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猫背
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ねこぜ
ふりがな文庫
“
猫背
(
ねこぜ
)” の例文
と声があって、その衝立のうしろから現われた
異様
(
いよう
)
な人物。長い中国服を着、その上に白い実験衣をフワリと着ている
猫背
(
ねこぜ
)
の男だった。
見えざる敵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そう云って、いつも
炬燵
(
こたつ
)
を前に、書物をのせた見台を左の
傍
(
かたわら
)
に、そして、背中へは真綿を入れているとみえ、
猫背
(
ねこぜ
)
になって見えるのである。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
突然声をかけたのは首席教官の
粟野
(
あわの
)
さんである。粟野さんは五十を越しているであろう。色の黒い、
近眼鏡
(
きんがんきょう
)
をかけた、
幾分
(
いくぶん
)
か
猫背
(
ねこぜ
)
の
紳士
(
しんし
)
である。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
みっともないほどのアバタ
面
(
づら
)
で、アラビア人みたいに髪の毛が縮れて、
猫背
(
ねこぜ
)
で、がに
股
(
また
)
で、
肩章
(
けんしょう
)
のない軍服を着て、胸のボタンをはずしている。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
「しかも曲っていらあ」「少し
猫背
(
ねこぜ
)
だね。猫背の鼻は、ちと
奇抜
(
きばつ
)
過ぎる」と面白そうに笑う。「
夫
(
おっと
)
を
剋
(
こく
)
する顔だ」と主人はなお
口惜
(
くや
)
しそうである。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
片手に太いステッキを持ち、
他
(
ほか
)
の手でパイプを
握
(
にぎ
)
ったまま、少し
猫背
(
ねこぜ
)
になって生墻の上へ気づかわしそうな視線を注ぎながら私の方へ近づいて来た。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そこには
庚申塚
(
こうしんづか
)
が立っていた。
禿
(
はげ
)
頭の父親が
猫背
(
ねこぜ
)
になって歩いて行くのと、茶色の帽子に
白縞
(
しろじま
)
の
袴
(
はかま
)
をつけた清三の姿とは、長い間野の道に見えていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
すると老人は、
猫背
(
ねこぜ
)
になって、顔をぐっと私の方へ近寄せ、膝の上で細長い指を合図でもする様に、ヘラヘラと動かしながら、低い低い
囁
(
ささや
)
き声になって
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
猫背
(
ねこぜ
)
な三味線の師匠は、
小春日和
(
こはるびより
)
の日を背中にうけた、ほっこりした気分で、耳の穴を、
観世縒
(
かんぜより
)
でいじりながら、猫のようにブルブルと軽く
身顫
(
みぶる
)
いをした。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
身の
丈
(
たけ
)
は六フィート半もあるだろう。肩が習慣的に
猫背
(
ねこぜ
)
になっているのは、そんなにめっぽうに背が高いために必然の結果としてそうなったものらしく思われる。
ペスト王:寓意を含める物語
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
少し背中を
猫背
(
ねこぜ
)
に曲げて、時々仰向いたり、軽くからだを前後に動かしたりしているのがいかにも自由な心持ちでそして
三昧
(
ざんまい
)
にはいっているようなふうに見えた。
二十四年前
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ツァラアは少し
猫背
(
ねこぜ
)
に見える。
脊
(
せい
)
は低いがしっかりした身体である。声も低く目立たない。しかし、こういう表面絶えず受身形に見える人物は流れの底を知っている。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
貧相な
猫背
(
ねこぜ
)
だった。
額部
(
ひたい
)
が抜け上がって、ほそい眼がしじゅう笑っていた。晩年はそれに、大きな
眼鏡
(
めがね
)
をかけていた。鼻に特徴があって、横にねじれたような鼻であった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「本當ですとも、小作りで、——暗くて解らなかつたが
猫背
(
ねこぜ
)
の男でしたよ。何うも不思議だ」
