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粋
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いき
ふりがな文庫
“
粋
(
いき
)” の例文
旧字:
粹
式台の下には、
粋
(
いき
)
な女下駄や、
日和
(
ひより
)
や、駒下駄や草履が、いっぱいに並んでいた。取次について、長い一間廊下を、書院まで通ると
脚
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
浜方
(
はまかた
)
の
魚場
(
いさば
)
気分と、新設された外人居留地という、特種の部落を控えて、築地橋
橋畔
(
きょうはん
)
の両岸は、三味線の響き、
粋
(
いき
)
な
家
(
うち
)
が並んでいた。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
(
手巾
(
ハンケチ
)
が落ちました、)と知らせたそうでありますが、
件
(
くだん
)
の
土器殿
(
かわらけどの
)
も、
餌
(
えさ
)
は
振舞
(
ふるま
)
う気で、
粋
(
いき
)
な後姿を見送っていたものと見えますよ。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
木
(
こ
)
がくれたような風情をもったそのあたりには、金色のスタンドをつけて、幾組かの
粋
(
いき
)
な二人用小卓もしつらえられているのだった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
これは面白い話だが、それほど彼の指揮は
粋
(
いき
)
なものであったそうである。レコードには電気以前のHMVに『交響幻想曲』があった。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
▼ もっと見る
その「美しさ」、いはゆる、彼等の発見した、
粋
(
いき
)
ゆゑに発祥したことで、これについてまた思ひ起すのは伊達の素足といふことだ。
浴衣小感
(新字旧仮名)
/
木村荘八
(著)
と申しますのは、私の婆様は、それはそれは
粋
(
いき
)
なお方で、ついに一度も
縮緬
(
ちりめん
)
の縫紋の御羽織をお離しになったことがございませんでした。
葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
粋
(
いき
)
な浴衣に、ずっこけに帯を結んで、白い顔に眉を寄せて一心に拝んでいるお多喜、凄いほど眼鼻立ちの整った、二十五、六の女である。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
芸人の
家
(
うち
)
に居るのは
粋
(
いき
)
で面白いから
楽
(
たのし
)
みも楽みだし、芸を覚えるにも都合がいゝから、豊志賀の処へ来て手伝いをして居ります。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
夜盗の
綽名
(
あだな
)
とは思ったが、それにしても、あの
粋
(
いき
)
で、いなせで、如何にも明るく、朗かな若者が、そうした者とも思われない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
慈容少しく
粋
(
いき
)
なところがあって気品は足らぬが、ともかく雄大の構図、大抵あっと驚かされて、生きた観音様に出逢った心地。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
離れの小座敷の縁先に二十三四歳ぐらいの色白の
粋
(
いき
)
な男が、しょんぼり立って、人でも待っているらしく庭をながめていた。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
良人の顔からじつと眼を放さずにゐるが、彼女の、
表布
(
おもてぬの
)
をきせぬ
粋
(
いき
)
な
羅紗服
(
スクニャア
)
には灰色の塵のやうに水玉が跳ねかかつてゐる。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「私は戦地に来て、女の肌を知る事が出来ないので、香木の研究を始めてゐるンですがね、なかなか
粋
(
いき
)
なもンでせう……」
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
すなわち
数寄
(
すき
)
を尊ぶ武士のこころもちのもつ美しさである。さらに徳川時代ではどうであろう。徳川町人のもつ美には彼らの
粋
(
いき
)
というものがある。
近代美の研究
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
あの
厳
(
いかめ
)
しい顔に似合わず、(
野暮
(
やぼ
)
を任じていたが、)
粋
(
いき
)
とか渋いとかいう好みにも興味を持っていて相応に
遊蕩
(
ゆうとう
)
もした。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
第二人称は「アナタ」などゝいふよりは寧ろ「オメエ」と呼んだ方が
粋
(
いき
)
であり、どうせ日本語を学ぶ位ひならば標準語は何処でゞも習へるのだから
熱海線私語
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
前に大溝の幅広い
溝板
(
どぶいた
)
が渡っていて、
粋
(
いき
)
でがっしりした
檜
(
ひのき
)
の
柾
(
まさ
)
の
格子戸
(
こうしど
)
の
嵌
(
はま
)
った平家の入口と、それに並んでうすく照りのある土蔵とが並んでいた。
蝙蝠
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
昔の
粋
(
いき
)
