掻卷かいまき)” の例文
新字:掻巻
「うんにや、手前が好い心持になつてもぐり込んだといふ、紅裏べにうらの娘の掻卷かいまきと、その床が見て置きたかつたんだよ、後學の爲に」
ときに、一筋ひとすぢでもうごいたら、の、まくら蒲團ふとん掻卷かいまき朱鷺色ときいろにもまがつぼみともつたかほをんなは、芳香はうかうはなつて、乳房ちぶさからしべかせて、爛漫らんまんとしてくだらうとおもはれた。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一日いちにちとこいてふせつてこと一度いちど二度にどでは御座ござりませぬ、わたし泣虫なきむし御座ございますから、その強情がうじやう割合わりあひ腑甲斐ふがひないほど掻卷かいまきえりくひついてきました、唯々たゞ/\口惜くやなみだなので
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちりばめ言語ごんごぜつせし結構けつこうの座敷にてまづ唐紙からかみは金銀のはく張付はりつけにて中央には雲間縁うんげんべりの二でふだいまうけ其上に紺純子こんどんすの布團を二ツかさかたはらに同じ夜具が一ツ唐紗羅紗たうざらさ掻卷かいまきひとツありでふの左右には朱塗しゆぬり燭臺しよくだい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お粂は掻卷かいまきを抱くやうに、枕に顏を埋めるのでした。首筋が伸びて、びんからたぼへの、線の美しさ。え際が青くて、桃色の耳朶みゝたぼ、これはまことに非凡の可愛らしさです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
其奴そいつが、がさ/\と寢臺ねだいしたはひつて、ゆかうへをずる/\と引摺ひきずつたとると、をんな掻卷かいまきからうでしろいて、わたしはうへぐたりとげた。寢亂ねみだれてちゝえる。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さて其黄昏そのたそがれは、すこかぜ心持こゝろもちわたしねつ惡寒さむけがしたから掻卷かいまきにくるまつて、轉寢うたゝねうちこゝろかれる小説せうせつ搜索さうさくをされまいため、貸本かしほんかくしてあるくだん押入おしいれ附着くツついてた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「お富の言ふことには、——親分を泊めて上げ度いは山々だが、追ひ出され嫁の賣り喰ひ嫁の空つ尻嫁では、布團も枕も掻卷かいまきもない、——とさめ/″\と泣くぢやありませんか」
それ片手かたてかくしたけれども、あしのあたりをふるはすと、あゝ、とつて兩方りやうはうくうつかむとすそげて、弓形ゆみなりらして、掻卷かいまきて、ころがるやうにふすまけた。……
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
紅い掻卷かいまきの裏が、妙に惱ましく眼について、八五郎も暫くはモジモジして居りましたが、半刻はんときばかり後には、恐ろしい睡氣ねむけと、初夏の薄寒さにこらへ兼ねて、お染に言はれた通り
……朝餉あさげますと、立處たちどころとこ取直とりなほして、勿體もつたいない小春こはるのお天氣てんきに、みづ二階にかいまでかゞやかす日當ひあたりのまぶしさに、硝子戸がらすど障子しやうじをしめて、長々なが/\掻卷かいまきした、これ安湯治客やすたうぢきやく得意とくいところ
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もゝすそは、母親の手で僅かに隱されましたが、床を敷いて掻卷かいまきを引つ掛けて休んでゐるところをやられたらしく、斑々はん/\たる上半身を起して見ると、首から顏へかけて、突き傷が三四ヶ所
「それには俺も首をひねつたが、生爪なまづめが痛んでるのを見て解つたよ。あれは、お前が飛出した後へそつと入つた六兵衞が、掻卷かいまきへ包んだまゝ、目を廻した子供を佛壇の下の抽斗ひきだしの奧へ入れたんだ」
星樣ほしさまひとえないほど、掻卷かいまき引被ひつかぶつて、眞暗まつくらつてつたんです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
花色絹の裏もせて、掻卷かいまきの友禪も淺ましくなつて居りますが、それを着て居るお縫の丹精らしく、つくろひも行屆き、折目も正しく、血潮の汚れはあるにしても、取亂した樣子は少しもありません。
寢床ねどこうへすわつたひざ掻卷かいまきけてる。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)