肥前ひぜん)” の例文
また、皇后はご出征のまえに、肥前ひぜん玉島たましまというところにおいでになって、そこの川のほとりでお食事をなさったことがありました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
遠くは、薩摩さつま日向ひゅうがから。もちろん豊前ぶぜん肥前ひぜんの沿海からも徴集し、しかもそれは戦艦として使える堅牢な船質でもなければならない。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
筑前ちくぜん筑後ちくご肥前ひぜん肥後ひご豊前ぶぜん豊後ぶんご日向ひゅうが大隅おおすみ薩摩さつまの九ヵ国。それに壱岐いき対馬つしまが加わります。昔は「筑紫ちくししま」と呼びました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「私は加世かよと申します。肥前ひぜん島原の高力左近太夫こうりきさこんだゆう様御家中、志賀玄蕃しがげんば、同苗内匠たくみの母でございます。これは次男内匠の嫁、関と申します」
それだからバンギ(肥前ひぜん平島ひらしま)と謂ったり、ヨサイギモン(下甑島しもこしきじま)と謂ったり、ヨウマアサマ(伊豆いず新島にいじま)と謂ったりする。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
水戸の御隠居、肥前ひぜん鍋島閑叟なべしまかんそう薩摩さつまの島津久光の諸公と共に、生前の岩瀬肥後から啓発せらるるところの多かったということも似ていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その上、三人でいた間は、肥前ひぜんくに加瀬かせしょうにある成経のしゅうとから平家の目を忍んでの仕送りで、ほそぼそながら、朝夕ちょうせきの食に事を欠かなかった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これは徳川幕府の初年の話であるが、肥前ひぜん平戸ひらどをイギリス人の引揚げる時にも、彼れ等は日本人の女房に、大いに依々恋々いいれんれんとしたといふことである。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
第四十二 肥前ひぜん飯 と申すのは鯛の身を白焼にして細かくさばきます。別に牛蒡ごぼうをササきにして半日ほど水へ漬けて度々たびたび水を取かえてアクを出します。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
辰勝の嫡子重光ちょうこうは家を継いで、大田原政増、清勝せいしょうに仕え、二男勝重しょうちょうは去って肥前ひぜん大村おおむら家に仕え、三男辰盛しんせい奥州おうしゅうの津軽家に仕え、四男勝郷しょうきょうは兵学者となった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのことは、前に五島の下にて述べたる一例にても分かるであろう。かかる話は、九州中にても肥前ひぜん肥後ひご方面に多い。佐賀の方言にては河童をカワソーという。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
肥前ひぜん温泉岳うんぜんだけたか千三百六十米せんさんびやくろくじゆうめーとる)は時々とき/″\小規模しようきぼ噴火ふんかをなし、少量しようりよう鎔岩ようがんをも流出りゆうしゆつすることがあるが
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
なすに右門の申やう我等われら同職どうしよくうちにて有徳うとくなるは肥前ひぜんなり此者を引入ひきいれなば金子の調達てうだつも致すべし此儀如何あらんと申ければ彌次六も大いによろこ早々さう/\夫となくかの肥前を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ああ悪の美の牽引力! ……四国へはいっては長曽我部へ仕え、九州へ渡っては大友家へ仕え、肥前ひぜんへ行っては竜造寺家へ仕え、薩摩さつまへ入っては島津家に仕えた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
幸い、肥前ひぜん唐津からつ多々羅たたらはまと云う名所があるから、せめて三平の戸籍だけでもそっちへ移してくれ。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
天正てんしょう二年の冬からとなりの国と戦争をしているので、この肥前ひぜん(長崎県)大村城のるすをまもるものたちは、鎧甲よろいかぶとのつくろいをしたり、武者草鞋わらじや弓矢をこしらえたり
伝四郎兄妹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
豊後ぶんごの大友フランシスコ義鎮よししげ肥前ひぜんの大村バルトロメオ純忠すみただなどの場合がそれだ。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
有明海の彼方には肥前ひぜんの山野が望まれ、多良たら岳は最も近くそびえている。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
肥前ひぜん大村藩おおむらはんです。昔をいえば、これでも由緒ゆいしょただしい侍ですよ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
われは見つ肥前ひぜん平戸ひらとの年ふりし神楽かぐらまひを海わたり来て
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ここ肥前ひぜん長崎港ながさきかうのただなかは
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
肥前ひぜん島原しまばら半島などでは是をヨナガリとも謂うそうである。妙な言葉であるがその起原は、朝食をアサガリという語にかぶれたものと思う。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
石焼の方は、肥前ひぜんの影響多く、後者は相馬そうま笠間かさまの系統だという。この土焼の方は主として雑器であるから格が一段と下るものと見做みなされている。
現在の日本民窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ユウゼニイと名づくる砲船は十万ドルで肥前ひぜんへ売れたといい、ヒンダと名づくる船は十一万ドルで長州へ売れたともいう。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
