価値ねうち)” の例文
旧字:價値
戦いは敗れ、国はけずられ、国民の意気鎖沈しなにごとにも手のつかざるときに、かかるときに国民の真の価値ねうちは判明するのであります。
浮気うわき男におなりになるのもやむをえないほどきれいに生まれておいでになる方が、まじめ顔をされてはかえってお価値ねうちも下がるだろうが
源氏物語:45 紅梅 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と思うと、もう生きている価値ねうちがない、死んだ方が好い、死んだ方が好い、死んだ方が好い、とかれは大きな体格を運びながら考えた。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
香取秀真かとりほつま氏が法隆寺の峰の薬師で取調べたところにると、お薬師様に奉納物ほうなふものの鏡には、随分すぐれた価値ねうちのものもすくなくなかつたが
それだけでも驚く価値ねうちは十分あるが、その広い原の中に大きな囲炉裏いろりが二つ切ってある、そこへ人間が約十四五人ずつかたまっている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
アイスクリームだからそれで済むけれども価値ねうちのない人に恋愛して後に至ってその価値がない事を発見したらモー後悔しても追付おっつかん。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「蛸とくあのくたら。」しかり、これだけに対しても、三百三もんがほどの価値ねうちをお認めになって、口惜くやしい事はあるまいと思う。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
再起の綾之助の語り口も、以前の浮気な人気ではなく、まったく価値あるものとして価値ねうち附けられ、真にみわけた人生の味を、期待された。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「どうして知っているとおっしゃったって、そこはこの金助でなければわからないのでございます、そこが金助の価値ねうちなんでございます」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかしわしがやつて来た一切のことは、このままわしが何もせずに、のらくらと生きてゆくなら、何の価値ねうちもないではないか。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
師匠から人間的な価値ねうちのないお方と、承り、憎しみも、さげすみもいたしているお方ではございますものの、ただ、うっとりと
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
よく「嬰児みどりごごとかれ」などと言いますが、「如かれ」というところに価値ねうちがあります。もし「嬰児たれ」と言ったとしたら、その言葉はゼロです。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「つまり、洞窟ほらあなが大事だからだ。洞窟に価値ねうちがあるからだ。で、その洞窟へ泥棒どもを侵入させないそのために、浮き岩なる物が作られたのさ」
弁護士が丑松に紹介したの大日向といふ人は、見たところ余り価値ねうちの無ささうな——丁度田舎の漢方医者とでも言つたやうな、平凡な容貌かほつき
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そうしてこの義務を果たすことができれば、それによって、自分は自分の生涯の大きな価値ねうちと幸福とを、そこにも見いだすことができるからです。
親子の愛の完成 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
三百両ぐらいの価値ねうちは確かで御座いますがトテモ千両なんて踏めるシロモノじゃ御座んせん。御自身で読んで御覧になれあ、おわかりになります。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
馬鹿なことばかり言って、貴様達は、買って自分のものにした土地と、こうして開墾して自分のものにする土地の、価値ねうちの区別を知らねえんだものな。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ものを云えるのア会社代表の須田さんとこの俺だ。お前なんぞ、船長と云ってりゃ大きな顔してるが、糞場の紙位えの価値ねうちもねえんだど。分ってるか。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
其の文章は四角な文字ばかりでわたくしどもには読めませんが、是もまた名文で、今日こんにちになっては其の書物かきものばかりでも大層な価値ねうちがあると申す事でございます。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
学問がくもん智識ちしき富士ふじやまほどツても麺包屋ぱんやには唖銭びた一文いちもん価値ねうちもなければ取ツけヱべヱは中々なか/\もつてのほかなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
はばかりながら御鼻おんはなの下ながながと見えさせ給へば、そんじよ其処そこらにそれ大した御男子様ごなんしさまとて、分厘ふんりん価値ねうちも無しと、辻に立ちて御慮外をまうすもありけり。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それに持ってる物と言ったら、三フランの価値ねうちもない古帽子、胸のボタンがとれてる上衣、シャツは裂けてるし、ひじはぬけてるし、くつには水がはいってくる。
またそんなことを気にして、かれこれいうような人なれば、友として交際する価値ねうちなきものと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
我輩わがはい一昨日は、英国大使館の園遊会ガードンパーティに行きましたがね。とても、本日の盛況には及びませんね。もっとも、この名園を見るだけでも、来る価値ねうちは十分ありますからね。ハヽヽヽ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
今日の予定は弁天島も岡崎も悉皆すっかり流れてしまいそうだ。お上さんの勧誘によると弁天島は静岡名古屋間唯一の遊覧地だから、もう一日逗留しても見て行く価値ねうちがあるそうだ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これを玩弄物もてあそびものにして、対等の「人」たる価値ねうちを御認めにならぬのは、例えば生殖の道においてのみ交渉を御認めになるというようなのは、いまだ古い思想にしばられておられるか
