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日和
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ひより
ふりがな文庫
“
日和
(
ひより
)” の例文
何処からか飼い
鶯
(
うぐいす
)
の声も聞えてくると言った
長閑
(
のどか
)
さ、八五郎の哲学を空耳に聴いて、うつらうつらとやるには、申分の無い
日和
(
ひより
)
です。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
次の日はあまり涼しくもなく、あまり暖かくもなく、よい
日和
(
ひより
)
であった。そよ吹く風もやわらかで、自然はほほえむようにもみえた。
世界怪談名作集:17 幽霊の移転
(新字新仮名)
/
フランシス・リチャード・ストックトン
(著)
式台の下には、
粋
(
いき
)
な女下駄や、
日和
(
ひより
)
や、駒下駄や草履が、いっぱいに並んでいた。取次について、長い一間廊下を、書院まで通ると
脚
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いや、尼
処
(
どころ
)
か、このくらい悟り得ない事はない。「お
日和
(
ひより
)
で、坊さんはお友だちでよかったけれど、番傘はお茶を引きましたわ。」
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おしお やがてもう暮れるというに、
姉妹
(
きょうだい
)
の方々は何をしてござるのやら……。このごろの
日和
(
ひより
)
くせで、又降って来たようじゃが……。
平家蟹
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
旅するものに取ってはこの上もない好い
日和
(
ひより
)
だった。汽車が国府津の方へ進むにつれて、
温暖
(
あたたか
)
い、
心地
(
こころもち
)
の好い日光が室内に
溢
(
あふ
)
れた。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そういう
赫
(
かがや
)
かしい
日和
(
ひより
)
を何か心臓がどきどきするほど美しく感じながら、かわいそうなお前の起きてくるのを心待ちに待っていた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「は、は、は、故実まで研究しての上の御執心ではかなわぬ、いずれそのうち海路の
日和
(
ひより
)
というものもござろう、気永く待つことじゃ」
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
老夫人と差向いの時に「お
日和
(
ひより
)
がこう続いては麦の
肥料
(
こえ
)
が利くまいのう」とか、「悪い時に風が出たなあ。
非道
(
ひど
)
うならにゃ
宜
(
え
)
えが」
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
可吟の句はそれほどはっきりした場合ではないが、桶の尻を干す
日和
(
ひより
)
である以上、日の照っている栗の花であることはいうまでもない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
甚「ヘエ傘の無いのでびしょ
濡
(
ぬれ
)
になりました、
何
(
ど
)
うも悪い
日和
(
ひより
)
で、日和癖で時々だしぬけに降出して困ります…エヽお
母様
(
っかさん
)
御機嫌よう」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
道みちの町や村でも、
日和
(
ひより
)
のつごうさえよければ、ちょっとした
興行
(
こうぎょう
)
をやって、いくらかでも
収入
(
しゅうにゅう
)
をかき集めて、出発するようにした。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
非常に寒くはあつたが、その日は晴れて
穩
(
おだ
)
やかな
日和
(
ひより
)
だつた。長い朝の間ずつと書齋に坐つたきりじつとしてゐるのに私は飽きた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
船の通いの
間遠
(
まどお
)
にして年々続き、風待ち
日和
(
ひより
)
待ちの長かった日本海側の
湊場
(
みなとば
)
などで、こういう女性の利用せられたことはいうまでもない。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
呼て只今
番頭樣
(
ばんとうさま
)
より今日は
殊
(
こと
)
によき
日和
(
ひより
)
ゆゑ
出帆
(
しゆつぱん
)
すべしとの事なり我等も
左樣
(
さやう
)
に存ずれば
急
(
いそ
)
ぎ
出帆
(
しゆつぱん
)
の用意有べしといふ
水差
(
みづさし
)
是を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
次の日曜がまた幸いな暖かい
日和
(
ひより
)
をすべての
勤
(
つと
)
め
人
(
にん
)
に恵んだので、敬太郎は朝早くから須永を尋ねて、郊外に
誘
(
いざ
)
なおうとした。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
風一つない穏やかな
日和
(
ひより
)
が続き、クラン・マッキンタイア号は静か過ぎる位いしずかな航海を持ってケエプ・タウンへ入港したのだとも言う。
沈黙の水平線
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
