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手燭
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てしょく
ふりがな文庫
“
手燭
(
てしょく
)” の例文
手を取って引上げぬばかり、後ではさすがにはしたないと気が付いたか、女房のお静が持って来た
手燭
(
てしょく
)
の灯の中に苦笑しております。
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
手燭
(
てしょく
)
も
提灯
(
ちょうちん
)
もなくして平気で歩いて行けるから、座敷さえ教え込んでしまえば、
抛
(
ほう
)
り出して置いて手数のかからないこと無類です。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
されども
渠
(
かれ
)
は聞かざる真似して、手早く
鎖
(
じょう
)
を外さんとなしける時、
手燭
(
てしょく
)
片手に
駈出
(
かけい
)
でて、むずと帯際を
引捉
(
ひっとら
)
え、
掴戻
(
つかみもど
)
せる老人あり。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
満腹の友情にあふれる笑い口から誘われて、ぬっと
手燭
(
てしょく
)
の光野へ踏みこんできた人影を見ると……つんつるてんのぼろ一枚に一升徳利。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
おしのは持っていた釵を投げだして、中廊下へ出てゆき、納戸から
手燭
(
てしょく
)
を取って来ると、それに火をつけて、女中部屋へはいっていった。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
屏風
(
びょうぶ
)
何
双
(
そう
)
、
手燭
(
てしょく
)
何
挺
(
ちょう
)
、燭台何挺、
火鉢
(
ひばち
)
何個、
煙草盆
(
たばこぼん
)
何個、
草履
(
ぞうり
)
何足、幕何張、それに供の衆何十人前の
膳飯
(
ぜんぱん
)
の用意をも忘れてはならない。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
従来は
附木
(
つけぎ
)
だけはあったが「
早
(
はや
)
」なる形容詞を
冠
(
かぶ
)
せて通用させようとしても通用しなかった。「ランプ」を
行燈
(
あんどん
)
とも
手燭
(
てしょく
)
とも
翻訳
(
ほんやく
)
しない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
そう言って、風間老看守は、
手燭
(
てしょく
)
の
蝋燭
(
ろうそく
)
に火をつけようとするのだが、手がふるえて火が消えるので、何度も何度もマッチをすりつづけた。
灯台鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
手燭
(
てしょく
)
を畳の上に置きながら、そう言って、何か重いものを次郎の背中の近くにほうり出した。そして、そのまま下に降りて行ってしまった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
と、
手燭
(
てしょく
)
をかざして、寺の庭を、奥ふかくまで導きながら、羽柴家の人々は、
交〻
(
こもごも
)
にいい訳をのべて、客に謝するのであった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蝋燭
(
ろうそく
)
にホヤをはめた
燭台
(
しょくだい
)
や
手燭
(
てしょく
)
もあったが、これは明るさが不充分なばかりでなく、何となく一時の間に合せの燈火だというような気がする。
石油ランプ
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
夜半滝のような大雨の屋根を打つ音にふと目を
覚
(
さま
)
すとどこやら家の内に
雨漏
(
あまもり
)
の
滴
(
したた
)
り落るような
響
(
ひびき
)
を聞き寝就かれぬまま起きて
手燭
(
てしょく
)
に火を点じた。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
文治はそれと心付きまして、
手燭
(
てしょく
)
を持って台所の戸を明けますと、表は
霙
(
みぞれ
)
まじりに
降
(
ふり
)
しきる寒風に手燭は消えて
真黒闇
(
まっくらやみ
)
。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
和尚は
手槍
(
てやり
)
を小脇にかい込んで、忍び足に本堂の方へ行く。後には
比丘尼
(
びくに
)
の
梵妻
(
ぼんさい
)
が
手燭
(
てしょく
)
を
袖
(
そで
)
におおいながらついている。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
闇に
四隣寂寥
(
しりんせきりょう
)
として
手燭
(
てしょく
)
の弱い
燈
(
ひ
)
に照らされた木立の影が長く地に
印
(
いん
)
せられて時々桐の葉の落ちる音がサラサラとするばかり、別に何物も見えない。
暗夜の白髪
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
むかしはここに立つ人おのおの
手燭
(
てしょく
)
