“見遁:みのが” の例文
“見遁:みのが”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治19
海野十三10
野村胡堂7
寺田寅彦4
三遊亭円朝3
“見遁:みのが”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸6.5%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.4%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
それを聽く麻井幸之進の顏色が、次第に眞つ蒼に變つて、額に脂汗あぶらあせの浮くのを平次は見遁みのがす筈もありません。
「何方も出來さうもありませんね。お勝手には下女のお六が頑張つてゐるが、あの女は野良猫一匹だつて見遁みのがしやしませんよ」
私はそこにあったスタンドを取上げてどんな細かいことも見遁みのがすまいと、眼を皿のようにして観察してゆきました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「親分さん、決して逃げも隱れもいたしません。——が、たつた三日だけお見遁みのがしを願ひます。娘の祝言が濟んで了つたら私は——」
どんなかすかな音響であっても、彼は見遁みのがすことなく、その音響が何から来るものであるかについて、考えるのが楽しみになった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帰郷前よりも一層潤沢うるおいをもって来たお今の目などの、浅井に対する物思わしげな表情を、お増は見遁みのがすことができなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
のみならず、彼の神経といえば、それこそ五マイル先の落ちかいさえも見遁みのがさぬという、潜望鏡のそれよりも鋭敏ではないか。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
しかし一日一日と、徳川家に弓をひく者を謀叛人と呼んでもふしぎでない社会に変りつつあることは見遁みのがせない。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ惨たるかな」と、関羽は、敵のために涙を催し、長嘆ちょうたんせい、すべてを見遁みのがして通した。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人は追跡のあらゆる祕術を盡しました。見遁みのがさず、覺られずに、夜更けの街をけるのは、全く容易のわざではありません。
どんな錯雑した論理の委曲も、どんな微妙な心理の陰翳いんえいも、今は見遁みのがすことがあるまいと思われた。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
道庵主催、前代未聞の関ヶ原の模擬戦を見物していたところの一人に、紙屑買いののろま清次がいたことは見遁みのがすべからざることでした。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「親分、變な野郎ですよ。縛り上げるといきなり泣き出して、五十兩やるから見遁みのがしてくれ——つて言やがる」
銭形平次捕物控:126 辻斬 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
単に石臼が捨ててあるだけで満足せず、その石臼の薄いことを見遁みのがさなかったのは、この句のやや平凡を免れ得る所以ゆえんであろう。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
と書いた大きな門札のかゝつたうちを見掛けたに相違ない。幾ら見遁みのがさうたつて、とても見遁す事の出来ない程大きな門札である。
さきに見届けに入った旗本たちにはその不審がすぐ不審と感じられなかったのは是非もないが、司馬懿の活眼はそれを見遁みのがしできなかった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、その馬子達よりも、彼に取って、もっと注意すべき人間が、今休んだ茶店のあたりからいて来たのを、万兵衛も見遁みのがしていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蜀に全力を傾けんか、呉のうかがうものあらんことが思われ、呉へ向わんか、蜀のうごきが見遁みのがしがたい。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この姿で、お目にかかったのが、残念にござります。どうぞ、御慈悲をもって、このまま、お見遁みのがしを」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはこの物語の最初にのべたとおりのことであったが、彼、帆村探偵が見遁みのがした事実もかなり多い筈であると附け加えることを忘れなかった。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「だけど、お前の目が始終先方むこうを捜していると同じに、先方の目だってお前を見遁みのがすもんか。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「なに朝飯さへうまく食べさせて呉れるなら、女房のする事は大抵たいてい見遁みのがしてやるさ。」
しかしこの時は、そんな思いがけないところに眼があろうとは思わなかったので見遁みのがしてしまった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
——だが、このばばのことであるから、武蔵に対しては、一時でもただ見遁みのがしては去らなかった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、当分は見遁みのがしてやら。おれにゃ別の大望があるからよ。けッ! それさえなけりゃ、うぬなんぞ、半日だッてこの人間界へおくもんけえッ!
