)” の例文
米国の黒人は兎脳を生で食えば脳力を強くしまたそれをしてれば歯痛まずに生えると信ず(一八九三年版『老兎巫蠱篇オールド・ラビット・ゼ・ヴーズー』二〇七頁)
「どこへ行くのです」と云うと、「じきそこの柔術の先生の所へ行くのだよ。例のはいずれそのうち」と云ってり抜けて行った。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
引寄せられし宮はほとほとたふれんとして椅子に支へられたるを、唯継は鼻もるばかりにその顔を差覗さしのぞきて余念も無く見入りつつ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
白樺の木どもは、これから起って来る、珍らしい出来事を見ようと思うらしく、互にり寄って、くびを長くして、声を立てずに見ている。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
余が立つて居る岬角をつて、また下手對岸の蒼黒い巖壁にぶつかると、全川の水は捩ぢ曲げられた樣に左に折れて、また滔々と流して行く。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
「ようございますよ。ようございますよ。」かう云ひながら、女はセルギウスの側をり抜けるやうにして中に這入つた。
そうして土山つちやまから出た人物のうちでは、千両函せんりょうばこえてはりつけになったのが一番大きいのだと云う一口話をやはり友達から聞いた通り繰り返した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(マッチを探す。ようようマッチの箱を見出し、マッチを一本取りてる。また戸を叩く音す。うるさがる様子にて。)
ドルフはリイケの傍へり寄つて、臂をリイケの腋に廻した。「なに、己は好い人でも悪い人でも無い。只お前を心から可哀く思つてゐる丈さ。」
製法せいはうは自然の扁平石へんへいせきの小さきものをり、又は石を打ちり减らして斯かる形と爲し、其上に燧石抔ひうちいしなぞの尖りたる角にて切り目を付けしものならん
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
孝「ちいさい時分に別れましたから、事に寄ったら往来でれ違った事もございましょうが、逢った事はございません」
それもスコッチの毛のれてなくなった鳶色とびいろの古背広、上にはおったインバネスも羊羹色ようかんいろに黄ばんで、右の手には犬の頭のすぐ取れる安ステッキをつき
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
其一番後から降りやうとする子供を芳公は力まかせに突き落したのです。子供は其の為めに足を挫き、彼方此方りむいてひどい目に遇つたと云ふのです。
白痴の母 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
第二には、最近まで貧しい平民であった翁の前に、皇子や大臣が「娘を我にたべと伏し拝み手をり」て頼む。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
わたしは彼に、君はそんなにはげしい開墾の仕事をしているから厚い長靴と丈夫な着物が入り用になり、しかもそれはじきにひどくなりれてしまう。
一部は橋のたもとから突出たいわさまたげられてこゝにふちたたえ、余の水は其まゝ押流して、余が立って居る岬角こうかくって、また下手対岸の蒼黒い巌壁がんぺきにぶつかると
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
己は木の下に歩み寄つた。一箇処繩でられて、木の皮が溝のやうに窪んでゐた。そして木の根にはちぎれた繩が落ちてゐた。樵夫はそれを拾つてふくろに入れた。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
貴女あなたは小説はお嫌ひですか?』と、信吾は少し突然だしぬけに問うた。其の時はモウ肩もれ/\に並んでゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
が、咄嗟とっさな場合、二人は下帯を脱して、櫂を両方のふなべりしばり付けた。が、半町と漕がないうちに、弱い木綿は、櫂と舷との強い摩擦のためにり切れてしまった。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
何かいやな臭いのする路地を通って、台所口へ回り、外さなければ開かないような建付の悪いガラス戸を開けると、朝野のらしいり切れた下駄がそこにあった。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
私のすねへひやりととまったり、両脚を挙げて腋の下をくようなねをしたり手をりあわせたり、かと思うと弱よわしく飛び立っては絡み合ったりするのである。
冬の蠅 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
勇は打ち損ねて、自分の独楽は地面じべたって空廻りをする、今度は勇が先に廻さなければなりません。
百合の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
馬は耳へ水を入れられると死ぬ、お前は折を狙って『東雲しののめ』の耳に水を入れ、馬のお上手でない相沢様を落馬させて、御墨付の文箱をり替えるつもりだったろう。
ひとりごちし時、総身そうしんを心ありげに震いぬ。かくて温まりし掌もて心地よげに顔をりたり。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
梶棒と梶棒とをれ/\にして、何か知ら符牒ふてふで暫く話し合つてゐる中に、忽ち纏りが付いて、千代松と竹丸とは向うから來た車に乘せられ、若い男と女とは此方こつちの車に乘つて
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
