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藉
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か
ふりがな文庫
“
藉
(
か
)” の例文
故に憲法の効力が普通の法律よりも高いという事になった政治上の理由は、俗用の言葉を
藉
(
か
)
りていえば、民権の保護に在るといえる。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
世の伝うるところの賽児の事既に
甚
(
はなは
)
だ奇、修飾を
仮
(
か
)
らずして、一部
稗史
(
はいし
)
たり。女仙外史の作者の
藉
(
か
)
りて
以
(
もっ
)
て筆墨を
鼓
(
こ
)
するも
亦
(
また
)
宜
(
むべ
)
なり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
せめて今宵一夜は空虚の寂寞を脱し、酒の力を
藉
(
か
)
りて能うだけ感傷的になって、蜜蜂が蜜を
啜
(
すす
)
るほど微かな悲哀の快感が味わいたい。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
げんに今も、その妖怪の一つは、日本老人アンリ・アラキという存在を
藉
(
か
)
りて、こうして「生ける幽霊たち」の行列を引率している。
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
このほか造化の妙工を計れば枚挙に
遑
(
いとま
)
あらず。人はただこの造化の妙工を
藉
(
か
)
り、わずかにその趣を変じてもってみずから利するなり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
須永はその叔父の力を
藉
(
か
)
りてどうしようという
料簡
(
りょうけん
)
もないと見えて、「叔父がいろいろ云ってくれるけれども、僕は
余
(
あんまり
)
進まないから」
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
狂言の文左衛門は、この頃遊所で香以を今紀文と
称
(
とな
)
え出したに
因
(
ちな
)
んで、この名を
藉
(
か
)
りて香以を写したものである。東栄は牧冬映である。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
されば
満更
(
まんざら
)
あとかたのない話ではござりますまいが、御家来衆は兎に角として、殿様が左様な企てに耳をお
藉
(
か
)
しになりましたかどうか。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
使者に名を
藉
(
か
)
り、藤夜叉がこれへ来たのも、ゆるされぬし、もしまた、これが道誉の悪質な
悪戯
(
いたずら
)
なら、なおさらなことと、腹が煮える。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その青い倦怠の中からわれ知らず
罪咎
(
つみとが
)
の魔神の力を
藉
(
か
)
りても生き上ろうとするわが身の内の必死の青春こそ、あなや、危うくあります。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
剣怪左膳の筆跡——そもそも何がしたためてあったか? 妖刀乾雲、左膳の筆を
藉
(
か
)
りていかなる文言をその分身坤竜にもたらしたことか?
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
時勢の
逼迫
(
ひっぱく
)
が私の主張に耳を
藉
(
か
)
す人も生じさせていたが、事変勃発後、私の「戦争史大観」が謄写刷りにされて若干の人々の手に配られた。
戦争史大観
(新字新仮名)
/
石原莞爾
(著)
そこをなんとか切り抜けるのには、お互、智慧を
藉
(
か
)
し合はなけれやならない。君の智慧を
藉
(
か
)
りようつていふんぢやないか。わからないかい。
雅俗貧困譜
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
象徴の用は、これが助を
藉
(
か
)
りて詩人の観想に類似したる一の心状を読者に与ふるに在りて、必らずしも同一の概念を伝へむと
勉
(
つと
)
むるに非ず。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
立派な人の家人になって、その主人にさえ頭を下げておれば、所謂虎の威を
藉
(
か
)
る狐で、主人の威光を笠に着て万人の上に立つことが出来る。
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
便宜という理由に名を
藉
(
か
)
りて、その発行額を統制する妨げを除去せんとする気になり過ぎるかもしれない、と論ぜられている。
経済学及び課税の諸原理
(新字新仮名)
/
デイヴィッド・リカード
(著)
御意
(
ぎよい
)
にござります。
舳
(
みよし
)
に
据
(
す
)
えました
其
(
そ
)
の
五位鷺
(
ごゐさぎ
)
が
翼
(
つばさ
)
を
帆
(
ほ
)
に
張
(
は
)
り、
嘴
(
くちばし
)
を
舵
(
かぢ
)
に
仕
(
つかまつ
)
りまして、
