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小禽
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ことり
ふりがな文庫
“
小禽
(
ことり
)” の例文
種々な
小禽
(
ことり
)
の声が、
檜
(
ひのき
)
の密林に
啼
(
な
)
きぬいていた。二人の頭脳は冷たく澄み、
明智
(
あけち
)
ノ
庄
(
しょう
)
を落ちて来てから初めて
真
(
まこと
)
の
吾
(
われ
)
にかえっていた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何たる優雅な
贅沢
(
ぜいたく
)
! マターファの父は、「小鳥の王」といわれた位、
小禽
(
ことり
)
共
(
ども
)
の声を愛していたそうだが、其の血が彼にも伝わっているのだ。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
落着きもなく
手擦
(
てす
)
り
際
(
ぎわ
)
へ出て庭を眺めたり、額や掛け物を見つめたりしていたが、
階下
(
した
)
に飼ってある
小禽
(
ことり
)
の
幽
(
かす
)
かな啼き声が、
侘
(
わび
)
しげに聞えて来た。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
小禽
(
ことり
)
が何百羽はいっていようかと思われるほどの大鳥
籠
(
かご
)
、
万燈
(
まんどん
)
のような飾りもの、金、銀、紅、白の
蓮
(
はす
)
の造花、生花はあらゆる種々な格好になってくる。
旧聞日本橋:13 お墓のすげかえ
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
七兵衛が去った後の裏庭は
閑静
(
しずか
)
であった。
旭日
(
あさひ
)
の紅い樹の枝に折々
小禽
(
ことり
)
の啼く声が聞えた。差したる
風
(
かぜ
)
も無いに、落葉は相変らずがさがさと舞って飛んだ。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
傾きやすき冬日の庭に
塒
(
ねぐら
)
を急ぐ
小禽
(
ことり
)
の声を聞きつつ梔子の実を
摘
(
つ
)
み、寒夜孤燈の下に
凍
(
こご
)
ゆる手先を
焙
(
あぶ
)
りながら破れた
土鍋
(
どなべ
)
にこれを煮る時のいいがたき情趣は
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
別
(
べつ
)
に
美
(
うつく
)
しい
程
(
ほど
)
でもありませぬが、
体躯
(
からだ
)
は
先
(
ま
)
ず
大柄
(
おおがら
)
な
方
(
ほう
)
で、それに
至
(
いた
)
って
健康
(
たっしゃ
)
でございましたから、
私
(
わたくし
)
の
処女時代
(
むすめじだい
)
は、
全
(
まった
)
く
苦労
(
くろう
)
知
(
し
)
らずの、
丁度
(
ちょうど
)
春
(
はる
)
の
小禽
(
ことり
)
そのまま
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
小禽
(
ことり
)
が可愛くさへづつてゐた。ゆつくりと窓を開けると、かあつとした高原の空と、緑は、お互ひに、上と下とが反射しあつてゐるかのやうな
爽涼
(
さうりやう
)
さであつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
羽翼
(
はね
)
美しい
小禽
(
ことり
)
を、わが手先きまで引き寄せながら、きゅっと捉まえる事が出来ずに、また飛び立たしてしまうような、どこまでも残り惜しく恨めしいのが、わが居間から
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
よく肥えた
小禽
(
ことり
)
をクチバシのところでつまんで少々塩にまぶし、砂嚢を抜き、上手に口の中に入れ、歯でおさえて、指のごく近くの所で噛み切り、そのまま勢よく噛むのである。
時 処 人:――年頭雑感――
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
倫理の矢に
命
(
あた
)
つて
殞
(
お
)
ちる倫理の
小禽
(
ことり
)
。風景の上に忍耐されるそのフラット・スピン!