銭形平次捕物控:020 朱塗りの筐
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
駒をとどめて
猫背
(
ねこぜ
)
になり、川底までも射透さんと
稲妻
(
いなずま
)
の
如
(
ごと
)
く
眼
(
め
)
を光らせて川の面を
凝視
(
ぎょうし
)
したが、
潺湲
(
せんかん
)
たる清流は
夕陽
(
ゆうひ
)
を受けて照りかがやき、瞬時も休むことなく動き騒ぎ躍り
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
何かごわ/\した
裲襠
(
うちかけ
)
めいた物を
纏
(
まと
)
って、
猫背
(
ねこぜ
)
の肩をかゞめて、引きずった裾が寝ている人に触らぬように、そして、衣ずれの音を少しでも殺すように、両手で
褄
(
つま
)
を取っていた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼はルイザと同じく小柄で、
痩
(
や
)
せて、ひ弱で、少し
猫背
(
ねこぜ
)
だった。年齢はよくわからなかった。四十歳を越してるはずはなかったが、見たところでは五十歳かその上にも思われた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
焼山
(
やけやま
)
について
休
(
やす
)
んだ
処
(
ところ
)
で、
渋茶
(
しぶちや
)
を
汲
(
く
)
むのはさだめし
皺
(
しわ
)
くたの……
然
(
さ
)
ういへば、
来
(
く
)
る
道
(
みち
)
の
阪
(
さか
)
一つ、
流
(
ながれ
)
を
近
(
ちか
)
く、
崖
(
がけ
)
ぶちの
捨石
(
すていし
)
に、
竹杖
(
たけづゑ
)
を、ひよろ/\と、
猫背
(
ねこぜ
)
へ
抽
(
ぬ
)
いて、
齢
(
よはひ
)
、八十にも
余
(
あま
)
んなむ
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
尻
(
しり
)
ッ
端折
(
ぱしょ
)
りの
尾骶骨
(
かめのお
)
のあたりまで、
高々
(
たかだか
)
と
汚泥
(
はね
)
を
揚
(
あ
)
げた
市松
(
いちまつ
)
の、
猫背
(
ねこぜ
)
の
背中
(
せなか
)
へ、
雨
(
あめ
)
は
容赦
(
ようしゃ
)
なく
降
(
ふ
)
りかかって、いつの
間
(
ま
)
にか
人
(
ひと
)
だかりのした
辺
(
あたり
)
の
有様
(
ありさま
)
に、
徳太郎
(
とくたろう
)
は
思
(
おも
)
わず
亀
(
かめ
)
の
子
(
こ
)
のように
首
(
くび
)
をすくめた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
すこし
猫背
(
ねこぜ
)
でせいの高い
『春と修羅』
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
最後に僕の知つてゐる頃には年とつた
猫背
(
ねこぜ
)
の測量技師だつた。「
大溝
(
おほどぶ
)
」は
今日
(
こんにち
)
の
本所
(
ほんじよ
)
にはない。叔父も
亦
(
また
)
大正の
末年
(
ばつねん
)
に
食道癌
(
しよくだうがん
)
を病んで死んでしまつた。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
がんらい、家康という人、心のうちの
喜怒哀楽
(
きどあいらく
)
を色にださない
質
(
たち
)
である。いつも、むッつりと
武者
(
むしゃ
)
ずわりをして、少し
猫背
(
ねこぜ
)
になりながら、
寡言多聞
(
かげんたぶん
)
を心がけている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「色は白いけれど変なのよ、
猫背
(
ねこぜ
)
なのよ、桜津っていうので、うちの女中なんか殿様だの
御前
(
ごぜん
)
だのってほど、華族の若様ぜんとしているのよ。桜津
三位中将
(
さんみちゅうじょう
)
って
渾名
(
あだな
)
なの。」
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼はルイザと
同
(
おな
)
じように
小柄
(
こがら
)
で、
痩
(
や
)
せていて、
貧弱
(
ひんじゃく
)
で、少し
猫背
(
ねこぜ
)
だった。
年
(
とし
)
のほどはよくわからなかった。四十をこしている
筈
(
はず
)
はなかったが、見たところでは五十
以上
(
いじょう
)
に思われた。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
生徒はまた
亮
(
りょう
)
に「たつのおとし子」というあだ名をつけていると自分で話していた。これは彼の顔つきややせてひょろ長く、
猫背
(
ねこぜ
)
を丸くしている格好などから名づけたものであろう。
