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尽
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ことごと
ふりがな文庫
“
尽
(
ことごと
)” の例文
旧字:
盡
既に決定せられたがように、
譬
(
たと
)
えこの頂きに療院が許されたとしても、それは同時に
尽
(
ことごと
)
くの麓の心臓が恐怖を忘れた故ではなかった。
花園の思想
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
しかれどもこれ聯想の習慣の異なるよりして来る者にして、複雑なる者を
取
(
とっ
)
て
尽
(
ことごと
)
くこれを十七字中に収めんとする故に成し得ぬなり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
妻、その子、弟の彦之助も、相次いで、
紅
(
くれない
)
の中に伏した。一族の三宅肥前、老臣の後藤将監基国、小森与三左衛門なども
尽
(
ことごと
)
く
殉
(
じゅん
)
じた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
碌々
(
ろくろく
)
飲みもせずに提げて来た石油缶の水を
尽
(
ことごと
)
く彼の積み上げた石に
灑
(
そそ
)
いで甲武信岳の霊に手向け、四時頂上を辞して下山の途に就いた。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
犯罪発見後数時間を出でざる本日午後三時に至り、その裏面の秘密を
尽
(
ことごと
)
く
発
(
あば
)
きつくせる事実を、本社は遺憾なく探知するを得たり。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
かつてシャンパンユの平和なる田園に生れて
巴里
(
パリー
)
の美術家となった一青年が、爆裂弾のために全村
尽
(
ことごと
)
く破滅したその故郷に遊び
深川の散歩
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
俸禄も厚く、信任も重く、細大の事務
尽
(
ことごと
)
く掌裡に帰して裁断を待ち、監督川島不在の時は処務を代理し、隠然副監督として仰がれていた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
今日の会費は二円と定めてありますがその二円を
尽
(
ことごと
)
く料理の材料に向けて
其処
(
そこ
)
にある通りのメニュー即ち献立表を作りました。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
重い荷物は
尽
(
ことごと
)
く駄馬に着けて、近道を
黒羽
(
くろばね
)
町まで送り届けて貰う事とし、黒羽町の宿屋は△△屋というのが一等だと聴いたのでそこと
取極
(
とりき
)
め
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
どんな建物でも、また特に際立った印象を与えるものでさえあれば、何でも
尽
(
ことごと
)
くが私を引き留め、私を驚かせるのであった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
或はかかる現象を以て
尽
(
ことごと
)
く病的となすかも知らぬがその果して病的なるか否かは合理的なるか否かに由って定まってくる。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
そしてその話をきいたので、その後自分も穴釣りをする気になつて試みて
尽
(
ことごと
)
く失敗に終つたのであつたのかも知れない。
釣十二ヶ月
(新字旧仮名)
/
正木不如丘
(著)
瓜
(
うり
)
を投じて
怒罵
(
どば
)
するの語、其中に機関ありと
雖
(
いえど
)
も、又
尽
(
ことごと
)
く
偽詐
(
ぎさ
)
のみならず、
本
(
もと
)
より真情の人に
逼
(
せま
)
るに足るものあるなり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
何にせよ別府の大いなる強味は地下
尽
(
ことごと
)
く温泉であるということである。土地の人は
泉都
(
せんと
)
と唱えて、日本の別府でない、天下の別府であると誇っている。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
平素の身汚なさを
尽
(
ことごと
)
く払い落し、服装から姿態から眼鏡迄、あの水々しい淫売宿のおふささんに成り済ませて……。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
そこにおいて永遠に隠されたる秘密を探り得ざる人智の弱さを見よとの意である。十八節には「汝地の広さを
看究
(
みきわ
)
めしや、もしこれを
尽
(
ことごと
)
く知らば言え」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
白昼凝って、
尽
(
ことごと
)
く太陽の黄なるを包む、
混沌
(
こんとん
)
たる雲の
凝固
(
かたまり
)
とならんず
光景
(
ありさま
)
。万有あわや死せんとす、と忌わしき
使者
(
つかい
)
の早打、しっきりなく走るは
鴉
(
からす
)
で。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
乃至菩薩
究竟地
(
くきょうち
)
ニモ
尽
(
ことごと
)
ク知ルコト能ワズ、
唯
(
ただ
)
仏ノミ窮了ス——とあるそれでございます、これが即ち真如、無明、梨耶、三体一味の帰結なのでございます
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼の美き友を択ぶは
