夕暮ゆうぐ)” の例文
おだやかな夕暮ゆうぐれでした。おつは、じっとふね見送みおくっていますと、いつしか、青黒あおぐろおきあいだかくれてえなくなってしまいました。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私自身はもうそんなものは見たくもなかったのだけれど、そのれ果てたヴェランダから夕暮ゆうぐれの眺めがいかにも美しかったのを思い出して、夕食後
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
あたりをみると、いつか夕暮ゆうぐれらしい色が、森や草にはっていた。こずえにすいてみえる空の色も、たん刷毛はけでたたいたように、まだらなべにまっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうしてひびき高い詩句や、あるいは夕暮ゆうぐれの美しいながめによって、あるいは涙が、あるいは哀愁あいしゅうがそそられるにしても、その涙や哀愁のすきから、さながら春の小草おぐさのように
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
やぐらのっているまちもありました。また、荷馬車にばしゃがガラガラと夕暮ゆうぐがたはまほうかえってゆくのにもあいました。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
りくちかいところには、いわかさなりっていて、そのいわ打突ぶつかるとなみのしぶきが、きりとなって、夕暮ゆうぐれのそらこまかくひかってがっています。
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
にちらにはたらいて、夕暮ゆうぐれになると、みんなは、つきしたでこうしておどり、そのつかれをわすれるのでありました。
月とあざらし (新字新仮名) / 小川未明(著)
もう、気候きこうあたたかくなったのでこまどりは、いさんで、夕暮ゆうぐがたそらを、ちるほうかってんでゆきました。
こまどりと酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして二人ふたりは、べにがにや、うつくしいかいがらや、しろ小石こいしなどをひろって、晩方ばんがたまでおもしろくあそんでいました。いつしか夕暮ゆうぐがたになりますと、正雄まさおさんは
海の少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おもてわたすと、だんだんきたうみほうびるにしたがって、ひくくなっていました。そして、そのほう地平線ちへいせんは、夕暮ゆうぐがたになっても、あかるくありました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、夕暮ゆうぐがた太陽たいようひかりらされて、いっそうあざやかにあか毛色けいろえる、あかとりでありました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて、なつぎてあきになりました。かがやかしい夕暮ゆうぐがたそらくもいろかなしくなって、かぜにしみるころになると、のつばめはみなみくにをさしてかえりました。
教師と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
夕暮ゆうぐがたひかりけて、そのとうは、なぞのように、白壁しらかべや、煙突えんとつや、その工場こうじょう建物たてものや、雑然ざつぜんとした屋根やねなどがえる、まちなかにそびえて、そこらを見下みおろしていました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらをかすめてれは、たがいにおくれまいとしました。そして、夕暮ゆうぐがたになると深林しんりんや、花園はなぞのりてやすんだのでした。あか夕日ゆうひは、かれらのかなしくうつりました。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつも店頭てんとうひとたぬことはなく、ことに夕暮ゆうぐれどきなど、往来おうらいまであふれていました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なつ夕暮ゆうぐがた西にしそらの、ちょうどまちのとがったとううえに、そのあかさかなのようなくもが、しばしばかぶことがありました。子供こどもたちは、それをると、なんとなくかなしくおもったのです。
赤い魚と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは、およめにゆくまえに、ちょうどこのあたりであったまどから、ある夕暮ゆうぐがた、かんざしのたまをあやまってとしますと、それがころげてどこへいったかえなくなったのです。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
北海ほっかいなつ夕暮ゆうぐれの景色けしきなどをおもして、いろいろ空想くうそうしたにすぎなかった。
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
武男たけおは、その夕暮ゆうぐれが、いつもより、うつくしく、さびしくかんじられました。
山に雪光る (新字新仮名) / 小川未明(著)
よく、自分じぶんは、せがれのいて、夕暮ゆうぐがたまちからかえったものだ。あの時分じぶんのせがれは、どんなに無邪気むじゃきで、かわいらしかったか。あのせがれがいまでは、りっぱな人間にんげんになったのだ。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、夕暮ゆうぐれは、ちょうど、そのさんごのように夕焼ゆうやけがいろどるのですよ。
花咲く島の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とちのきも、しらかばのも、黙々もくもくとして、やがてやってくる凋落ちょうらく季節きせつかんがえているごとくでありました。あたりのたににこだまして、夕暮ゆうぐれをげるひぐらしのこえが、しきりにしています。
谷間のしじゅうから (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのしまには、白鳥はくちょうがたくさんすんでいますが、二人ふたりふえいたり、おどったりしている海岸かいがんには、ことにたくさんな白鳥はくちょうがいて、夕暮ゆうぐがたそらっているときは、それはみごとであります。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、このにただ一わすれがたいおもがあるのでありました。それは、あるとしなつ夕暮ゆうぐがたのことであります。あんなにうつくしいくもたことがありません。そのくもは、じつにうつくしいくもでした。
山の上の木と雲の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)