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ひら
ふりがな文庫
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展
(
ひら
)” の例文
朝の光が射しそめる頃から、彼の世界は黄色に
展
(
ひら
)
けてくるのであった。彼の視界にあるどういう物体も、その色のまま黄色に見えた。
黄色い日日
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
耕地が一面に向うへ
展
(
ひら
)
けて、正面に乙女峠が見渡される……この荒庭のすぐ水の上が、いま
詣
(
もう
)
でた榎の宮裏で、暗いほどな茂りです。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
今まで歩いていた山路を出て、
濶然
(
かつぜん
)
たる
眺
(
ながめ
)
が
展
(
ひら
)
けた感じと、菜の花に夕日の当っている明るい感じとが、ぴたりと一緒になっている。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
にわかに急な斜面が
展
(
ひら
)
けたような今日の感動を、重吉もぐっと、その胸でこたえている。それが、まざまざと感じとられるのであった。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そしてやはり小説を読んだだけではわからないところの、ただ労働者の眼にのみ
展
(
ひら
)
ける一種の世界があるような気がいたしました。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
▼ もっと見る
それによって
展
(
ひら
)
かれるであろうはかない最後の
安逸
(
あんいつ
)
を、早くもぼんやりと脳裡にえがいて、ひとりでに足の運びもはかどるのであった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
巨大な墓石の並び立つ別の
光景
(
ありさま
)
がまたその小山の上に
展
(
ひら
)
けた。そこには全く世間というものから離れたかのような静かさがあった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
長煙管で煙草を一ぷく
喫
(
す
)
って、左の手で袖口を掴み
展
(
ひら
)
き、着ている大島の男縞が似合うか似合わないか
検
(
ため
)
してみる様子をしたのち
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
岩
(
いは
)
はなをば、
漕
(
こ
)
ぎ
廻
(
まは
)
つて
行
(
ゆ
)
くごとに、そこに
一
(
ひと
)
つづゝ
展
(
ひら
)
けて
來
(
く
)
る、
近江
(
あふみ
)
の
湖水
(
こすい
)
のうちのたくさんの
川口
(
かはぐち
)
。そこに
鶴
(
つる
)
が
多
(
おほ
)
く
鳴
(
な
)
き
立
(
た
)
てゝゐる。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
「しかも見よ! 宇宙はわれらの視野に
展
(
ひら
)
けゆく!」クロイソスの富をあたえられてもわれわれの目的はやはり元どおりであり
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
渓流にそって、道は白川へ
展
(
ひら
)
けている。そのころから風が変って、耳を奪うような北山
颪
(
おろし
)
に、大粒な雨がまじって、顔を打つ、衣を打つ。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、機械のもつ人間への関連ならびにその美の解釈は美学史上の新しき展望を
展
(
ひら
)
く契機となることを約束するものである。
近代美の研究
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
巨大な樹木と深緑の草に蔽はれた山が湖岸まで裾をひき、絶壁をそばだたせ、
岬
(
みさき
)
をつきだし、夢のやうな美しい景色が次々に
展
(
ひら
)
けてきます。
アフリカのスタンレー
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
それから二三十
間
(
けん
)
も行ったであろうか、道の両側が畠のように
展
(
ひら
)
けているところまで来て、またまた
愕
(
おどろ
)
かされてしまったのだ。
火星の魔術師
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
だんだん水の音の高くなると一しょに家並が尽きて、しらじらと冷めたく
展
(
ひら
)
ける河原の光景が間もなくわたしのまえにあった。
春深く
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
その上途中に
展
(
ひら
)
ける東海道の風光が、生れて始めて見るだけにひどく心を
愉
(
たの
)
