トップ
>
麗
>
うら
ふりがな文庫
“
麗
(
うら
)” の例文
麗
(
うら
)
らかな
懶
(
ものう
)
い春であった。その麗らかな自然の中で、相闘っている一方の人間が充分の余裕をもってその対策を考えているのだった。
仮装観桜会
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
村は
麗
(
うら
)
らかな日に
霞
(
かす
)
んでいた。麦は色づき始め、菜の花が黄色く彩どっていた。
鶯
(
うぐいす
)
が山に鳴き家々の庭には
沈丁香
(
じんちょうげ
)
の花が
匂
(
にお
)
っていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
が、大勢の若者たちは
麗
(
うら
)
らかな日の光を浴びて、いずれも
黙念
(
もくねん
)
と眼を伏せながら、一人も彼の醜い顔を仰ぎ見ようとするものはなかった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ガラツ八の八五郎が、泳ぐやうに飛込んで來たのは、江戸中の櫻が一ぺんに咲き揃つたやうな、生暖かくも
麗
(
うら
)
らかな或日の朝のことでした。
銭形平次捕物控:156 八千両異変
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
春の日射しの、もう
麗
(
うら
)
らかと云つてもよいこの一つ時を、初瀬も、戦ふ主婦らしく、ほんの心もちではあるが、人並に眼を血走らせてゐた。
荒天吉日
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
▼ もっと見る
春の陽ざしが
麗
(
うら
)
らかに拡がった空のような色をした竹の皮膚にのんきに
据
(
すわ
)
っているこの意味の判らない書体を不機嫌な私は憎らしく思った。
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
麗
(
うら
)
らかに晴れた日が続いた。長く固まり附いていた根雪が溶けて、その雪汁がちょろちょろと方々で流れた。黒い土の肌が久し振りに現われた。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
そして
呆然
(
ぼうぜん
)
と立った外国人の前で、くるりと背を見せて何やらまた楽しげに笑い興じながら、
麗
(
うら
)
らかな
陽
(
ひ
)
のさんさんと降りそそぐ道を歩んで行った。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
ある夏
此児
(
このこ
)
が両親と避暑に
余処
(
よそ
)
へ行つて居升たが、近処に美事な大きい湖水があるので、父は小舟を借りては
其児
(
そのこ
)
の母と其児を載せ、
麗
(
うら
)
らかなる日や
鼻で鱒を釣つた話(実事)
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
烏の聲に目を醒ますと、
麗
(
うら
)
らかな日が照つてゐて
昨夕
(
ゆうべ
)
の俄雨は夢であつたやうに、衣服も濡れてはゐなかつた。
雨
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
私はまるで新婚の朝のような
麗
(
うら
)
らかな心持に浸って、にわかに世の中の何もかもが面白いものに思いなされた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
ある春の
麗
(
うら
)
らかな日曜日の朝お稽古に行ったら、稽古が済んでから翁は筆者を机の前に招き寄せて云った。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
浅草公園の
隅
(
すみ
)
のベンチが、老いて零落した彼にとっての、平和な楽しい休息所だった。或る
麗
(
うら
)
らかな天気の日に、秋の高い青空を眺めながら、遠い昔の夢を思い出した。
日清戦争異聞:(原田重吉の夢)
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
介三郎は、かれらの性根から、きょうの
麗
(
うら
)
らかな春の日にも
勝
(
まさ
)
るような光がさしているのを見た。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
麗
(
うら
)
らかに照らしておる春の光の中に、
雲雀
(
ひばり
)
が空高くのぼる、独居して、物思うとなく物思えば、悲しい心が
湧
(
わ
)
くのを禁じ難い、というので、万葉集の大部分の歌が対詠歌
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
冬とはいえ、風がなく、空は
麗
(
うら
)
らかに晴れ渡って、まるで春のような暖かい日でありました。
深夜の電話
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
麗
(
うら
)
らかに
霽
(
は
)
れた紺藍の輝く空に太陽の黄金光は、梅雨あがりの光を熱烈に慄えさせていた。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
南半球七月初旬の
麗
(
うら
)
らかな
朝暾
(
あさひ
)
を受けて微笑みつつ穏やかに美しく楽しげに、見果てぬ永遠の夢を語り合いながら
接吻
(
くちづけ
)
せんばかり相抱き合って、雨の中に眠っているのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
