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拗
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す
ふりがな文庫
“
拗
(
す
)” の例文
少女は——少女もやっと宣教師の笑い出した理由に気のついたのであろう、今は多少
拗
(
す
)
ねたようにわざと足などをぶらつかせている。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と
先例
(
しきたり
)
のごとく言い放ちて光代は
拗
(
す
)
ね返りぬ。善平はさらに関せざるもののごとく、二言めには炭山がと、心はほとんど身に添わず。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
私
(
わたし
)
は
襟
(
ゑり
)
を
被
(
かぶ
)
つて
耳
(
みゝ
)
を
塞
(
ふさ
)
いだ!
誰
(
だれ
)
が
無事
(
ぶじ
)
だ、と
知
(
し
)
らせて
来
(
き
)
ても、
最
(
も
)
う
聞
(
き
)
くまい、と
拗
(
す
)
ねたやうに……
勿論
(
もちろん
)
、
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
つては
来
(
き
)
ません。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
拗
(
す
)
ねて、どうすかしても、
叱
(
しか
)
つても
逢
(
あ
)
はうとしませんので、
女官
(
じよかん
)
は
面目
(
めんぼく
)
なさそうに
宮中
(
きゆうちゆう
)
に
立
(
た
)
ち
歸
(
かへ
)
つてそのことを
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げました。
竹取物語
(旧字旧仮名)
/
和田万吉
(著)
椿岳の生活の理想は俗世間に
凱歌
(
がいか
)
を挙げて
豪奢
(
ごうしゃ
)
に
傲
(
おご
)
る
乎
(
か
)
、でなければ俗世間に
拗
(
す
)
ねて
愚弄
(
ぐろう
)
する乎、二つの路のドッチかより外なかった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
そして、まこと、まごころ、こういうものは彼が生れや、生い立ちによる
拗
(
す
)
ねた心からその呼名さえ耳にすることに反感を持って来た。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
妙に、
拗
(
す
)
ねたり、
鬱
(
ふさ
)
いだりしていた自分が、急に、間がわるくなって、からりと、
陽
(
ひ
)
なたへ出たような幸福感で、体が熱くなった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから後お祖父さんは、「蔵へ入れるよ。」といはれると、どんなに
拗
(
す
)
ねてゐても、すぐしやんとするやうになつたことを
憶
(
おぼ
)
えてゐる。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
「
先刻
(
さっき
)
何だか
拗
(
す
)
ねて泣いてたら、それっきり寝ちまったんだよ。何ぼなんでも、もう五時だから、好い加減に起してやらなくっちゃ……」
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
隠しても隠しきれない
拗
(
す
)
ねた気質は、日記から読みとった作者の、どこか打解けにくいところのある、寂しい諦めと、
我執
(
がしゅう
)
を見
逃
(
のが
)
されない。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
大向のない、世を
拗
(
す
)
ねた、しわがれ声で「あら推量!」をよくうたった市馬を思う。牡丹餅の市馬といわれた先々代は三遊亭だったと聞く。
随筆 寄席囃子
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
鬼頭も、しかたがなしに、道ばたの、彼女の隣へ腰をおろしてゐる、その方へわざと背中を向けて、彼女は、
拗
(
す
)
ねるやうに肩をゆすぶつた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
真そこから泣き、笑い、怒り、怨み、
拗
(
す
)
ね、甘ったれ、しなだれかかり、
威
(
おど
)
し、すかし、あやなす事が出来るのであります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ちょいと
拗
(
す
)
ねたり、お小使いがなくてすこしばかり
憂鬱
(
ゆううつ
)
になることはあっても、こんにちかぎり僕は君とわかれる、とか
職業婦人気質
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
俺
(
おれ
)
はこんな男に対して、どんな手段を取るだろう、俺が
蜀
(
しょく
)
の都へ
往
(
ゆ
)
くのは、
拗
(
す
)
ねて往くのではない、苦しいから逃げて往くのだ、
何
(
いず
)
れにしても
倩娘
(新字新仮名)
/
陳玄祐
(著)
「パドミーニ、パドミーニはいるんじゃないの、そこに。駄目よ、黙って、
拗
(
す
)
ねていたって、ちゃんと分るんだから……」
一週一夜物語
