ほとり)” の例文
新字:
母も續いて、それにあゝ𢌞りがわるくては傳造も息子をば如何することも出來ないだらう、とこれも口のほとりで聲を出さずに笑つた。
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
我はこの溪のほとり、エブロとマークラ(短き流れによりてゼーノヴァびととトスカーナ人とを分つ)の間に住める者なりき 八八—九〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
柳河の夏はかうして凡ての心を重く暗く腐らしたあと、池のほとりに鬼百合の赤い閃めきを先だてゝ、くが如き暑熱を注ぎかける。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
なかにも年少ねんせう士官等しくわんら軍刀ぐんたうつかにぎめて、艦長かんちやう號令がうれいつ、舷門げんもんほとり砲門ほうもんほとり慓悍へうかん無双ぶさう水兵等すいへいらうでさすつてる。
また筑紫の松浦縣まつらがたの玉島の里においでになつて、その河のほとりで食物をおあがりになつた時に、四月の上旬の頃でしたから、その河中の磯においでになり
身のほとりなる自然と生活とを、人となりての後、當時の情もてましかば、我が作る詩こそ類なき妙品ならめ。
つちすべてを段々だん/\刺戟しげきしてほりほとりにはあしやとだしばやくさそらあひえいじてすつきりとくびもたげる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あゝ横笛、花の如き姿いまいづこにある、菩提樹ぼだいじゆかげ明星みやうじやうひたひらすほとり耆闍窟ぎしやくつうち香烟かうえんひぢめぐるの前、昔の夢をあだと見て、猶ほ我ありしことを思へるや否。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あいちやんはうかしてこのくらあなからて、うつくしい花壇くわだんや、清冽きれいいづみほとり徜徉さまよひたいとしきりにのぞみました、が其戸口そのとぐちからはあたますことさへも出來できませんでした、可哀相かあいさうあいちやんは
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ムヽ五兩と云ては吾儕おれの身では大金ながら後刻のちまでに急度きつと調達こしらへもつくるが然して金の入用と邪魔じやまの手段は如何いふわけか安心するため聞せてと云ば元益庄兵衞の耳のほとりへ口さし寄せ何事やらんやゝ霎時しばらく私語さゝやきしめすを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
爭ひて、海のほとりに下り來ぬ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
またエウロに最もわづらはさるゝ灣のほとりパキーノとペロロの間にて、ティフェオの爲ならずそこに生ずる硫黄の爲にけむる 六七—
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
圍爐裏ゐろりほとりゑひくははつて寶引はうびきむれかぬばあさんさけきなれも威勢ゐせいのいゝものばかりであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
中宮の御所をはや過ぎて、垣越かきごし松影まつかげ月を漏らさで墨の如く暗きほとりに至りて、不圖ふと首を擧げて暫し四邊あたりを眺めしが、俄に心付きし如く早足に元來もときし道に戻りける。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
その孃子が驚いてその矢を持つて來て床のほとりに置きましたところ、たちまちに美しい男になつて、その孃子と結婚して生んだ子がホトタタライススキ姫であります。
その仇浪あだなみ立騷たちさわほとり海鳥かいてう二三ゆめいて、うたゝ旅客たびゞとはらわたつばかり、日出雄少年ひでをせうねん無邪氣むじやきである
董花すみれのかほり高きほとりおほはざる柩の裏に、うづたか花瓣はなびらの紫に埋もれたるかばねこそあれ。たけなる黒髮をぬかわがねて、これにも一束の菫花を揷めり。是れ瞑目せるマリアなりき。
またはブレンタのほとりなるパードヴァ人キアレンターナの熱に觸れざる間にそのまちその城を護らんためまたしかするごとく 七—九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
名もなつかしき梅津うめづの里を過ぎ、大堰川おほゐがはほとり沿ひ行けば、河風かはかぜさむく身にみて、月影さへもわびしげなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
此時このときはすでに澤山たくさん船員等せんゐんら此處彼處こゝかしこから船橋せんけうほとりしてあつまつてた。いづれもおどろいたやうな、いぶかるやうなかほで、いまやます/\接近せつきんきたあやしふね燈光とうくわうながめてる。
子供等こどもらまばらな枯蘆かれあしほとりからおりて其處そこにも目掘めぼりをこゝろみる。おほきな子供こども大事だいじざるをそつともつておりる。ちひさな子供こどもほりへおりながらざるかたぶけてどぜうこぼすことがある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
舟は岸に近づきてゑがき、我がちて望めるほとりに漕ぎ寄せられたり。翁が手は艣を放てり。
汝がかの右の輪のほとりに見しみたりの淑女は、洗禮バッテスモの事ありし時より一千年餘の先に當りて彼の洗禮となりたりき 一二七—一二九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さちなきものよ、岸をめぐりて海のほとりの地をたづね、後汝のふところを見よ、汝のうちに一なりとも平和を樂しむ處ありや 八五—八七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さればこそしばしさき、我かのテーヴェロの水うしほに變る海のほとりにゆきたるに、彼こころよくうけいれしなれ 一〇〇—一〇二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そのほとりより我はこの身をはこべるなり、我の誰なるを汝等に告ぐるは、わが名未だつよく響かざれば、空しくことばを費すに過ぎず。 一九—二一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
またこれにエチオピアの全地または紅海のほとりのものを加ふとも、かく多きかくあしき毒を流せることはあらじ 八八—九〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
われ彼の墓のほとりにいたれるとき、彼少しく我を見てさて蔑視さげすむごとく問ひていひけるは、汝の祖先は誰なりや 四〇—四二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)