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まゆね
ふりがな文庫
“
眉根
(
まゆね
)” の例文
立派な紳士でさえ「
沙汰
(
さた
)
のかぎりだ」という言葉で
眉根
(
まゆね
)
をひそめただけで、彼女に対する一切を取片附けてしまったのが多かった。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
すると、その時まで
眉根
(
まゆね
)
をよせるようにしてかれの顔を見つめていた大河が、急に、真赤な歯ぐきを見せ、にっと笑った。そして
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
持ち前で
眉根
(
まゆね
)
をしかめていた。漠然と横目を流した掴みどころのない表情で、
癇
(
かん
)
の立った馬の背に乗ってぐるぐる
廻
(
まわ
)
っていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
テナルディエは右手を額の所まで上げて
目庇
(
まびさし
)
を作り、それから目をまたたきながら
眉根
(
まゆね
)
を寄せたが、それは口を軽くとがらしたのとともに
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
見つめらるる人は、
座客
(
ざかく
)
のなめなるを厭ひてか、
暫
(
しば
)
し
眉根
(
まゆね
)
に
皺
(
しわ
)
寄せたりしが、とばかり思ひかへししにや、
僅
(
わずか
)
に
笑
(
えみ
)
を帯びて、一座を
見度
(
みわた
)
しぬ。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
剛造の太き
眉根
(
まゆね
)
ビクリ動きしが、
温茶
(
ぬるちや
)
と共に
疳癪
(
かんしやく
)
の虫グツと
呑
(
の
)
み込みつ「ぢやア、松島を亭主にすることが
忌
(
いや
)
だと云ふのか」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
老紳士の顔は、すこし弾んで
棗
(
なつめ
)
の実のような色になった。青年は相変らず、
眉根
(
まゆね
)
一つ動かさず、孤独でかしこまっていた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それを見ると、金椎の
眉根
(
まゆね
)
が不安の色に曇り、思わず窓の外から海の方を見ますと、真の闇ながら、空模様が尋常でない。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
君は
眉根
(
まゆね
)
の所に電光のように起こる
痙攣
(
けいれん
)
を小うるさく思いながら、むずかしい顔をしてさっさとにぎやかな往来を突きぬけて
漁師町
(
りょうしまち
)
のほうへ急ぐ。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
綱雄はむずかしき顔も
崩
(
くず
)
さず、
眉根
(
まゆね
)
を打ち寄せて黙然たり。見るにこなたも燃え立つ心、いいわ、打っちゃっておけ!
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
夫人は片手に
鞭
(
むち
)
を持って、こころもち気むずかしそうに
眉根
(
まゆね
)
を寄せながら、練習している人々の足元を
睨
(
にら
)
んで
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
繰返して言ふが、僕はさうした青年の野心を、尊敬はしないが(とそこで小幡氏は、何やら遠いむかしの悔恨とでもいつたものの影に、ふと
眉根
(
まゆね
)
を曇らせて)
灰色の眼の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
ヘヒトは
眉根
(
まゆね
)
一つ動かさなかった。あたかもクリストフがそこにいないかのように、泰然と言いつづけた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
をぢさんは、いつもは子供にむだ口なんかきいてくれるいい人ですが、けふは、何かほかのことで腹を立ててゐたと見えて、太い
眉根
(
まゆね
)
をぴくぴくと動かしながら
かぶと虫
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
それは、両手を胸に組み、深い
雛
(
しわ
)
を
眉根
(
まゆね
)
に寄せて、顔には何やら、悩ましげな表情を漂わせていた。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
病気
休暇
(
きゅうか
)
でかえっていた父に、ふたたび乗船命令が出たとき、大吉がまっさきにいきおいづいて、並木たちとさわぎたてると、母は
眉根
(
まゆね
)
をよせて、おさえた声でいった。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
蒼
(
あお
)
い顔に
眉根
(
まゆね
)
を寄せて、今にもべそをかきそうなようす。いったいどうしたということだろう。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
留
(
と
)
まると、
折屈
(
おりかが
)
みのある毛だらけの、
彼
(
か
)
の恐るべき
脚
(
あし
)
は、
一
(
ひと
)
ツ
一
(
ひと
)
ツ
蠢
(
うごめ
)
き始めて、
睫毛
(
まつげ
)
を数へるが如くにするので、
予