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「鳥よく木を
択
(
えら
)
ぶ。木
豈
(
あ
)
に鳥を択ばんや。」などと至って気位は高いが、決して世を
拗
(
す
)
ねたのではなく、あくまで用いられんことを求めている。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「おい島ちゃん、そんなに
拗
(
す
)
ねんでもいいじゃないか」作が部屋の前を通りかかったとき、
薄暗
(
うすくらが
)
りのなかにお島の姿を見つけて、言寄って来た。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
最初のうちは「そんなら行きたくはないわ」と
拗
(
す
)
ねておいでだったが、午後になると、急に機嫌を直して、明さんを誘って一緒に出かけていった。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
私は人心の頼みがたくして人生の寒冷なることを経験したるにもかかわらず、それは私をして白眼世に
拗
(
す
)
ねるがごとき孤独に向かわしめなかった。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
彼には順一の心理がどうも
把
(
つか
)
めないのであった。「
拗
(
す
)
ねてやるといいのよ。わたしなんか泣いたりして困らしてやる」
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
彼はわざと
拗
(
す
)
ねたのであろう、きょうの華やかな宴の莚に
浄衣
(
じょうえ
)
めいた白の
直衣
(
のうし
)
を着て、同じく白い
奴袴
(
ぬばかま
)
をはいていた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ひとりこうしてわれと我が身を
拗
(
す
)
ねて、他の者からそうでもない冷遇を受けているとひがんでいる娘のところへ、忘れずにしげしげと見舞に来たり
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
なかは幾つかの縁談に首を振り、江戸へ出てくらしたいとか、生涯ひとの嫁にはならないとか、売れ残りの姉がいるから世間が狭い、などと
拗
(
す
)
ねていた。
榎物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこで彼は
轅
(
かじ
)
を引張ったり、鞭でひっ
叩
(
ぱた
)
いたりして一生懸命に馬を出そうとするけれど、
拗
(
す
)
ねた動物は却って膝を折りまげて、どたりと横っ倒しになった。
乞食
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
こんな人間の口の惡さは、頭の良さと、世に
拗
(
す
)
ねた
自棄
(
やけ
)
の反響で、決して附き合ひ
難
(
にく
)
い人間とは思はれません。
銭形平次捕物控:225 女護の島異変
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
じゃんけんをしたり、
拗
(
す
)
ねたり、怒ったり、泣いたり、笑ったりする声がはっきりと手にとるようにきこえた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
『そんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つたつて
仕方
(
しかた
)
がない』と
拗
(
す
)
ねた
調子
(
てうし
)
で
五點
(
フアイブ
)
が
云
(
い
)
ひました。『
七點
(
セヴン
)
が
私
(
わたし
)
の
肘
(
ひぢ
)
を
衝
(
つ
)
いたんだもの』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
それは
女々
(
めめ
)
しき病弱な
拗
(
す
)
ねた心から出る
不具者
(
かたわもの
)
の懐疑を駆逐するであろうが、雄々しき剛健な直き心の悩む健全な懐疑とは親しげに握手するのではなかろうか。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
寡言
(
ことばすくな
)
にして何事も内気なる浪子を、意地わるき
拗
(
す
)
ね者とのみ思い誤りし夫人は、姉に比してやや
侠
(
きゃん
)
なる
妹
(
いもと
)
のおのが気質に似たるを喜び、一は姉へのあてつけに
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
ここの山々の特徴は、山々の起伏の線の、へんに
虚
(
むな
)
しい、なだらかさに在る。小島烏水といふ人の日本山水論にも、「山の
拗
(
す
)
ね者は多く、此土に仙遊するが如し。」
富嶽百景
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
また橋を二つも渡つて、川沿ひの赤い軒燈の出た宿屋に入つた時、
稍
(
やゝ
)
拗
(
す
)
ねてゐた竹丸の機嫌も直つた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
どうせ私は大した友達ではないでござんしょうよとばかりに
拗
(
す
)
ねて、
頓
(
とみ
)
には口もきいてくれなかった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「そればかりぢやない。鼻がまだ直り切らんのでせう。一寸見ると