人手
(
ひとで
)
を
藉
(
か
)
りませず
水
(
みづ
)
の
上
(
うへ
)
を
渡
(
わた
)
りまする。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
その御子息さまとに
望
(
のぞみ
)
を絶えさせることはわたくしには出来かねます、ちからを
藉
(
か
)
してもろともに生きてゆかねばならないのでございます。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
後には生霊死霊の口寄(死者の魂を招いて己が口に
藉
(
か
)
りてその意を述べることで、今日の沖縄語ではカカイモンと申します)
ユタの歴史的研究
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
交ったいろ/\の非難や不服をいうものもあったが、頑として由良は、つねのその「矢の倉」のさまに似ず、決してそれに耳を
藉
(
か
)
さなかった。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
其後
(
そのご
)
幾年
(
いくねん
)
か
経
(
た
)
って再び之を越えんとした時にも
矢張
(
やッぱり
)
怕
(
おそ
)
ろしかったが、其時は酒の力を
藉
(
か
)
りて、
半狂気
(
はんきちがい
)
になって、漸く此
怕
(
おそ
)
ろしい線を踏越した。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
セリセツトは言ふ迄もなくマアテルリングが作中の一人物を
藉
(
か
)
りて島村氏自身の痛ましい夢をさしたものに外ならなかつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
東隣
(
ひがしどなり
)
の
主人
(
しゆじん
)
の
庭
(
には
)
には
此
(
こ
)
の
日
(
ひ
)
も
村落
(
むら
)
の
者
(
もの
)
が
大勢
(
おほぜい
)
集
(
あつ
)
まつて
大
(
おほ
)
きな
燒趾
(
やけあと
)
の
始末
(
しまつ
)
に
忙殺
(
ばうさつ
)
された。それで
其
(
その
)
人々
(
ひと/″\
)
は
勘次
(
かんじ
)
の
庭
(
には
)
に
手
(
て
)
を
藉
(
か
)
さうとはしなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
秀吉はそれには耳を
藉
(
か
)
さなかつたが、切支丹の一婦人に懸想してその婦人を妾にする事が出来なかつた時、始めて本当に切支丹を憎いと思つた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
公判廷で何の遠慮もなく——その時の検事の論告の言葉を
藉
(
か
)
れば厚顔無恥比するにものなき態度を以て——斯様な事実を述べ立てたのですから
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
赤坊や小さな子供が両手の力を
藉
(
か
)
りずに床から起き上るのを見ると、奇妙な気がする。彼等の脚は、腕との割合に於て、我々のよりも余程短い。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
当時民間の政論家をもって自任する者は日本の旧慣を弁護することを憚り、わずかに英国の例を
藉
(
か
)
りてもって西洋風の勤王論を口にするあるのみ。
近時政論考
(新字新仮名)
/
陸羯南
(著)
そこで我輩の考えるのに、戦いの人類に惨毒を流すことは、ほとんど我輩の口を
藉
(
か
)
って述ぶるの必要がないのである。
平和事業の将来
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
「それは何かの間違いでござろう。……拙者今までその庭先で吹矢を削っておりましたが、決してさような賊の姿など
藉
(
か
)
りにも見掛けは致しませぬ」
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「あぶない!」僕は、引止めたが、それには耳を
藉
(
か
)
さず、はや間近に迫った一隊に向って、
皺枯
(
しわが
)
れ声だが、しかし太い力のこもった声で呼びかけた。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
唯、予が告白せんとする事実の、余りに意想外なるの故を以て、
妄
(
みだり
)
に予を
誣
(
し
)
ふるに、神経病患者の名を
藉
(
か
)
る事
勿
(
なか
)
れ。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
されば彼は内外の政務に精通したると同時に、幕府の衰因の深かつ遠にして、到底大切断の作用を
藉
(
か
)
らざれば、これを救済するの道なきを熟知したり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
つまり、その陰険な技巧と云うのは、今も云った角度を作ることと、それから、人手を
藉
(
か
)
らずに弓を
絞
(
しぼ
)
り、さらにまた、この緊張を緩めることでした。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
