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かみて
ふりがな文庫
“
上手
(
かみて
)” の例文
(あさ)(買って来た魚のはいっている
籠
(
かご
)
やら、
角巻
(
かくまき
)
——津軽地方に於ける外出用の毛布——やらを
上手
(
かみて
)
の台所のほうに運びながら)
冬の花火
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その階上で歓迎の茶菓を饗せられて、『樺太要覧』という小本と絵葉書とを一同が貰って、また少し
上手
(
かみて
)
の新築の小学校へ入った。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
上手
(
かみて
)
から一人の着物の前をはだけてひき
擦
(
ず
)
るように着た痩せた男が路いっぱいにふらりふらりと大股に左右に揺れて降りてくるのを見た。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
この間に、帆柱からやや離れて
上手
(
かみて
)
へ廻った背の高いのが、
諸手
(
もろて
)
に斧を振り上げて、帆柱の眼通り一尺下のあたりへ、かっしと打ち込む。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして
賑
(
にぎや
)
かな
囃
(
はやし
)
の音につれて、シャン、シャンと鳴る
金棒
(
かなぼう
)
の音、
上手
(
かみて
)
から
花車
(
だし
)
が押し出してきたかのように、
花魁道中
(
おいらんどうちゅう
)
が
練
(
ね
)
り
出
(
だ
)
してきた。
間諜座事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
……(あたりを見まわして)まるでこりゃ
生世話物
(
きぜわもの
)
だな。……
上手
(
かみて
)
はおあつらえむきの葦原、下手は土手場で木場につづくこころ、か……。
金狼
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ちょうど、同じくらいの距離を
上手
(
かみて
)
に行くと、旧藩暗代の名高い土木家が植えたという杉並木がある。次郎は、そのどちらも好きであった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
上から落ちる光は少し
上手
(
かみて
)
を照らしてはゐるが、恐らく先生の背中までは届いてをらぬであらう。そして先生の前方は無論闇の塊りであつた。
群集の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
見ることにし、あとの半分は、木戸の外に飛び出して、
上手
(
かみて
)
、
下手
(
しもて
)
から、溜池のあたりまで調べましたが、曲者が逃げた樣子もなかつたのです
銭形平次捕物控:219 鐘の音
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
舞台は、
上手
(
かみて
)
障子内に
蚊帳
(
かや
)
を吊り、六枚屏風を立てて、一体の作りが浪人
住居
(
ずまい
)
の体。演技はすでに幕切れに近かった。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その男は自分の
上手
(
かみて
)
に坐つた禿頭が石黒氏だと知ると、
懐中
(
ふところ
)
から大きな名刺を取り出して、石黒氏の膝の上に置いた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
五月下旬のある日、ふと東海道の木橋の
上手
(
かみて
)
にある沈床の岸に立って瀬脇をながめると、遡りに向かった若鮎が盛んに水面に跳ねあがるのを発見した。
想い出
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
太陽の第一
箭
(
せん
)
が雲間を破って空を走った。このとき、次郎の
愛撫
(
あいぶ
)
に身をまかせていたフハンが、両耳をキッと立てて鼻を鳴らすと、
河岸
(
かし
)
を
上手
(
かみて
)
へ走った。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
上手
(
かみて
)
の清水はゆたかに湧きながれて、朝日は浅いながれの小砂利の上を嬉々と戯れて走っているようであった。
庭をつくる人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ところで、おれには叔父がひとりあって、村の
上手
(
かみて
)
を支配していた。たいへんな長者だが、ひどく意地の悪い人で、おそろしい欲ばりだという評判だった。
あの世の入口:――いわゆる地獄穴について――
(新字新仮名)
/
知里真志保
(著)
五人
斃
(
たお
)
れた血煙の霧だろう——と見れば刹那に弦之丞の姿、
逆風剣
(
ぎゃくふうけん
)
の
切
(
き
)
ッ
尖
(
さき
)
を、
上手
(
かみて
)
の者の足もとに
薙
(
な
)
ぎつけて、まっしぐらに坂の上手へ踊り進んでいる。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
下手
(
しもて
)
の背景は松並木と稲村の
点綴
(
てんてい
)
でふち取られた山科街道。
上手
(
かみて
)
には新らしく掘られた空堀、築きがけの土塀、それを越して
檜皮葺
(
ひわだぶ
)
きの御影堂の棟が見える。
取返し物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
一つは
上手
(
かみて
)
のアンタン大道の方へ、一つは
下手
(
しもて
)
のサン・タントアーヌ郭外の方へと、厳重に監視していた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
