かなへ)” の例文
かなへの湯のやうに沸き立つやかましい近郷近在の評判や取々の沙汰に父は面目ながつて暫らくは一室に幽閉してゐたらしいが其間も屡便りを送つて來た。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
したにゐたひとつなをひきそこなつて、つながぷっつりとれて、うんわるくもしたにあつたかなへうへちてまはしました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
周のかなへの文字や、秦漢六朝の金石の文字にあつたことはいふまでもなく、しんの王羲之この方の一字一字に神経のゆきとどいた、繊細な味はひのある書を
秋艸道人の書について (新字旧仮名) / 吉野秀雄(著)
音羽町へやりたりしが此時すでに家主は殺され父子おやこ行衞ゆくゑしれぬとて長家はかなへわくが如く混雜こんざつなせば詮方せんかたなく立返へりつゝ云々と三個みたりに告て諸共もろともにお光の安否あんぴ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私等は奥の院の裏手に廻り、提灯を消して暗闇くらやみに腰をおろした。其処そこは暗黒であるが、その向うに大きな唐銅からかねかなへがあつて、蝋燭らふそくが幾本となくともつてゐる。
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
問返とひかへすうちにも、一層いつそうめう夢路ゆめぢ辿たど心持こゝろもちのしたのは、差配さはいふのは、こゝに三げんかなへつて、れいやなぎさかひに、おなじくたゞかき一重ひとへへだつるのみ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たとへば昔仁和寺の法師のかなへをかぶつて舞つたと云ふ「つれづれ草」の喜劇をも兼ねぬことはない。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
もし、この二人が坂田に敗れるとすれば、折角争ひつた名人位も有名無実なものとなつてしまふだらう。つまりは、坂田対両八段の対局は名人位のかなへの軽重を問ふものであつた。
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
そこは丁度お通夜で、家中が抹香まつかう臭くなつてをりました。一とわたり家の中の空氣を見ると、平次は若主人の半次郎と、妹のお梅を別室に呼び入れ、かなへになつて靜かな話を始めました。
今、われ汝の人とりをみるに、身体むくろ長大たかく容貌かほ端正きらきらし、力能くかなへぐ、猛きこと雷電いかづちの如く、向ふ所かたきなく、攻むる所必ず勝つ。即ち知る、形は則ち我が子にて、実は即ち神人かみなり。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
それは興行こうげうのためにと香港ホンコンおもむかんとて、このふね乘組のりくんでつた伊太利イタリー曲馬師きよくばしとらおりやぶつてしたことで、船中せんちうかなへくがごとく、いか水夫すゐふさけ支那人シナじんまは婦人ふじんもあるといふさはぎで
山本かなへがホテルの湯にはひりに来ては真面目まじめ手解てほどきをしてれる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
各種各色の議論はあたかかなへの沸くが如く沸けり。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
村はやがてかなへくやうに騒ぎ出した。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ももの花の代りにはすの花を咲かせ、古風なさむらひの女房の代りに王女か何か舞はせたとすれば、毒舌に富んだ批評家といへども、今日こんにちのやうに敢然とはかなへの軽重を問はなかつたであらう。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
くちなは料理れうり鹽梅あんばいひそかにたるひとかたりけるは、(おう)が常住じやうぢう居所ゐどころなる、屋根やねなきしとねなきがう屋敷田畝やしきたんぼ眞中まんなかに、あかゞねにてたるかなへ(にるゐす)をゑ、河水かはみづるゝこと八分目はちぶんめ
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
差出し郡奉行其外掛役々かゝりやく/\へは出立の儀申渡す等其混雜こんざつかなへわくが如くなり茲に又九助は引廻しの馬の上にくゝられ既に相良さがらの城下はづれまで引れ來り今刑場けいぢやうのぞまんとする時江戸の方より來りし早打はやうち侍士さむらひ引止ひきとめられ檢使の役人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかり、ぎんかなへさゝげたときその聖僧せいそうごとく、こゝろすゞしかつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
得て惡婆のお定とかなへなり其巧そのたくみにぞ及びけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かれぎんかなへふ……
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)