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どっちみち、家庭に恵まれない冷たいものが、彼の幼時をつつんでいることは見遁みのががたい。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見遁みのがしてならないのは、彼の脱藩前から、帰藩以後にまで、ひそかに結盟されていた交友である。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その主筆に言わせると、世には法律に触れないまでも見遁みのがしがたい幾多の人間の罪悪がある。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
度目どめさけいくらかはら餘計よけいであつた老人等としよりらはもう卯平うへい見遁みのがしてはかなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けれど、そんな大騒動をお膝もとで起すことは、江戸の周囲が見遁みのがしているところではない。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ女流の作だけに、全体を通じて曖昧のあるのが、見遁みのがすことの出来ない特色と云える。
日本探偵小説界寸評 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
“機をつかむ”ということぐらいは誰も知りぬいている常識に過ぎないが、事ある日の大機小機を、平然と見遁みのがしてゆくのもその常識の病であるといえよう。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頭髪かみの房々とあるのが、美しい水晶のような目を、こう、俯目ふしめながらすずしゅうみはって、列を一人一人見遁みのがすまいとするようだっけ。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
篆書の字劃も彫りも、何様、素人彫しろうとぼりの手すさびらしい稚拙が見遁みのがせない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、そんな事はまあどうでもいいとして、ただ一つ見遁みのがす事の出来ない事がある。
新秩序の創造:評論の評論 (新字新仮名) / 大杉栄(著)
既に哺乳の時を過ぎて後も、子供の飲食衣服に心を用いて些細の事までも見遁みのがしにせざるは、即ち婦人の天職を奉ずる所以ゆえんにして、其代理人はなき筈なり。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
狐のやうにこすい記者は、目の前の機会をその儘見遁みのがすやうな事はしなかつた。
この本能を抑圧する必要のある、若しくは抑圧すべき道徳の上に成り立たねばならぬとの主張の上に据えられた人類の集団生活には見遁みのがすことの出来ないうそがある。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
これは、先刻さっきの、仙次が、述べた口上だったが、観衆は、その瞬間を見遁みのがすまいと、瞬きもしないで、ブランコの振れについて、頸を右に、左に廻していた。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「ものは相談じゃ、いや頼みじゃ、同じ身分のものと見かけ、頼む見遁みのがしてくれ」
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
見遁みのがしてはならないと急ぐように、六部の影は、又八の影を、すぐ追って行った。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その名が出る度毎に、お春の表情の險しくなるのを平次は見遁みのがす筈もありません。
しかしその「赦し」というのは悪に対してむとんちゃくなインダルゼンスとは全く異なり、悪の一点一画をも見遁みのがさず認めて後に、そのいまわしき悪をも赦すのである。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
末造の物馴れた、鋭い観察は、この何物かをまるで見遁みのがしてはおらぬのである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
この句の妙味はたしかにそういうコントラストにあるが、同時にあまり風もない、よく晴れた初夏の庭前の様子が描かれていることも、固より見遁みのがすことは出来ぬ。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
ところが西洋では東洋人の独創などはよほどなものでないと見遁みのがされやすい。
学位について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
兎に角元就は、一度は陶に味方をしてその悪業を見遁みのがしているのである。
厳島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
もし当りさわりがあったら勝手ながら屠蘇のせいと見遁みのがしてもらいたい。
新春偶語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
一行は見す見すこの恐るべき殺人犯人を見遁みのがすより外に仕方がなかった。
科学時潮 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
元来、景時は平家系の人間だが、石橋山で頼朝が惨敗し、大木のうろに隠れていたのを、彼が知りながら見遁みのがしてやったため、後に、鎌倉へ召されて重用された人物である。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は、其眼に滿干さしひきする微かな波をも見遁みのがす事はなかつた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
けれど、彼方かなた天魔てんま鬼神きじんあざむ海賊船かいぞくせんならば一度ひとたびにらんだふねをば如何いかでか其儘そのまゝ見遁みのがすべき。
それ以来、彼は塞の中に何時いつも二つの瞳が、昼も夜もぎらぎらして近寄る気にもならなかったが、ようやく、野伏ノ勝が不浄物の始末をしているのを今は見遁みのがす気になっていた。
海上かいじやうおこる千差萬別さばんべつ事變じへんをば一も見遁みのがすまじきはづその見張番みはりばんいまなにをかすと見廻みまはすと
ぼんやりして居れば見遁みのがしてしまうほどの細いものです。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「頼まれたわけでもなんでもねえが、男となってみりゃ、お蘭さんの難儀を知って見遁みのがしはできねえ、これから後を追いかけて、この路用を渡して上げて、ずいぶん路用を安心させてやるのさ」
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が、当然疑われたが、彼の眼を見た政職の眼には、その解答ともいえる困惑こんわくと自己苛責かしゃくの容子が明らかに現われていたことは官兵衛にとって見遁みのがし得ない示唆しさだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、この私は、重大な一行を見遁みのがしはしなかった。それは、柿丘氏が今年の秋の始めに、日×生命の保険医の宅で、正面からと側面からとの、二枚のレントゲン写真を撮ったという記事だったのです。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とうあだ見遁みのがすとは怪しからん奴だから腹を切れと仰しゃるか、手討にすると仰しゃるか知れませんが、何と仰しゃってもそれまでと覚悟を致して、惜しくもない命を生延びて帰りましたが
