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金縁
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きんぶち
ふりがな文庫
“
金縁
(
きんぶち
)” の例文
福間先生は常人よりも
寧
(
むし
)
ろ
背
(
せい
)
は低かつたであらう。
何
(
なん
)
でも
金縁
(
きんぶち
)
の
近眼鏡
(
きんがんきやう
)
をかけ、
可成
(
かなり
)
長い
口髭
(
くちひげ
)
を
蓄
(
たくは
)
へてゐられたやうに覚えてゐる。
二人の友
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
金縁
(
きんぶち
)
眼鏡の紳士林檎柿など山の如く盛りたる皿を
小脇
(
こわき
)
にかゝへて「
分捕々々
(
ぶんどり/\
)
」と駆けて来たまふなど、ポンチの材料も少からず。
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
鷺太郎は、その厚い
金縁
(
きんぶち
)
眼鏡の輝きを、いつになく
光々
(
こうごう
)
しく感じながら、自分の「直感」を証明してくれた畔柳博士を仰ぎ見た。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
折々隠袋から
金縁
(
きんぶち
)
の
眼鏡
(
めがね
)
を出して、手に持った
摺物
(
すりもの
)
を読んで見る彼は、その眼鏡を
除
(
はず
)
さずに遠い舞台を平気で眺めていた。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その張りたる
腮
(
あぎと
)
と、への字に結べる
薄唇
(
うすくちびる
)
と、
尤異
(
けやけ
)
き
金縁
(
きんぶち
)
の
目鏡
(
めがね
)
とは彼が尊大の風に
尠
(
すくな
)
からざる光彩を添ふるや
疑
(
うたがひ
)
無し。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
▼ もっと見る
「アハハ。そうかそうか、それは色の黒い、茶の
中折
(
なかおれ
)
を冠った、背の高い男だったろう。
金縁
(
きんぶち
)
の眼鏡をかけた……」
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そういう間にも、その男は
金縁
(
きんぶち
)
の眼鏡の奥から、おせいの様子をちらりちらりと探るように見た。
優
(
やさ
)
しいかと思うときゅうに怖くなるような眼だった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
席上に年若き紳士あり、
金縁
(
きんぶち
)
の
眼鏡
(
めがね
)
を眼の上ならで鼻の上の
辺
(
あた
)
りに
載
(
の
)
せながら眼鏡越しに座敷の隅々まで眺め廻し
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
つるりと
禿
(
は
)
げ上った大きい額と、鼻の先にのせた
金縁
(
きんぶち
)
の眼鏡とが、三年前に見た時とちっとも変っていない。
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
という
当
(
あて
)
もないのに、女持ちの雨傘を買って来たり
金縁
(
きんぶち
)
の小型の名刺にただ「
仲木
(
なかぎ
)
」とだけ刷らしたのを、
用箪笥
(
ようたんす
)
の
抽斗
(
ひきだし
)
に
蔵
(
しま
)
い込んでおいては楽しんでいた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
その本はわれわれが近頃よく見るような立派な
装幀
(
そうてい
)
の、
金縁
(
きんぶち
)
の本みたいになりましたが、指を紙の間に通すと、これはしたり! それは金箔を
綴
(
と
)
じたようになって
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
そのうちに、
男
(
おとこ
)
は、はっとして、びっくりしました。
金縁
(
きんぶち
)
の
眼鏡
(
めがね
)
をかけて、
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
い、
髪
(
かみ
)
のちぢれた
女
(
おんな
)
の
人
(
ひと
)
が、やはり、
汽車
(
きしゃ
)
の
窓
(
まど
)
から
顔
(
かお
)
を
出
(
だ
)
して、のぞいていたからです。
窓の下を通った男
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
向うの窓の方に寄せて置いてある、古い、
金縁
(
きんぶち
)
の本は、聖書かと思って開けて見ると、
Divina
(
ヂヰナ
)
comedia
(
コメヂア
)
の
Edition
(
エヂション
)
de
(
ド
)
poche
(
ポッシュ
)
であった。
花子
