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軟
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やわら
ふりがな文庫
“
軟
(
やわら
)” の例文
しかしながら色は必ずしも白色でなければならぬとは限らない、
印度
(
インド
)
の女の皮膚の色には別な
軟
(
やわら
)
かみと
滑
(
なめ
)
らかな光沢があって美しい
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
高い
土塀
(
どべい
)
と深い植込とに電車の響も
自
(
おの
)
ずと遠い嵐のように
軟
(
やわら
)
げられてしまうこの
家
(
や
)
の茶室に、自分は折曲げて坐る足の痛さをも
厭
(
いと
)
わず
銀座
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
愈々
(
いよいよ
)
引き上げという前になって、私は今一度十勝へ上った。もう三月の声をきくのも間もないこととて、
流石
(
さすが
)
に寒さはずっと
軟
(
やわら
)
いでいた。
雪後記
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
側に
鬢盥
(
びんだらい
)
というものがあって、チョイチョイ水をつけ、一方の壁には鬢附け油が堅いのと
軟
(
やわら
)
かいのとを板に附けてある。
幕末維新懐古談:05 その頃の床屋と湯屋のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
小松林の中には
芒
(
すすき
)
の繁りや
萩
(
はぎ
)
の繁りがあった。芒の
軟
(
やわら
)
かな穂が女の子の手のように見える処があった。白い犬はその芒の中に姿を消すことがあった。
岐阜提灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
硬きがごとくして
軟
(
やわら
)
かく、柔らかきがごとくして固く、つるぎをとる要領で
算盤
(
そろばん
)
を持つのだ。剣をとるには、濡れ手ぬぐいを絞るようにやんわり持つ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
其の
鳥打帽
(
とりうちぼう
)
を
掻取
(
かきと
)
ると、
雫
(
しずく
)
するほど
額髪
(
ひたいがみ
)
の黒く
軟
(
やわら
)
かに
濡
(
ぬ
)
れたのを、
幾度
(
いくたび
)
も払ひつゝ、
太
(
いた
)
く
野路
(
のじ
)
の雨に悩んだ
風情
(
ふぜい
)
。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
由「鯉の鱗なしは
軟
(
やわら
)
かい、
羊羹
(
ようかん
)
をしゃぶったようで、鯉の鱗なしは不思議で、こりゃア頂戴……鉄火煮は
好
(
よ
)
うがす……ウム、ゴソ/\するのは何んです」
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
三十七八の品よい夫人で、もののいい黒っぽい服装、
軟
(
やわら
)
かそうな髪の毛から下駄の爪先まで、落着いて素直な感じであった。膝の横にある洋傘も黒であった。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ここだけの話だけど、
苜蓿
(
うまごやし
)
なんか、サラダとおんなじに
軟
(
やわら
)
かいよ。つまり、油と
酢
(
す
)
をつけないサラダさ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
庭園の土は
軟
(
やわら
)
かだったけれど、そこには
庭下駄
(
にわげた
)
以外の跡はなく、玄関前には敷石が敷きつめてあった。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
あのかよわそうな
枝
(
えだ
)
ぶりや、
繊細
(
せんさい
)
な
楕円形
(
だえんけい
)
の
軟
(
やわら
)
かな葉などからして私の無意識の裡に想像していた花と、それらが似てもつかない花だったからであったかも知れない。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
仲居
(
なかい
)
と舞子に
囲繞
(
とりま
)
かれつつ歓楽に興ずる一団を中心として幾多の
遠近
(
おちこち
)
の涼み台の群れを
模糊
(
もこ
)
として描き、京の夏の夜の夢のような歓楽の
軟
(
やわら
)
かい気分を全幅に
漲
(
みなぎ
)
らしておる。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
通常愛といえば、すぐれて優しい女性的な感情として見られていはしないか。好んで愛を語る人は、頭の
軟
(
やわら
)
かなセンティメンタリストと取られるおそれがありはしまいか。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
もっと葉の
軟
(
やわら
)
かなような、色の緑色の
箒
(
ほうき
)
を立てたように
鬱然
(
こんもり
)
とした、而して日の弱い光りを浴びて
蝋
(
ろう
)
のような、
燐
(
りん
)
の燃えるような、或時は尼が立っているとも見え、或時は
日没の幻影
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
越前屋の主人の口から静かに吐き出す温かい息が
軟
(
やわら
)
かに
耳朶
(
みみたぶ
)
を
撫
(
な
)
でるように触れるごとに、それが彼女自身の温かい口から洩れてくる優しい柔かい息のように感じられて、身体が
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
...