圍
(
かこ
)
ひの中の
上手
(
かみて
)
にある花壇や果樹床の間を歩く内、私の足は止つた——物音がしたのでもなく、何か見えたのでもなく、前知らせをするやうな匂ひの爲めである。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
颯
(
さっ
)
と
浴衣
(
ゆかた
)
をかなぐり
棄
(
す
)
てると
手拭
(
てぬぐい
)
片手
(
かたて
)
に、
上手
(
かみて
)
の
段
(
だん
)
を二
段
(
だん
)
ばかり、そのまま
戸袋
(
とぶくろ
)
の
蔭
(
かげ
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
した。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
不図
(
ふと
)
気
(
き
)
がついて
見
(
み
)
ると、
下方
(
した
)
を
流
(
なが
)
るる
渓流
(
たにがわ
)
の
上手
(
かみて
)
は十
間
(
けん
)
余
(
あま
)
りの
懸崕
(
けんがい
)
になって
居
(
お
)
り、そこに
巾
(
はば
)
さが二三
間
(
けん
)
ぐらいの
大
(
おお
)
きな
瀑布
(
たき
)
が、ゴーッとばかりすさまじい
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てて
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
水は早し、
川幅
(
かわはば
)
は一丁には越えぬ。惜しと思うまに渡してしまって、舟は平等院
上手
(
かみて
)
の岸についた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と、
上手
(
かみて
)
より一人の老人、
惣菜
(
そうざい
)
の岡田からでも出て来たらしい様子、
下手
(
しもて
)
よりも一人の青年出で来たり、門のまえにて双方生き逢い、たがいに挨拶すること宜しくある。
半七捕物帳:10 広重と河獺
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
堆肥
(
つみごえ
)
ぎようさん入れて一寸でも二寸でも甘土あ肥やすし、
上手
(
かみて
)
の方さ土手作つて雨降つても
大丈夫
(
でえぢやうぶ
)
のやうな工夫もした。そしてやつとこさ四俵はとれるやうになつたんや。
黎明
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
兩國といへばにぎわ
敷
(
しき
)
所
(
ところ
)
と聞ゆれどこゝ二洲
橋畔
(
けうはん
)
のやゝ
上手
(
かみて
)
御藏
(
みくら
)
橋近く、一代の
富
(
とみ
)
廣
(
ひろ
)
き庭廣き家々もみちこほるゝ
富人
(
ふうじん
)
の構えと、昔のおもかげ殘る武家の邸つゞきとの
片側町
(
かたかはまち
)
うづみ火
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
いつもいつも
上手
(
かみて
)
の年古りた柳の影で、不断に轟々然たる物凄まじい響きを挙げて回り続けてゐる水車であつたから、このあたりの流れは白く泡立ち煮えくり返つてゐるすがたで
バラルダ物語
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
片品川が大清水の
上手
(
かみて
)
で、
粘
(
ねば
)
沢と三平峠から来る沢とを分ち、三叉状をなしているその中央の本流を指して呼ぶ名であって、それが東北流又東流し、再び東北に転向するに至って
上州の古図と山名
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
芝居の
上手
(
かみて
)
下手
(
しもて
)
の入口は能楽の
切戸
(
きりど
)
(
臆病口
(
おくびょうぐち
)
ともいふ)に似て更に数を増して居る。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
ずっと
上手
(
かみて
)
に、まるで知らない顔に挾まれ、里栄が一人おとなしく踊っている。
高台寺
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
宿屋に歸り、折柄の自動車に飛び乘り、長篠に出で、折角の奇遇をこのまゝ別るゝも辛く、其處より二三驛
上手
(
かみて
)
の湯谷温泉まで行つて共にゆつくり話さうといふことになり、電車に乘つた。
梅雨紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
するといつの間に来たものか鐘ヶ淵の汽船発着所の
上手
(
かみて
)
に農科の艇らしいのが休んでいる。急いで望遠鏡を取り出して
眺
(
なが
)
めると、舵手の着ている目印の黒マントルがはっきり鏡底に映じた。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
そこへ村の男が一人
上手
(
かみて
)
から来て涼亭の中へ入って来る。竹で編んだ笠を着けて、手の付いた
笊
(
ざる
)
に
瓜
(
うり
)
のような物を入れ、それを左の
肱
(
ひじ
)
にかけているが、蒲留仙を見つけると皮肉な眼付をする。
涼亭:――序に代へて――
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
其時
上手
(
かみて
)
の室に、忍びやかにはしても、男の感には触れる
衣
(
きぬ
)
ずれ足音がして、いや、それよりも
紅燭
(
こうしょく
)
の光がさっと射して来て、前の女とおぼしいのが銀の燭台を手にして出て来たのにつづいて