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
「それは、もう、それだけの価値ねうちのあるものでしたらそれっきりになんぞなるわけがありません。いつか、また、きッと時節がまわって来ます。——でなかったら、あなた……」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
で、普通の日本人の考慮かんがえから云うと、殺した方の人が化けて出るというのは、と理屈に合わぬようにきこえるが、何分にも其処そこが怪談、万事不可思議の所が事実譚じじつだん価値ねうちであろう。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
玉を置くとも羞かしからぬ設けの席より、前は茶庭の十分なるびを見せて、目移りゆかしくここを価値ねうちの買いどころと、客より先に主人の満足は、顔に横撫でのすすを付けながら
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
この記事はイエスの価値ねうち減殺げんさいするものではありません。かえって我々に対する大なる慰藉いしゃと希望の源泉であります。家族、親戚、または郷里に対する伝道は最も困難な伝道です。
門柱太しく立てし黒板塀、官員様ならば高等官三四等がものはある御生活くらし向き。旦那様のお時計と指輪だけにても、確かに千円の価値ねうちはと、隣の財宝たから羨むものの秘かにお噂申しける。
今様夫婦気質 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
彼女あれは今まで自己おのれ価値ねうちを知らなかったのである、しかしあの一条からどうして自分おれのような一介の書生しょせいを思わないようになっただろう……自分おれには何もかもよくわかっている。』
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
沈黙男子の価値ねうちはとうに消磨すりきえてしまったが、かの手紙を出してから数えるとおよそ十日の後、国元の父庄右衛門が前触さきぶれもなくにわかに出京して、着したばかりでただちに秋元へ尋ねて来た。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
……でも無理むりにそんな真似まねをして、足利時代あしかがじだい絵巻物えまきものをくりひろげておにかけてたところで、たいした価値ねうちはございますまい。現在げんざいわたくしとしては到底とうていそんな気分きぶんにはなりかねるのでございます。
私はあなたに愛される価値ねうちがありません。私は汚れています。あなたは清い清い玉のようなおからだです。私はすみません。私は泣いて耐え忍びます。これまで何もかもこらえて来たのですもの。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
この骨の節々が太くて指先と頬辺とが柔かいほど、子供としての価値ねうちがあるんです。骨組がひょろひょろしていて、頬がざらざらしてるのなんかは、全く駄目なんです。あなたはそう思いませんか。
林檎 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
あの皿は古びもあれば出来もい品で、価値ねうちにすればその猪口とは十倍もちがいましょうに、それすら何とも思わないでお諦めなすったあなたが、なんだってそんなに未練らしいことをおっしゃるのです。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『私の死様をよく見届けて下さい、見ておく価値ねうちがありますよ』
自責 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
愛を捧げて価値ねうちあるものゝみをこそ愛しなば
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
きつかたき不足ふそくはせぬ。花片はなびらゆきにかへて、魔物まもの煩悩ぼんなうのほむらをひやす、価値ねうちのあるのを、わたくしつくらせませう、……おぢいさん
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そんな人にはこの方の価値ねうちはわかりますまい。お姫様はものの理解の正しい同情心の厚い方におとつがせいたしとうございます。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それにようやく人物の価値ねうちの分るようになった彼女は前沢との間が面白くなくなりだした。満されないものがはびこりはじめた。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
大原「イヤ一向知りません。代価は」書生「六十九銭五厘」大原「安いようですな」書生「安いけれども珍らしい処に価値ねうちがある。マアこれを ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しかし小野さんの価値ねうちは分りません。けっして分りません。一さんをめる人に小野さんの価値が分る訳がありません。……
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
虚無なんて事を考える女は、女として価値ねうちのない女でしょうか。同窓の人達は皆私を「火星の女」とか「男女おとこおんな」とか綽名を付けておられたようです。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
見れば他のは佐渡牛といふ種類で、一頭は黒く、一頭は赤く、人間の食慾を満すより外には最早もう生きながらへる価値ねうちも無い程にせて、其憔悴みすぼらしさ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いかにその子の活力が旺盛おうせいにみえていても、それはただ動物的本能的なもので、価値ねうちのほとんど少ないものである。
たましいの教育 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
甚「ナニ些とも驚くこたアねえやア、二十五座の衣裳でめん這入へえってるんだ、そりゃア大変に価値ねうちのある物で、一個ひとつでもって二百両ぐれえのがあるよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
昨夜いつごろ金を盗んだかわからないが、それから往復十二里の道を子供のくせに平気で歩いて来たと聞いただけで、きもをつぶす価値ねうちが充分あるのです。
のみつぽけな馬車をかす蚤飼の話は噂に聞いてゐるのみで、実地見た事はないが、虱は唯もうその辺を這ひ回るのみで、芸人としては一向価値ねうちが無い。