先年、余が肥前ひぜんの島原に滞在せしとき、不知火の期節で、人に誘われて夜半過ぎに海岸へ出でて、天明まで海上を望んで見たが、その夜は不知火の現出がなかった。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
肥前ひぜん郷士ごうし浪島五兵衛なみしまごへえともうすもので、二、三人の従者じゅうしゃもつれた、いやしからぬ男でござります」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なし今は男女五六人の暮しに成し處近所の者の世話にて女房をもち家内むつまじく繁昌はんじやう致しけり扨又肥前ひぜんの小猿は本町二丁目にてうり家をもとめ名を肥前屋小兵衞と改め糶呉服せりごふく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
肥前ひぜん押鮨おしずし 秋付録 米料理百種「日本料理の部」の「第四十四 肥前の押鮨おしずし
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いや、衣食は春秋はるあき二度ずつ、肥前ひぜんの国鹿瀬かせしょうから、少将のもとへ送って来た。鹿瀬の荘は少将のしゅうとたいら教盛のりもりの所領の地じゃ。その上おれは一年ほどたつと、この島の風土にも慣れてしまった。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
センバという名称は西は大分県海部あまべ郡、肥前ひぜん千々岩ちぢわ、また熊本県八代やつしろ郡などにも見いだされるが、主としては東北の端々はしばしにおいて行われている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そのほか、肥前ひぜん西彼杵にしそのぎ郡高島村、吉本氏より報知せられたる仕方は、前述のものと別に異なることなし。ただ少々他の国にてなすところと異なるは、左の一点なり。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
それから帰りは船問屋へ廻って、肥前ひぜんから陶器やきものの荷が届いているかどうか、聞きあわせておいで。——また、道くさして、こないだみたいに夜おそく帰って来ると家へ入れないぞ
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だがこの種のものは二川村に始まったのではなく肥前ひぜんには同系統のさらに古い幾つかの窯が発見される。この一個極めて大作であり雄作である。用途は「うどん粉」の捏鉢である。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
肥前飯ひぜんめし 秋付録 米料理百種「日本料理の部」の「第四十二 肥前ひぜん飯」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
通りて先へ行拔今や來ると待居たり文藏夫婦の者は斯る事のありとはゆめにもしらず甚太夫が病氣の事を案じ急ぎて來懸りしに向ふ見ずの三吉肥前ひぜんの小猿兩人は目明めあか風俗ふうこしらへ其所へすぐと出立汝等女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
肥前ひぜん下五島しもごとう、昔の大値賀島おおちかのしまの北部海岸に、三井楽みいらくというみさきの村が今もある。遠く『万葉集』以来の歌に出ているミミラクの崎と同じだと、今日の人はみな思っている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
伊勢国(山田、松阪、津、一身田、四日市、桑名) 尾張国(名古屋、熱田、津島、大野、半田) 三河国(豊橋、岡崎、北大浜、西尾、蒲郡、豊川) 遠江とおとうみ国(掛川、浜松、平田、中泉) 駿河するが国(静岡、小川、清水、藤枝) 相模さがみ国(大磯) 武蔵国(忍) 上総かずさ国(千葉、茂原) 近江おうみ国(大津、豊蒲、五ヶ荘、愛知川、八幡、彦根、長浜) 美濃国(岐阜) 上野こうずけ国(安中、松井田、里見、高崎、八幡) 岩代いわしろ国(福島) 陸前国(築館、一迫) 陸中国(盛岡、花巻) 陸奥むつ国(弘前、黒石、板屋野木、鰺ヶ沢、木造、五所川原、青森、野辺地) 羽前うぜん国(米沢、山形、寒河江、天童、楯岡、新庄、鶴岡) 羽後うご国(酒田、松嶺、湯沢、十文字、横手、沼館、六郷、大曲、秋田、土崎、五十目、能代、鷹巣、大館、扇田) 越後国(新井、高田、直江津、岡田、安塚、坂井、代石、梶、新潟、沼垂、葛塚、新発田、亀田、新津、田上、加茂、白根、三条、見附、浦村、片貝、千手、六日町、塩沢、小出、小千谷、長岡、大面、寺泊、地蔵堂、新町、加納、野田、柏崎) 丹波国(亀岡、福知山) 丹後国(舞鶴、宮津、峰山) 但馬たじま国(出石、豊岡) 因幡いなば国(鳥取) 伯耆国(長瀬、倉吉、米子) 出雲国(松江、平田、今市、杵築) 石見いわみ国(波根、太田、大森、大国、宅野、大河内、温泉津、郷田、浜田、益田、津和野) 播磨はりま国(龍野) 備前びぜん国(閑谷) 備後びんご国(尾道) 安芸国(広島、呉) 周防すおう国(山口、西岐波、宮市、徳山、花岡、下松、室積、岩国) 長門ながと国(馬関、豊浦、田辺、吉田、王喜、生田、舟木、厚東、萩、秋吉、太田、正明市、黄波戸、人丸峠、川尻、川棚) 紀伊国(高野山、和歌山) 淡路国(市村、須本、志筑) 阿波国(徳島、川島、脇町、池田、撫養) 讃岐さぬき国(丸亀、高松、長尾) 伊予国(松山、宇和島、今治) 土佐国(高知、国分寺、安芸、田野、山田、須崎) 筑前国(福岡、若松) 筑後国(久留米、吉井) 豊前ぶぜん国(小倉、中津、椎田) 豊後ぶんご国(日田) 肥前ひぜん国(長崎、佐賀) 肥後ひご国(熊本) 渡島おしま国(函館、森) 後志しりべし国(江差、寿都、歌棄、磯谷、岩内、余市、古平、美国、小樽、手宮) 石狩国(札幌、岩見沢) 天塩てしお国(増毛) 胆振いぶり国(室蘭)
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
茶は鎌倉かまくら時代の始めごろに、えらい禅宗ぜんしゅうの僧が支那から持ってかえり、九州では肥前ひぜん背振山せふりやま、それから都近くの栂尾とがのお宇治うじえたということになっているが、この説の半分はまちがっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
中世の文学に幾たびか取上げられた美々良久みみらくの島、亡くなった人にうことができるという言い伝えのあるその島は、はたして遣唐使が船を寄せたという肥前ひぜん五島ごとう三井楽みいらくの崎と同じであったか
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
肥前ひぜん南高来みなみたかき郡の一部などでは
カワタケ 肥前ひぜん南高来みなみたかき