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蓄
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たくわ
ふりがな文庫
“
蓄
(
たくわ
)” の例文
姉は胸に秘密を
蓄
(
たくわ
)
え、弟は憂えばかりを抱いているので、とかく受け応えが出来ずに、話は水が砂に
沁
(
し
)
み込むようにとぎれてしまう。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
けれど諸国の武族は各〻みなその郷国での地盤をかため、自信を
蓄
(
たくわ
)
え、それが次に来る
群雄割拠
(
ぐんゆうかっきょ
)
の
萌芽
(
ほうが
)
を地表にあらわし始めていた。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
垣だとばかり思っていたものは垣のように出来た
木戸
(
きど
)
だったのであろう。そのまた木戸から出て来たのを見れば、
口髭
(
くちひげ
)
を
蓄
(
たくわ
)
えた男である。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は社会の習慣に対しては、徳義的な態度を取る事が出来なくなつた、其代り三千代に対しては一点も不徳義な動機を
蓄
(
たくわ
)
へぬ積であつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
掛けてあっても一枚か二枚掛け通してあるので日本人のように十幅も二十幅も名画を
蓄
(
たくわ
)
え四季折々に掛けかえるというような贅沢はしない。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
▼ もっと見る
「あなたは、あまりに興奮し過ぎる。あなたはもっと現実を見なければいけない」
顎髭
(
あごひげ
)
を
蓄
(
たくわ
)
えた五十近い艦長は、若者を
宥
(
なだ
)
めるようにいった。
船医の立場
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
初めて余のおそるおそる格子戸
明
(
あ
)
けて案内を乞ひし時やや暫くにして出で
来
(
きた
)
られしは鼻下に
髭
(
ひげ
)
を
蓄
(
たくわ
)
へし四十年配の
眼
(
まなこ
)
大きく色浅黒き人なりき。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
その他なお商家の
豪奢
(
ごうしゃ
)
を尽したる例甚だ多く、
就中
(
なかんずく
)
外妾
(
がいしょう
)
を
蓄
(
たくわ
)
うること商人に最も多くして、手代の
輩
(
やから
)
に至るまで
窃
(
ひそか
)
に養わざるものなしという。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
彼らの多くはやはり家に住いして、妻子を
蓄
(
たくわ
)
え、口に
腥膻
(
なまぐさ
)
を喰うの徒だとありまして、在家の破戒法師であったのです。
融和問題に関する歴史的考察
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
そんな事までして少しばかりの毛を
蓄
(
たくわ
)
えて置くのはどういう訳かというと、それが壮士坊主仲間では非常に意気だ
粋
(
すい
)
だといって
羨
(
うらや
)
まれるからです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
一室に閉籠って
蓄
(
たくわ
)
えていたお銀様の読書の知識というものに思い及ばないからこそ、大きな驚異と、怖れとがある。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして
漸
(
ようや
)
く準備が終り、一人前の人間として、充分の知識や財産を
蓄
(
たくわ
)
えた時には、もはや青春の美と情熱とを失い、
蝉
(
せみ
)
の
脱殻
(
ぬけがら
)
みたいな老人になっている。
老年と人生
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
その胸の中には、吾人の貴い夢が、吾人の過去の全生涯が、吾人の愛した人々の
聖
(
きよ
)
い
塵
(
ちり
)
が、
蓄
(
たくわ
)
えられているのだ。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
正月は、ひどい寒さでもあるし、
蓄
(
たくわ
)
えの穀物があんまり豊かでない時なので、貧しい村人は盆をたのしみに、晴着をつくりたい処も、のばしておくのである。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
人にも言わぬ積り積った苦労を、どんなに胸に
蓄
(
たくわ
)
えておりましたか、その容体ではなかなか一通りではなかろうと思う一部始終を、
悉
(
くわ
)
しく申したのでありまする。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
色は衰えたといってもまだ
残
(
のこ
)
んの春を
蓄
(
たくわ
)
えている。
面
(
おも
)
だちは長年の
放埒
(
ほうらつ
)
で
荒
(
すさ
)
んだやつれも見えるが、目もと口もとには散りかけた花の感傷的な気分の反映がある。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
ようやく人買いの眼を
眩
(
くら
)
ませ、夢中でここまで逃げては来ましたが、
知人
(
しりびと
)
はなし
蓄
(
たくわ
)
えもなし、うろうろ
徘徊
(
さまよ
)
っておりますうちには乞食非人に
堕
(
お
)
ちようとも知れず
