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見遁
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みのが
ふりがな文庫
“
見遁
(
みのが
)” の例文
「親分さん、決して逃げも隱れもいたしません。——が、たつた三日だけお
見遁
(
みのが
)
しを願ひます。娘の祝言が濟んで了つたら私は——」
銭形平次捕物控:111 火遁の術
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
頭髪
(
かみ
)
の房々とあるのが、美しい水晶のような目を、こう、
俯目
(
ふしめ
)
ながら
清
(
すず
)
しゅう
瞪
(
みは
)
って、列を一人一人
見遁
(
みのが
)
すまいとするようだっけ。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
どんな
微
(
かす
)
かな音響であっても、彼は
見遁
(
みのが
)
すことなく、その音響が何から来るものであるかについて、考えるのが楽しみになった。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あの顔色を見給え、彼は気の毒に病気ではあるが、あの無表情な面に深刻な反省があり、決意が溢れきっているのを
見遁
(
みのが
)
してはならない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
単に石臼が捨ててあるだけで満足せず、その石臼の薄いことを
見遁
(
みのが
)
さなかったのは、この句のやや平凡を免れ得る
所以
(
ゆえん
)
であろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
▼ もっと見る
しかし、その馬子達よりも、彼に取って、もっと注意すべき人間が、今休んだ茶店のあたりから
尾
(
つ
)
いて来たのを、万兵衛も
見遁
(
みのが
)
していた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と書いた大きな門札のかゝつた
家
(
うち
)
を見掛けたに相違ない。幾ら
見遁
(
みのが
)
さうたつて、
迚
(
とて
)
も見遁す事の出来ない程大きな門札である。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
帰郷前よりも一層
潤沢
(
うるおい
)
をもって来たお今の目などの、浅井に対する物思わしげな表情を、お増は
見遁
(
みのが
)
すことができなかった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
屹度
(
きっと
)
新聞に、デカデカと報道されるに違いないし、又雑誌記者という職掌柄、そんな記事を
見遁
(
みのが
)
すはずもないからである。
自殺
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
のみならず、彼の神経といえば、それこそ五
浬
(
マイル
)
先の落ち
櫂
(
かい
)
さえも
見遁
(
みのが
)
さぬという、潜望鏡のそれよりも鋭敏ではないか。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
ですから
私共
(
わたしども
)
は
石器時代
(
せつきじだい
)
の
遺蹟
(
いせき
)
に
行
(
い
)
つても、
土器
(
どき
)
を
熱心
(
ねつしん
)
に
採集
(
さいしゆう
)
し、
小
(
ちひ
)
さい
破片
(
はへん
)
でも
見遁
(
みのが
)
さぬように
注意
(
ちゆうい
)
してをります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
「あやまったと分れば、このたびだけ
見遁
(
みのが
)
して遣わす。滝川はひとくせある奴じゃ、よく労って交わるがよいぞ」
備前名弓伝
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
既に哺乳の時を過ぎて後も、子供の飲食衣服に心を用いて些細の事までも
見遁
(
みのが
)
しにせざるは、即ち婦人の天職を奉ずる
所以
(
ゆえん
)
にして、其代理人はなき筈なり。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
と云って勿論「サム」のような、名作でも何んでも無いのである。ただ女流の作だけに、全体を通じて曖昧のあるのが、
見遁
(
みのが
)
すことの出来ない特色と云える。
日本探偵小説界寸評
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかしこの
些末
(
さまつ
)
な嗜好品の流行の事実もそう軽々には
見遁
(
みのが
)
すことの出来ないものではあろうと思われる。
チューインガム
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼はある新聞社の主筆が法廷で陳述した言葉を思い出すことが出来る。その主筆に言わせると、世には法律に触れないまでも
見遁
(
みのが
)
しがたい幾多の人間の罪悪がある。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
借金方の附くようにと思いまして、ついふら/\と出来心で、へえ、
沢山
(
たんと
)
金え
盗
(
と
)
るという了簡じゃアごぜえません、貧の盗みでございますから、お
見遁
(
みのが
)
しを願います
