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鬱
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ふさ
ふりがな文庫
“
鬱
(
ふさ
)” の例文
「毎日
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んで途方に暮れてゐる様子です。然しあの宝物の送り主に就いては、一層の想ひを寄せてゐるかに見うけられますな。」
フアウスト
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
「あら、そうお! すみませんでしたわね。けど、『あたしのフランク』はきょうどうかしてるの? すこし
鬱
(
ふさ
)
いでやしないこと?」
字で書いた漫画
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
「オヤ、禁句ですよ旦那。おかみさんは、とても亭主運が悪いんで、武大の武の字を思い出しても、すぐ気が
鬱
(
ふさ
)
いで来るんですとさ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朝からぢつと
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んで、半日位は口をきかない樣なこともある。さう云ふ時に限つて、女の様子は一面そは/\して居るのであつた。
計画
(旧字旧仮名)
/
平出修
(著)
ワーニャ伯父さんは
鬱
(
ふさ
)
ぎの虫にとりつかれてめそめそしてるし、お
祖母
(
ばあ
)
さんもあのとおり、それから、あなたのままおっ母さん……
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
▼ もっと見る
内へ帰ると、お蔦はお蔦で、その晩出直して、今度は自分が
売卜
(
うらない
)
の前へ立つと、この縁はきっと結ばる、と易が出たので、大きに
鬱
(
ふさ
)
ぐ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ミルハはその情人という言葉
尻
(
じり
)
をとらえて、冗談に怒ったふうをした。クリストフはそれ以上何にも知り得なかった。彼は
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んだ。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
名を兵蔵といって脊の高い眉の濃い、いつも
鬱
(
ふさ
)
いだ
顔付
(
かおつき
)
をして物を言わぬ男である。彼の妻は小柄の、
饒舌
(
しゃべ
)
る女で、眼尻が吊上っていた。
蝋人形
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
妻が自分を面白からず思い気味悪るう思い、そして
鬱
(
ふさ
)
いでばかりいて、折り折りさも気の無さそうな
嘆息
(
ためいき
)
を
洩
(
もら
)
すのも決して無理ではない。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
すると、その人は又、夕焼した空と黄ばんだ雑木林とを背景にして、さっきと同じような少し気の
鬱
(
ふさ
)
いだ様子で、向うむきに佇んでいた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
ある時、出入の男が長次郎氏が五銭銅貨のやうに青い顔で
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んでゐるのを見て、気晴しに
妾
(
めかけ
)
でも置いたら
何
(
ど
)
うかとお
追従
(
ついしよう
)
を言つてみた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「私は子がないので
真実
(
ほんとう
)
につまらない。」お庄と二人で
裁物板
(
たちものいた
)
に坐っている時、叔母は気が
鬱
(
ふさ
)
いで来るとしみじみ言い出した。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
さう云ふ私に、
鬱
(
ふさ
)
いでゐるから酒でも飲めと、無理にも勧めてくれるその深切は、枯木に花が咲くやうな心持が、いえ、
嘘
(
うそ
)
でも何でも無い。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
夫では
和郎
(
あなた
)
はあの所と
違
(
ちが
)
つて上野か向島「イヤ
矢張
(
やつぱり
)
行先は王子にて
然
(
しか
)
も音羽へ出て行く
積
(
つも
)
り「ヲヤ/\夫では
昨日
(
きのふ
)
と
同
(
おな
)
じだと
鬱
(
ふさ
)
ぐ
丁稚
(
でつち
)
に錢を ...