この恐るべき危機に
瀕
(
ひん
)
して、貫一は
謂知
(
いひし
)
らず自ら
異
(
あやし
)
くも、
敢
(
あへ
)
て
拯
(
すくひ
)
の手を
藉
(
か
)
さんと為るにもあらで、しかも見るには堪へずして、
空
(
むなし
)
く
悶
(
もだ
)
えに悶えゐたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
俗説に耳を
藉
(
か
)
すな。そんなことでへこたれるには及ばない。新しい行動にはいつも迫害を伴うにきまっている。
キャラコさん:07 海の刷画
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
仕掛の製作も決して船頭の手を
藉
(
か
)
りないばかりでなく、日露戦争前までは血気に任せて自ら舟を漕ぎ、好きな釣場へ行って終夜、終日釣り暮らしたものである。
釣聖伝
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
泰西
(
たいせい
)
の文運に遅れざらんとして、種々の説、種々の主義を迎えるに
暇
(
いとま
)
がない一部の俳人はそれに耳を
藉
(
か
)
して、俳句もまた時流に遅れざらん事を心掛けているが
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
自然はこの時、一つの鮮明な強烈な色彩を
藉
(
か
)
りて、突然鋭く私の心の隙間に、一閃の光明を投げ入れた。
柘榴の花
(新字旧仮名)
/
三好達治
(著)
すなわちあの時はただ愛、ただ感ありしのみ、他に思考するところの者を
藉
(
か
)
り来たりて感興を助くるに及ばざりしなり。されどかの時はすでに
業
(
すで
)
に過ぎ
逝
(
ゆ
)
きたり。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
赤羽主任は懐中電灯を
藉
(
か
)
りて、由蔵の屍体の周囲を丹念に調べてみたのち、ちょっと首を
傾
(
かし
)
げて云った。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「御為派がこのように動きだしたのは、彼等も肚を据えたという証拠だ、彼等に時を
藉
(
か
)
してはならんぞ」
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ほかの子達がかえって泣き出しましたけれども、セエラは子供達の泣声になどは耳も
藉
(
か
)
さない風でした。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
これだけ世の中が開けて来たのだと人々はいう。人間が
悧口
(
りこう
)
になったので、胡弓や鼓などの、
間
(
ま
)
のびのした馬鹿らしい歌には耳を
藉
(
か
)
さなくなったのだと人々はいう。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
或は
棒
(
ぼう
)
を以て打ち、或は
石
(
いし
)
を
投
(
な
)
げ
付
(
つ
)
けし事も有るべけれど、
弓矢
(
ゆみや
)
の力を
藉
(
か
)
りし事蓋し多かりしならん。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
故ニ亜米利加合衆国ノ名代人タル我輩、其論説ノ正否ヲ世界中ノ公評ニ
質
(
ただ
)
サンガ為メ、コヽニ会同シテ、州内良民ノ名ニ代リ州内良民ノ権ヲ
藉
(
か
)
リ、謹テ次件ヲ布告ス。
アメリカ独立宣言
(新字旧仮名)
/
トマス・ジェファーソン
(著)
しかし純粋に抽象的関係というような者は我々はこれを意識することはできぬ、思惟の運行も或具象的心像を
藉
(
か
)
りて行われるのである、心像なくして思惟は成立しない。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
「ナタリイ」と私は一分ほどしてから言葉をつづけた、「ここを
発
(
た
)
つ前に、特別のお慈悲でもって、ひとつ僕が何かしら難民に尽せるように力を
藉
(
か
)
してくれないかね。」
妻
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
このまま
朽
(
く
)
ち果てても怨みとは思いませんが、謀反人の娘の腹を
藉
(
か
)
りた子に、三千五百石の由緒ある旗本の家は継がせられないと言って、高木銀次郎、大沢幸吉の一味が
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何某の名を
藉
(
か
)
りて、人間一般の運命を現わしたものであるとアリストテレスは考えたのである。
美学入門
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
必ずしも
人間
(
じんかん
)
の木殖を
藉
(
か
)
らざるなり、愚俗不経一にここに至る〉とあるより翻案したのだろう。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
藉
漢検1級
部首:⾋
17画
“藉”を含む語句
慰藉
狼藉
慰藉料
藉口
乱暴狼藉
狼藉者
杯盤狼藉
温藉
盃盤狼藉
慰藉金
落花狼藉
親藉
仮藉
落藉
浪藉者
慰藉者
酣酔狼藉
藉然
温藉静冽
藉甚
...