亮の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私は
猫背
(
ねこぜ
)
になって、のろのろ歩いた。霧が深い。ほんのちかくの山が、ぼんやり黒く見えるだけだ。南アルプス連峰も、富士山も、何も見えない。朝露で、下駄がびしょぬれである。
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
嫂
(
あによめ
)
は席に着いた初から寒いといって、
猫背
(
ねこぜ
)
の人のように、心持胸から上を前の方に
屈
(
こご
)
めて坐っていた。彼女のこの姿勢のうちには女らしいという以外に何の非難も加えようがなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
馬は
一条
(
ひとすじ
)
の枯草を奥歯にひっ掛けたまま、
猫背
(
ねこぜ
)
の老いた
馭者
(
ぎょしゃ
)
の姿を捜している。
蠅
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
猫背
(
ねこぜ
)
で、
獅子鼻
(
ししばな
)
で、
反歯
(
そっぱ
)
で、色が浅黒くッて、
頬髯
(
ほおひげ
)
が
煩
(
うる
)
さそうに顔の半面を
蔽
(
おお
)
って、ちょっと見ると恐ろしい
容貌
(
ようぼう
)
、若い女などは昼間
出逢
(
であ
)
っても気味悪く思うほどだが、それにも似合わず
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
デニー博士は、
頬髭
(
ほほひげ
)
顎髭
(
あこひげ
)
の中から、疲れた色を見せていた。長身
猫背
(
ねこぜ
)
を丸くし、右手ににぎったステッキで歩行をたすけている。これが、かの有名な火星探険協会長のデニー博士の姿である。
火星探険
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
少々
猫背
(
ねこぜ
)
の、老紳士でしたが、横顔にどこか見覚えがある様な気がしたので、立止って、じっと見ていますと、紳士は事務所の入口で、靴を拭きながら、ヒョイと、僕の方を振り向いたのです。
目羅博士の不思議な犯罪
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「でも、
猫背
(
ねこぜ
)
とわかつて居るんだから、これはわけもなく見付かるぜ」
銭形平次捕物控:020 朱塗りの筐
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
決して
猫背
(
ねこぜ
)
ではないのであるが、肉づきがよいので
堆
(
うずたか
)
く盛り上っている幸子の肩から背の、
濡
(
ぬ
)
れた
肌
(
はだ
)
の表面へ秋晴れの明りがさしている色つやは、三十を過ぎた人のようでもなく張りきって見える。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
外の光になれた私の眼には家の中は暗くて何も見えなかったが、その明るい縁さきには、
猫背
(
ねこぜ
)
のおばあさんが、古びたちゃんちゃんを着てすわっていた。
日光小品
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
シラーの家はいっそう質素と言うよりはむしろ貧しいくらいでした。ゲーテの家には制服を着けた立派な番人が数人いましたが、シラーのほうには
猫背
(
ねこぜ
)
の女がただ一人番していました。
先生への通信
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
向うから来た
釜形
(
かまがた
)
の
尖
(
とが
)
った帽子を
被
(
か
)
ずいて古ぼけた
外套
(
がいとう
)
を
猫背
(
ねこぜ
)
に着た
爺
(
じい
)
さんがそこへ歩みを
佇
(
とど
)
めて演説者を見る。演説者はぴたりと演説をやめてつかつかとこの
村夫子
(
そんぷうし
)
のたたずめる前に出て来る。
カーライル博物館
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし彼はどう云う
訣
(
わけ
)
か、誰よりも特に粟野さんの前に、——あの
金縁
(
きんぶち
)
の近眼鏡をかけた、
幾分
(
いくぶん
)
か
猫背
(
ねこぜ
)
の老紳士の前に彼自身の威厳を保ちたいのである。……
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“猫背”の解説
猫背(ねこぜ、Kyphosis)は、人間の背中が丸まって内側へ反り、頭部が前方に出た姿勢になる現象。
脊椎後彎症のうち脊柱の胸椎がなだらかである円背を指す。
。猫の背中のように丸くなることから猫背という。
(出典:Wikipedia)
猫
常用漢字
中学
部首:⽝
11画
背
常用漢字
小6
部首:⾁
9画
“猫”で始まる語句
猫
猫撫声
猫撫
猫板
猫柳
猫又
猫児
猫楊
猫婆
猫属