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きびす
ふりがな文庫
“
踵
(
きびす
)” の例文
門に入れば
鼎
(
かなえ
)
の
沸
(
わ
)
くごときものが感じられ、早くもここには一死を共に誓う家の子郎党の二心なき者が
踵
(
きびす
)
をついで駆け集まっていた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ガラッ八の
凹
(
へこ
)
む顔を見て、女は始めて微笑みましたが、そのまま物優しく小腰を屈めると、
踵
(
きびす
)
を返して竹屋の渡しの方へ急ぎます。
銭形平次捕物控:040 大村兵庫の眼玉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
自分の部屋の前を何遍も素通りする。そう思ってまた
踵
(
きびす
)
を返した。が次の部屋まで来て見るとやっぱりさっきの NO.5 であった。
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
すると詩人は顔を隠すようにして、素速く
踵
(
きびす
)
を返し、何も言わずさっと来た道を駆け戻って行った。——倒れるように駆け出していた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
それを聞くと助五郎はくるりと
踵
(
きびす
)
を廻らして、元来た方へすたすた歩き出した。
喫驚
(
びっくり
)
して後見送っている望月を振り返りもせずに——。
助五郎余罪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
▼ もっと見る
さりとも知らず泰助は、ほぼこの家の要害を認めたれば、日の暮れて後忍び入りて内の様子を探らんものをと、
踵
(
きびす
)
を返して立去りけり。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もう大分
更
(
ふ
)
けたと見えて、どこかで後夜の鐘を打つのが聞える。作者はこの鐘声に驚いて、蛍籠を提げながら
踵
(
きびす
)
を回したことであろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
半兵衛の
直刀
(
ちょくとう
)
は中段やや下っていた。眼は刺すように万三郎を睨み、歯をくいしばって、
踵
(
きびす
)
を浮かした足でじりじりと
間
(
ま
)
を詰めてくる。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼はへへへと笑ったまま
踵
(
きびす
)
を返し、バー新羅の中を窓を開けて覗いたとき、おい気違い、乞食野郎! と皆から罵声を浴びせられた時も
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
というと
踵
(
きびす
)
を返し、門を出ると門の柱に「甲源一刀流指南」と書いた、二寸厚さの桧板、六尺長い門札を外し、小脇に抱えて歩き出した。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
拇指
(
おやゆび
)
から起って小指に終る繊細な五本の指の整い方、絵の島の海辺で獲れるうすべに色の貝にも劣らぬ爪の色合い、珠のような
踵
(
きびす
)
のまる
味
(
み
)
刺青
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それなのにものの一間もがたがたと床を踏んだかと思うと
踵
(
きびす
)
をかえして大胆に私を
藪睨
(
やぶにらみ
)
して、英国人らしく鼻に
疣
(
いぼ
)
をつくって
孟買挿話
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
○シブガラミはあみはじめの方を
踵
(
きびす
)
へあて、左右のわらを
足頭
(
あしくび
)
へからみて作るなり。里俗わら
屑
(
くづ
)
のやはらかなるをシビといふ。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
くるりと
踵
(
きびす
)
をかえし、玉目三郎は川下に向って歩きだした。うしろには、例の猫背の男が鼻汁をすすって
従
(
つ
)
いて来た。彼は泣いていたのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
サイレンが鳴り、花火が上がり、半鐘が鳴っている最中に
踵
(
きびす
)
を接して
暖簾
(
のれん
)
を潜って
這入
(
はい
)
って行く浴客の数は一人や二人ではなかったのである。
KからQまで
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
境内の碑をさぐる事も出来ず、鳥居前の曲った小道に、松風のさびしい音をききながら、もと来た一本道へと
踵
(
きびす
)
を
回
(
めぐ
)
らした。
元八まん
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
踵
(
きびす
)
を
囘
(
かへ
)
してツト
馳出
(
はせい
)
づればお
高
(
たか
)
走
(
はし
)
り
寄
(
よ
)
つて
無言
(
むごん
)
に
引止
(
ひきと
)
むる
帶
(
おび
)
の
端
(
はし
)
振拂
(
ふりはら
)
へば
取
(
とり
)
すがり
突
(
つ
)
き
放
(
はな
)
せば
纒
(
まと
)
ひつき
芳
(
よし
)
さまお
腹
(
はら
)
だちは
御尤
(
ごもつと
)
もなれども
