トップ
>
迸
>
ほとば
ふりがな文庫
“
迸
(
ほとば
)” の例文
經濟の苦しみに對する義男への輕薄な女の侮蔑が、こんなところにもその
迸
(
ほとば
)
しりを見せたものとしきや義男には解されなかつた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
伊豆はそこまで云いかけると咄嗟に自分もじたばた格好をつくったが、
希代
(
きたい
)
な興奮に堪え難くなって
迸
(
ほとば
)
しるように笑いだした。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
しかし不動のその姿からは形容に絶した一道の殺気が
鬱々
(
うつうつ
)
として
迸
(
ほとば
)
しっている。どだい武道から云う時はまるで勝負にはならないのであった。
三甚内
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そうでなしと争う可き余地もない程に述べ来るは全く熱心の
迸
(
ほとば
)
しりて知らず知らず茲に至る者と見える、余は唯聞き惚れて一言をも
挿
(
さしは
)
さまぬ
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
が、水の
迸
(
ほとば
)
しるように、自然に豊富に、美しい発音を
以
(
もっ
)
て、語られている言葉は、信一郎の心を魅し去らずにはいなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
『アレツ!』『アレツ、新坊
様
(
さん
)
が!』と
魂消
(
たまぎ
)
つた
叫声
(
さけび
)
が
女児
(
こども
)
らと智恵子の口から
迸
(
ほとば
)
しつた。
五歳
(
いつつ
)
の新坊が足を
浚
(
さら
)
はれて、
呀
(
あつ
)
といふ間もなく流れる。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
血も
迸
(
ほとば
)
しらんばかり
壮
(
さかん
)
だった滝太郎の
面
(
おもて
)
を、つくづく見て、またその罪の数を
眗
(
みまわ
)
して、お兼はほっという息を
吐
(
つ
)
いた。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と叫んだ新九郎にも、一念の
迸
(
ほとば
)
しるところ、おのずから
凜々
(
りんりん
)
たる気魄があって、彼の圧倒へ全力をこめて反抗した。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
厚い大きな唇がすばらしく早く動いて、調子の狂った楽器のような、ひどく
嗄
(
か
)
れた声が止めどもなく
迸
(
ほとば
)
しり出た。
日本婦道記:萱笠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
という悲鳴が思わず
迸
(
ほとば
)
しった。と同時に、彼は廻転中の木馬から、
真逆様
(
まっさかさま
)
に転落して、地面に叩きつけられた。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
取り
易
(
か
)
えられたガーゼは一部分に過ぎなかった。要所を
剥
(
は
)
がすと、血が
迸
(
ほとば
)
しるかも知れないという
身体
(
からだ
)
では、津田も無理をして
宅
(
うち
)
へ帰る訳に行かなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
武家にあっては武士道の義理、
市井
(
しせい
)
の人には世間の義理である。義理のためには親子の間の愛情も、恋人同士の
迸
(
ほとば
)
しるような愛の奔流も抑圧してきた時代である。
竹本綾之助
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
即
(
すなは
)
ち
熊公
(
くまこう
)
の
口
(
くち
)
から
自然
(
しぜん
)
に
迸
(
ほとば
)
しり
出
(
で
)
た『
目
(
め
)
の
玉
(
たま
)
のでんぐりかへる』といふ
大膽
(
だいたん
)
な
用語
(
ようご
)
が
寧
(
むし
)
ろ
奇拔
(
きばつ
)
でいゝね。
ハガキ運動
(旧字旧仮名)
/
堺利彦
(著)
右の手首は、車輪に
附着
(
くっつ
)
いて行ったものか見当らず、プッツリと切断された傷口から、鮮血がドクリドクリと
迸
(
ほとば
)
しり出て、線路の横に茂り合った
蓬
(
よもぎ
)
の葉を染めている。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
其の平生深く自信する精神的義侠の霊骨を其鋭利なる
筆尖
(
ひつせん
)
に
迸
(
ほとば
)
しらしめて曰く、社界の不平均を整ふる非常手腕として侠客なるものは自然に世に出でたるなりと、
又
(
ま
)
た曰く
徳川氏時代の平民的理想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
欝結
(
うっけつ
)
し、欝結して今は堪えがたくなったものが、一つのはけ口を見出して
迸
(
ほとば
)
しり
出
(
い
)
ずるそれは声なのである。人々はこの声々に潜むすべての感情を、よく
汲
(
く
)
みつくし得るであろうか。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
優しい言葉で
宥
(
なだ
)
め慰めると同時に、妻のある一色への不満を訴えた。しゃべりだすと油紙に火がついたように、べらべらと止め度もなく
田舎訛
(
いなかなまり
)
の能弁が薄い
唇
(
くちびる
)
を