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
上手
(
かみて
)
から流れて来たので、高橋さんはそれに乗りうつり、氏一人を見かねてとびこんで来た
河田
(
かわだ
)
軍医と二人で、岸から岸へ綱をわたし、それをたよりに、わずか一そうの船で、すべての患者を
大震火災記
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
上手
(
かみて
)
と
下手
(
しもて
)
の両方からダンシング・チームがさっと舞台へ駆け出て来た。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
上手
(
かみて
)
四分の一がほどを占めて正面の石段により登りぬべき鐘楼
聳
(
そび
)
え立ち、その角を過れる
路
(
みち
)
はなお奥に上る。下手舞台のつくる一帯は谷に落ち行く森に臨み、奥の方に一路の降るべきが見えたり。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
人々はそこへ気づくと、いきなり川の
上手
(
かみて
)
にむかって走りだしました。
青銅の魔人
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そのとき眼前にあらわれた光景を見たとき自分をおそったあの
驚愕
(
きょうがく
)
、あの恐怖を、どんな人間の言葉が十分にあらわすことができようか? 私が
眼
(
め
)
を離していたそのちょっとのまに、
室
(
へや
)
の
上手
(
かみて
)
の
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
顔の色は
蒼
(
あお
)
ざめて、
乱髮
(
みだれがみ
)
振りかかれるなかに輝きたる
眼
(
まなこ
)
の光の
凄
(
すさ
)
まじさ、
瞻
(
みまも
)
り得べきにあらず。
夥兵
(
くみこ
)
立懸
(
たちかか
)
り、
押取巻
(
おっとりま
)
く、
上手
(
かみて
)
に
床几
(
しょうぎ
)
を据えて侍控えいて、何やらむいい
罵
(
ののし
)
りしが、
薪
(
たきぎ
)
をば投入れぬ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その音源はお園からは十メートル近くも離れた
上手
(
かみて
)
の
太夫
(
たゆう
)
の
咽喉
(
のど
)
と
口腔
(
こうこう
)
にあるのであるが、人形の簡単なしかし必然的な姿態の吸引作用で、この音源が空中を飛躍して人形の口へ乗り移るのである。
生ける人形
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
親子、
国色
(
こくしょく
)
、東京のもの、と辰弥は胸に繰り返しつつ浴場へと行きぬ。あとより来るは布袋殿なり。
上手
(
かみて
)
に一つ新しく
設
(
しつ
)
らえたる浴室の、右と左の
開
(
ひら
)
き
扉
(
とびら
)
を引き開けて、二人はひとしく
中
(
うち
)
に入りぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
一番
上手
(
かみて
)
の分を右手に提げて重みを試み、次に一番
下手
(
しもて
)
の分を試み、終に下手より二番目の首の入りし分を提げて見て
首肯
(
うなず
)
き、そのまま提げて花道附際まで来て、左の脇に抱へ、右の手にて桶を押へ
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
さっき見た川の
上手
(
かみて
)
を
和江
(
わえ
)
という所まで往って、首尾よく人に見つけられずに、向う河岸へ越してしまえば、中山までもう近い。そこへ往ったら、あの塔の見えていたお寺にはいって隠しておもらい。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そしてそのすぐ
上手
(
かみて
)
において、既に雪渓の下端にぶっつかった。
一ノ倉沢正面の登攀
(新字新仮名)
/
小川登喜男
(著)
と
詰
(
つま
)
る。
此時
(
このとき
)
上手
(
かみて
)
よりモンタギューの
親族
(
しんぞく
)
ベンヺーリオー
出
(
で
)
る。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
入らんとしつつたちまち門外を
上手
(
かみて
)
に過ぎ行く車を目がけ
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
上手
(
かみて
)
のはずれに
捨吉
(旧字新仮名)
/
三好十郎
(著)
下手
(
しもて
)
のガラス戸から、斜陽がさし込んでいる。
上手
(
かみて
)
も、ガラス戸。それから、出入口。その外は廊下。廊下のガラス戸から海が見える。
春の枯葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
兵馬は、それを聞きはぐって、その濠端について、ずんずんと
上手
(
かみて
)
へ歩き出しました。かなり歩いても濠端には相違ない。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
上手
(
かみて
)
の眺めにもうち
禿
(
はげ
)
た岩石層は
少
(
すくな
)
く、すべてが微光をひそめた
巒色
(
らんしょく
)
の丘陵であった。
深沈
(
しんちん
)
としたその
碧潭
(
へきたん
)
。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
上
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“上手”で始まる語句
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