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乙
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おつ
ふりがな文庫
“
乙
(
おつ
)” の例文
ちょうど、その
日
(
ひ
)
の
昼過
(
ひるす
)
ぎごろでありました。
乙
(
おつ
)
は、
顔
(
かお
)
をあげて、
沖
(
おき
)
の
方
(
ほう
)
を
見
(
み
)
ますと、まごう
方
(
かた
)
なき、なつかしい
船
(
ふね
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
ました。
幽霊船
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
片腕のないところもまた
乙
(
おつ
)
でしょうけれど、あの男が片腕をなくしたわけを聞いてしまったらお前さん、三年の恋も
冷
(
さ
)
めるでしょう。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
きれいな顔をして
乙
(
おつ
)
に済ましたようなことを云ったって、人間ひと
皮剥
(
かわむ
)
けばみんなけだものさ、色と欲のほかになんにもありゃしない
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
通人
(
つうじん
)
めいた頭巾なんかかぶりやがって、丹三の野郎、
乙
(
おつ
)
に片づけやがったなと、まず坊主頭がせいぜいいきり立って突っかかった。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかるに
甲
(
こう
)
の政党と
乙
(
おつ
)
の政党とはその主義を
異
(
こと
)
にするために仲が悪い、仲が悪くとも国家のためなら争闘も止むを得ざるところであるが
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
▼ もっと見る
その
上
(
うへ
)
個人
(
こじん
)
には
特殊
(
とくしゆ
)
の
性癖
(
せいへき
)
があつて、
所謂
(
いはゆる
)
好
(
す
)
き
嫌
(
きら
)
ひがあり、
甲
(
かふ
)
の
好
(
この
)
む
處
(
ところ
)
は
乙
(
おつ
)
が
嫌
(
きら
)
ふ
處
(
ところ
)
であり、
所謂
(
いはゆる
)
蓼
(
たで
)
喰
(
く
)
ふ
蟲
(
むし
)
も
好
(
す
)
き
好
(
ず
)
きである。
建築の本義
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
助八 先棒を
嵩
(
かさ
)
にきて、
乙
(
おつ
)
う
大哥風
(
あにいかぜ
)
を吹かすなら、おめえの亭主なんぞは頼まねえ。これからは兄貴とおれとが相棒で稼ぎに出るばかりだ。
権三と助十
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
主人は不満な
口気
(
こうき
)
で「第一気に喰わん顔だ」と
悪
(
にく
)
らしそうに云うと、迷亭はすぐ引きうけて「鼻が顔の中央に陣取って
乙
(
おつ
)
に構えているなあ」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
乙
(
おつ
)
に気取った内容の空虚な処ばかりを取集めて高尚がった芸術で、それを又ほかの芸術に向かない奴が、寄ってたかって珍重するのだろう……
能とは何か
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
民衆にとって、僕はやはり、キザったらしく
乙
(
おつ
)
にすました気づまりの男でした。彼等は僕と、しんから打ち解けて遊んでくれはしないのです。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
とか、てめえはてえそうきいたふうな
言
(
こと
)
をぬかすのう。などゝ云うと、
三馬
(
さんば
)
や
春水
(
しゅんすい
)
の人情本では
乙
(
おつ
)
だが、明治の聖代に
母親
(
おふくろ
)
の口から出ては物凄い。
The Affair of Two Watches
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
新婦は
杓子面
(
しゃくしづら
)
のおツンさんで、欠点をさがしだそうとする満座の眼が、自分に集中しているのを意識しながら、
乙
(
おつ
)
にすまして、
羞
(
はに
)
かもうともしない。
春雪
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
利かして、寝酒の一杯も、差し入れてくれそうなものだと思っていたのだよ——
柄
(
がら
)
こそ
不意気
(
ぶいき
)
だが、どこかこう
乙
(
おつ
)
なところのあるお人なんだから——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
……わたしは、あれほど
乙
(
おつ
)
に気どり
澄
(
す
)
ました、うぬぼれの強い、
独
(
ひと
)
りよがりの男を、いまだかつて見たことがない。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
王仁とそのままでは済まない
筈
(
はず
)
だが、木兵衛という奴、理知聡明、学者然、
乙
(
おつ
)
にすまして、くだらぬ女に
惚
(
ほ
)
れてひきずり廻されて、
唯々諾々