固
(
もと
)
よりこの理に外ならず、
寔
(
まこと
)
に彼の択べる友は皆美けれども、
尽
(
ことごと
)
くこれ酒肉の
兄弟
(
けいてい
)
たるのみ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
啻
(
たゞ
)
に書の
尽
(
ことごと
)
く信ずべからざるのみではない。古文書と雖、尽く信ずることは出来ない。漳州の牽牛花の種子は何年に誰から誰に伝はつても事に
妨
(
さまたげ
)
は無い。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
七郎は蓄えてある革を
検
(
しら
)
べてみると、それは虫が
喫
(
く
)
って敗れ、毛も
尽
(
ことごと
)
く
脱
(
ぬ
)
けていた。七郎はがっかりすると共に武から金をもらったことをひどく後悔した。
田七郎
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
尽
(
ことごと
)
く無根の
捏造説
(
ねつざうせつ
)
であることを断言します——
抑
(
そもそ
)
も此の
誣告
(
ぶこく
)
を試みたる信用すべき人物とは、何物でありますか
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
そして
根際
(
ねぎわ
)
になったところも
尽
(
ことごと
)
く内へ入って、前の盆のように
濶
(
ひろ
)
かった腫物とは思われなかった。そこで
羅
(
うすもの
)
の小帯から
佩刀
(
はいとう
)
をぬいた。その刀は紙よりも薄かった。
嬌娜
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この役に、関西方に附いた真田家の一族は、
尽
(
ことごと
)
く戦死した。甥幸綱、
幸堯
(
ゆきたか
)
等は幸村と同じ戦場で
斃
(
たお
)
れた。
真田幸村
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そして遂には朱雀門や大極殿、大学寮、民部省等の重要な建築を一夜の中に
尽
(
ことごと
)
く
灰塵
(
かいじん
)
としてしまった。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
各階
尽
(
ことごと
)
く見事な真珠よりなり、
殊
(
こと
)
に正面の
階
(
きざはし
)
を登って塔内に入らんとする所に
嵌
(
は
)
められているものは、大きさと云い形といい
光沢
(
つや
)
と云い世界にも又あるまじき逸品で
真珠塔の秘密
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
船内灯火
尽
(
ことごと
)
く消えて、僅かに星明りにてペンを走らすのみ。余が妻は嬰児を抱きて、石像の如く余が傍らに立てり。相顧みて千万無量の微笑、最早や凡べては
畢
(
おわ
)
んぬ。
沈黙の水平線
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
塚前村観音堂へ因果塚を建立致し、観音寺の和尚
道恩
(
どうおん
)
が
尽
(
ことごと
)
く此の因縁を説いて回向を致しましたから、村方の者が寄集まって餅を搗き、大した
施餓鬼
(
せがき
)
が納まりました。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
自由主義教授達は
尽
(
ことごと
)
く追い出されるか時間を激減されたのであるが、頭の良くない法政の学生や若い先輩は、今更のように驚いて、之を一種の偶然な原因に帰している。
社会時評
(新字新仮名)
/
戸坂潤
(著)
汝
(
なんじ
)
らの
地
(
ち
)
の
穀物
(
こくもつ
)
を
穫
(
かる
)
ときには
汝等
(
なんじら
)
その
田野
(
たはた
)
の
隅々
(
すみずみ
)
までを
尽
(
ことごと
)
く
穫
(
かる
)
べからず
亦
(
また
)
汝
(
なんじ
)
の
穀物
(
こくもつ
)
の
遺穂
(
おちぼ
)
を
拾
(
ひろ
)
うべからずまた
汝
(
なんじ
)
の
菓樹園
(
くだものばたけ
)
の
菓
(
くだもの
)
を
取尽
(
とりつく
)
すべからずまた
汝
(
なんじ
)
の
菓樹園
(
くだものばたけ
)
に
落
(
おち
)
たる
菓
(
くだもの
)
を
聖家族
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
幸福といわずして幸福を楽んでいたころは家内全体に
生温
(
なまぬる
)
い春風が吹渡ッたように、総て
穏
(
おだやか
)
に、和いで、
沈着
(
おちつ
)
いて、見る事聞く事が
尽
(
ことごと
)
く自然に
適
(
かな
)
ッていたように思われた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
これが秋の旅であるならば、夕風に散る木葉の雨の中を、菅笠で辿って行く寂しい味を占め得るのであるが、今は青葉が重り合って、谿々峰々
尽
(
ことごと
)
く青葉の吐息に
薫
(
かお
)
っている。
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
その他自家の反対党と目指すものはその諸侯と幕臣たるとを問わず、
尽
(
ことごと
)
くこれを
黜罰
(
ちゅつばつ
)
したり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
賈慎庵は何でも
乾隆
(
けんりゆう
)
の末の老諸生の一人だつたと云ふことである。それが或夜の夢の中に大きい役所らしい家の前へ行つた。家は重門
尽
(
ことごと
)
く
掩
(
おほ
)
ひ、
闃
(
げき
)
としてどこにも人かげは見えない。
鴉片
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もしそれ山花