暫時
(
しばし
)
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
手紙で
訊
(
き
)
き合して見ようか、それでも事は足りるのだと思ったりした。彼が、宏壮な邸宅に圧迫されながら思わず
踵
(
きびす
)
を
廻
(
かえ
)
そうとした時だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それが過ぎ去ると彼女は
踵
(
きびす
)
を返して部屋を出て行つた。そして私も同じやうに出た。私共の誰一人もが涙一滴落さなかつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
それに、かうしてゐるよりも、少し廻り道をすれば、楽に目的の場所へ行きつけさうな気がして、そのまま
踵
(
きびす
)
をかへした。
花問答
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
すぐ帰ろうとして、
踵
(
きびす
)
をめぐらしかけたが、足がすくんでほとんど動けなかった。土手を
這
(
は
)
い上がって、座敷へもどったら、
動悸
(
どうき
)
が打ち出した。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そしてそれをもつと正確にやれば、テーブルを一と廻りする間に、三百六十五回
踵
(
きびす
)
でグル/\廻らなければならないのだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
この地獄から脱出すべき唯一の途は、ただ
踵
(
きびす
)
をかえして正道に戻り、正しき神の教に基きて、よき生活を営むことである。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
私は恐ろしさに、
踵
(
きびす
)
を返して逃げ出そうとしたが、その時彼女は顔をあげて、私の方を見ながら別に驚いた様子もなく、
手巾
(
ハンケチ
)
で口を拭って言った。
犬神
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それが眼に着くと、彼はすぐに
踵
(
きびす
)
を
旋
(
かえ
)
した。そちらの方面のことは、前原や神崎の手でおおよそ分っていたからである。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
帆村は再び
踵
(
きびす
)
をかえして、臭気が一番ひどく感ぜられた地区の方へ歩いていった。それは丁度或る町角になっていた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
立停ると、
慌
(
あわただ
)
しくポケットを探りながら、クルリ
踵
(
きびす
)
を
囘
(
かへ
)
して、ツカ/\と林檎を賣る少女の前に突ツ立ツた。そして
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
すると少年は苦痛な顔をして受取りもせず、
踵
(
きびす
)
を返してすごすごと他の店先へ掃きに行った。坐って膳に向うのでなければ少年は食事と思わなかった。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
同時に振り返ったお鶴は鉄公の頭をピシャピシャと平手でひっぱたいてクルリと
踵
(
きびす
)
をかえすと元来た方へカラコロとやがて横町の
闇
(
やみ
)
に消えてしまった。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
市民の群れは
踵
(
きびす
)
を接して眼下遥かなる正門の前に集いて
彽徊
(
ていかい
)
顧望立ち去りも得で敬虔なる黙祷を捧げておりました。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
しかし、お角は必ずしも駒井だけを当てにして来たのではないと見えて、そのまま素直に
踵
(
きびす
)
を
廻
(
めぐ
)
らしてしまいます。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夏休みが済むと、お月見を楽みにする。それから寒くなるまで当分何もない代りに、クリスマスとお正月とが
踵
(
きびす
)
を接して来る。次が年越しの
豆蒔
(
まめま
)
きだ。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
私は自分の声で眼が醒め、一分間ほど怪訝な思いでソーボリの広い背中を、チョッキの
尾錠
(
びじょう
)
を、肥った
踵
(
きびす
)
を眺め、それからまた横になってうとうとする。
妻
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
無言のまま与吉を見すえていた栄三郎、何を思ったかくるりと
踵
(
きびす
)
を返して、いそぎ足に寺の
境内
(
けいだい
)
へはいりかけた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と袖下に忍んで様子を
窺
(
うかゞ
)
って居りまする。
流石
(
さすが
)
の平林も
如何
(
いかん
)
とも
詮方
(
せんかた
)
なく、
踵
(
きびす
)
を
反
(
かえ
)
して奥の方へ逃込みました。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
汽車が出ると、私は
踵
(
きびす
)