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「何の、やくたいもない心配じゃ。拙者にまだ
聊
(
いささ
)
かの
蓄
(
たくわ
)
えもある。それが気詰まりと思わるるならば
此方
(
こんた
)
、三味線を引かっしゃれ。
身共
(
わて
)
が小唄を歌おうほどに……」
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
妙信 (年齢六十に近く
白髯
(
はくぜん
)
を
蓄
(
たくわ
)
え手には珠数を持てり。若僧のものいえる間ようよう上手に進み行きついに肩を並べつつ)今さっき本門の傍で
呻
(
うめ
)
いていると思ったが
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
草葉の影でお
悦
(
よろこ
)
びでござりましょう。それに斎藤さんお聞きなさい。この子の姉さんが実に感心でござります。少しはおとっさんのお
蓄
(
たくわ
)
えもあって。今でも公債の利子が。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
母は自分でも多少の小金は
蓄
(
たくわ
)
えていたらしいですが、月々の経費は父が生前、下町の池上という商事会社の顧問をしていて、そこから来る手当が母のところへ届けられる
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
実にその通りで、数万の金を
蓄
(
たくわ
)
えても人の人たることを忘れぬ以上は、
金
(
かね
)
は
邪魔
(
じゃま
)
にもならぬし、悪用もされぬ。富む者必ず
不仁
(
ふじん
)
ではない。また
不仁
(
ふじん
)
のみ富むわけでもない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
旦那の友だちは皆、当時流行の
猟虎
(
らっこ
)
の帽子をかぶり、
羽
(
は
)
ぶりのよい官員や実業家と肩をならべて、
権妻
(
ごんさい
)
でも
蓄
(
たくわ
)
えることを男の
見栄
(
みえ
)
のように競い合う人たちだからであった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
とんちんかんの答をしたのは、若い男を送って来た中年の、もしゃもしゃした
頤髯
(
あごひげ
)
を
蓄
(
たくわ
)
えている男であった。それは、どこかで、見覚えのある顔、見覚えのある
声音
(
こわね
)
だった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
やがて長藤君が秋山君名義で
蓄
(
たくわ
)
えた貯金通帳を
贈
(
おく
)
れば、秋山君は救ったものが救われるとはこのことだと感激の涙にむせびながら、その通帳を更生記念として発奮を誓ったが
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
物を隠すには男子も遙に及ばぬほど巧なるが凡て女の常なれば倉子も人知れず如何なる情夫を
蓄
(
たくわ
)
うるや図られず、若し情夫ありとせば其情夫誰なるや、如何にして見破るべきや。
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ああ殊勝な心がけを持って居らるる、立派な考えを
蓄
(
たくわ
)
えていらるる、学徒どもの示しにもしたいような、
老衲
(
わし
)
も思わず涙のこぼれました、五十分一の雛形とやらも是非見にまいりましょう
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
一つのベンチには口ひげを
蓄
(
たくわ
)
えたしかつめらしい洋服の男、一つのベンチには、帽子も
冠
(
かぶ
)
らぬ、魚屋の親方とでもいい
相
(
そう
)
な、
遊人風
(
あそびにんふう
)
の男、そしてもう一つのベンチには、ハッとしたことには
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
儂
(
のう
)
熟〻
(
つらつら
)
考うるに、今や外交日に開け、
表
(
おもて
)
に
相親睦
(
あいしんぼく
)
するの状態なりといえども、
腹中
(
ふくちゅう
)
各〻
(
おのおの
)
針を
蓄
(
たくわ
)
え、優勝劣敗、弱肉強食、日々に
鷙強
(
しきょう
)
の欲を
逞
(
たくま
)
しうし、
頻
(
しき
)
りに東洋を
蚕食
(
さんしょく
)
するの
兆
(
ちょう
)
あり、しかして
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
「ははは——、あっしだって、何もそんな、魔術使いじゃありません。物を盗むにゃあ、これで相当に、苦労が要るものですよ。誰だって、盗ませるために、
蓄
(
たくわ
)
えている奴もありませんからね」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「空の鳥を見よ。
稼
(
まく
)
ことなく
穡
(
かる
)
ことをせず、倉に
蓄
(
たくわ
)
うることなし」
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
背が高く
口髭
(
くちひげ
)
を
蓄
(
たくわ
)
え、
膏
(
あぶら
)
ぎった
赭顔
(
あからがお
)
をしていました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
未来の備えに
蓄
(
たくわ
)
うる事にのみ苦労する。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
蓄
(
たくわ
)
へは軒下にある炭二俵
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
蓆
(
むしろ
)