測量船
(新字旧仮名)
/
三好達治
(著)
菜
(
な
)
の
花畠
(
はなばたけ
)
、
麦
(
むぎ
)
の畠、そらまめの花、
田境
(
たざかい
)
の
榛
(
はん
)
の木を
籠
(
こ
)
める
遠霞
(
とおがすみ
)
、村の
児
(
こ
)
の
小鮒
(
こぶな
)
を
逐廻
(
おいまわ
)
している
溝川
(
みぞかわ
)
、
竹籬
(
たけがき
)
、
薮椿
(
やぶつばき
)
の落ちはららいでいる、
小禽
(
ことり
)
のちらつく、何ということも無い田舎路ではあるが
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
こまごまとちらばり寒き
小禽
(
ことり
)
のかず木々の時雨に
今朝
(
けさ
)
も遠く見ゆ
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
小禽
(
ことり
)
や
藪鶯
(
やぶうぐいす
)
の声がひっきりなしに
聞
(
きこ
)
えて来る。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
チチ、チチと、
小禽
(
ことり
)
の声がする。客殿の戸のすきまから
仄白
(
ほのじろ
)
い光がさす。夜明けだ。頼朝は、声なく、叫びながら
衾
(
ふすま
)
を蹴って起きた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こんな話に時の移るのを忘れている
中
(
うち
)
に、庭に
囀
(
さえ
)
ずる
小禽
(
ことり
)
の声も止んで、冬の日影は
余
(
よ
)
ほど薄くなった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ヴェランダへ通じる
硝子戸
(
ガラスど
)
を開けると、運河はすぐ眼の前に光つてゐた。ビルマネムの大樹が運河添ひに並木をなして、珍しい
小禽
(
ことり
)
の声が騒々しくさへづつてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
捲毛
(
まきげ
)
のカナリヤの
籠
(
かご
)
の側で、庸三はよく
籐椅子
(
とういす
)
に腰かけながら、あまり好きでないこの
小禽
(
ことり
)
の動作を見守っていたものだが、いくらかの潜在的な予感もあったので
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
風は沈静して、高い枯草の間から
小禽
(
ことり
)
の群が鋭い声を放ちながら、
礫
(
つぶて
)
を打つようにぱっと散っては消える。曳舟の機械の響が両岸に反響しながら、次第に遠くなって行く。
放水路
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼女も昨日までの華やかな世界を捨て、
小禽
(
ことり
)
のようにおどおどとして
舅姑
(
しゅうと
)
につかえたのだろう。
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
木々うつる寒き
小禽
(
ことり
)
の羽のたたき時雨明りに濡れしぶきつつ
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と、門のうちの遠い坂の上から、ぽたぽたと
迅
(
はや
)
い跫音が聞えて来た。跫音におどろいて立つ
小禽
(
ことり
)
のつばさが、八方に、小さな虹を描く。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
地球の上には、かうした夢のやうな国もあるものだと、ゆき子は、
小禽
(
ことり
)
のさへづりを聴いたり、運河の水の上を
呆
(
ぼ
)
んやり眺めてゐたりした。燕も群れをなして飛んでゐる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
昨夜
(
ゆうべ
)
、空を通つた、足の早い風は、いま何處を吹いてゐるか! あの風は、殘つてゐたふゆを浚つて
去
(
い
)
つて、春の來た
今朝
(
けさ
)
は、誰もが陽氣だ。おしやべりは
小禽
(
ことり
)
ばかりではない。
春
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
お清は笑いながら奥へ入って
了
(
しま
)
った。人通りの
尠
(
すくな
)
い往来には、
小禽
(
ことり
)
が
餌
(
え
)
を
猟
(
あさ
)
っていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
奥座敷の縁側に出してある、大きな
籠
(
かご
)
に
啼
(
な
)
いている
小禽
(
ことり
)
の声が、時々聞えていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
夕立おそい
来
(
きた
)
る時窓によって眺むれば、日頃は人をも恐れぬ
小禽
(
ことり
)
の樹間に逃惑うさまいと興あり。巣立して間もなき子雀蝉とともに家の
中
(
うち
)
に迷入ること珍らしからず。是れ無聊を慰むる一快事たり。
夕立
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
はらら飛ぶ
小禽
(
ことり
)
あはれと觀つつゐて霜の葉おほき木々に驚く
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
耳を澄ますと、四山の樹々には、さまざまな
小禽
(
ことり
)
の
群
(
むれ
)
が
万華
(
まんげ
)
の春に歌っている。空は
深碧
(
しんぺき
)
に
拭
(
ぬぐ
)
われて、虹色の陽が
熔
(
とろ
)
けそうに
燦
(
かがや
)
いていた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朝雨にあらわれたあとの、すがすがしい空には、パチパチと
弾
(
はじ
)
ける音がして、明治神宮奉祝の花火があがっている。
小禽
(
ことり
)
が枝から飛立つ
羽
(
は
)
ぶきに、ふち
紅
(
べに
)
の、淡い
山茶花
(
さざんか
)
が散った。
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
浴場の窓からは、草の根から水のちびちびしみ出している
赭土山
(
あかつちやま
)
が
侘
(
わび
)
しげに見られ、
檐端
(
のきば
)
はずれに枝を
差交
(
さしかわ
)
している、山国らしい
丈
(
たけ
)
のひょろ長い木の
梢
(
こずえ
)
には、
小禽
(
ことり
)