拗
(
す
)
ねて居るやうぢやが、五年も六年も拗ね通されるものぢやない。身體に故障があるからでさあ。」
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
拗
(
す
)
ねたやうにちゞこまつて、円くなつてゐる姿勢が、昼間と少しも変つてゐないし、食べ物もフンシもそつくりそのまゝ並んでゐるので、又がつかりして明りを消す。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
多分
一頻
(
ひとしき
)
り噂のあつた岩野清子女史との結婚問題を気にして、それで一寸
拗
(
す
)
ね出したものらしい。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「
貞
(
さあ
)
ちゃんといったらお返事をなさいな。なんの事です
拗
(
す
)
ねたまねをして。台所に行ってあとのすすぎ返しでもしておいで、勉強もしないでぼんやりしていると毒ですよ」
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
はらはらしている伸子の注目の前で、佃は腕組みをし、ますます不活溌な
拗
(
す
)
ねた風で答えた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
公判の劈頭に書類を能く読んでいないからと
拗
(
す
)
ねて答弁を渋った支倉は、こゝに於て
恰
(
あたか
)
も堤の切れた洪水の如く、滔々数千言、記憶が薄らいだどころか、微に入り細を
穿
(
うが
)
ち
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「お峰さんか。まあ、お逢いになれば解りますが、こいつが又たなかなかの
拗
(
す
)
ね
者
(
もの
)
なんです」
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そしてつまらない事に
拗
(
す
)
ねて、気持の悪い思ひをする事が、どんなに馬鹿々々しいかと云ふ事も知りながら、それでどうしても素直でない自分が
忌々
(
いまいま
)
しくて仕方がないのです。
書簡 大杉栄宛:(一九一六年五月二七日)
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
さて怒が生じたところで、それをあらわに発動させずに、口小言を言って
拗
(
す
)
ねている。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「呉羽之介どの、片里どのの言葉ご用心なされ——学は古今に渡り、識百世を
貫
(
つら
)
ぬく底の
丈夫
(
ますらお
)
なれど何を
拗
(
す
)
ねてか
兎角
(
とかく
)
行
(
おこない
)
も乱れ勝ちな人ゆえ、この人の言うことなぞ信用はなりませぬぞ」
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
菊がねだったのやら、そちが
拗
(
す
)
ねたのやら知らぬが、別れともない、別れて行くはいやじゃ、なら御一緒にと憎い
口説
(
くぜつ
)
のあとで、手に手をとりながら参ったであろうが喃。ウフフ、あはは。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
女の方が思うように自分に対して和らかに
靡
(
なび
)
いて来ぬのが飽き足らなくって、こっちでも
拗
(
す
)
ねた風になって、怠儀そうにして歩いてるお宮を後にしてさっさっと
兜橋
(
かぶとばし
)
の方に小急ぎに歩いた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
それでも
既
(
も
)
う今夜はあの娘も
斷念
(
あきら
)
めたと見えて、それを話し出した時には
流石
(
さすが
)
に泣いてゐたけれども、平常のやうに父親の惡口も言はず
拗
(
す
)
ねもせずあの通りに元氣よくして見せて呉れるので
姉妹
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
何一つ調和してるものはない。この古ぼけた世の中はすっかりゆがんでいる。僕はすべてに反対する。一つとしてまっすぐに動いてるものはない。世界は
拗
(
す
)
ねている。ちょうど子供と同じだ。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
疑は人間にありとか、月の世界にくらべては、下界はただ卑しく汚い所ではありますが、又、それなりの風情もあれば楽しみもあります。恋のやみじに惑いもすれば、いとしい人に
拗
(
す
)
ねてもみる。
紫大納言
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
皆
(
みんな
)
は
呆気
(
あつけ
)
にとられて、この小さな
拗
(
す
)
ね者の後姿を見送るだけだつた。
父の帰宅
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
道子さんは
拗
(
す
)
ねたものゝ、好奇心が動いている。直ぐに開けて見て
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
拗
漢検1級
部首:⼿
8画
“拗”を含む語句
執拗
拗切
拗者
拗曲
悪執拗
蝋質撓拗性
拗音
拗身
拗捩
蝋質撓拗症
爪拗音
拗過
拗言
一拗
拗折
引拗
執拗無殘
執拗度
固拗