(
かね
)
て優しい姉の手に育てられて、
然
(
そ
)
う
為
(
し
)
た事のない
眉根
(
まゆね
)
を寄せた。
蠅を憎む記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「はあ。どうかその疼くだけでも留ったらとそう思うんだけどね……自分も苦しいだろうが、どうも見ていて
傍
(
はた
)
がたまらないのさ」とお光は美しい
眉根
(
まゆね
)
を寄せてしみじみ言ったが
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
十歳
(
とを
)
ばかりの
頃
(
ころ
)
までは
相應
(
さうおう
)
に
惡戯
(
いたづら
)
もつよく、
女
(
をんな
)
にしてはと
亡
(
な
)
き
母親
(
はゝおや
)
に
眉根
(
まゆね
)
を
寄
(
よ
)
せさして、ほころびの
小言
(
こごと
)
も十
分
(
ぶん
)
に
聞
(
き
)
きし
物
(
もの
)
なり、
今
(
いま
)
の
母
(
はゝ
)
は
父親
(
てゝおや
)
が
上役
(
うわやく
)
なりし
人
(
ひと
)
の
隱
(
かく
)
し
妻
(
づま
)
とやらお
妾
(
めかけ
)
とやら
ゆく雲
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「
私
(
わし
)
あ甘うて……。」と、可愛らしい顔を
赧
(
あか
)
くして、甥が
眉根
(
まゆね
)
を
顰
(
しか
)
めた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「やうやく、
眉根
(
まゆね
)
を開きましたね。」リヴァズ氏が云つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
(ちょっと
眉根
(
まゆね
)
を寄せる)あらいやだ。
桐
(
きり
)
のがらだわ。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
もっとも彼の
眉根
(
まゆね
)
には薄く八の字が描かれていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
冬木刑事が
眉根
(
まゆね
)
に
皺
(
しわ
)
をぐっと寄せた。
五階の窓:03 合作の三
(新字新仮名)
/
森下雨村
(著)
今は
憂鬱
(
ゆううつ
)
に
眉根
(
まゆね
)
を寄せて苦い薬を飲まされたような、
頸
(
くび
)
を
縊
(
し
)
められた人のような、神秘な表情をしているのですが、私は彼女のこの寝顔が大へん好きでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
美妙な曲線を長く描いてのどかに開いた
眉根
(
まゆね
)
は痛ましく
眉間
(
みけん
)
に集まって、急にやせたかと思うほど細った鼻筋は恐ろしく感傷的な痛々しさをその顔に与えた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
津下君は色の
蒼白
(
あをじろ
)
い
細面
(
ほそおもて
)
の青年で、いつも
眉根
(
まゆね
)
に
皺
(
しわ
)
を寄せてゐた。私は君の一家の否運が Kain のしるしのやうに、君の相貌の上に
見
(
あら
)
はれてゐたかと思ふ。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
眉根
(
まゆね
)
をひそめ、
唇
(
くちびる
)
をきっと結び、不快な表情をして、彼を押しのけた。彼は言いつづけた。彼女はもってた仕事を下に投げ捨て、
扉
(
とびら
)
を開いて、出て行こうとした。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
次郎は
真暗
(
まっくら
)
な中で思わず
眉根
(
まゆね
)
をよせ、五体をちぢめた。温い夜具をとおして、何か冷やりとするものが、彼の心臓のあたりに落ちて来たような感じだったのである。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
おじさんは、いつもは子どもにむだ口なんかきいてくれるいい人ですが、きょうは、何かほかのことで
腹
(
はら
)
を立てていたとみえて、太い
眉根
(
まゆね
)
をぴくぴくと動かしながら
小さい太郎の悲しみ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
それにあのたあ様は
眉根
(
まゆね
)
一つ動かさずにむしろその男につりこまれたかのように聞いておられた。
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「風邪?——」と阿賀妻は
咎
(
とが
)
めるように云った。
眉根
(
まゆね
)
をしかめてしげしげと松岡を見つめていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
一言の叫びをも言葉をも発する者はなく、皆一様に身を
竦
(
すく
)
めながら
眉根
(
まゆね
)
を寄せていた。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
米友は、いよいよ不審の
眉根
(
まゆね
)
を寄せながら、ついにその結び文を解いて見ました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
十歳
(
とを
)
ばかりの頃までは相応に
悪戯
(
いたづら
)
もつよく、女にしてはと
亡
(
な
)
き母親に
眉根
(