持つ習いなりしが、いま廊下、階段にガス燈用いることとなりて、それはやみぬ。
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
廊下に
灯
(
とも
)
す
金行灯
(
かなあんどん
)
=
二尺
(
にしゃく
)
四方もある
鉄網
(
てつあみ
)
作りの行灯を何十台も作り、その
外
(
ほか
)
提灯
(
ちょうちん
)
、
手燭
(
てしょく
)
、ボンボリ、
蝋燭
(
ろうそく
)
等に至るまで一切
取揃
(
とりそろ
)
えて船に
積込
(
つみこ
)
んだその趣向は
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
父は枕もとの
手燭
(
てしょく
)
をとぼして、縁側へ出ました。母も床の上に起き直って様子をうかがっているようです。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あとで女房は、
手燭
(
てしょく
)
をともして、玄関に出て見ると、小判は無かった。理由のわからぬ
戦慄
(
せんりつ
)
を感じて
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そしてそれをかかえて、
手燭
(
てしょく
)
を吹き消しながら
部屋
(
へや
)
を出ようとすると、廊下に
叔母
(
おば
)
が突っ立っていた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
仕方なしに、おあいは
手燭
(
てしょく
)
を
点
(
とも
)
して、夫が目をさまさないように、そっと玄関から前庭へと出た。
蛾
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
その
中
(
うち
)
に七人は直ぐに自分の傍まで近付いて来たが、その持っている
手燭
(
てしょく
)
の光りで
四方
(
あたり
)
を見ると、ここは又大きい広い、そうして今の廊下よりもずっと見事な
室
(
へや
)
である。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
念のために、名人は、軸のうえ、天井、左右のぬり壁、軸の下、残るくまなく
手燭
(
てしょく
)
をさしつけて見しらべました。しかし、軸の外には血らしいものの
飛沫
(
ひまつ
)
一滴見えないのです。
右門捕物帖:37 血の降るへや
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
祖父は
階下
(
した
)
におりて
金函
(
かねばこ
)
の前にすわったが、手が
顫
(
ふる
)
えて
手燭
(
てしょく
)
へなかなか火がつかなかった。
旧聞日本橋:20 西川小りん
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
手燭
(
てしょく
)
をつけて一匹ずつ焼くなんて面倒な事は出来ないから、
釣手
(
つりて
)
をはずして、長く
畳
(
たた
)
んでおいて部屋の中で
横竪
(
よこたて
)
十文字に
振
(
ふる
)
ったら、
環
(
かん
)
が飛んで手の
甲
(
こう
)
をいやというほど
撲
(
ぶ
)
った。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何時
(
いつ
)
かこの二日三日前、
周防様
(
すおうさま
)
と二人で、
子
(
ね
)
の
刻
(
こく
)
過ぎ、お廊下を
見廻
(
みまわ
)
っておりますと、怪しい人影が御寝所の
唐戸
(
からど
)
を開けて、出てまいりましたから、
手燭
(
てしょく
)
をさしつけましたところ
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
(
手燭
(
てしょく
)
をともし、庭におり、戸をあけて外を透かして見る)あら(叫ぶ。外に一度飛んで出る。それからまた内にはいる)左衛門殿。早く来てください。来てください。(外に飛び出る)
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
それでも気丈な女だけに、
手燭
(
てしょく
)
を上げて、おずおず相手の顔を見遣りながら
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
引き出しからマドレーヌ氏の室の
鍵
(
かぎ
)
を取り出し、毎晩マドレーヌ氏が自分の室に上がってゆく時に使っていた
手燭
(
てしょく
)
を取り上げて、それから、マドレーヌ氏がいつも取ってゆく
釘
(
くぎ
)
に鍵をかけ
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「藤、
手燭
(
てしょく
)
をもっとつきつけてみい! フウム……ちかごろやといいれた飯たきじゃな! 女! 何が故にわしの食事へ毒を盛ろうとした? だれにたのまれてそちは毒を盛ろうとしたのじゃ?」
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
と、幸子が土間を
覗
(
のぞ
)
き込んだ時、お春がうしろから
手燭
(
てしょく
)
をさしかけた。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
Z君に言われて、横に長い
須弥壇
(
しゅみだん
)
の前の金具をなるほどおもしろいと思った。仏前に一つずつ置いてある
手燭
(
てしょく
)