眼ざとい秀和は其角の姿を見遁みのがさなかつた。
しかも自分などの驚いているのは、そういう思い思いの咄嗟とっさの趣向かと思う昔話に、なお見遁みのがし得ない共通の動機のようなものがあって、それがほとんと日本の全国に一貫している事である。
室町の京公達きょうきんだちでも、こうととのった姿とおもざしは少なかろう。——しかし、それにばかり見恍みとれていた者は、天井を見ている彼のひとみの、不敵なものを見遁みのがしていた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今日は、自分として考え直したこともある故、いったんここでは見遁みのがしてやるが、後日、遠からぬうちに、必ずおのれの素首すこうべをもらいに行く。そのになって、卑怯な振舞をいたすなよ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ナニ、若い女の屍体?」帆村はドキンと胸を打たれた。そうだ、今日は探しに歩こうと思っていたあの女の屍体かも知れない。日数が経っているところから云っても、これは見遁みのがせないぞと、心の中で叫んだ。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二十一歳で博士になり、少佐の資格で、齢上としうえの沢山な下僚を呼び捨てに手足のごとく使い、日本人として最高の栄誉を受けようとしている青年の挙動は、栖方を見遁みのがして他に例のあったためしはない。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ですから私共わたしども石器時代せつきじだい遺蹟いせきつても、土器どき熱心ねつしん採集さいしゆうし、ちひさい破片はへんでも見遁みのがさぬように注意ちゆういしてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「——頼みます! 見遁みのがして」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「アッ、ア……旦那、今わたしのった紙入れは返しますから、どうか、このところは、見遁みのがしてやっておくンなさいまし……、どうしても、せっぱに詰まることがあって、魔がさしたのでございます」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はい、誠に御親切に有難うございます、わたくしきておりましては夫に済みませんことで、みさおが立ちません、どうぞお見遁みのがし遊ばして、この儘死なして下さるのがかえっておなさけでござります
泰助などて見遁みのがすべき。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「みれば、貴公も武家ではないか。それくらいなことは、自分でも分っているであろう。身分を隠してくれとか、見遁みのがしてくれとか、神妙に詫びるならとにかく、手先の者を投げこんだり、吾々の改めにたてつく口ぶり」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お見遁みのがし下さいませ」
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「堂の正面に納めた額の剣がなくなっているのを見た時、——どうかしたらこのではあるまいかと思ったが、弓がなかったので、うっかり見遁みのがしていたよ、——青竹だって、結構弓の代りになるとは気が付かなかった」
見遁みのがしを願います
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そしてしその怪死事件の現場にかの有名な青年探偵帆村荘六ほむらそうろくが居合わさなかったとしたら、これは舞台が華やかな銀座で演じられたというだけのことで結局く普通の死亡事件として見遁みのがされてしまったことであろう。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
従ってここでいうところのチューインガム亡国論も畢竟ひっきょうはただ一場の空論に過ぎないと云われても仕方がないであろうが、しかしこの些末さまつな嗜好品の流行の事実もそう軽々には見遁みのがすことの出来ないものではあろうと思われる。
チューインガム (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「すぐ、ふん縛ろうかと思ったが、おめえも懇意らしいし、商売冥利みょうり、今日のところだけは見遁みのがしてやったが、小倉庵が、承知で、彼奴きゃつに大手を振って歩かせていると云われちゃあ、世間に済まねえ、近いうちに野郎を召捕あげるぜ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが中田の記憶がたしかならば、一昨日は銀座で、そんな事件があった筈はなかった、——なぜならばそんな事件があれば、屹度きっと新聞に、デカデカと報道されるに違いないし、又雑誌記者という職掌柄、そんな記事を見遁みのがすはずもないからである。
自殺 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
浪人の身の上で、喰い方に困りまして、悪いこととは存じながら、ツイ心得違いをいたし、斯様なよこしま非道のことに相成りましたが、向後こうごすみやかに善心に立返りますから、幾重にも御憐愍ごれんみんをもちましてお見遁みのがしを願います
——そんな者を倒す力は誰にでもあるが、それを敢てやらないのは、もう今日の兵法者の仲間では、吉岡の力など眼中にもない情勢にあったからと、もう一つは拳法先生の遺徳を思い、さむらいの情けで、あの門戸ぐらいは見遁みのがしておいてやろうという気持もあったに相違ない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(三)何物をも見遁みのがさゞる敏捷びんせふ 徳富蘇峰の将来之日本を以て世に出づるや、彼れは世界の将来が生産的に傾くべきを論ずる其著述に於て、杜甫とほの詩を引証し、伽羅千代萩めいぼくせんだいはぎの文句を引証し、其「コーデーション」の意外なる所に出づるを以て世を驚かしめたりき。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
われらのリーマン艇長の敵は、むしろ国内にありといいたいのです。彼等は、表面はすこぶる手固いように見える、いわゆる自重派じちょうはです。だが、リーマン博士にいわせれば、彼等こそ、わが民族の躍進をこばみ、人類の幸福を見遁みのがしてしまうところの軽蔑すべき凡庸政治家ぼんようせいじかどもです。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あの日、貴方がきっと見遁みのがしている人があると思いますわ。それはわたくしからは申しあげられませんけれど、ミチ子さんにお聴き遊ばせ、その人はカフスボタンをあの二階のところへ落してしまったらしいのです。気をつけていらっしゃい。ミチ子さんがこれからも幾度となく二階へ探しに行くことでしょうから……」
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「彼の特徴として、物を観るのに広い見地から全体を概観した。樹を見て森を見遁みのがすような心配は決してなかった。」「いつでも大きな方のはしっこ(big end)をつかまえてかかった。」「手製の粗末な器械を愛したのも畢竟ひっきょう同じ行き方であった。無用のものは出来るだけなくして骨まで裸にすることを好んだ。」
レーリー卿(Lord Rayleigh) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)