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ぼうぼう
ふりがな文庫
“
蓬々
(
ぼうぼう
)” の例文
手巾
(
ハンカチ
)
を
目頭
(
めがしら
)
にあてている洋装の若い女がいた。女学校のときの友達なのだろう。
蓬々
(
ぼうぼう
)
と生えた
眉毛
(
まゆげ
)
の下に泣きはらした目があった。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
私たちは月見草などの
蓬々
(
ぼうぼう
)
と浜風に吹かれている砂丘から砂丘を越えて、帰路についた。六甲の山が、青く目の前に
聳
(
そび
)
えていた。
蒼白い月
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その
中
(
うち
)
でも取りわけて恐ろしかったのは、
蓬々
(
ぼうぼう
)
と乱れかかった
髪毛
(
かみのけ
)
の中から、真白くクワッと見開いていた両眼であったという。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
雑草の
蓬々
(
ぼうぼう
)
と生い繁った中に、奇妙なとんがり屋根の、青ペンキの洋館が建っていた。純然たるアトリエとして建築したものだ。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ふと下の往来を、青い顔して髯や髪の
蓬々
(
ぼうぼう
)
と延びた、三十前後の乞食のような服装の男が、よさよさと通って行くのが、耕吉に見下された。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
▼ もっと見る
分けるには長すぎる髪の毛が、手入れをせぬと見えて、
蓬々
(
ぼうぼう
)
と乱れて顔にかかっているのが、死人のような顔の色を更に痛ましく見せている。
黄昏の告白
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
雨に光っている髪の毛は、
蓬々
(
ぼうぼう
)
と耳にかぶさって、絵に描いた
河
(
か
)
っ
童
(
ぱ
)
そのままだ。筒袖の腰きりに、縄の帯、背中まで
泥濘
(
ぬかるみ
)
の跳ねを上げている。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
余は
殊
(
こと
)
に彼ヤイコクが
五束
(
いつつか
)
もある
鬚髯
(
しゅぜん
)
蓬々
(
ぼうぼう
)
として
胸
(
むね
)
に
垂
(
た
)
れ、
素盞雄尊
(
すさのおのみこと
)
を見る様な六尺ゆたかな
堂々
(
どうどう
)
雄偉
(
ゆうい
)
の
骨格
(
こっかく
)
と
悲壮
(
ひそう
)
沈欝
(
ちんうつ
)
な其
眼光
(
まなざし
)
を
熟視
(
じゅくし
)
した時
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
落ち葉はじめじめと朽ちて厚く散り重なって、
白茅
(
ちがや
)
青萱
(
あおがや
)
の足の踏み場もないまでにはびこり放題
蓬々
(
ぼうぼう
)
とはびこっていた。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
彼等は今や、
蓬々
(
ぼうぼう
)
とした藪が一面に生え茂って、今まで誰も住んだこともなければ来たこともなさそうな、ひっそりとした、淋しい
荒野原
(
あれのはら
)
へ来ました。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
ギックリして、声を
嗄
(
か
)
れさせながら、鷲尾は自分のネクタイが歪み、ズリ落ちそうな帽子の下から、
蓬々
(
ぼうぼう
)
の頭髪がハミ出してるのに
慌
(
あわ
)
てて気がついた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
彼は今朝、病院内の
理髪屋
(
りはつや
)
で、のびきった髪を短く刈り、
蓬々
(
ぼうぼう
)
の
髭
(
ひげ
)
をきれいに剃りおとし、すっかり若がえった。
脳の中の麗人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何と、かの爺どもの胡麻塩の
蓬々
(
ぼうぼう
)
と乱れて深い渦巻きをした髪の毛、
凹
(
くぼ
)
んだ黒い両眼に蔽いさがった眉毛、口髭、毛むくじゃらの胸まで長々と垂れた
頤髯
(
あごひげ
)
だろう。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
西峠の北は赤瀬の
大和富士
(
やまとふじ
)
まで
蓬々
(
ぼうぼう
)
たる野原で、古歌に
謡
(
うた
)
われた「小野の
榛原
(
はいばら
)
」はここであります。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何故ならば髪の毛は二月ばかり剃らんのですから充分延びて居る所へ髯が
蓬々
(
ぼうぼう
)
と生えて居りますし
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「才兵衛や、まあここへお
坐
(
すわ
)
り。まあたいへん
鬚
(
ひげ
)
が伸びているじゃないか、
剃
(
そ
)
ったらどうだい。髪もそんなに
蓬々
(
ぼうぼう
)
とさせて、どれ、ちょっと
撫
(
な
)
でつけてあげましょう。」
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
(
姉
(
ねえ
)
や、こえ、こえ。)といいながら
気
(
け
)
だるそうに手を持上げてその
蓬々
(
ぼうぼう
)
と生えた
天窓
(
あたま
)
を
撫
(
な
)
でた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼の田地は「
茅山
(
かややま
)
」——草葺屋根の材料にする茅刈り場——そのもののごとく草
蓬々
(
ぼうぼう
)
であった。
沼畔小話集