まゆね
)
を寄せさして、ほころびの小言も十分に聞きし物なり、今の母は
父親
(
てておや
)
が上役なりし人の隠し妻とやらお
妾
(
めかけ
)
とやら
ゆく雲
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
お増は
眉根
(
まゆね
)
を顰めた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼女は完全にクリストフを認めた。買い手たちと話しながら、その頭越しに、
眉根
(
まゆね
)
をよせて自分の賛美者を観察していた。彼女は法王のように威儀堂々としていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
と、沢崎はいよいよ顔を曇らせて、
眉根
(
まゆね
)
に深い
皺
(
しわ
)
を寄せた。未亡人はもう追究するのを
止
(
や
)
め
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
田川は、それまで、
眉根
(
まゆね
)
をよせ、小首をかしげて、いやに深刻そうに
畳
(
たたみ
)
の一点を見つめていたが、だしぬけに自分の名をよばれて、飯島とはちがった意味で、あわてたらしかった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
少し
眉根
(
まゆね
)
を寄せながら、手紙に読みふける木村の表情には、時々苦痛や疑惑やの色が
往
(
い
)
ったり来たりした。読み終わってからほっとしたため息とともに木村は手紙を葉子に渡して
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼自ら自分を昔罪ありし者とほほえみながら言っていただけに、彼は少しも
苛酷
(
かこく
)
なことがなかった、そしていかめしい道学者のごとく
眉根
(
まゆね
)
を寄せることもせずに一つの教理を公言していた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
初夏の
清々
(
すがすが
)
しい日光と風とを入れ、その膝のところに、ようやく
這
(
は
)
うばかりになった男の子を遊ばせて、自分はその子の
単衣
(
ひとえ
)
を縫っている若い女房は、ちょっと
眉根
(
まゆね
)
を
顰
(
ひそ
)
めて男の方を見やりました。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
てなば
力車
(
ちからぐるま
)
に
牛
(
うし
)
の
汗
(
あせ
)
何
(
なん
)
の
積
(
つ
)
み
載
(
の
)
せきれるものかは
言
(
い
)
はぬが
花
(
はな
)
ぞお
前
(
まへ
)
さまは
盛
(
さか
)
りの
身
(
み
)
春
(
はる
)
めき
給
(
たま
)
ふは
今
(
いま
)
の
間
(
ま
)
なるべし
薦
(
こも
)
かぶりながら
見送
(
みおく
)
らんと
詞
(
ことば
)
叮嚀
(
ていねい
)
に
氣込
(
きごみ
)
あらく
齒
(
は
)
の
根
(
ね
)
きり/\と
喰
(
く
)
ひしばりて
釣
(
つ
)
り
上
(
あ
)
ぐる
眉根
(
まゆね
)
おそろしく
散髮
(
さんぱつ
)
斜
(
なゝ
)
めに
拂
(
はら
)
ひあげて
白
(
しろ
)
き
面
(
おもて
)
に
紅
(
くれなゐ
)
の
色
(
いろ
)
さしも
優
(
やさ
)
しき
常
(
つね
)
には
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
始終人から
距
(
へだ
)
てをおかれつけた内田を喜ばしたので、葉子が来ると内田は、何か心のこだわった時でもきげんを直して、
窄
(
せま
)
った
眉根
(
まゆね
)
を少しは開きながら、「また
子猿
(
こざる
)
が来たな」といって
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
俊亮は、一瞬、眼をつぶって
眉根
(
まゆね
)
をよせたが、すぐわざとらしく笑い出して
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
神経を押えつけて手を震わせまいとした。
眉根
(
まゆね
)
を寄せて堅くなった。汗は両の
頬
(
ほお
)
に流れた。一言も口をきかなかった。しかしときどき、
癇癪
(
かんしゃく
)
を起こして飛び上がった。それからまた打ち始めた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
男と対談する間にも時々夢のような瞳を上げて、天井を仰いだり、
眉根
(
まゆね
)
を寄せて群衆を見下ろしたり、真っ白な歯並みを見せて
微笑
(
ほほえ
)
んだり、その度毎に全く別趣の表情が、溢れんばかりに
湛
(
たた
)
えられる。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
竜之助に言われて、山崎は
眉根
(
まゆね
)
を寄せ、眼を光らかして
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ふだんは、美しくひらいた
眉根
(
まゆね
)
が、引きつるように、よっていた。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
“眉根”の意味
《名詞》
眉根(まゆね、まよね)
眉の根元。また、眉。
(出典:Wiktionary)
眉
常用漢字
中学
部首:⽬
9画
根
常用漢字
小3
部首:⽊
10画
“眉根”で始まる語句
眉根鼻付