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それは娘の返辞のそれから
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んだのではなく、きゅうにやはり詰らない退屈さと所詮なささが、唐突にかれを心から脅かしたからである。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
鬱
(
ふさ
)
いでばかり
入
(
いら
)
っしゃるから、
斯
(
こ
)
ういう冗談でもしたら少しはお
気晴
(
きばら
)
しになるだろうと思い、主人のためを思ってしたので。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
気にするからいけない。それだから気が
鬱
(
ふさ
)
いだり、からだが悪くなったりして、お父さんやおっ母さんも心配するようになるのだ。そんなことを
影を踏まれた女
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
若衆
(
わかいしゅ
)
さん、お前さん、また何か
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んでいますな、いけません、一人鬱いでいると、室内がみんな陰気になりますから、おやめなさい、人間
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
目科は牢に入るよりも
大
(
おおい
)
に彼れが気を引立んとする如く
慣々
(
なれ/\
)
しき調子にて「おやおや何うしたと云うのだ、其様に
鬱
(
ふさ
)
いでばかり居ては仕様が無い」
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「時々に起こってくる
鬱
(
ふさ
)
ぎの虫! これが、いけないといっているのだ。……無理にも元気にふるまうがいい。さて元気だ! 元気を出して謡え!」
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「そんなことはかまわないんですけどね、あたしこちらへまいってから、いつも
鬱
(
ふさ
)
いでばかりいて、何一つろくにお手伝いしたこともないんでしょう」
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
上品な老爺の附いた学生が絶対無言という様子で
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んで居る。
蓄膿
(
ちくのう
)
症でもあるのか鼻をくんくん鳴らして居る。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
民子はただただ少しも元気がなく、
痩
(
やせ
)
衰えて
鬱
(
ふさ
)
いで許り居るだろうとのみ思われてならない。可哀相な民さんという観念ばかり高まってきたのである。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
馬鹿な事には下宿してから、雪江さんが
万一
(
ひょッと
)
鬱
(
ふさ
)
いでいぬかと思って、
態々
(
わざわざ
)
様子を見に行った事が二三度ある。が、雪江さんはいつも一向
鬱
(
ふさ
)
いで居なかった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
夏は胃の働き弱る故に苦味を用い、秋は気の
鬱
(
ふさ
)
ぐ時故辛味にて刺撃し、冬は体温を保つために塩分を要す。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
これはもはや一生涯心の斑点となつて残るのではあるまいかと思つたりすると、自然心が
鬱
(
ふさ
)
いで行つた。
間木老人
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
三四郎が
動
(
うご
)
く東京の
真中
(
まんなか
)
に閉ぢ込められて、
一人
(
ひとり
)
で
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んでゐるうちに、国元の母から手紙が来た。東京で
受取
(
うけと
)
つた最初のものである。見ると色々書いてある。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
草が戦ぐ、また意久地なしの
霊魂
(
たましひ
)
が滅入つて了ふ。
悄気
(
しよげ
)
る、
鬱
(
ふさ
)
ぐ……涙がホロホロと頬つぺたを流れる。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
それで、もう毎晩々々たつた一人で坐つて居りましてね、すつかり
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んでしまつたのでございます。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
ちょうど日曜日で久々に訪ねてくれた水産試験所の
東屋三郎
(
あずまやさぶろう
)
氏は、折角計画した遠乗りのコースをこのような海岸に変更されて最初のうち少からず
鬱
(
ふさ
)
いでいたのだが
死の快走船
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
さぞ自分が
鬱
(
ふさ
)
ぎ込むとでも父は思っていたのであろう、それなのに自分が一生懸命で勉強しているので父は案外なような顔付で随分いろいろなことを言うと書いてよこした。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
すつかり
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んで、女嫌ひになつて了つたコックが二階の便所の横、七号室にゐる。
日本三文オペラ
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
然
(
しか
)
るをそれより三、四年にして
一夜
(
いちや
)
激しき痢病に襲はれ