な胸かざりをつけ、さらに男性の胸をときめかすような短いスカートをはき、この
界隈
(
かいわい
)
きっての綺麗な足とくるぶしを見せつけたものである。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
「六三郎……
粋
(
いき
)
な名前だな。その六三郎にお
園
(
その
)
が用があると云って
牽引
(
しょぴ
)
いて来てくれ。いや、冗談じゃねえ。御用だ」
半七捕物帳:29 熊の死骸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この犯人は相当に
粋
(
いき
)
好みの茶人だから、私の戻るまで最後の犯行を延ばしてくれやしないかと空頼みしていましたよ。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
五人囃しが小太鼓の代りに印伝の
莨
(
たばこ
)
入れを打つと云った具合で、そのむかしお筆を
繞
(
めぐ
)
り
粋
(
いき
)
を競った通客共の遺品が、一つ一つ人形に添えられてあった。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「恐れ入ります。えへへへへへ。ちと
粋
(
いき
)
すじな向きでござりましてな。殿様も大分御退屈のようでござりまするな」
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
その女は
眉毛
(
まゆげ
)
の細くて濃い、首筋の美くしくできた、どっちかと云えば
粋
(
いき
)
な部類に属する型だったが、どうしても袢天
負
(
おんぶ
)
をするという
柄
(
がら
)
ではなかった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一体私は衣服反物に対して、単に色合が好いとか
柄
(
がら
)
が
粋
(
いき
)
だとかいう以外に、もっと深く鋭い愛着心を持って居た。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
前の千鳥足の酔漢は、小ざっぱりしたもじり
外套
(
がいとう
)
を
羽織
(
はお
)
った
粋
(
いき
)
な
風体
(
ふうてい
)
だが、後から出てきたのは、よれよれの
半纏
(
はんてん
)
をひっかけた
見窶
(
みすぼら
)
しい身なりをしている。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そのほか、
糊
(
のり
)
のついたスカートだの、なるべく格好のいい靴だの……ほら、ぬかるみを飛び越す時に、ちょいと足を出した形の
粋
(
いき
)
に見えるようなやつをな。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「さあ、私の威勢は
這
(
こ
)
んなものですよ。それだのにお前さんは、這んなめそっ子と道行をするんですか。濡れたん坊と裸では、
余
(
あんま
)
り
粋
(
いき
)
じゃあ有りませんぜ」
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
そのとき下役人たちは権八という
粋
(
いき
)
な名前の下僕(彼は二十七八の相撲でも取りそうな
逞
(
たくま
)
しい壮漢であった)
風流化物屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「鉢巻の江戸紫」に「
粋
(
いき
)
なゆかり」を象徴する
助六
(
すけろく
)
は「若い者、間近く寄つてしやつつらを拝み奉れ、やい」
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
柳吉は白い料理着に
高下駄
(
たかげた
)
という
粋
(
いき
)
な恰好で、ときどき
銭函
(
ぜにばこ
)
を
覗
(
のぞ
)
いた。売上額が
増
(
ふ
)
えていると、「いらっしゃァい」剃刀屋のときと違って掛声も勇ましかった。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「六十年の昔には、それも丁度この刻限に、
粋
(
いき
)
な
上衣
(
うわぎ
)
を
裾長
(
すそなが
)
に王鳥
髷
(
まげ
)
した果報者が、三角帽を抱きしめ抱きしめ、やっぱりあの寝間へかよったものだろう。……」
翻訳遅疑の説
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
茶人か遊芸の師匠などの住むには、うってつけともいうべき構えの前へ出で、
厳
(
いか
)
めしくはないむしろ
粋
(
いき
)
な、それでも
冠木門
(
かぶきもん
)
の戸を押して、町娘ははいって行った。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
股引
(
ももひき
)
を
裾
(
すそ
)
から二、三寸はみ出させて、牛肉のすき焼きをたべるのだから残念ながら
粋
(
いき
)
とか
通
(
つう
)
とかという方面からいえば、三
文
(
もん
)
の価値もないのであるが、といって
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
(
粋
(
いき
)
で、上品で、
地位
(
みぶん
)
のある方よ、それで若旦那のことを思ってらっしゃる方って、ぜんたいなんだ)
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
女史が学者であるということを知らないで見れば、それ者と見たかも知れないほど
粋
(
いき
)
な美人でした。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ええ、ぞっと致しますとも」とマリヤ・コンスタンチーノヴナはつづけた、「あなたのお召物の
粋
(
いき
)
で派手な好みを見れば、誰にだってあなたのお身持ちが知れますわ。 ...