野艸
(
やそう
)
に至りてはこれに異なり、その香
馥郁
(
ふくいく
)
としてその色
蓊鬱
(
おううつ
)
たり。隻弁単葉といへども皆
尽
(
ことごと
)
く霊活ならざるなし。自由の人におけるその貴ぶべきことけだしかくの如し。
『東洋自由新聞』第一号社説
(新字旧仮名)
/
中江兆民
(著)
気丈な不二子さんは僕等のまへにつひぞ今まで涙を見せたことはなかつた。これは
侍
(
さむらひ
)
の女房の覚悟に等しい心の抑制があつたからであらう。然るに今は他人の
尽
(
ことごと
)
くが眠に沈んでゐる。
島木赤彦臨終記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
迷わせ、最後に
尽
(
ことごと
)
くそれを失望させる要件が
具
(
そなわ
)
っている女であればよいので、必ずしもそれを天上の仙女にしなければならぬ必要は無いのであるが、最初の作だけに昔からある話の筋を
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
されど日本の農業を改良するに就いては、種々の方法があるので、
尽
(
ことごと
)
く自分一人でやらなくても
宜
(
よ
)
い、それは到底出来ることでない。各個分業で農業の方法を漸次改良すれば宜いのである。
教育の目的
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
幸徳君らに
尽
(
ことごと
)
く真剣に
大逆
(
たいぎゃく
)
を
行
(
や
)
る意志があったか、なかったか、僕は知らぬ。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
湖畔のゆるやかな起伏の原は、鮮かな緑で蔽はれ、
古城
(
シャトー
)
の白い塔が一つその中に立つてゐた。すべての色が鮮明で、周囲の風物は
尽
(
ことごと
)
く私達が昔から持つてゐた「美しき
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
」の姿であつた。
ツーン湖のほとり
(新字旧仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
木幡村の一ノ瀬と云人に頼み製しめしに元来肥え物の沢山に仕込たる茶なるが故に揉む時分に手の内にねばり付き葉は
尽
(
ことごと
)
く丸く玉の様に出来上りたるを其儘
急須
(
きゅうす
)
に入れ試みしに実に甘露の味ひを
植物一日一題
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
鶴喜
(
つるき
)
の
離屋
(
はなれ
)
を借りて、年に一度の参会を開いていた道具屋の一隊は、石原の利助の子分を先鋒とする、八丁堀の組子に
十重二十重
(
とえはたえ
)
に取囲まれ、多勢の怪我人まで拵えて、
尽
(
ことごと
)
く召捕りになりました。
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
胡堂氏の話によると、村には二つとない、見事だったこの庭の良石と植木は、隣村の何兵衛に
瞞
(
だま
)
され
尽
(
ことごと
)
く持ち去られたとのことである。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
千句を示せとならば千句を示すべし。しかれどもそは
徒
(
いたずら
)
に
煩
(
はん
)
を増すのみ。千句万句
尽
(
ことごと
)
く皆この種の句たることを明言しなば則ち足らん。
古池の句の弁
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
家内眷族が
尽
(
ことごと
)
く信用し切っている叔父さんや伯母さんを、お嬢さんや坊ちゃんがどういう訳だか好かない事があるのであります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
信濃町権田原
(
しなのまちごんだわら
)
を
経
(
へ
)
、青山の大通を横切って
三聯隊裏
(
さんれんたいうら
)
と
記
(
しる
)
した赤い棒の立っている
辺
(
あた
)
りまで、その沿道の大きな建物は
尽
(
ことごと
)
く陸軍に属するもの
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この金属は妙な特質があって外の金属が
尽
(
ことごと
)
くレントゲンのエッキス光線に不透明であるのにこの金属ばかりは最も透明です。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
この向島名物の一つに数えられた
大伽藍
(
だいがらん
)
が松雲和尚の刻んだ
捻華微笑
(
ねんげみしょう
)
の本尊や鉄牛血書の経巻やその他の寺宝と共に
尽
(
ことごと
)
く灰となってしまったが
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
故に
若
(
も
)
し一の絵図が其輯製当時に於ける既知の事実を
尽
(
ことごと
)
く採録せるものならば、最も価値あり最も信ず可き絵図なりというを得可き道理なるも
古図の信じ得可き程度
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
焼酎と
胡瓜
(
きゅうり
)
は
尽
(
ことごと
)
く
吐
(
は
)
き出したが、同時に食った牛肉は不思議にも出て参らず、胃の
腑
(
ふ
)
もなかなか都合好く出来たものかな。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
尽
常用漢字
中学
部首:⼫
6画
“尽”を含む語句
愛想尽
尽頭
立尽
燃尽
射尽
大尽
蕩尽
尽瘁
不尽
無尽蔵
心尽
尽日
御尽力
曲尽
国尽
尽未来際
無尽講
町尽
埋尽
不尽山
...