を巻いて、床下へ首を突っ込むと、日頃、開墾するうちに心がけて運んだ木の
根瘤
(
ねこぶ
)
だの、竹の根だのが、山をなすほど
蓄
(
たくわ
)
えてある。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はカイゼルに似た
八字髯
(
はちじひげ
)
を
蓄
(
たくわ
)
うるにもかかわらず狂人と常人の差別さえなし得ぬくらいの
凡倉
(
ぼんくら
)
である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
……生の停滞を望む馬鹿者ども!……彼の幼年時代の作品中に見出せる興味は、その幼稚な未熟さにあるのではなくて、未来のために
蓄
(
たくわ
)
えられてる力にあるのだった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それは、七兵衛が、例の
鎧櫃
(
よろいびつ
)
に
蓄
(
たくわ
)
えた古金銀の全部を、惜気もなく提供したところから来る景気で、これがあるゆえに、ばけもの屋敷に、一陽来復の春来れりとぞ思わるる。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
わたくしはかつて婦女を
後堂
(
こうどう
)
に
蓄
(
たくわ
)
えていたころ、絶えずこの事を考えていた。今日にあっても、たまたま
蘭燈
(
らんとう
)
の影暗きところに身を置くような時には、やはりこの事を考える。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「『イスラエルの神へにえささげようぞ』この手でゴロゴロころがして来た、大江戸のいいところの
別嬪
(
べっぴん
)
さんたちを、野郎、そこへ
蓄
(
たくわ
)
えているのだ。その上取りためたお
賽銭
(
さいせん
)
!」
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
惜気
(
おしげ
)
もなく剃刀を動かす度に、もう幾年となく鼻の下に
蓄
(
たくわ
)
えて置いたやつが
曲
(
ゆが
)
めた彼の顔を
滑
(
すべ
)
り落ちた。好くも切れない剃刀で、彼は
唇
(
くちびる
)
の
周囲
(
まわり
)
の
腫
(
は
)
れ上るほど力を入れて剃った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
まず遊学御済まし
成
(
な
)
され候わば、妻を
蓄
(
たくわ
)
え官に
就
(
つ
)
く等のこと、ひたすら父母の御心に任され、もし君側にでも御出でなれば深く精忠を尽し君心を得べし。
然
(
しか
)
る後正論正義を主張すべし。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
私は学校にいた時分から他の人よりも余計に色々な智識を
蓄
(
たくわ
)
える事が好きで
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
だから私は腹の底に依然として険しい感情を
蓄
(
たくわ
)
えながら、あの霜焼けの手が硝子戸を
擡
(
もた
)
げようとして悪戦苦闘する
容子
(
ようす
)
を、まるでそれが永久に成功しない事でも祈るような冷酷な眼で
眺
(
なが
)
めていた。
蜜柑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
燕王は
初
(
はじめ
)
より朝野の注目せるところとなり、
且
(
かつ
)
は威望材力も群を抜けるなり、又
其
(
そ
)
の
終
(
つい
)
に天子たるべきを期するものも有るなり、又
私
(
ひそか
)
に異人術士を養い、勇士
勁卒
(
けいそつ
)
をも
蓄
(
たくわ
)
え
居
(
お
)
れるなり、人も疑い
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
外部の
仕業
(
しわざ
)
であることは明瞭で、宝蔵のうちの古刀とか鏡とかには異状はなかったが、多年
蓄
(
たくわ
)
えられてあった砂金だの
海鼠
(
なまこ
)
形の物だの
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その上卒業してからこれと云う研究もしないようだ。深い考を内に
蓄
(
たくわ
)
えているかも知れぬが、蓄えているならもう出すはずである。出さぬは蓄がない証拠と見て
差支
(
さしつかえ
)
ない。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼の記憶は深い天水
桶
(
おけ
)
のようであって、あらゆる清い天水が
蓄
(
たくわ
)
えられていた。クリストフはあきずにその水をくみ出した。そしてシュルツはクリストフの興味を見てうれしがった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
万一、百姓を強くしてこれに反抗の気を
蓄
(
たくわ
)
えしめた暁には、強い戦争ができるはずはない。そこで百姓を骨抜きにして置かなければ、軍隊を強くして、天下を平定することはできないのだ。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それがやっぱり食物上の智識を
蓄
(
たくわ
)
えるのですね、今の世の妻君にその智識を蓄えている人は滅多にないが
貴嬢
(
あなた
)
に台所の経済をお任せ申したら少い入費を以て
美味
(
おい
)
しい御馳走を食べる事が出来ますね。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
蓄
常用漢字
中学
部首:⾋
13画
“蓄”を含む語句
貯蓄
含蓄
蓄財
蓄妾
蓄財家
蓄殖
蘊蓄
蓄音機
蓄膿症
蓄音器
蓄積
薀蓄
電蓄
蓄電池
蓄膿
蓄水池
蓄髯
蝋管蓄音機
蓄電器
貯蓄心
...