しませたらしい。清見寺から三保の松原を眺めて
小田原陣
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ところどころにかたまつて雪は残つてゐたけれども、それでも明るい午後の日影のさしわたつた路が長くかの女の前に
展
(
ひら
)
けた。
百合子
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
乃チ室ノ奥ニ就イテ壇ヲ設ケ位ヲ列シ
先
(
ま
)
ヅ陶集ヲ
展
(
ひら
)
キ配スルニ悪詩ヲ以テス。菜根一把、
茅柴
(
ぼうさい
)
一斗、以テソノ神ヲ祭ルトイフ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
窓の向こうには夕闇の中に、中庭や破風や、ホテルから近い教会の奇妙な凸凹などの、絵画的な中世紀的な眺望が
展
(
ひら
)
けていた。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
再び一同は突如眼下に打ち
展
(
ひら
)
けたこの雄大無比な大景観に向って、声を挙げることさえも忘れて、ただ
恍惚
(
こうこつ
)
と眼を
瞠
(
みは
)
っていた。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
言葉をその純粋な形に立ち帰らせ、その手によって書き下された十行の詩はよく、生の統流を眼前に
展
(
ひら
)
くに足るべきである。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
かと思うと急に私たちの目の前が
展
(
ひら
)
けて、ちょっとの間何も見えなくなるくらい明るい林のなかの空地があったりした。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
何が何だか解らなくなった為吉の頭には、絞首台を取巻いて指の傷と
小刀
(
ナイフ
)
が渦を巻いた。そして一方には其処に
展
(
ひら
)
けかけた自由な海の生活があった。
上海された男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
時どき
烟
(
けむり
)
を吐く煙突があって、田野はその
辺
(
あた
)
りから
展
(
ひら
)
けていた。レンブラントの素描めいた風景が散らばっている。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
駅を出ると、すぐに踏切を渡つて、ゆるやかな斜面を登りきると、なるほど、台地らしい周囲の眺望が
展
(
ひら
)
けて来た。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
私は何の為めにくだらない経験ばなしを持ち出したか? それはすべての若い婦人達の前に
展
(
ひら
)
かれた道がいま同じであると云ふことが私にわかつてゐる。
感想の断片
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
眼を遮るは
濃青
(
のうせい
)
の脈々たる岩壁である。その下の
鞍掛
(
くらかけ
)
岩。その左は
展
(
ひら
)
けた下流の空の
笠置
(
かさぎ
)
山。雲だ、雲だ、雲だ。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
明け放たれた二階の縁からは船着き場に沿うた一とすじの
路
(
みち
)
をへだててもう暮れがたの海のけしきが
展
(
ひら
)
けていた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ふたたび、都会がパノラマのように彼女の眼前に
展
(
ひら
)
けてきた。それとともに彼女は夫の真剣な看護を意識した。
女百貨店
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
展
(
ひら
)
かれたのは、モウ手癖のついてゐる例の
馬太
(
マタイ
)
傳第二十七章である。智惠子は心を沈めて小聲に讀み出した。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
此処まではところどころに降灰の痕跡を見る程度にすぎなかったが、一歩西湖畔から折れて山地に向うと、途端に一望唯灰一色の死の山野の風景が
展
(
ひら
)
けて来た。
天地創造の話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
無垢
(
むく
)
な
若者
(
わかもの
)
の
前
(
まへ
)
に
洪水
(
おほみづ
)
のやうに
展
(
ひら
)
ける
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は、どんなに
甘
(
あま
)
い
多
(
おほ
)
くの
誘惑
(
いうわく
)
や、
美
(
うつく
)
しい
蠱惑
(
こわく
)
に
充
(
み
)
ちて
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せることだらう!