(
いいだくだく
)
というのだが
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
すると南瓜のやつは、扇子で一つその鉢の開いた頭をぽんとやつて、「どうでげす。新技巧派の
太鼓持
(
たいこもち
)
もたまには又
乙
(
おつ
)
でげせう」つて云ふんだ。悪い
洒落
(
しやれ
)
さね。
南瓜
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
乙
(
おつ
)
の上」と先生は冷然とおっしゃいます。やれやれ。こんなにすばらしく書いたのにやっぱり乙の上か。
決闘
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
そこへ行くと、先生は芸術家とか何とか言って、
乙
(
おつ
)
に構えてもいられる……大した相違のものだネ
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
お勢は例の事を種にして
乙
(
おつ
)
うからんだ水向け文句、やいのやいのと責め立てて、
終
(
つい
)
には「仰しゃらぬとくすぐりますヨ」とまで迫ッたが、石地蔵と生れ付たしょうがには
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
お前さんが
彼
(
あ
)
の娘の得心するように旨く調子よく、そこは棟梁さんだから
万一
(
ひょっと
)
して岡惚れしないものでもないよ、はい只今明けますよ…あの道は又
乙
(
おつ
)
なものだから…はいよ
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その上ちよいと
乙
(
おつ
)
な喉で、流行唄などを聽かせて、お客樣をやんやと言せて居ります。
銭形平次捕物控:319 真珠太夫
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
勝負は小勝負九度を重ねて完結する者にして小勝負一度とは
甲
(
こう
)
組(九人の味方)が
防禦
(
ぼうぎょ
)
の地に立つ事と
乙
(
おつ
)
組(すなわち甲組の敵)が防禦の地に立つ事との二度の半勝負に分るるなり。
ベースボール
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
カピューレット
長者
(
ちゃうじゃ
)
を
先
(
さき
)
に、
同
(
おな
)
じく
夫人
(
ふじん
)
、
乳母
(
うば
)
、
并
(
なら
)
びに
下人
(
げにん
)
甲
(
かふ
)
、
乙
(
おつ
)
、
從
(
つ
)
いて出る。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
「そんな寝言を聞く小六じゃない。貴様は若い侍と
乙
(
おつ
)
な
気味
(
きあじ
)
になったそうだが、この小六がなければ知らぬこと、無分別な浮気沙汰をいつまでもしていると、しまいには身の破滅だぞよ」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
マドロス・パイプを
乙
(
おつ
)
に
銜
(
くわ
)
え、落着いて
煙
(
けむり
)
をくゆらす彼の態度にはなにか信用できるものがあって、ぼくはくれぐれもその
噂
(
うわさ
)
を打消すように頼むと、こんどは、階段を飛ぶように降りて
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
べらぼうめ、
南瓜畑
(
かぼちやばたけ
)
に
落
(
おつ
)
こちた
凧
(
たこ
)
ぢやあるめえし、
乙
(
おつ
)
うひつからんだことを
言文一致
(新字旧仮名)
/
水野葉舟
(著)
「咳払いがさ、お前の。佃もそんな、
乙
(
おつ
)
う気取ったような咳払いをするよ」
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「オヤ、こいつ
乙
(
おつ
)
にからんだことをぬかしやがるな」
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
客の小山先ず一口
味
(
あじわ
)
い「なるほどこれは妙な酒だ。まるで仙人の飲みそうなものだ。
仙家
(
せんけ
)
の菊水とでもいうようだね」小山の妻君も「私にも戴けますね、大層結構です」大原も「これは
乙
(
おつ
)
だ」と一口に飲み干さんとするを
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
あれはあれでちよつと
乙
(
おつ
)
な味がしたぞ。
鳥料理:A Parody
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
「うふ、ふ」と、
乙
(
おつ
)
な笑いが聞えた。
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
「矢っ張りあなたは
乙
(
おつ
)
の頭ね」
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
乙
(
おつ
)
な桜の アラ ナントネ
祇園の枝垂桜
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
乙
(
おつ
)
の調子で話す
方
(
かた
)
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「いくら
考
(
かんが
)
えたってしかたがないことだ。
俺
(
おれ
)
たちは
働
(
はたら
