べか)” の例文
なんとなれば娼婦型の女人はただに交合を恐れざるのみならず、又実に恬然てんぜんとして個人的威厳を顧みざる天才をそなへざるべからざればなり。
娼婦美と冒険 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
為世はそれに対しては「万葉集の耳遠き詞などゆめゆめ好み読むべからず」と一本くぎをさして、「詞は三代集をづ可らず」を固く守る。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
第六条 敢為活溌かんいかっぱつ堅忍不屈けんにんふくつの精神を以てするに非ざれば、独立自尊の主義をじつにするを得ず。人は進取確守の勇気を欠くべからず。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
武田君の説けるが如くなりしやも知るべからざるも、此名に関しては『正保図』以外に所見なければ、何等的確なる判断を下すこと能わず。
古図の信じ得可き程度 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
(一)平民的文学 学問の勧めが世の中に歓迎せらるゝ頃は文学は平民的ならざるべからずてふ思想は一般の風潮なりしが如し。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
誰がこの否むべからざる目前の事実に驚異せずにはいられよう。地上の存在をかく導き来った大きな力はまた私の個性の核心を造り上げている。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
救ふべからざる沒分曉漢わからずやは別として、多少なりとも文藝の作品に親しみを持つ人は、その主義や趣味の相違からあきたらず思ふ點はあるに違ひ無いが
貝殻追放:011 購書美談 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
つかせ給ひながら是は内々なり必ず沙汰さたべからずとおほせられたるがかく吉宗公が溜息ためいきつかせ給ふは抑々そも/\天一坊の身の上をおぼめしての事なり世の親の子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
地球の緯度線が草鞋わらじの爪先に引っかかるわけである、しかも争うべからざるは朝の神秘なり、一たび臨むとき、木偶でくには魂を、大理石には血をあたえる。
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
ゆえに余輩は彼を知るに於て、彼の日記を通して彼の過去を知るは勿論もちろん、馬島に於ける彼が日常をも推測せざるべからず。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
イヤそりゃ今までの経験で解ります、そりゃおおべからざる事実だから何だけれども……それに課長の所へ往こうとすれば、是非ともず本田に依頼を
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
多聞兵衛たもんひょうえ死せる場合、決して死骸を焼くべからず、左右の胸を調ぶきこと、一切の謎おのずから解けん」
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
して見ると、万年筆が輸入されてから今日迄に既に何年を経過したか分らないが、かく高価の割には大変需要の多いものになりつつあるのは争うべからざる事実の様である。
余と万年筆 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此時このときは一しゆべからざるの凄氣せいきたれたのである。此所こゝこれ、千すう年前ねんぜんひとほうむつた墳墓ふんぼである。その内部ないぶきながらつてつのである。白骨はくこつけるにあらぬか。
自宅うちにて教授をする時にわたしわずかなるたくわえにてあがないしもので、二面共にわたしにとっては忘るべからざる紀念きねんの品である、のみならず、この苦しく悲しきながの月日のこの中外うちそとを慰めたのもこの品
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
恋愛は各人の胸裡きょうりに一墨痕を印して外には見るべからざるも、終生まっすること能わざる者となすの奇蹟きせきなり。然れども恋愛は一見して卑陋ひろう暗黒なるが如くに、その実性の卑陋暗黒なる者にあらず。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
作りし当時は誰しも多少の己惚うのぼれはまぬかるべからざることながら、小生の如きは全く俳道に未熟のいたすところ実に面目なき次第に候。過日子規より俳書十数巻寄贈し来り候。大抵は読みつくし申候。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
天下の男子にして女大学の主義を云々するは、多くは此好色男子の類にして、我田に水を引くものなり。女子たる者は決して油断すべからず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
予等よらは芸術の士なるが故に、如実によじつに万象をざるべからず。少くとも万人の眼光を借らず、予等の眼光を以て見ざる可らず。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