衝
(
つ
)
いて
迸
(
ほとば
)
しるのだった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
サッポロビールの活動照明、ビール罎の中から光の噴泉が花火のように
迸
(
ほとば
)
しる。
病院風景
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と
迸
(
ほとば
)
しらせた
空
(
から
)
気合いとともに、打ちこむと見せてサッ! と引くが早いか
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
救ひを求むる言葉が、
笹紅
(
さゝべに
)
を含んだ小染の唇から
迸
(
ほとば
)
しりました。
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
溢
(
あふ
)
れ
出
(
で
)
る
血
(
ち
)
どろと
共
(
とも
)
に
口
(
くち
)
を
衝
(
つ
)
いて
迸
(
ほとば
)
しった
君
(
きみ
)
たちの
叫
(
さけ
)
びは
一九三二・二・二六:―白テロに斃た××聯隊の革命的兵士に―
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
「さて、これからが愚老の領分じゃ」老師は悠々
沈着
(
おちつ
)
きながら法衣の下に隠していた例の幻灯の機械を引き出し、シューッと光を
迸
(
ほとば
)
しらせた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
時々光を、幅広く
迸
(
ほとば
)
しらして、
濶
(
かッ
)
と明るくなると、
燭台
(
しょくだい
)
に
引掛
(
ひっか
)
けた羽織の袂が、すっと映る。そのかわり、じっと沈んで暗くなると、紺の縦縞が
消々
(
きえぎえ
)
になる。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
眼の
凹
(
くぼ
)
んだ、
煤色
(
すすいろ
)
の、背の低い首斬り役が重た
気
(
げ
)
に斧をエイと取り直す。余の
洋袴
(
ズボン
)
の膝に二三点の血が
迸
(
ほとば
)
しると思ったら、すべての光景が
忽然
(
こつぜん
)
と消え
失
(
う
)
せた。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼女の美しい目から、真珠のような涙が、ハラ/\と
迸
(
ほとば
)
しることを待っていた。
悔恨
(
かいこん
)
と
懺悔
(
ざんげ
)
との美しい涙が。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「いかさま、これは革命者の
心胆
(
しんたん
)
の
迸
(
ほとば
)
しりだ。世を
呪
(
のろ
)
うやつの声だ。
鄆城県
(
うんじょうけん
)
の人、宋江とは一体だれだろう」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
室に入れば野人斗酒を酌んで樽を撃ち、皿を割り、四壁に轟く
濁声
(
だくせい
)
をあげて叫んで曰く、ザールの首を
肴
(
さかな
)
にせむと。この声を聞かずや、無限の感激は
迸
(
ほとば
)
しつて
迅雷
(
じんらい
)
の如く四大を響動せんとす。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
で、よく人の面倒を見るやうだから姐御だといふならば、それは甚だ非理で、そこに心から
迸
(
ほとば
)
しるやはらぎと、
人入
(
ひとい
)
れ稼業をかねた、傍の迷惑をかへりみぬもの好きとの區別がなければならない。
凡愚姐御考
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
なぜなら、女はその肉体の行為の最大の陶酔のとき、必ず
迸
(
ほとば
)
しる言葉があった。アキ子にもこんなにしてやったの! そして目が怒りのために狂っているのだ。それが陶酔の頂点に
於
(
お
)
ける
譫言
(
うわごと
)
だった。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ただ、その石のように握り締めた両手の
拳
(
こぶし
)
の間から、
生温
(
なまぬ
)
るい汗がタラタラと
迸
(
ほとば
)
しり流れるのをハッキリと意識していたものだが、「手に汗を握る」という形容はアンナ状態を指したものかも知れん。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と、忽ち剣の面、
煌々
(
こうこう
)
明々陽に輝き、四方一面天地をこめて虹の如き光り
迸
(
ほとば
)
しると見るや「
吽
(
うん
)
!」とばかりに悶絶して五右衛門は地上に
伏
(
ふ
)
し
仆
(
たお
)
れた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その時私も兄さんの口を
迸
(
ほとば
)
しる Einsamkeit, du meine Heimat Einsamkeit !(孤独なるものよ、汝はわが
住居
(
すまい
)
なり)
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ふいに、そういう時の彼の筆の軸を切ったら、彼の血が
迸
(
ほとば
)
しるにちがいない。
田崎草雲とその子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
洪濛
(
こうもう
)
たる海気三寸の胸に入りて、一心見る/\
四劫
(
しごふ
)