)
くより
途
(
みち
)
がないのだ。」と、
乙
(
おつ
)
は
甲
(
こう
)
を
悟
(
さと
)
し、
自分
(
じぶん
)
を
勇気
(
ゆうき
)
づけるようにいいました。
一本の釣りざお
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
僕がその裏を指摘して、こっちから見るとその君にもまた軽蔑すべき点があると注意しても、君は
乙
(
おつ
)
に高くとまって平気でいるじゃないか。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「いえ、ひろってきたわけではないので。駒形の高麗屋敷の、とある横町を屑イ、屑イと流していますと、
乙
(
おつ
)
な年増が、チョイト屑屋さん……」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と
乙
(
おつ
)
に絡んで
捻
(
ね
)
じ返してくれた。吾れながら感心するくらい頭がヒネクレて来たもんだからね……ところが
流石
(
さすが
)
は商売柄だ。これ位の逆襲には
凹
(
へこ
)
まなかった。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「癖にしてはあんまり
性質
(
たち
)
がよくねえようだ、何かこっちに恨みがあってするような
乙
(
おつ
)
な真似をしやあがる」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「姐さんがいないと思って
乙
(
おつ
)
う幅を利かすね」と、お若はお花のうしろ姿を見送って言った。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
こいつを一つ十
法
(
フラン
)
で買ってさ、うまく育てりゃ、アンタ、何千法に売れようてんだ。ものはためしだ、一つお買いなさいヨ。コルシカに象がいるなんてのも
乙
(
おつ
)
リキシャッポでサ
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
あるいは
謄写
(
とうしゃ
)
したりして教師の目をくらますことである、それには全級の
聯絡
(
れんらく
)
がやくそくせられ、
甲
(
こう
)
から
乙
(
おつ
)
へ、乙から
丙
(
へい
)
へと答案を回送するのであった、もっと巧妙な作戦は
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
清「左様なら旦那さま、斯様致しましょう、お料理を取換えましょう、ちょいとお
芳
(
よし
)
どん、是をずっと下げて、何か
乙
(
おつ
)
な、ちょいとさっぱりとしたお刺身と云ったようなもので、えへゝゝ」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
柳
(
やなぎ
)
の
精
(
せい
)
か、
梅
(
うめ
)
の
化身
(
けしん
)
か、声すずしく手は白く、覆面すがたに
似合
(
にあ
)
わないやさしいすがたの者ばかりで、
甲
(
こう
)
、
乙
(
おつ
)
、
丙
(
へい
)
、
丁
(
てい
)
、どの
影
(
かげ
)
もすべて一
体
(
たい
)
の
分身
(
ぶんしん
)
かと思われるほどみなおなじ
背
(
せ
)
かたちだ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「フム
乙
(
おつ
)
う山口を弁護するネ、やっぱり同病
相憐
(
あいあわ
)
れむのか、アハアハアハ」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ふん、
乙
(
おつ
)
に気取ってるよ、この人、なにさ、まさか大名の若さまでもあるまいし、こんなとこへ来て気取ったっておけらも笑やあしないよ。おれは気取ってなんかいやあしねえ、うるせえぞ。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
夜番
(
よばん
)
の
者
(
もの
)
甲
(
かふ
)
、
乙
(
おつ
)
、
丙
(
へい
)
、
其他
(
そのた
)
多勢
(
おほぜい
)
パリスの
侍童
(
こわらは
)
を
案内者
(
あんないじゃ
)
にして出る。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
あれはあれでちょっと
乙
(
おつ
)
な味がしたぞ。
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「
乙
(
おつ
)
う
洒落
(
しゃれ
)
てるね」
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「ほんとうでございます。ほかに
頼
(
たの
)
みになる
人
(
ひと
)
もおたがいにないのだから、
助
(
たす
)
け
合
(
あ
)
わなければなりません。」と、
乙
(
おつ
)
は
答
(
こた
)
えました。
自分で困った百姓
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
“乙”の解説
乙(おつ、きのと)は、十干の2番目である。
陰陽五行説では木性の陰に割り当てられており、ここから日本では「きのと」(木の弟)ともいう。
(出典:Wikipedia)
乙
常用漢字
中学
部首:⼄
1画
“乙”を含む語句
乙女
乙卯
乙鳥
乙羽
乙州
乙亥
甲乙
天津乙女
乙丑
乙名
早乙女
乙女心
乙吉
乙子
乙御前
乙骨
石上乙麻呂
山家乙女
新田乙蔵
乙甲
...