是非共二三十羽の孔雀を捕獲致さざるべからずと存候ぞんじそろ。然る所孔雀は動物園、浅草花屋敷等には、ちらほら見受け候えども、普通の鳥屋などには一向いっこう見当り不申もうさず苦心くしん此事このことに御座そろ。……
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
入口に林区署員の外みだりに入るべからずという意味のことが立てかけた板に書いてある。去年は見なかったものだ。むを得ないから片隅を借用することにした。田部君は夕食の支度にかかる。
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「なにしろ、母親さんは、神聖にして犯すべからず——吾家うちじゃそう成っていましたからネ。しかし、叔父さん、小泉忠寛翁の風貌ふうぼうを伝えたものは——貴方の姉弟中で、吾家の母親さんが一番ですよ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
如何に自分が大正化學工業株式會社にとつて缺くべからざる働手はたらきてであるか、如何に社長に信用されて居るか、如何に部下に怖れられて居るかと云ふ樣な、お山の大將のほこりを得々としてひけらかした。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
古語こごに曰く君子はあざむくべししゆべからずとはむべなるかなすべ奸佞かんねいの者に欺かるゝはおのれが心の正直しやうぢきより欺かさるゝものなりじつに其人にしてなす而已のみ其のあざむく者は論ずべからず其さい不才ふさいに依るにあらざるか爰に伊勢屋五兵衞の養子千太郎は父の病中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
左れば父母たる者の身を慎しみ家を治むるは独り自分の利益のみに非ず、子孫の為めにのがべからざる義務なりと知る可し。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ただ、閣下は、これらが皆疑うべからざる事実だと云う事を、御承知下さればよろしゅうございます。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
イブセンの作に曲ぐべからざる生命のあるものは其故そのせいだろうと思う。
予の描かんと欲する作品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仰げば峭壁峙立、絶えず崩石あり、到底近づくべからず。九時二十分、小窓の裏なる雪渓に向って下り始む、綱にすがりて絶壁を下るもの二度。十一時、雪渓に達す。十一時四十分、大窓裏の雪渓合流点。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
第一条 人は人たるの品位を進め、智徳をみがき、ます/\其光輝を発揚するを以て、本分とさざるべからず。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
ただし、当局はその真相を疑い、目下犯人厳探中の由なれども、諸城しょじょう某甲ぼうこうが首の落ちたる事は、載せて聊斎志異りょうさいしいにもあれば、がい何小二の如きも、その事なしとは云うべからざるか。云々。
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
第三条 みずから労して自からくらふは、人生独立の本源なり。独立自尊の人は自労自活の人たらざるべからず。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
親心に無きてい相見え、多少とも哀れには存じ候へども、私情を以て、公道を廃すべからざるの道理に候へば、如何様いかやう申し候うても、ころび候上ならでは、検脈かなひ難き旨、申し張り候所、篠
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
共に苦楽をともにするの契約は、生命を賭して背くべからずと雖も、元来両者の身の有様を言えば、家事経営に内外の別こそあれ、相互に尊卑の階級あるに非ざれば
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
予は殺人の計画をふたたびし、その実行を再し、更に最近一年間の恐る可き苦悶を再せざるべからず。是果して善く予の堪へ得可き所なりや否や。予は今にして、予が数年来失却したるわが耶蘇基督ヤソキリストに祈る。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
れば子に対して親の教をゆるがせにすべからずとは尤至極もっともしごくの沙汰にして、もある可きことなれども女子に限りて男子よりも云々とは請取り難し。男の子なれば之を寵愛してほしいままに育てるも苦しからずや。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
紛々ふんぷんたる毀誉褒貶きよはうへん庸愚ようぐの才が自讃の如きも、一犬の虚に吠ゆる処、万犬また実を伝へて、かならずしもピロンが所謂いはゆる、前人未発の業とべからず。寿陵余子じゆりようよし生れてこの季世にあり。ピロンたるもまた難いかな。
始めて予が心の創痍さういを医し得たるの一事は疑ふべからず。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)