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
見事に手入れの行き届いている金色の
髯
(
ひげ
)
、
金縁
(
きんぶち
)
眼鏡ごしにじっと見ている落ち着き払った青い眼——医者の美しい、
嗜
(
たしな
)
みのいい顔はぴくりともせず、見透し難いものがあった。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
金縁
(
きんぶち
)
眼鏡をかけて、
細巻
(
ほそまき
)
を用意した男もあった。
独法師
(
ひとりぼっち
)
のお島は、草履や下駄にはねあがる
砂埃
(
すなぼこり
)
のなかを、人なつかしいような
可憐
(
いじら
)
しい心持で、ぱっぱと
蓮葉
(
はすは
)
に足を運んでいた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼は
痩
(
や
)
せ
型
(
がた
)
の、顔色のどす黒い、そして今時
金縁
(
きんぶち
)
眼鏡をかけているという人物だった。
密林荘事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼の考へは間違つてゐた、実は室内は贅沢に整理された空虚さであつて、大きな
金縁
(
きんぶち
)
に何やら青い色が詰めこまれた洋画や、書棚、安楽椅子など、何れも高価でないものはなかつた。
小熊秀雄全集-15:小説
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
モデル臺、
石膏
(
せきかう
)
の
胸像
(
きようぞう
)
、それから
佛蘭西
(
ふらんす
)
の
象徴派
(
しやうちやうは
)
の名畫が一
枚
(
まい
)
と、
伊太利
(
いたりー
)
のローマンス派の
古畫
(
こぐわ
)
を
摸寫
(
もしや
)
したのが三枚、それが
何
(
いづ
)
れも
金縁
(
きんぶち
)
の
額
(
がく
)
になつて南側の
壁間
(
かべ
)
に
光彩
(
くわいさい
)
を放つてゐる。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
空気
洋燈
(
らんぷ
)
が
煌々
(
くわう/\
)
と
燿
(
かゞや
)
いて書棚の
角々
(
かど/\
)
や、金文字入りの
書
(
ほん
)
や、置時計や、水彩画の
金縁
(
きんぶち
)
や、
籐
(
とう
)
のソハに
敷
(
しい
)
てある
白狐
(
びやくこ
)
の
銀毛
(
ぎんまう
)
などに反射して部屋は
綺麗
(
きれい
)
で陽気である、銀之助はこれが
好
(
すき
)
である。
節操
(新字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
「ふーむ、
是
(
これ
)
や
豪気
(
ごうぎ
)
だ。
金縁
(
きんぶち
)
だね」
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
紬
(
つむぎ
)
の綿入に
縮緬
(
ちりめん
)
の
兵子帯
(
へこおび
)
をぐるぐる巻きつけて、
金縁
(
きんぶち
)
の
眼鏡越
(
めがねごし
)
に、道也先生をまぼしそうに見て、「や、御待たせ申しまして」と椅子へ腰をおろす。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし彼はどう云う
訣
(
わけ
)
か、誰よりも特に粟野さんの前に、——あの
金縁
(
きんぶち
)
の近眼鏡をかけた、
幾分
(
いくぶん
)
か
猫背
(
ねこぜ
)
の老紳士の前に彼自身の威厳を保ちたいのである。……
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
金縁
(
きんぶち
)
小型に花模様のついた女持ちの、にやけた名刺に、青年の住所と瀬川という名が記されてあった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
愛子が
襷
(
たすき
)
をはずしながら台所から出て来た時分には、貞世はもう一枚の名刺を持って葉子の所に取って返していた。
金縁
(
きんぶち
)
のついた高価らしい名刺の表には
岡一
(
おかはじめ
)
と
記
(
しる
)
してあった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ただ表の植込みから
蝉
(
せみ
)
の声が降るように聞こえて来るばかりなので、桃の刺青はチョッと張り合いが抜けた
体
(
てい
)
であったが、そのうちに小松の蔭に吊してある、青塗りに
金縁
(
きんぶち
)
の籠を見付けると
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
濃
(
こ
)
からぬ
口髭
(
くちひげ
)
を
生
(
はや
)
して、
小
(
ちひさ
)
からぬ鼻に
金縁
(
きんぶち
)
の
目鏡
(
めがね
)
を
挾
(
はさ
)
み、
五紋
(
いつつもん
)
の
黒塩瀬
(
くろしほぜ
)
の羽織に
華紋織
(
かもんおり