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この本能を抑圧する必要のある、若しくは抑圧すべき道徳の上に成り立たねばならぬとの主張の上に据えられた人類の集団生活には
見遁
(
みのが
)
すことの出来ないうそがある。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
しかしその「赦し」というのは悪に対してむとんちゃくなインダルゼンスとは全く異なり、悪の一点一画をも
見遁
(
みのが
)
さず認めて後に、そのいまわしき悪をも赦すのである。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
二
度目
(
どめ
)
の
酒
(
さけ
)
は
幾
(
いく
)
らか
腹
(
はら
)
に
餘計
(
よけい
)
であつた
老人等
(
としよりら
)
はもう
卯平
(
うへい
)
を
見遁
(
みのが
)
しては
置
(
お
)
かなかつたのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
欺き
遁
(
のが
)
れんと思ふ共
斯
(
かく
)
折込
(
をれこ
)
んだら最早佛の仲間入尋常に其懷中の金を渡して行ば
命
(
いのち
)
と衣類は
見遁
(
みのが
)
すのみならず三朱や一分の路用は
呉
(
くれ
)
て
遣
(
やる
)
又惡く
情張
(
じやうはる
)
と是非に及ばず此世の暇を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それ以来、彼は塞の中に
何時
(
いつ
)
も二つの瞳が、昼も夜もぎらぎらして近寄る気にもならなかったが、ようやく、野伏ノ勝が不浄物の始末をしているのを今は
見遁
(
みのが
)
す気になっていた。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
けれど、
彼方
(
かなた
)
天魔
(
てんま
)
鬼神
(
きじん
)
を
欺
(
あざむ
)
く
海賊船
(
かいぞくせん
)
ならば
一度
(
ひとたび
)
睨
(
にら
)
んだ
船
(
ふね
)
をば
如何
(
いか
)
でか
其儘
(
そのまゝ
)
に
見遁
(
みのが
)
すべき。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
しかし、そんな事はまあどうでもいいとして、ただ一つ
見遁
(
みのが
)
す事の出来ない事がある。
新秩序の創造:評論の評論
(新字新仮名)
/
大杉栄
(著)
それが、少し
難
(
むづ
)
かしい問題であると、藤野さんは手を擧げながら、若くは手を擧げずに、屹度後ろを向いて私の方を見る。私は、其眼に
滿干
(
さしひき
)
する微かな波をも
見遁
(
みのが
)
す事はなかつた。
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
川口の平地には普通の漁村に比すればやや繁華な邑落があって、川上へまたは山越に少々の商業運送を経営していると言う、航海者には
見遁
(
みのが
)
すべからざる主要な地点であるゆえに
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
末造の物馴れた、鋭い観察は、この何物かをまるで
見遁
(
みのが
)
してはおらぬのである。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
(三)何物をも
見遁
(
みのが
)
さゞる
敏捷
(
びんせふ
)
徳富蘇峰の将来之日本を以て世に出づるや、彼れは世界の将来が生産的に傾くべきを論ずる其著述に於て、
杜甫
(
とほ
)
の詩を引証し、
伽羅千代萩
(
めいぼくせんだいはぎ
)
の文句を引証し
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
あらゆる感覚器官が一時に緊張し、或る超絶的なものが精神に宿ったことを、私は感じた。どんな錯雑した論理の委曲も、どんな微妙な心理の
陰翳
(
いんえい
)
も、今は
見遁
(
みのが
)
すことがあるまいと思われた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
兎に角元就は、一度は陶に味方をしてその悪業を
見遁
(
みのが
)
しているのである。
厳島合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
二十一歳で博士になり、少佐の資格で、
齢上
(
としうえ
)
の沢山な下僚を呼び捨てに手足のごとく使い、日本人として最高の栄誉を受けようとしている青年の挙動は、栖方を
見遁
(
みのが
)
して他に例のあったためしはない。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
と父親は
見遁
(
みのが
)
さなかった。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「親分さん、決して逃げも隠れもいたしません。——が、たった三日だけお
見遁
(
みのが
)
しを願います。娘の祝言が済んでしまったら私は——」
銭形平次捕物控:111 火遁の術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
道庵主催、前代未聞の関ヶ原の模擬戦を見物していたところの一人に、紙屑買いののろま清次がいたことは
見遁
(
みのが
)
すべからざることでした。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
これは舞台が華やかな銀座で演じられたというだけのことで結局
極
(
ご
)
く普通の死亡事件として
見遁
(
みのが
)