殊
(
こと
)
に若い鶏の肉ならば、もうほんとうに
軟
(
やわら
)
かでおいしいことと云ったら、」先生は
一寸
(
ちょっと
)
唾
(
つば
)
をのみました、「とてもお話ではわかりません。食べたことのある方はおわかりでしょう。」
茨海小学校
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
あたかも彼らがムスクトンの顔を美なりと称し、クロードの
風采
(
ふうさい
)
を尊厳なりと称すると同一である。天空の星座と
軟
(
やわら
)
かき泥地に印するあひるの足跡の星形とを、彼らは混同するのである。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
と妻が
曰
(
い
)
う。ペンを
擱
(
さしお
)
いて、取あえず一
碗
(
わん
)
を
傾
(
かたむ
)
ける。
銀瓶
(
ぎんびん
)
と云う処だが、やはり
例
(
れい
)
の
鉄瓶
(
てつびん
)
だ。其れでも何となく
茶味
(
ちゃみ
)
が
軟
(
やわら
)
かい。
手々
(
てんで
)
に焼栗を
剥
(
む
)
きつゝ、障子をあけてやゝしばし外を眺める。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それは蝸牛の肉を
茹
(
ゆ
)
でて
軟
(
やわら
)
かくしたものを上等のバタと細かく
刻
(
きざ
)
んだ
薄荷
(
はっか
)
とをこね
合
(
あわ
)
せたものと一緒にして
殻
(
から
)
に詰めるだけのことである。
然
(
しか
)
しこの簡単な料理にもなかなか
熟練
(
じゅくれん
)
を要するという。
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
郭公は姉なるがある時
芋
(
いも
)
を掘りて焼き、そのまわりの
堅
(
かた
)
きところを自ら食い、中の
軟
(
やわら
)
かなるところを妹に与えたりしを、妹は姉の食う
分
(
ぶん
)
は一層
旨
(
うま
)
かるべしと想いて、
庖丁
(
ほうちょう
)
にてその姉を殺せしに
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「それじゃね、晩にお刺身を一人前……いいかえ。」と言って、お国は台所の棚へ何やら
収
(
しま
)
い込んでから、茶の
室
(
ま
)
へ入って来た。
軟
(
やわら
)
かものの羽織を引っ
被
(
か
)
けて、
丸髷
(
まるまげ
)
に桃色の
手絡
(
てがら
)
をかけていた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ガスを送るゴム管は
軟
(
やわら
)
かい
薄肉
(
うすにく
)
のものでないと、
取扱
(
とりあつか
)
いに不便である。手勝手の悪い操作をするのが、大切な容器をこわす一番の原因となる。
実験室の記憶
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
彼は紅絵に見るが如く空間を
白紙
(
はくし
)
のままに残す事を許さず、壁、天、地等にそれぞれ淡く
軟
(
やわら
)
かき色を施し以て画面に一種の情調を帯ばしめたり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
一本の草、一枚の葉の弱々しいあの
軟
(
やわら
)
かなものが、夏になると、この地上を完全に
蔽
(
おお
)
いつくしてしまう。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
讓は
眼前
(
めさき
)
が暗むような気がして内へ逃げ込んだ。その讓の体は
軟
(
やわら
)
かな手でまた抱き縮められた。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
硬
(
こわ
)
すぎず
軟
(
やわら
)
かすぎぬクッションのねばり工合、
態
(
わざ
)
と染色を嫌って灰色の生地のまま張りつけた、
鞣革
(
なめしがわ
)
の肌触り、適度の傾斜を保って、そっと背中を支えて呉れる、豊満な
凭
(
もた
)
れ
人間椅子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私はなんだかいやな気がして、その女から眼をそらしながら、ふとその眼を私がときどきふんづける小さな
軟
(
やわら
)
かなものの方へ持って行くと、それが
三鞭酒
(
シャンパン
)
の
栓
(
せん
)
らしいことを認めた。
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
渠は
話児
(
はなし
)
を釣るべき器械なる、渠が特有の「へへえ」と「なるほど」とを用いて、しきりにその
顛末
(
てんまつ
)
を聞かんとせり。
乙者
(
おつ
)
も劣らず水を向けたりき。髭ある人の
舌本
(
ぜっぽん
)
はようやく
軟
(
やわら
)
ぎぬ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ああ、君が膝にわが