明
(
あ
)
けては、
日
(
ひ
)
麗
(
うら
)
らかなる
甲板
(
かんぱん
)
に、
帝國軍艦旗
(
ていこくぐんかんき
)
翩飜
(
へんぽん
)
たるを
仰
(
あほ
)
ぎ
見
(
み
)
ては、
日
(
ひ
)
ならず
智勇
(
ちゆう
)
兼備
(
けんび
)
の
兩
(
りよう
)
海軍大佐
(
かいぐんたいさ
)
が
新
(
あたら
)
しき
軍艦
(
ぐんかん
)
「
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
」と、
新
(
あたら
)
しき
電光艇
(
でんくわうてい
)
との
甲板
(
かんぱん
)
にて、
波
(
なみ
)
を
距
(
へだ
)
てゝ
相
(
あひ
)
會
(
くわい
)
し
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
曹長いささか不平の
体
(
てい
)
でしぶしぶ中止、午後三時を合図に気球はするすると秋の
麗
(
うら
)
らかな空へ舞い上り、だいぶ風が出て斜めに流されたが、二百尺以上の鋼索がすっかり出切ると
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
麗
(
うら
)
らかな春の昼は、勢いよく坂を
馳
(
か
)
け下って行く
俥
(
くるま
)
の輪があげる
軽塵
(
けいじん
)
にも知られた。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
上り十間の
白扇子
(
しらあふぎ
)
に
麗
(
うら
)
らかなる春の日を
翳
(
かざ
)
し
片身替
(
かたみがは
)
りの
夕時雨
(
ゆふしぐれ
)
に
濡
(
ぬれ
)
にし昔の
相傘
(
あひがさ
)
を思ひ出せし者も有るべし土手八町もうち越して五十
間
(
けん
)
より大門口に來て見れば折しも
仲
(
なか
)
の町の
櫻
(
さくら
)
今
(
いま
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
折り折り人の影がかなたの山の背こなたの山の尾に現われては隠れた、日は
麗
(
うら
)
らかに輝き、風はそよそよと吹き、かしこここの
小藪
(
こやぶ
)
が怪しげにざわついた。その
度
(
たび
)
ごとに僕は目を丸くした。
鹿狩り
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ゆれる樹の葉に日の光る、
麗
(
うら
)
らかさがもう冬のとは違う。そのつややかさ。
日記:11 一九二五年(大正十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
宝沢は
麗
(
うら
)
らかな日光を全身に浴び、短い脚で伊東に遅れずにどしどし歩きながら、自分のやっている輸出入の商売がとんとん拍子に運んでゆくこと、横浜に近々支店を持つ計画などを語った。
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
まことに
此時
(
このとき
)
、
日
(
ひ
)
も
麗
(
うら
)
らかに
風
(
かぜ
)
和
(
やは
)
らかく
梅
(
うめ
)
の花、
軒
(
のき
)
に
匂
(
かんば
)
しく
鶯
(
うぐひす
)
の声いと楽しげなるに、
室
(
しつ
)
を
隔
(
へだ
)
てゝ
掻
(
か
)
きならす
爪音
(
つまおと
)
、いにしへの物語ぶみ、そのまゝの
趣
(
おもむき
)
ありて身も心も
清
(
きよ
)
く
覚
(
おぼ
)
えたり、
此
(
こ
)
の帰るさ
隅田の春
(新字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
麗
(
うら
)
らかに
頭
(
あたま
)
まろめて鳥のこゑきいてゐる、といふ心になりにけるかも
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
祖母立子声
麗
(
うら
)
らかに
子守唄
(
こもりうた
)
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
日
(
ひ
)
は
麗
(
うら
)
らかに
志摩
(
しま
)
の
國
(
くに
)
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
麗
(
うら
)
らかな春の陽ざし、青山長者丸から飛んで來た八五郎は、馬のやうに汗をかいて、馬のやうに鼻息の嵐を吹いて居ります。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
だから仲間の若者たちが河上の方へ行くのを見ると、彼はまだ
滴
(
しずく
)
を垂らしたまま、
麗
(
うら
)
らかな春の日に
目
(
ま
)
かげをして、のそのそ砂の上を歩き出した。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ついこの間まで
麗
(
うら
)
らかに秋の光の輝いていたそちらの方の空には、もういつしか、わびしい
時雨雲
(
しぐれぐも
)
が古綿をちぎったように
夕陽
(
ゆうひ
)
を浴びてじっと
懸
(
か
)
かっている。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
瀬戸通ひの汽船が島々の
彼方
(
かなた
)
にはつきり見えて、春めいた
麗
(
うら
)
らかな
日光
(
ひかり
)