)
の
小袖
(
こそで
)
を
裾長
(
すそなが
)
に
着做
(
きな
)
したるが、六寸の
七糸帯
(
しちんおび
)
に
金鏈子
(
きんぐさり
)
を垂れつつ、
大様
(
おほやう
)
に
面
(
おもて
)
を挙げて座中を
眴
(
みまは
)
したる
容
(
かたち
)
は
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「若様のは
金縁
(
きんぶち
)
ですな」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「学生集会所の料理は
不味
(
まづ
)
いですね」と三四郎の隣りに坐つた男が話しかけた。此男は
頭
(
あたま
)
を坊主に刈つて、
金縁
(
きんぶち
)
の
眼鏡
(
めがね
)
を掛けた大人しい学生であつた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
あの
猩々
(
しやうじやう
)
の鼻の上には、
金縁
(
きんぶち
)
の Pince-nez がかかつてゐる。あれが君に見えるかい? もし見えなければ、
今日
(
けふ
)
限り、詩を作る事はやめにし給へ。
動物園
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お医者さんは、白い
鬚
(
ひげ
)
の方のではない、
金縁
(
きんぶち
)
の眼がねをかけた方のだった。
碁石を呑んだ八っちゃん
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
向
(
むかふ
)
から
車
(
くるま
)
が
走
(
か
)
けて
来
(
き
)
た。黒い帽子を
被
(
かぶ
)
つて、
金縁
(
きんぶち
)
の
眼鏡
(
めがね
)
を掛けて、遠くから見ても
色光沢
(
いろつや
)
の
好
(
い
)
い男が
乗
(
の
)
つてゐる。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
粟野さんはちょっと
当惑
(
とうわく
)
そうに啣えていたパイプを離しながら、四つ折の十円札へ目を落した。が、たちまち目を挙げると、もう一度
金縁
(
きんぶち
)
の近眼鏡の奥に嬌羞に近い微笑を示した。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、
飯
(
めし
)
を
食
(
く
)
ふ時、立つて廊下へ出たぎり、
中々
(
なか/\
)
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
なかつた。しばらくして、代助は不図振り
返
(
かへ
)
つたら、一軒
置
(
お
)
いて
隣
(
とな
)
りの
金縁
(
きんぶち
)
の
眼鏡
(
めがね
)
を掛けた男の所へ這入つて、
話
(
はなし
)
をしてゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
座敷では佐野が一人
敷居際
(
しきいぎわ
)
に洋服の片膝を立てて、
煙草
(
たばこ
)
を吹かしながら海の方を見ていた。自分達の足音を聞いた彼はすぐこっちを向いた。その時彼の額の下に、
金縁
(
きんぶち
)
の
眼鏡
(
めがね
)
が光った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただ大きく動くものが勝ち、深く動くものが勝たねばならぬ。道也は、あの
金縁
(
きんぶち
)
の
眼鏡
(
めがね
)
を掛けた恋愛論よりも、小さくかつ浅いと自覚して、かく慎重に筆記を写し直しているのであろうか。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
金縁
(
きんぶち
)
の紳士は、
若
(
わか
)
い女を顧みて、私の
姪
(
めい
)
ですと云つた。女はしとやかに御辞義をした。
其時
(
そのとき
)
兄が、佐川さんの令嬢だと
口
(
くち
)
を
添
(
そ
)
へた。代助は女の名を聞いたとき、
旨
(
うま
)
く
掛
(
か
)
けられたと
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
で思つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
すると
幕
(
まく
)
の切れ目に、
兄
(
あに
)
が
入口
(
いりぐち
)
迄
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
て、代助
一寸
(
ちよつと
)
来
(
こ
)
いと云ひながら、代助を其
金縁
(
きんぶち
)
の男の席へ連れて
行
(
い
)
つて、愚弟だと紹介した。それから代助には、是が神戸の高木さんだと云つて
引合
(
ひきあは
)
した。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
金
常用漢字
小1
部首:⾦
8画
縁
常用漢字
中学
部首:⽷
15画
“金縁”で始まる語句
金縁眼鏡
金縁目金