小春
(
こはる
)
の
日和
(
ひより
)
をよろこび法華経寺へお参りした人たちが柳橋を目あてに、右手に近く見える村の方へと帰って行くのであろう。
葛飾土産
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「いや、さぞかし面白いお話が伺えることでしょう。そういえば、今日は何だか昔を思い出す様な
日和
(
ひより
)
ではありませんか」
二癈人
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
好
(
よ
)
い
日和
(
ひより
)
の
折
(
おり
)
などには
私
(
わたくし
)
はよく二三の
腰元
(
こしもと
)
どもに
傅
(
かしずか
)
れて、
長谷
(
はせ
)
の
大仏
(
だいぶつ
)
、
江
(
え
)
の
島
(
しま
)
の
弁天
(
べんてん
)
などにお
詣
(
まい
)
りしたものでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
風花
(
かざばな
)
の空に
顕
(
た
)
ちて、
日和
(
ひより
)
うららよとの。遠山は霜月祭、
新野
(
にひの
)
にては
睦月
(
むつき
)
、
西浦
(
にしうれ
)
は
田楽
(
でんがく
)
、
北設楽
(
きたしだら
)
は花祭とよの。さてもめでたや、雪祭のとりどり。
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
歯のすり減った下駄のようになった
日和
(
ひより
)
を履いて、手の
脂
(
やに
)
でべと/\に汚れた扇を持って、彼はひょろ高い屈った身体してテク/\と歩いて行った。
子をつれて
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
よく晴れた麗しい
日和
(
ひより
)
で、空気のなかには何か細かいものが無数に
和
(
なご
)
みあっているようだった。中央公民館へ来ると、会場は既に聴衆で一杯だった。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
ときには、晴れた、気持のよい
日和
(
ひより
)
もあった。海洋は浅みどりに輝き、浪もおだやかで、方船の動揺も
殆
(
ほとん
)
どなかった。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
あのような
日和
(
ひより
)
でございましたので、さすがに、繁華街にある、『でぱあと』の中も、人はまばらでございました。
両面競牡丹
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
どこを見ても白チョークでも塗ったような静かな道を、私は
莨
(
たばこ
)
をふかしながら、かなり歯の低くなった
日和
(
ひより
)
下駄をはいて、彼と並んでこつこつ歩いた。
蒼白い月
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
日和
(
ひより
)
を見さだめて、俵の切りほどきにかかったが、そのうちに芽をふいている籾が一俵あった。日頃は落着いている船頭の左太夫が、それを見るなり
藤九郎の島
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
秋の
日和
(
ひより
)
と豊かな果樹園とに寄ってくる
蠅
(
はえ
)
の群れしか君は見ていない。勤勉な
蜜蜂
(
みつばち
)
の巣、働きの都、
研鑚
(
けんさん
)
の熱、それを君は眼に留めたことがないんだ。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
風恬
(
かぜしづか
)
に草
香
(
かを
)
りて、唯居るは惜き
日和
(
ひより
)
に
奇痒
(
こそばゆ
)
く、貫一は又出でて、塩釜の西南十町ばかりの山中なる塩の湯と云ふに遊びぬ。
還
(
かへ
)
れば
寂
(
さびし
)
く夕暮るる頃なり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
この句の咏嘆しているものは、時間の遠い
彼岸
(
ひがん
)
における、心の故郷に対する追懐であり、春の
長閑
(
のどか
)
な
日和
(
ひより
)
の中で、夢見心地に聴く
子守唄
(
こもりうた
)
の思い出である。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
日曜日は近頃に無い天下晴れ、風も穏かで
塵
(
ちり
)
も
起
(
た
)
たず、暦を
繰
(
くっ
)
て見れば、旧暦で
菊月初旬
(
きくづきはじめ
)
という十一月二日の事ゆえ、
物観遊山
(
ものみゆさん
)
には
持
(
もっ
)
て来いと云う
日和
(
ひより
)
。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「
烏
(
からす
)
の啼かない
日和
(
ひより
)
はあっても、先生の口から小言の出ない日和、まずもってあるものじゃアございませんな」
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
子供の時、春の
日和
(
ひより
)
に立っていて体が浮いて空中を飛ぶようで、
際限
(
はて
)
しも無いあくがれが胸に充ちた事がある。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
圭一郎は丁寧にお
叩頭
(
じぎ
)
して座を退り齒のすり減つた
日和
(
ひより
)
をつつかけると、もう一度お叩頭をしようと振り返つたが、
衝立
(
ついたて