が讚岐の山々に煙つてゐることもあれば、西風が吹き荒れて、海には漁船の影もなくつて
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
だがその昏睡から
醒
(
さ
)
めた時、彼は昔の青虫とは似もやらず、見ちがうばかりの美しい蝶と化して、花から花へ遊び歩き、春の
麗
(
うら
)
らかな終日を、恋の戯れに狂い尽した末
老年と人生
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そうしてその美意識によって春の野の花に調和し、春の日の
麗
(
うら
)
らかさを高潮さすべく、最もふさわしい舞い姿にまで、代を重ねて洗練されて来たのが、あの蝶の舞い型であると考えられる。
能とは何か
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
グリプトテークの美術館脇の、
白堊
(
はくあ
)
の壮麗な伯爵邸の二階の窓や、広々とした前庭、ルネサンス風の柱廊の向うに見える後庭にも、
正午
(
ひる
)
前の
麗
(
うら
)
らかな陽が一杯に戯れている頃だと覚えている。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
清新な暖かい気流、
麗
(
うら
)
らかな陽光。静かに
青波
(
あおなみ
)
を打つ麦畑。煤煙に汚れた赤
煉瓦
(
れんが
)
の建物が、重々しく麦畑の上に、雄牛のように横たわっていた。白い煙突からは黒い煙が
渦
(
うず
)
を巻いて立ちのぼった。
汽笛
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
麗
(
うら
)
らかな十二月の真昼だのに伸子は悪寒がして堪らなくなって来た。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「おう、御住職か。あまり
麗
(
うら
)
らかさに、
春日
(
かすが
)
の
御社
(
みやしろ
)
まで
詣
(
まい
)
って来た」
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
不尽
(
ふじ
)
の山
麗
(
うら
)
らかなればわがこころ朗らかになりて眺め惚れて居る
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
冬
麗
(
うら
)
ら花は無けれど枝垂梅
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
麗
(
うら
)
らかな春の陽ざし、青山長者丸から飛んで来た八五郎は、馬のように汗をかいた、馬のように鼻息の嵐を吹いて居ります。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
するとそこには三人の女が、
麗
(
うら
)
らかな日の光を浴びて、木の上の彼には気がつかないのか、
頻
(
しきり
)
に何か笑い興じていた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
前夜積つた薄雪が、きら/\照りつける朝日に見る/\融けてゐる
麗
(
うら
)
らかな朝、雪子はお梅の家を訪ねて來た。去年の暮に會つた時とは氣のせゐかぐつと
大人
(
おとな
)
びてゐた。
孫だち
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
スチームに暖められた汽車の中に仮睡の一夜を明かして、翌朝早く眼を
覚
(
さ
)
ますと、窓の外は野も山も、薄化粧をしたような霜に
凍
(
い
)
てて、それに
麗
(
うら
)
らかな
茜色
(
あかねいろ
)
の
朝陽
(
あさひ
)
の光が
漲
(
みなぎ
)
り渡っていた。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
彼は心臓に病があった。その危険な
兆候
(
ちょうこう
)
が、五十
歳
(
さい
)
を
越
(
こ
)
えてからしばしば現われて来た。初めて大久保の新居に移った時は、春の
麗
(
うら
)
らかな日であって、裏の竹藪で
鶯
(
うぐいす
)
がしきりに鳴いてた。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
五月
(
さつき
)
晴れの
麗
(
うら
)
らかに晴れた青空の下を、馬にも乗らぬ娘二人に案内されて、四頭の
逞
(
たくま
)
しい馬のいる馬小屋を見て——そのうち栗毛の馬だけは、今父親が乗って行って留守でしたが、もちろんこれらは
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
わがこころ
麗
(
うら
)
らかなれば不尽の山けふ朗らかに見ゆるものかも
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
丁子は銅像をめぐった芝生の上に、
麗
(
うら
)
らかな日の光を浴びて、
簇々
(
ぞくぞく
)
とうす紫の花を綴っていた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
正覚坊ふふと笑へり
麗
(
うら
)
らかに
擽
(
くす
)
ぐらるればうれしきものか
真珠抄
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
麗
常用漢字
中学
部首:⿅
19画
“麗”を含む語句
美麗
華麗
綺麗
秀麗
高麗
高麗人
高句麗
艶麗
鮮麗
麗人
麗々
高麗縁
高麗焼
高麗橋
繊麗
艷麗
麗朗
麗姫
小綺麗
端麗
...