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
孔乙己は立飲みの方でありながら
長衫
(
ながぎ
)
を著た唯一の人であった。彼は身の長けがはなはだ高く、顔色が青白く、皺の間にいつも傷痕が交っていて胡麻塩鬚が
蓬々
(
ぼうぼう
)
と生えていた。
孔乙己
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
それでも念のために、彼は堤を降りて、その男の枕もとへ近よると、男は
堅気
(
かたぎ
)
の町人とも遊び人とも見分けの付かないような風体で、いが栗頭が
蓬々
(
ぼうぼう
)
と伸びているように見えた。
半七捕物帳:62 歩兵の髪切り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
渋い古大島の
袷
(
あわせ
)
に萎えた博多の伊達巻。髪は
梳
(
す
)
き上げて頭の頂天に形容のつき兼ねる
恰好
(
かっこう
)
にまるめてある。後れ毛が垂れないうちに途中で
蓬々
(
ぼうぼう
)
と
揉
(
も
)
み切れてかたまり合っている。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
村
(
むら
)
へ
石油
(
せきゆ
)
を
売
(
う
)
りにくる
男
(
おとこ
)
がありました。
髪
(
かみ
)
の
黒
(
くろ
)
い
蓬々
(
ぼうぼう
)
とした、
脊
(
せい
)
のあまり
高
(
たか
)
くない、
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
い
男
(
おとこ
)
で、
石油
(
せきゆ
)
のかんを、てんびん
棒
(
ぼう
)
の
両端
(
りょうはし
)
に一つずつ
付
(
つ
)
けて、それをかついでやってくるのでした。
火を点ず
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
われらは、たがいに見馴れて、なんとも思わぬが、面は猿のように赤く、髪は
蓬々
(
ぼうぼう
)
、
髭
(
ひげ
)
は蓬々、手足は餓鬼のように痩せ、着ているものは藤九郎の羽根を綴りあわした天狗の装束ときている。
藤九郎の島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
外から
硝子扉
(
ガラスど
)
にぴったり寄添って、
蓬々
(
ぼうぼう
)
に伸びあがった髯面を突出しながら、憔悴しきった
金壷眼
(
かなつぼまなこ
)
で、きょろきょろとおびえるように屋内を見廻していたが、直ぐに立上った女の視線にぶつかると
動かぬ鯨群
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
容貌
(
かおだち
)
は長い方で、鼻も高く
眉毛
(
まゆげ
)
も濃く、額は
櫛
(
くし
)
を加えたこともない
蓬々
(
ぼうぼう
)
とした
髪
(
け
)
で半ばおおわれているが、見たところほどよく発達し、よく下品な人に見るような骨張ったむげに
凸起
(
とっき
)
した額ではない。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
見違えるほど
窶
(
やつ
)
れ果てた顔に、著しく
白髪
(
しらが
)
の殖えた
無精髯
(
ぶしょうひげ
)
を
蓬々
(
ぼうぼう
)
と生やした彼の
相好
(
そうごう
)
を振り返りつつ、互いに眼と眼を
見交
(
みかわ
)
した。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
在から来たらしい屈託そうな顔をした婆さんに低い声で何やら言って聞かしていたが、髪の
蓬々
(
ぼうぼう
)
した陰気そうな笹村の顔を時々じろじろと見ていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
夏じゅう日光に浴さなかった彼の皮膚は、明るい廊で見ると、植物性の白さをおび、七十余日の
髯
(
ひげ
)
が
蓬々
(
ぼうぼう
)
としていた。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
行って見ると、洞穴の入口は、
蓬々
(
ぼうぼう
)
と生い茂った雑草に覆われて、一寸見たのでは少しも分らぬ様になっていた。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼は多年獄中にあっての
蓬々
(
ぼうぼう
)
たる頭髪と
茫々
(
ぼうぼう
)
たる
鬚髯
(
しゅぜん
)
の間から、大きくはないが
爛々
(
らんらん
)
と光る眼に物珍らしい色を
湛
(
たた
)
えて、しきりにこの室内を見廻しているのであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その拝殿を、
一旦
(
いったん
)
むこうの隅へ急いで
遁
(
に
)
げました。正面に奥の院へ通います階段と石段と。……間は、樹も草も
蓬々
(
ぼうぼう
)
と茂っています。その階段の下へかくれて、またよく見ました。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見ゆる限り草
蓬々
(
ぼうぼう
)
たる大野原! 四周を
画
(
かぎ
)
って層々たる山々が、
屏風
(
びょうぶ
)
のごとくに立ち
列
(
つら
)
なり、東北方、
山襞
(
やまひだ
)
の多い
鬱然
(
うつぜん
)
たる樹木の山のみが、その
裾
(
すそ
)
を一際近くこちらに
曳
(
ひ
)
いている。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
自分の幼時からの悪を、飾らずに書いて置きたいと思ったのである。二十四歳の秋の事である。草
蓬々
(
ぼうぼう
)
の広い廃園を
眺
(
なが
)
めながら、私は離れの一室に坐って、めっきり笑を失っていた。
十五年間
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