額
(
ひたい
)
を押当てて暑くして白き夏の昔を嘆き、
軟
(
やわら
)
かにして
黄
(
きいろ
)
き晩秋の光を
味
(
あじわ
)
わしめよ。」という末節の文字が
明
(
あきら
)
かに読まれます。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかしながら、こんな場合の用意にと思ったわけではありませんが、山が
円
(
まる
)
くて、鍔がそれはうんと巻き上った黒の
軟
(
やわら
)
かい帽子をマルセイユで、買って置いたのでした。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
艶子はやっと気づいた様に、低い
叱責
(
しっせき
)
の声と共に、握られた手を引込めて、併しまだ逃げ出そうともせず、鉛筆を動かしていた。その調子が、妙に
軟
(
やわら
)
かく、
隙
(
すき
)
だらけに見えた。
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
が、縄目は見る目に忍びないから、
衣
(
きぬ
)
を掛けたこのまま、
留南奇
(
とめき
)
を
燻
(
た
)
く、絵で見た
伏籠
(
ふせご
)
を念じながら、もろ手を、ずかと袖裏へ。
驚破
(
すわ
)
、ほんのりと、暖い。
芬
(
ぶん
)
と薫った、石の肌の
軟
(
やわら
)
かさ。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それらのアカシアの花ざかりだった頃は、その道はあんなにも
足触
(
あしざわ
)
りが
軟
(
やわら
)
かで、
新鮮
(
しんせん
)
な感じがしていたのに、今はもう、あちこちに
凸凹
(
でこぼこ
)
ができ、
汚
(
きたな
)
らしくなり、何んだかいやな
臭
(
にお
)
いさえしていた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
電車の
響
(
ひびき
)
も
自
(
おの
)
ずと遠い嵐のように
軟
(
やわら
)
げられてしまうこの
家
(
や
)
の茶室に、自分は折曲げて坐る足の痛さをも厭わず、
幾度
(
いくたび
)
か湯のたぎる茶釜の
調
(
しらべ
)
に、耳を澄まして
銀座界隈
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ずかずか山の
裾
(
すそ
)
を、
穿
(
ほ
)
りかけていたそうでありますが、
小児
(
こども
)
が呼びに来たについて、
一服
(
いっぷく
)
遣
(
や
)
るべいかで、もう
一鍬
(
ひとくわ
)
、すとんと入れると、急に土が
軟
(
やわら
)
かく、ずぶずぶと
柄
(
え
)
ぐるみにむぐずり込んだで。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
庭の
無花果
(
いちじく
)
の木かげに一枚の
花莚
(
はなむしろ
)
を敷いて、その上でそれ等の赤まんまの花なんぞでままごとをしながら、
肢体
(
したい
)
に殆どじかに感じていた土の
凹凸
(
おうとつ
)
や、何んともいえない土の
軟
(
やわら
)
か味のある一種の弾性や
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
栗の木には強い
匂
(
におい
)
の花が咲き、柿の若葉は
楓
(
かえで
)
にも
優
(
まさ
)
って今が丁度新緑の最も
軟
(
やわら
)
かな色を示した時である。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
北斎は従来の浮世絵に
南画
(
なんが
)
の画風と西洋画とを加味したる処多かりしが、広重は
専
(
もっぱら
)
狩野
(
かのう
)
の支派たる一蝶の筆致に
倣
(
なら
)
ひたるが如し。北斎の画風は強く
硬
(
かた
)
く広重は
軟
(
やわら
)
かく
静
(
しずか
)
なり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
春章がこの時代の板画は役者絵風俗画共にその曇りて
軟
(
やわら
)
かき色調、専ら春信に
倣
(
なら
)
ふ処多かりしが、明和末年より安永に
入
(
い
)
るやその筆力は
忽
(
たちま
)
ち活気を帯びその色彩は甚だ
絢爛
(
けんらん
)
となり
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし今わたくしが親しく窓から見る風景と、親しく身に感じる気候とは、かくの如き過去の記録をして架空な小説のようにしか思惟させない。それほどまでに、風景は
穏
(
おだやか
)
に気候は
軟
(
やわら
)
かなのだ。
冬日の窓
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
軟
常用漢字
中学
部首:⾞
11画
“軟”を含む語句
柔軟
軟弱
軟風
御柔軟
軟文学
軟柔
軟泥
軟化
軟禁
軟打
軟体
海軟風
軟毛
手軟
軟禁程度
軟派
軟派青年
軟水
軟玉
軽軟
...