に溢れ、溢れて無限の戦の海を包まんとすれば、舷に砕くるの巨濤
迸
(
ほとば
)
しつて
急霰
(
きふさん
)
の如く我と古帽とに
凛烈
(
りんれつ
)
の気を浴びせかけたる事もありき。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
依然両手を広げたまま、地から
根生
(
ねば
)
えた樫の木のように、無言の威嚇を続けていた。脈々と
迸
(
ほとば
)
しる底力が、甚内の身内へ逼って来た。強敵! と甚内は直覚した。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
女は青い葉の
間
(
あひだ
)
から、
果物
(
くだもの
)
を取り
出
(
だ
)
した。
渇
(
かは
)
いた人は、
香
(
か
)
に
迸
(
ほとば
)
しる甘い露を、したゝかに飲んだ。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
と
迸
(
ほとば
)
しる様に言つて、肩に捉つた手を烈しく男の首に捲いた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
つい、反感が
迸
(
ほとば
)
しった。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ある特別の感興を、
己
(
おの
)
が捕えたる
森羅
(
しんら
)
の
裡
(
うち
)
に寓するのがこの種の技術家の主意であるから、彼らの見たる物象観が
明瞭
(
めいりょう
)
に筆端に
迸
(
ほとば
)
しっておらねば、画を製作したとは云わぬ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
窓々から
迸
(
ほとば
)
しる様々の声は、高い天井や床板や、部屋部屋の壁に反響し、凄じい音を
形成
(
かたちづく
)
ったが、その音の中を貫いて、尼の叫びと車の軋り
音
(
ね
)
とは、次第次第に
遠退
(
とおの
)
いて行く。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
機を覗ひ時を待つて、吾が舌端より
火箭
(
くわせん
)
となつて
迸
(
ほとば
)
しる。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
人を
斬
(
き
)
ったものの受くる罰は、斬られた人の肉から出る血潮であると固く信じていた。
迸
(
ほとば
)
しる血の色を見て、清い心の迷乱を引き起さないものはあるまいと感ずるからである。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「南無三、笑った。あの笑いだな」庄三郎は膝を敷きピタリと大地へ
跪座
(
ひざまず
)
いた。とたんにピューッと何物か頭の上を飛び越したが、遥か前方の立ち木へ当たりパッと火花を
迸
(
ほとば
)
しらせた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この奇人の歪める口から
迸
(
ほとば
)
しつた第一聲である。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
人を
斬
(
き
)
つたものゝ受くる
罰
(
ばつ
)
は、
斬
(
き
)
られた
人
(
ひと
)
の
肉
(
にく
)
から
出
(
で
)
る血潮であると
固
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じてゐた。
迸
(
ほとば
)
しる血の色を見て、
清
(
きよ
)
い心の迷乱を引き起さないものはあるまいと感ずるからである。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
槓杆
(
こうかん
)
一本を動かしさえすれば、大池の水が
迸
(
ほとば
)
しり、流れ出るのでございます」
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しまいに突然興奮したらしい急な調子が思わず彼女の口から
迸
(
ほとば
)
しり出した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
とたんに、
太刀影
(
たちかげ
)
陽
(
ひ
)
に閃めいたがドンと鈍い音がして、紋太夫の首は地に落ちた。
颯
(
さっ
)
と切り口から
迸
(
ほとば
)
しる血! と見る間にコロコロコロコロと地上の生首渦を巻いたが、ピョンと空中へ飛び上がった。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
迸
(
ほとば
)
しる
砂煙
(
すなけむり
)
は
淋
(
さび
)
しき
初冬
(
はつふゆ
)
の日蔭を
籠
(
こ
)
めつくして、見渡す限りに有りとある物を封じ
了
(
おわ
)
る。浩さんはどうなったか分らない。気が気でない。あの煙の吹いている底だと見当をつけて一心に見守る。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
濃く
真直
(
まつすぐ
)
に
迸
(
ほとば
)
しる時は、哲学の絶高頂に達した
際
(
さい
)
で、
緩
(
ゆる
)
く崩れる時は、心気平穏、ことによると
冷
(
ひや
)
かされる恐れがある。
烟
(
けむり
)
が、鼻の下に彽徊して、
髭
(
ひげ
)
に未練がある様に見える時は、冥想に入る。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
迸
漢検1級
部首:⾡
10画
“迸”を含む語句
迸出
迸発
横迸
迸水
迸沫
迸溢
迸血
迸裂