)
に隱れて主人の顏は見えなかつた。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
うららかな
日和
(
ひより
)
で、霊屋のそばは桜の盛りである。向陽院の周囲には幕を引き廻わして、歩卒が警護している。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
これから真っ直ぐに
築土
(
つくど
)
八
幡
(
まん
)
へ廻って、何か口実を作って、琴二郎に会ってみようか——それとも、もうすこし
日和
(
ひより
)
を見ようか——坊主頭を
頭巾
(
ずきん
)
に包んで
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そういう
間
(
ま
)
の悪い
日和
(
ひより
)
に
出逢
(
でく
)
わして、初日から半月位の景気はまるで一時の事、後はお話にもならないような不景気となって、これが七月八月と続きました。
幕末維新懐古談:64 大仏の末路のあわれなはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
芭蕉が奥の細道で『あつき日を海に入れたり最上川』と詠んだのはこの酒田の
日和
(
ひより
)
山といふところであつた。
最上川
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
由三はうるさゝうに謂ツて、
外
(
そと
)
を見る。
青
(
あを
)
い空、輝く
日光
(
にツくわう
)
……其の明い、静な
日和
(
ひより
)
を見ると、由三は何がなし其の身が幽囚でもされてゐるやうな感じがした。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
上総
(
かずさ
)
は春が早い。人の見る所にも見ない所にも梅は盛りである。菜の花も咲きかけ、麦の青みも
繁
(
しげ
)
りかけてきた、この頃の天気続き、毎日
長閑
(
のどか
)
な
日和
(
ひより
)
である。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
かわいい
下駄
(
げた
)
が入っている。下駄は朱ぬりの中歯の
日和
(
ひより
)
だった。それに若葉色の鼻緒がすがり、同じ緑のつま皮に赤い折鶴が一羽、あざやかに浮き出ていた。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
待てば海路の
日和
(
ひより
)
、そのうちには小生の方へも、お鉢が回ってくるに違いないと、下の狐はしばしがほど、辛抱に辛抱を重ねて、上の狐が青年共の隙を狙って
わが童心
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
ところが待てば海路の
日和
(
ひより
)
とでもいうべきか、鯉坂君が腕を揮うべき犯罪が実際に行われたのであります。
新案探偵法
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それで股引
尻
(
しり
)
ッ
端折
(
ぱしょり
)
に
日和
(
ひより
)
下駄、古帽子や手拭の
頬冠
(
ほほかむ
)
り、太巻毛繻子の洋傘を杖にして、農閑の三、四月から続々上京、五人六人連れ立って都大路を練り歩く。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
ほんとうに、のびのびとした、いい
日和
(
ひより
)
がつづきましたので、お
城
(
しろ
)
の
門番
(
もんばん
)
は、
退屈
(
たいくつ
)
してしまいました。
お姫さまと乞食の女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
明くる日は雪晴れのうらうらした
日和
(
ひより
)
であった。その日一日じゅう、小平太はどこをどう歩いていたのか、人も知らず、おそらく自分でも分らなかったに相違ない。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
呼止められて、
日和
(
ひより
)
下駄の音をとめたおみつが、女らしい不安を浮べて居るのを見て、三田は不※口ごもつた。何處へつれて行つて話をしたらいゝか迷つたのである。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「まあとにかくこれじゃあしようがない、当分のあいだ
日和
(
ひより
)
を見るんですね、いかに成敗を度外にするからといって、このありさまでは指一本動かせやしませんから」
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
美しく澄み渡った暖かい晴朗な
日和
(
ひより
)
であった。それは八月の末のことであった。長老との会見は昼の
弥撒
(
ミサ
)
のすぐあと、だいたい十一時半ごろということに決まっていた。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「ホ、ホ、これはお仕事の邪魔をしはせなんだかの? あまり
日和
(
ひより
)
のよいままに、ついお訪ねをいたしたが、お
忙
(
せわ
)
しくば又の日を楽しみに、このままおいとま致そうかな」
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
“日和”の意味
《名詞:漢語》
日光のうららかなこと。
《名詞:和語の漢字表記》
ひより。
(出典:Wiktionary)
日
常用漢字
小1
部首:⽇
4画
和
常用漢字
小3
部首:⼝
8画
“日和”で始まる語句
日和下駄
日和見
日和山
日和癖
日和佐
日和田
日和洋傘
日和見的