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
この婦人は
吾々
(
われわれ
)
のかいたものを役得に持って帰ることを楽みにしていた。いつも
丸髷
(
まるまげ
)
を結っていた此の女は、美しくもなく
粋
(
いき
)
でもなかったが、何彼と吾々の座興を助けた。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
落語家さんにも、だんだん上方は上方で、また東京とは別な
粋
(
いき
)
な人のいることもわかってきた。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
彼は近代娘といふタイプを好まない。それは令嬢であらうと、職業婦人であらうと同様である。そんなら、下町風の
粋
(
いき
)
な女がいいかと言へば、それも必ずしもさうではない。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
燃えるような冒険心を
抱
(
いだ
)
いて江戸の征服を夢み、遠く西海の果てから進出して来た一騎当千の豪傑連ですら、追い追いの
粋
(
いき
)
な風に吹かれては、都の女の
俘虜
(
とりこ
)
となるものも多かった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
播磨守
(
はりまのかみ
)
政岑は、分家とはいえ門地の高い生れだけあって、顔に間の抜けたところがなく、容貌はむしろ立派なほうだが、ツルリとした
粋
(
いき
)
好みの
細面
(
ほそおもて
)
がいかにも芸人
染
(
じ
)
みたふうにみえ
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そこへ大槻が
粋
(
いき
)
な鳥打帽子に、
紬
(
つむぎ
)
の
飛白
(
かすり
)
、
唐縮緬
(
とうちりめん
)
の
兵児帯
(
へこおび
)
を
背後
(
うしろ
)
で結んで、細身の
杖
(
ステッキ
)
を
小脇
(
こわき
)
に
挾
(
はさ
)
んだまま小走りに出て来たが、木戸の掛金を
指
(
さ
)
すと二人肩を並べて、手を取るばかりに
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
だから、小料理屋と言うより、一杯飲み屋の構えだが、小鉢物ぐらいは出すらしい
粋
(
いき
)
な構えで、あいにく今は
西陽
(
にしび
)
がカンカンさしている二階には、お客の招ける座敷もあるようだった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
疎
(
あら
)
い
縞
(
しま
)
お
召
(
めし
)
の
羽織
(
はおり
)
を引っ掛けて、
束髪
(
そくはつ
)
に巻いていたが、
玄人
(
くろうと
)
染みた
粋
(
いき
)
な女だった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
世界の都を代表する顔で無く幾分
田舎
(
ゐなか
)
らしい顔で、目附は勿論一体の表情が
何処
(
どこ
)
となく
真面目
(
まじめ
)
と
怜悧
(
れいり
)
とを示して居る。
巴里
(
パリイ
)
の女の様な
粋
(
いき
)
な美には乏しいが愛と智慧とには富んで居
相
(
さう
)
である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
彼女は今一人の女よりはずつと若く且つ美人で、
態度
(
ものごし
)
や
容姿
(
ようす
)
が
粋
(
いき
)
であつた。面長で、鼻がつんと高く、頬がつや/\して居た。けれども年増の女に比べると優し味が少い様にその時私に思はれた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
と夜具を
奪
(
と
)
りにかかる
女房
(
にょうぼう
)
は、
身幹
(
せい
)
の少し高過ぎると、眼の
廻
(
まわ
)
りの
薄黒
(
うすぐろ
)
く顔の色一体に
冴
(
さ
)
えぬとは難なれど、
面長
(
おもなが
)
にて
眼鼻立
(
めはなだち
)
あしからず、
粧
(
つく
)
り立てなば
粋
(
いき
)
に見ゆべき三十前のまんざらでなき女なり。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
仏蘭西がへりの若紳士の軽く着けたる
粋
(
いき
)
な背広のにほひする。
春の暗示
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
舶来風の
粋
(
いき
)
だといふ
春と修羅 第二集
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
“粋(
いき
)”の解説
いきとは、江戸時代に生じ、時代に従って変転した美意識(美的観念)で、遊興の場での心意気、身なりや振る舞いが洗練されていること、女性の色っぽさなどを表す語。
「いき」は、単純美への志向であり、「庶民の生活」から生まれてきた美意識である。また、「いき」は親しみやすく明快で、意味は拡大されているが、現在の日常生活でも広く使われる言葉である。
反対語は「野暮(やぼ)」または「無粋」である。
(出典:Wikipedia)
粋
常用漢字
中学
部首:⽶
10画
“粋”を含む語句
精粋
生粋
不粋
純粋
小粋
醇粋
無粋
粋人
粋客
国粋主義
正粋
粋事
粋狂
抜粋
文粋
粋筋
粋言
粋様
醇粋味
粋者
...