一時
(
いちじ
)
は
快
(
こころよ
)
くなりしかど春より夏秋より冬にと時候の変り目に雨多く降る頃ともなれば必ず腹痛み
出
(
い
)
で
鬱
(
ふさ
)
ぎがちとはなりにけり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
夫れどころでは無いとて
鬱
(
ふさ
)
ぐに、何だ何だ喧嘩かと喰べかけの饀ぱんを
懷中
(
ふところ
)
に捻ぢ込んで、相手は誰れだ、龍華寺か長吉か、何處で始まつた
廓内
(
なか
)
か鳥居前か、お祭りの時とは違ふぜ
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ひどく
鬱
(
ふさ
)
ぎこみ、危うく身を滅ぼさんとした悪事に対してもだいぶ熱がさめていた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
やれ懐かしかったと喜び、水は
温
(
ぬる
)
み下草は
萌
(
も
)
えた、
鷹
(
たか
)
はまだ出ぬか、
雉子
(
きじ
)
はどうだと、
終
(
つい
)
に
若鮎
(
わかあゆ
)
の
噂
(
うわさ
)
にまで先走りて若い者は
駒
(
こま
)
と共に元気
付
(
づき
)
て来る中に、さりとてはあるまじき
鬱
(
ふさ
)
ぎ
様
(
よう
)
。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
竦然
(
しょうぜん
)
とした感じでふと思いだされて、自分はペンを
措
(
お
)
いて
鬱
(
ふさ
)
ぎこんでしまった。
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
家に居てそんな呻き声や、苦しげな
呼吸
(
いき
)
づかひを聞くと、気が
鬱
(
ふさ
)
いで自分も病気に引入れられる様に思ひ、それに伝染の恐れもあつたので彼は食事の外はなるべく家に居ない様に力めた。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
あや子 ただ、あなたが、あんまり
鬱
(
ふさ
)
いでばかりいらつしやるから……。
村で一番の栗の木(五場)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
あることからひどく
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んで、まあ、神経衰弱がひどくなったんで……
街頭の偽映鏡
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そうして妙に
鬱
(
ふさ
)
いでしまった。
黒白ストーリー
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
妙に、
拗
(
す
)
ねたり、
鬱
(
ふさ
)
いだりしていた自分が、急に、間がわるくなって、からりと、
陽
(
ひ
)
なたへ出たような幸福感で、体が熱くなった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見渡す限り、人影もなくて、ただ刈り
尽
(
つく
)
された田や圃は、漠然として目に見えるもの、すべての自然は
鬱
(
ふさ
)
いだ
顔付
(
かおつき
)
をしている。
凍える女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
かばかりの
大石投魚
(
おおいしなぎ
)
の、さて
価値
(
ねうち
)
といえば、両を出ない。七八十銭に過ぎないことを、あとで聞いてちと
鬱
(
ふさ
)
いだほどである。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
致しませんで、
何
(
な
)
にもお構い申しません、何んだか
酷
(
ひど
)
く
鬱
(
ふさ
)
いで、隅の方へ
引込
(
ひっこ
)
んで考えてばかり居なさるが、何ういう訳で
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それほどあの頃からすべてが変っていた。そしてそれが何もかも自分の責任のような気がされて、私はふっと気が
鬱
(
ふさ
)
いだ。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
浅井は、
下
(
お
)
りものなどのした時、蒼い顔をして
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んでいるお増に言ったが、お増はやはりその気になれずにいた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
姉は鋭くそう言ったものの、弟がすぐ
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んでしまったのでこんなに言わなければよかったと考えた。
童話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
落
(
おと
)
し
顏色
(
がんしよく
)
蒼然
(
あをざめ
)
て居ける處へ又七は
立出
(
たちいで
)
何故
(
なにゆゑ
)
其樣に
鬱
(
ふさ
)
ぎ居るや
心地
(
こゝち
)
にても
惡
(
あし
)
きかと
問
(
と
)
ひけるに長助は
有
(
あ
)
りの
儘
(
まゝ
)
に
譯
(
わけ
)
を話し涙を
流
(
なが
)
しけるを又七は
憫然
(
ふびん
)
に思ひ
我等
(
われら
)
其金を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
二人が少しも隔意なき得心上の相談であったのだけれど、僕の方から言い出したばかりに、民子は妙に
鬱
(
ふさ
)
ぎ込んで、まるで元気がなくなり、
悄然
(
しょうぜん
)
としているのである。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
鬱
常用漢字
中学
部首:⾿
29画
“鬱”を含む語句
憂鬱
憂鬱症
悒鬱
鬱陶
鬱々
鬱金香
沈鬱
鬱憂
鬱蒼
蓊鬱
鬱屈
気鬱
幽鬱
憂鬱病
鬱気
鬱憤
鬱積
鬱然
鬱懐
鬱血
...