の声などが聞かれた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「あめりか物語」中最終の短篇にも書いた通り
紐育
(
ニユウヨオク
)
湾頭の
離島
(
はなれじま
)
に
夜
(
よる
)
の
小禽
(
ことり
)
が鳴く「六月の
夜
(
よ
)
の夢」を見たのは、
丁度々々
(
ちやうど/\
)
このやうな古びたペンキ塗りの水道も電灯もない田舎家の一室であつたのだ。
海洋の旅
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
はらら飛ぶ
小禽
(
ことり
)
あはれと観つつゐて霜の葉おほき木々に驚く
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
丹左が、顔を上げると、葉の落ちている
櫟
(
くぬぎ
)
ばやしの
梢
(
こずえ
)
から、その顔の上へ、灰色の
小禽
(
ことり
)
の毛が、綿を舞わしたように飛んで来た。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
薄
(
すすき
)
の穂が飛んで、
室内
(
へやのなか
)
の老爺さんの肩に赤トンボがとまろうと、桜が散り込んで
小禽
(
ことり
)
が障子につきあたって飛廻っても、老爺さんには東京なのか山の中なのか、室内なのか
外
(
おもて
)
なのか
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
閉
(
たて
)
きってあったような、その
新建
(
しんだち
)
の二階の板戸を開けると、直ぐ目の前にみえる山の傾斜面に
拓
(
ひら
)
いた畑には、麦が青々と伸びて、蔵の
瓦屋根
(
かわらやね
)
のうえに、
小禽
(
ことり
)
が
怡
(
うれ
)
しげな声をたてて
啼
(
な
)
いていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何やら知らぬ
小禽
(
ことり
)
の
囀
(
さえず
)
りは秋晴の
旦
(
あした
)
に聞く
鵙
(
もず
)
よりも一層勢が好い。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
桃園の梢の
湖
(
うみ
)
を、秋の
小禽
(
ことり
)
が来てさまざまな音いろを
転
(
まろ
)
ばした。陽はうらうらと雲を越えて、朝霧はまだ紫ばんだまま大陸によどんでいた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
如月
(
きさらぎ
)
は名ばかりで霜柱は心まで氷らせるように土をもちあげ、
軒端
(
のきば
)
に釣った
栗山桶
(
くりやまおけ
)
からは冷たそうな
氷柱
(
つらら
)
がさがっている。
崖
(
がけ
)
の
篠笹
(
しのざさ
)
にからむ草の赤い実をあさりながら
小禽
(
ことり
)
は
囀
(
さえず
)
っている。
豊竹呂昇
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
持ち主の知合いに頼まれて、去年の冬から住むことになったその家は、蔵までついていてかなり手広であった。薄日のさした庭の
山茶花
(
さざんか
)
の
梢
(
こずえ
)
に、
小禽
(
ことり
)
の動く影などが、障子の
硝子越
(
ガラスご
)
しに見えた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
さながら隠れし
小禽
(
ことり
)
のひそかに飛去るごとく
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
衣笠
(
きぬがさ
)
のふき
颪
(
おろし
)
は、
小禽
(
ことり
)
の肌には寒すぎた。チチチチチ野に啼く声も
稚
(
おさな
)
く聞えて耳に寒い。人々は、
鞘
(
さや
)
の中の刀から腰の冷えて来る心地がした。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ある時は少年のように朗らかに
挙動
(
ふるま
)
い、朝の森に
小禽
(
ことり
)
が
囁
(
さえず
)
るような楽しさで話すのだったが、一々
応
(
う
)
け
答
(
こた
)
えもできないような多弁の噴霧を浴びせかけて、彼を
辟易
(
へきえき
)
させることがあるかと思うと
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
わが窓に鳴く
小禽
(
ことり
)
の如くに。
偏奇館吟草
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
午さがりの空は、うす寒く曇って、
吹上苑
(
ふきあげ
)
をつつむ
桜花
(
はな
)
の蔭に、チチ、チチ、と
小禽
(
ことり
)
の音はあるが、何となく浮いていない。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
錦
(
にしき
)
の
小禽
(
ことり
)
その
棲木
(
とまりぎ
)
に居眠れば
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
新しく
殖
(
ふ
)
えた果樹もずいぶん多い。
湖沼
(
こしょう
)
を利用して養魚をすすめることも忘れなかった。
小禽
(
ことり
)
、
獣
(
けもの
)
のたねまで、
益
(
えき
)
するものは、山野へ放った。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「さもあらん」と、曹操もほくそ笑んで、あたかも森林の中で、美しい
小禽
(
ことり
)
でも追い廻している少年のような心理に似て
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
杉に囲まれた村社の境内ではないか、お通は、寒げに叫ぶ
小禽
(
ことり
)
の声に、ふと、何か自分が危険な線を
冒
(
おか
)
している気がして
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ぴゅっ——と、低く
掠
(
かす
)
めてゆく
小禽
(
ことり
)
の影が、魚のように腹を見せてゆく。やわらかい枯草と枯葉の中に、一足一足を沈め込むようにして歩いていた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“小禽”の意味
《名詞》
小 禽 (しょうきん)
小さい鳥。
(出典:Wiktionary)
小
常用漢字
小1
部首:⼩
3画
禽
漢検準1級
部首:⽱
13画
“小禽”で始まる語句
小禽暖室