幸いに杖があったものですからその杖で踏みこたえた訳ですがさて進むことが出来ない。後に引き返そうとしますと大分向うへれ落ちて居るのでどうも後に帰ることが出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
庵室の中で、しきりと、さっきから燧打石ひうちいしっていたべつな僧が、舌打ちして
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
車のゆきかふこと隙間なく見ゆるに、その餘せる地にはうれしげなる面持したる人肩るほどに集へり。歩まむとする人は、車と車との隙を行くより外すべなし。音樂の聲は四面より聞ゆ。
だから、早く云って見れば、文学と接触してれ摩れになって来るけれども、それが始めは文学に入らないで、先ず社会主義に入って来た。つまり文学趣味に激成されて社会主義になったのだ。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
笠ヶ岳の長い尾根が高くつらなっているのと向い合って、右俣谷の上を截ち切るように、高くぐっているのは、槍ヶ岳から穂高岳、岳川岳へとかけた岩石の大屏風で、両方とも肩をれにして
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
さう言つて学生に別れた岩村男は、控室に帰つて角々かど/\り切れたいつも紙挟ポートフオリオを小脇にはさむだと思ふと、直ぐ表通りへ飛び出した。そして物の二十分と経たぬに会堂わきの牛飯屋の店先に立つてゐた。
母なる人の友、菊枝、上手より来りてこの母子おやこれちがひ
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
その家へ往くには、あなた余程深くり込むのです。
母たち (新字旧仮名) / 神西清(著)
なきがらをいさごるか。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
下駄を脱ぎすてて台所にあがったお豊さんは、壁に吊ってある竿の手拭いで手をふいている。そのそばへご新造がり寄った。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さうして土山つちやまから人物じんぶつうちでは、千兩凾せんりやうばこへてはりつけになつたのが一番いちばんおほきいのだと一口話ひとくちばなし矢張やは友達ともだちからいたとほかへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その路に処々大木の皮摩損するものあり。土地の掘れたる処あり。これ土あるいは木脂を身にけて堅くするなり。
「と申しても、どこに隠されたやら、誰がり替えたやら、掻暮かいくれ見当も付きません。平次様、お助け下さいまし、ほかに頼るところもない親子、主従の難儀でございます」
石をり截るには木の小枝抔せうしなどを採り、其の一端へかたすなを付けて之を握り墨をる時の如くに手を前後ぜんごうごかし、一面より摩り初めて凹みのふかさ石の厚さのなかばに達したるころ
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
お文と源太郎とは、人込みの中を抜けて、つまを取つて行く紅白粉べにおしろいの濃い女や、萌黄もえぎの風呂敷に箱らしい四角なものを包んだのを掲げた女やにれ違ひながら、千日前せんにちまへの方へ曲つた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
体を安楽椅子に深くせて、そこにあるロシア煙草を一本取つてマツチをつた。
時子 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
まるで幽霊のようにすうッと身体を前に進ませていたが、幽霊と違うのは、り切れて草履ぞうりのような下駄から発せられるところの、シャッシャッという一種快適なリズミカルな音であった。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
のみならず、波はすでに組織された物体を一定の形にととのえるよりは、むしろその形をりへらすものではないかとわたしは思う。それらは乾かしておくといつまでもそのままの形をたもつ。
誠におだやかな海上でありましたが、ふけるに従って浪はます/\はげしく、ざぶり/\と舟の中に汐水が入りますのみか、最早小縁こべりれ/\になりまして、今にもくつがえりそうな有様でございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
れあへる肩のひまより
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
もし抽斎がわたくしのコンタンポランであったなら、二人のそで横町よこちょう溝板どぶいたの上でれ合ったはずである。ここにこの人とわたくしとの間になじみが生ずる。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
動くたびに舌のれ合う音でもあろう微かな声が出る。微かではあるが只一つの声ではない、ようやく鼓膜に響く位の静かな音のうちに——無数の音が交っている。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
以上の骨器角器牙器は燧石の角にて疵付きづつくる事と、砥石の類にくる事とに由りてつくり上げしならん。圖中にゑがきたる石器骨器角噐牙噐は皆理科大學人類學教室の藏品なり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
り寄ると
ゆうべの昌平橋は雑沓ざっとうする。内神田の咽喉いんこうやくしている、ここの狭隘きょうあいに、おりおり捲き起される冷たいほこりを浴びて、影のような群集ぐんじゅせわしげにれ違っている。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)