神楽は村の
能狂言
(
のうきょうげん
)
、神官が家元で、村の器用な若者等が
神楽師
(
かぐらし
)
をする。無口で大兵の鉄さんが気軽に太鼓をうったり、気軽の亀さんが
髪髯
(
かみひげ
)
蓬々
(
ぼうぼう
)
とした面をかぶって真面目に舞台に立ちはだかる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
蓬々
(
ぼうぼう
)
の草原に、降るような虫の声。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その少女は
艶々
(
つやつや
)
した
夥
(
おびただ
)
しい
髪毛
(
かみのけ
)
を、黒い、大きな
花弁
(
はなびら
)
のような、奇妙な恰好に結んだのを白いタオルで包んだ枕の上に
蓬々
(
ぼうぼう
)
と乱していた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
春から夏のはじめにかけて、
流人
(
るにん
)
親鸞の髪は
蓬々
(
ぼうぼう
)
と伸びていた。——何とはなくこの幾月を、彼は病む日が多かった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蓬々
(
ぼうぼう
)
伸びた頭髪、鼠色の着付、芝居でお
馴染
(
なじみ
)
の清玄に相違ない。それにしても、清玄には唇があった筈だが。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
博士は
蓬々
(
ぼうぼう
)
と乱れた髪をしていたが、「よし、よし」とか何とか言って、いきなりメスをもって行った。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
恐怖のうちにお玉の眼に映じたものは、その人が
水色無地
(
みずいろむじ
)
の着物を着て、坐って
俯向
(
うつむ
)
きになっていたから、
蓬々
(
ぼうぼう
)
と生えた
月代
(
さかやき
)
だけが正面に見えて、
面
(
かお
)
は更に見えませんでした。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
上下
一呼吸
(
ひといき
)
吐
(
つ
)
く間もあらせず、
眼
(
まなこ
)
鋭く、
頬
(
ほお
)
瘠
(
や
)
せて
髯
(
ひげ
)
蓬々
(
ぼうぼう
)
と口を
蔽
(
おお
)
い、髪は
蓬
(
おどろ
)
と
乱懸
(
みだれかか
)
りて、手足の
水腫
(
みずぶくれ
)
に蒼味を帯びたる
同一
(
おなじ
)
ような貧民一群、いまだ新らしき
棺桶
(
かんおけ
)
を、よいしょと
背負込
(
しょいこ
)
み
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それっきり夜おそくまで帰らず、
猫
(
ねこ
)
は
鼠
(
ねずみ
)
を取る事をたいぎがって、寝たまま
炉傍
(
ろばた
)
に糞をたれ、家は
蜘蛛
(
くも
)
の巣だらけ庭は草
蓬々
(
ぼうぼう
)
、以前の秩序は見る影も無くこわされて、
旦那
(
だんな
)
はまた、上方に於いて
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その瞬間に私とソックリの顔が、
頭髪
(
かみのけ
)
と鬚を
蓬々
(
ぼうぼう
)
とさして
凹
(
くぼ
)
んだ
瞳
(
め
)
をギラギラと輝やかしながら眼の前の
暗
(
やみ
)
の中に浮き出した。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
持病にくるしむとみえて、白髪まじりの髪を
蓬々
(
ぼうぼう
)
と
月代
(
さかやき
)
にのばしているが、眼光はむかしのままな化物刑部だ。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
森を出離れて、
蓬々
(
ぼうぼう
)
と雑草の茂った細道を歩いて行くと、
叢
(
くさむら
)
の中から、ムクムクと、又しても血みどろの大犬が姿を現わし、人に驚いたのか、一目散に逃げ去った。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
葉子が耳にかぶさるまで
蓬々
(
ぼうぼう
)
と延びた彼の髪を彼女流に刈り込むようには器用に行かないので、熱い鏝の端が思わず
頸
(
くび
)
に触って、彼女は飛びあがって絶叫したことがあった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
石段が欠けて草
蓬々
(
ぼうぼう
)
じゃ、堂前へ上らっしゃるに気を着けなされよ。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……青白く痩せこけて……
髪毛
(
かみのけ
)
をクシャクシャに掻き乱して……
無精髪
(
ぶしょうがみ
)
を
蓬々
(
ぼうぼう
)
と
生
(
は
)
やして……憂鬱な黒い
瞳
(
め
)
を伏せた……受難のキリストじみた……。
怪夢
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お感じになったからだ。——ただ草
蓬々
(
ぼうぼう
)
の塚をあらためてご供養するだけなら、これはご隠居さまのお名をもってなされなくても、どこかの坊さんに頼めばいいわけだからな
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は分け目もわからぬ
蓬々
(
ぼうぼう
)
した髪を
被
(
かぶ
)
り、顔も手も
赤銅色
(
しゃくどういろ
)
に南洋の日に
焦
(
や
)
け、
開襟
(
かいきん
)
シャツにざぐりとした麻織の
上衣
(
うわぎ
)
をつけ、海の労働者にふさわしい
逞
(
たくま
)
しい大きな体格の持主だが
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
蓬
漢検準1級
部首:⾋
14画
々
3画
“蓬々”で始まる語句
蓬々然
蓬々髪