外
(
そ
)
れるな、
濁
(
にご
)
るな、
踏
(
ふ
)
み
迷
(
まよ
)
ふなと
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
夜、彼は自分の机に書物を
展
(
ひら
)
いた上に水色の封筒をのせて、惜しい気のするのを思い切って、封を切った。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
それとともに
展
(
ひら
)
けゆく柔らかな楽句の中に身を浸すことは、……死ぬこと、大地の平和の中に
融
(
と
)
け込むこと、……「それから自分の身が土となる」ことは……。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼の眼前で落ち込んだ旧ロシアの貴族の裸形の団塊が、豪華な幕のように伸縮した。三方に
嵌
(
はま
)
った鏡面の彼方では、無数の皮膚の工場が、茫々として
展
(
ひら
)
けていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
この海岸も、煤煙の都が必然
展
(
ひら
)
けてゆかなければならぬ郊外の住宅地もしくは別荘地の一つであった。
蒼白い月
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
富士の美しいのは裾野が
展
(
ひら
)
いているからだ。裾を隠して頂だけでは、尖端鋭き金峰山などの方が遥かに美しい。富士は頭を隠してもよい、裾野は隠れてはいけない。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
僕は予期していたものの、眼前に
展
(
ひら
)
けた雑然たる狭い部屋のうちに、後向きになったまま、黙々として妙な器械の中を覗いている人物を発見して、すくなからず驚いた。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何と云う町なのか知らないけれども、郊外らしく
展
(
ひら
)
けていて、新らしい
木口
(
きぐち
)
の家が沢山建っていた。それでも、時々、廃寺のような寺があったり、畑や
空地
(
あきち
)
などがあった。
田舎がえり
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
目もはるかに、麥畑が青くつづいて、菜の花畑は黄で、そのずつとむかうに桃圃のある、うち
展
(
ひら
)
けた、なだらかな起伏の、平凡すぎるほどのどやかな田園風景が好きだつた。
春宵戯語
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
山腹を過ぎ、道も
展
(
ひら
)
けて来たので、
殿
(
しんがり
)
の童伊も前へ寄って出た。驢馬は横に一列をつくった。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
頑
(
がん
)
として、木像の如く、木杭の如く、電信柱の如く断じて心臓を
展
(
ひら
)
くことを拒むものである。
FARCE に就て
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
曲がりくねった
小径
(
こみち
)
について雑木林の丘を越えると、
豁然
(
かつぜん
)
と
展
(
ひら
)
けた眼下の谷に思いがけない人家があって、テニスコートにでもしたいような広場に
鰯
(
いわし
)
を干しているのが見えた。
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
帰郷して五日目の朝、彼は初めて裏門を出て、そこに遠く
展
(
ひら
)
けている豊かな耕原を眺めた。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
今
(
いま
)
から三四
時間
(
じかん
)
の
後
(
のち
)
には、
目的
(
もくてき
)
のコロンボ
市
(
し
)
の
附近
(
ふきん
)
に
降下
(
かうか
)
して、
櫻木大佐
(
さくらぎたいさ
)
より
委任
(
いにん
)
されたる、
此度
(
このたび
)
の
大役
(
たいやく
)
をも
首尾
(
しゆび
)
よく
果
(
はた
)
す
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
るであらうと、
互
(
たがひ
)
に
喜悦
(
きえつ
)
の
眉
(
まゆ
)
を
展
(
ひら
)
く
時
(
とき
)
しも
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
遥か彼方から如何にも
蠱惑的
(
こわくてき
)
に地主
館
(
やかた
)
の赤い屋根と白い煙突とが、樹々の緑をとおしてチラホラ見え出すと、私はそれを
翳
(
かざ
)
している園が両方へ
展
(
ひら
)
けて、一刻もはやく邸の全貌が
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
それで職業的にはまずこうしていても生活の助けとはなるが、しかし、私の実物写生の研究と西洋彫刻に対する
憧憬
(
どうけい
)
は少しもゆるみはせず、どうかして、一新生面を
展
(
ひら
)
きたいものである。
幕末維新懐古談:36 脂土や石膏に心を惹かれたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
名画墨跡を
膝下
(
しっか
)
に
展
(
ひら
)
くも、名器を目前に
陳
(
なら
)
ぶるも、道具屋一流の囚われた見方以外には一歩も前進してはくれない。俗欲を身につけることほど美の探求、真理の探求を邪魔するものはない。
現代茶人批判
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
宿を出ると街道で、野良が四方に
展
(
ひら
)
けてい、林や森や耕地があった。左へ行けば赤尾村、右へ行けば高萩村、双方へ行ける分岐点、そこに六地蔵が立っていて、木立がこんもり茂っていた。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
若し今日に成って熱が下らねば虎井夫人は到底此の世の者ではない所で有ったが、今朝から熱が下ったから此の後は最う恢復に向う一方だと云う事だ、是には秀子も愁いの眉を
展
(
ひら
)
いた様子だ。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
展
常用漢字
小6
部首:⼫
10画
“展”を含む語句
展開
展望
発展
繰展
展転
引展
展墓
展覧会
文展
發展
展覽會
開展
展望台
展覧場
掻展
御展
踏展
進展
飜展
鳥瞰的展望
...