をかえした。もうやがて六時すぎでもあったろう。街にあかあかと電灯がついていた。この寂しさを私はどこかで発散させたかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
演説家はまだいい、クリスチャンの
踵
(
きびす
)
を接して生ずるのは最も苦々しき事実である。一人の人間が信仰生活に入るのだって私は容易ならぬできごとだと思う。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
やがて重き物など引くらんやうに彼の
漸
(
やうや
)
く
踵
(
きびす
)
を
旋
(
めぐら
)
せし時には、
推重
(
おしかさな
)
るまでに
柵際
(
さくぎは
)
に
聚
(
つど
)
ひし
衆
(
ひと
)
は
殆
(
ほとん
)
ど散果てて、駅夫の三四人が
箒
(
はうき
)
を執りて場内を掃除せるのみ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
たま/\本能寺の飛報が二日のうちにとゞいたのも秀吉の為には天の使者で、直ちに
踵
(
きびす
)
をめぐらせて馳せ戻るなら光秀は虚をつかれ、天下は自ら秀吉の物です。
二流の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
この時鍋被の女は重たそうな歩み付きで
踵
(
きびす
)
を返して、自分の家に入りかけた。門口の柱には
蚫
(
あわび
)
の貝殻がかかっていて、それに「ささらさんばち
宿
(
やど
)
」と書いてある。
櫛
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
小僧はすっくと
起
(
た
)
ち、ふところへ冊子を
抛
(
ほう
)
り込むと、
踵
(
きびす
)
を返して松林の奥へ消えて行ったが、奈世は小僧の、その挙動を見ると、ぎくりとした様子で振りかえり
面
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
それでも
取次
(
とりつ
)
ぎの
小娘
(
こむすめ
)
には
私
(
わたくし
)
の
言葉
(
ことば
)
がよく
通
(
つう
)
じたらしく、『
承知
(
しょうち
)
致
(
いた
)
しました。
少々
(
しょうしょう
)
お
待
(
ま
)
ちくださいませ。』と
言
(
い
)
って、
踵
(
きびす
)
をかえして
急
(
いそ
)
いで
奥
(
おく
)
へ
入
(
はい
)
って
行
(
ゆ
)
きました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
ほどよい庭へ
真直
(
まっすぐ
)
に立ち、
踵
(
きびす
)
を
揃
(
そろ
)
へ両手を真直に垂れて「気を付け」の姿勢であなたは歌いはじめた。
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
娘は
歎息
(
たんそく
)
したがどうも仕方がない、再び
踵
(
きびす
)
を
廻
(
めぐ
)
らして、林の中へはいり、およそ二町余も往ッたろうか、向うに小さな道があッて、その突当りに小さな
白屋
(
くさのや
)
があッた。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
東北の旅に思わずも長い時を
費
(
ついや
)
しました。ここから
踵
(
きびす
)
を返し中部を見学することに致しましょう。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そして、今、曲りなりにもトーキーは、世界的技術に
踵
(
きびす
)
を接して、歩を共にしていたのである。
色彩映画の思い出
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
詩人は努力精進して別に
深邃
(
しんすゐ
)
なる詩の法門をくゞり、三眛の境地に脚を
停
(
とゞ
)
めむとして
遽
(
には
)
かに
踵
(
きびす
)
をかへされた。吾人は「寂寥」篇一曲を
擁
(
いだ
)
いて詩人の遺教に泣くものである。
新しき声
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
その運動はただ東よりして西に
奔
(
はし
)
り、たがいにその
踵
(
きびす
)
を
追蹤
(
ついしょう
)
し、ついに欧州西岸の極端にあるスペイン人のごときはさらに西漸して大西洋を越え、米州に達するに至れり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ゴツン、ゴツンと、続けざまに、靴の
踵
(
きびす
)
が鳴って、石膏の細いかけらが四方に飛び散った。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
坂口はビアトレスの口から、エリスの此数日来の振舞を聞いていたのと、そそくさと銀行へ入っていった様子が、如何にも
訝
(
いぶか
)
しく思われたので、
踵
(
きびす
)
を返して彼女の後に
附随
(
つきしたが
)
った。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
“踵(かかと)”の解説
かかと(踵)は、足の裏の最も後(背中側)の部分である。きびすとも言う。靴ではかかとの下の靴底を厚くするのが普通で、英語の heel からヒールとも言う。靴のこの部分を指してかかとと言うこともある。
(出典:Wikipedia)
踵
漢検1級
部首:⾜
16画
“踵”を含む語句
相踵
接踵
高踵靴
踵鉄
高踵
円踵
前踵部
対踵地
対踵的
後踵
膕踵
赤踵
踵摺
追踵