ、なめ、一晩中腹いになって、紙に何か書いていた。——それは学生の「発案」だった。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
やがて上品に出来あがった脚がくたびれてしまうと、こんどは両手を使い出して、猛烈に飛び上がってみたり、四つんいになって逆立ちの稽古をやり始めた。
小波瀾 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
距離わずかに一間ばかりなれど千里を行くの思ひして、容易には思ひ立たれず。やがて思ひ立つて身を起しかろうじてひになる。されど左の足は痛みて動かず。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
目隠しをする代りに壁にもたれ、またつんいになって、その背にまたがって、指を立てて問う例もある。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
マドレーヌがその恐ろしい重荷の下にほとんど腹いになって、二度両肱りょうひじ両膝りょうひざとを一つ所に持ってこようとしてだめだったのが、見て取られた。人々は叫んだ。
山男がすっかり怖がって、草の上を四つんひになってやって来ます。髪が風にさらさら鳴ります。
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
むくむくと持上って、𤏋ぱっと消えて、下の根太板ねだいたが、凸凹でこぼこになったと思うと、きゃッという声がして、がらがらごう、ぐわッと、早や、耳がつぶれて、よついの例の一件。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一人が、槍をもって、かぶとをつけた頭を持上げながら、腹いに進んでいた。その後方から、竹胴に、白袴しろばかまをつけ、鉢巻をしたのが、同じように、少しずつ、前進していた。
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「坊ちゃん」となれなれしく呼びかける親切な声と、小鳥の声のように晴々した澄みきった子供らしい笑い声とが、耳に聞えた。彼は四ついになって路次の中に身を潜めた。
私は橋の下に立っているうちに、このことはあらかじめ計画しておいたので、少しも躊躇ちゅうちょする必要はなかった。で注意深く下駄を脱いで、四つんいになって、橋のたもとの道を横ぎった。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
シナ家屋のアンペラの上に俯伏うつぶして書くか、或いは地面に腹いながら書くのですから、ペンや鉛筆ではかえって不便で、むしろ柔かい毛筆を用いた方が便利だと云う場合もありました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
よついに這っているのであった。膝頭に草鞋わらじしばりつけてあった。両手に草履ぞうりが繋り付けてあった。膝と手とで歩いていた。彼はヒョイと顔を上げた。その顔を火の光がカッと射た。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
老生既に七十のとしを越えたれば、貴兄の教えらるる如く、今更四ツいになって歩くことも致し兼ねると答えたという話がある。動物社会には我々の尊ぶ自由というものはないのであろう。
デモクラシーの要素 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
座敷の真ん中で四つんいになると、やがて白っぽい嘔吐へどを吐き下した。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そのひとふるあな調しらべることに興味きようみをもち、ある七八歳しちはつさいをんなれてこの洞穴ほらあななかへはひつたのです。あなぐちは、いまよりせまくやう/\よつひになつてなかにはひつてくと、をんな
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
彼が四つんいになって、第八号が仲間にはぐれそうになっているのを引き戻している最中、そのくびに、肌とシャツの間に角砂糖が一つ、ちょうどメダルのように、糸でつるしてあるのが眼についた。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
いからあおむけになったので、彼は女の顔や手の動きが見える。鼻のあなの形や色が、妙になまなましく感じられた。こんな角度から女の鼻孔びこうを見るのは、初めてだったので、彼は眼をそらした。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
それが、一枚岩というか屏風びょうぶ岩といおうか、数千尺をきり下れる大絶壁の底を、わずかな苔経たいけいをさぐり腹いながらゆくようなところがある。そこは、鳥も峡谷のくらさにあまり飛ばないところ……。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
四つん
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
本物の毛皮を使った、贅沢ぜいたくな縫いぐるみ。それが四つんいになって薄暗い廊下を歩いて行く姿は、生きた虎としか見えなかった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
縁側にはらいになって、ありの作業を眺めながら、煙草をすっているところへ、いきなりガラッ八がこの判じ物を持込んで来たのでした。
その裾を、鬼六の足に踏まれて、前へのめッた、でも、長い裳裾すそはどこからかれて、彼の瀕死な影は、なお、よろいつつも逃げていた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
咲子は押入の前にある電話機に駈けよつて、畳につくひながら、悪戯いたづらさうな表情で受話機を耳のところへ持つて行つた。
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それは金太で、柱と柱の組み合った下でよついになってい、水をよけるため横に捻った顔の半分が水につかっていた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
窓には竹の格子こうしがついている。家主やぬしの庭が見える。鶏を飼っている。美禰子は例のごとく掃き出した。三四郎は四ついになって、あとからき出した。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うっかり注射でもおこたろうものなら、恐水病といって、発熱悩乱の苦しみあって、果てはかおが犬に似てきて、四ついになり、ただわんわんと吠ゆるばかりだという
薄暗いすみの方で、袢天はんてんを着、股引ももひきをはいた、風呂敷を三角にかぶった女出面でめんらしい母親が、林檎りんごの皮をむいて、棚に腹んいになっている子供に食わしてやっていた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
山男がすっかり怖がって、草の上を四つんいになってやって来ます。かみが風にさらさら鳴ります。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
或る孤児院へ連れてきた童子などは、いをして生肉のほかは食わず、うなる以外に言語を知らず、挙動が全然狼の通りであったと報告せられていると示された。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼は両膝と両手で四ついになり、犬のように身を揺って、迫害者らをそこに転がした。
僕はやはり気違いのように雌の河童を追いかけている雄の河童も見かけました。雌の河童は逃げてゆくうちにも、時々わざと立ち止まってみたり、つんいになったりして見せるのです。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
やがて、むっくりと起上って、身を飜した半身雪の、つまを乱して、手をつくと、袖がさがって、もすそさばいて、四ツいになった、背中にも一ツ、赤斑あかまだらのある……その姿は……何とも言えぬ、女のいぬ
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
読ミスギはベッドの下へもぐりこもうと四ツいになったが
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
私はそう云って、そこへ四つンいになりました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
五郎は腹いのまま答える。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
まっ黒な背広を着た「人間ひょう」は、彼の本性の四つんいになって、広いテントの白地の上を、縦横無尽にねまわっていた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
血まみれな傷負ておいが一人、よろいながら彼方より駈けて来て、何か、意味の聞きとれない絶叫をあげながら近づいて来た。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)