のような格好の木塊に画かれた画もおもしろかった。色の白い地蔵様もいい作だと思った。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
彼は枕許の
手燭
(
てしょく
)
に火をつけて、
小用
(
こよう
)
に起き上った。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
さあきた、
手燭
(
てしょく
)
がお
床
(
とこ
)
へおまえをてらしにきた。
まざあ・ぐうす
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
といいながら
花鋏
(
はなばさみ
)
と
手燭
(
てしょく
)
をもっておりてきた。
小品四つ
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
手燭
(
てしょく
)
して善き蒲団出す夜寒かな
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
私は
手燭
(
てしょく
)
もつけずに、大急ぎで戸を開けてやりました。すると、庭にしょんぼり立って居るのは、矢張りお新で、私の顔を見ると
銭形平次捕物控:241 人違い殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
すっかり暗くなった頃、俊亮が
手燭
(
てしょく
)
をともして二階に上って来た。彼はしばらく立ったまま次郎の様子を見ていたが
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
むかしはここに立つ人おのおの
手燭
(
てしょく
)
持つ習なりしが、いま廊下、階段に
瓦斯燈
(
ガスとう
)
用ゐることとなりて、それは
罷
(
や
)
みぬ。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
主膳が九尺柄の槍を取って、かの暗澹たる鎧櫃の間へ走り込んだのを、お絹は引留めようともせずに、手早く
手燭
(
てしょく
)
を
点
(
とも
)
して、その跡を追いかけました。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
宰八が
手燭
(
てしょく
)
に送られて、広縁を折曲って、
遥
(
はる
)
かに廻廊を通った僧は、雨戸の並木を越えたようで、
故郷
(
ふるさと
)
には蚊帳を釣って、一人寂しく友が待つ
思
(
おもい
)
がある。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蛾次郎
(
がじろう
)
がおどおどしながら、
細工場
(
さいくば
)
のとなりの雨戸をあけて、ひろい土間へはいると、
手燭
(
てしょく
)
をもって奥からつかつかとでてきたのは、主人の
卜斎
(
ぼくさい
)
であろう。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
外の
椽側
(
えんがわ
)
に置いた
手燭
(
てしょく
)
の
燈
(
ひ
)
が暗い庭を
斜
(
ななめ
)
に照らしているその
木犀
(
もくせい
)
の樹の
傍
(
そば
)
に
洗晒
(
あらいざら
)
しの
浴衣
(
ゆかた
)
を着た一人の老婆が立っていたのだ、顔色は
真蒼
(
まっさお
)
で頬は
瘠
(
こ
)
け、眼は窪み
暗夜の白髪
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
新井町の山三郎は真堀の定蓮寺の本堂の床下に
埋
(
うず
)
めてある棺桶の蓋を取ると、この中に
灯火
(
あかり
)
が点いておりまして、
手燭
(
てしょく
)
に蝋燭が点いて、ぼうっと燃えております。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
眠りがたいあまりに、彼は寝床からはい出して、
手燭
(
てしょく
)
をとぼしながら囲炉裏ばたの勝手の方へ忍んだ。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかし結局さからっては
却
(
かえ
)
って悪いと考えたようすで、
手燭
(
てしょく
)
に火を移して出ていった。
菊千代抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さっき宵の口に、源三郎の
夕餉
(
ゆうげ
)
に給仕に出た少年が、先に立って
手燭
(
てしょく
)
をささげている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
父親は横になると
忰
(
せがれ
)
も横になった。女はそれを見ると
手燭
(
てしょく
)
を持って
艫
(
とも
)
の
間
(
ま
)
へ往った。
参宮がえり
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
途端に裸ながらの
手燭
(
てしょく
)
は、風に打たれて
颯
(
さ
)
と消えた。外は
片破月
(
かたわれづき
)
の空に
更
(
ふ
)
けたり。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
なにものか手ごたえせるより、「
手燭
(
てしょく
)
よ、
松明
(
たいまつ
)
よ」
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
燭
漢検準1級
部首:⽕
17画
“手”で始まる語句
手
手拭
手前
手巾
手繰
手許
手向
手綱
手際
手摺