されてしまったことであろう。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
さきに見届けに入った旗本たちにはその不審がすぐ不審と感じられなかったのは是非もないが、司馬懿の活眼はそれを
見遁
(
みのが
)
しできなかった。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただ秋の到るということを著しく感じ、著しく現す習慣のついている人は、この種の平凡な趣を
見遁
(
みのが
)
す
虞
(
おそれ
)
があるのである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
今病人に指さされし時、
件
(
くだん
)
の男は
蒼
(
あお
)
くなりて恐しげに
戦慄
(
わなな
)
きたり。泰助などて
見遁
(
みのが
)
すべき。
肚
(
はら
)
の
中
(
うち
)
に。ト思案して
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これは、
先刻
(
さっき
)
の、仙次が、述べた口上だったが、観衆は、その瞬間を
見遁
(
みのが
)
すまいと、瞬きもしないで、ブランコの振れについて、頸を右に、左に廻していた。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「いいえ、夜会もございません……けれど……」と云って琅玉は
周章
(
あわ
)
てて口を
噤
(
つぐ
)
んだのであった。何んでホートンが
見遁
(
みのが
)
そう! 直ぐ彼は鋭く突込んで行った。
喇嘛の行衛
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「だけど、お前の目が始終
先方
(
むこう
)
を捜していると同じに、先方の目だってお前を
見遁
(
みのが
)
すもんか。」
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
手前は主人の供をしながら、
当
(
とう
)
の
仇
(
あだ
)
を
見遁
(
みのが
)
すとは怪しからん奴だから腹を切れと仰しゃるか、手討にすると仰しゃるか知れませんが、何と仰しゃってもそれまでと覚悟を致して
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「なに朝飯さへ
甘
(
うま
)
く食べさせて呉れるなら、女房のする事は
大抵
(
たいてい
)
見遁
(
みのが
)
してやるさ。」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
しかも自分などの驚いているのは、そういう思い思いの
咄嗟
(
とっさ
)
の趣向かと思う昔話に、なお
見遁
(
みのが
)
し得ない共通の動機のようなものがあって、それが
殆
(
ほとん
)
と日本の全国に一貫している事である。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
海上
(
かいじやう
)
に
起
(
おこ
)
る千
差萬別
(
さばんべつ
)
の
事變
(
じへん
)
をば一も
見遁
(
みのが
)
すまじき
筈
(
はづ
)
の
其
(
その
)
見張番
(
みはりばん
)
は
今
(
いま
)
や
何
(
なに
)
をか
爲
(
な
)
すと
見廻
(
みま
)
はすと、
此時
(
このとき
)
右舷
(
うげん
)
の
當番
(
たうばん
)
水夫
(
すゐふ
)
は
木像
(
もくざう
)
の
如
(
ごと
)
く
船首
(
せんしゆ
)
の
方
(
かた
)
に
向
(
むか
)
つたまゝ、
今
(
いま
)
の
微
(
かすか
)
な
砲聲
(
ほうせい
)
は
耳
(
みゝ
)
にも
入
(
い
)
らぬ
樣子
(
やうす
)
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
以て
見遁
(
みのが
)
し遣はさん併ながら手先の者共へ
酒代
(
さかだい
)
にても遣はさねば相成らずと申を
聞
(
きゝ
)
文藏は
蘇生
(
よみがへり
)
たる心地にて大に喜びこれこそ地獄の沙汰も
金
(
かね
)
次第と
目明
(
めあか
)
し方の兩人へ
所持
(
しよぢ
)
せし有金三十七兩を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
もし当りさわりがあったら勝手ながら屠蘇のせいと
見遁
(
みのが
)
してもらいたい。
新春偶語
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「何方も出來さうもありませんね。お勝手には下女のお六が頑張つてゐるが、あの女は野良猫一匹だつて
見遁
(
みのが
)
しやしませんよ」
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
だが、リーマン博士にいわせれば、彼等こそ、わが民族の躍進を
拒
(
こば
)
み、人類の幸福を
見遁
(
みのが
)
してしまうところの軽蔑すべき
凡庸政治家
(
ぼんようせいじか
)
どもです。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だが、当分は
見遁
(
みのが
)
してやら。おれにゃ別の大望があるからよ。けッ! それさえなけりゃ、
汝
(
うぬ
)
なんぞ、半日だッてこの人間界へおくもんけえッ!
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見
常用漢字
小1
部首:⾒
7画
遁
漢検準1級
部首:⾡
13画
“見”で始まる語句
見
見惚
見物
見出
見下
見上
見送
見透
見做
見当