さん)” の例文
足許に白蟻ほどの小粒なのが、空から投げだされて、さんみだして転がっている。よく見るとひょうだ。南はななめ菅笠冠すげがさかぶりの横顔をひんなぐる。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
されば、有馬街道から西の野末のずえでございました。ひるの合戦に、そこらは馬のかばねやら兵のむくろがさんをみだしておりまする。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その道筋みちすじに、おびただしく沈めたる材木は、あたかも手を退ける如くに、さんを乱してさっと左右に分れたのである。
木精(三尺角拾遺) (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「サンジョ」の「サン」は「うらさん」の算である、「算者」または「算所」と書くのが命名の本意に当たっていると思われる、彼らは卜占祈祷の表芸の他に
俗法師考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
一手所望しょもうだ……という男の声は、さんをみだした闘場において、確かなひびきをもって栄三郎の耳をうった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
小角しょうかく浄蔵じょうぞうなどの奇蹟は妖術幻術の中にはさんしていないで、神通道力というように取扱い来っている。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
現在げんざいおいては、九しう、四こくから、陸前りくぜん陸奧りくおく出羽でばはうまでけて三十五ヶこくわた發見はつけんされてるので、加之しかも横穴よこあなは一ヶしよ群在ぐんざいするれいおほいのだから、あなすうさんしたら
いわんや必勝ひっしょうさんしてはいし、必敗ひっぱいを期してつの事例も少なからざるにおいてをや。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
と同時に牛飼うしかい童部わらべを始め、御供の雑色ぞうしきたちは余りの事に、魂も消えるかと思ったのでございましょう。驚破すわと云う間もなく、さんを乱して、元来た方へ一散に逃げ出してしまいました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さんをみだして、逃げてきた足なみは、ぴたりときびすをかえして、いなむらにおりたすずめのように、ばたばたとやりもろともにをふせる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その道筋みちすぢに、おびたゞしくしづめたる材木ざいもくは、あたか退けるごとくに、さんみだしてさつ左右さいうわかれたのである。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一説にこれは算所で、さんを置く陰陽師おんみょうじの部落であろうとの説もありますが、私はそれを信じません。
次第にその舟影は遠ざかり、不知火の一ツ一ツはさんをみだして消え果てた。あとはまったく元どおりな海しじまだった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
狼藉ろうぜきえりし死骸むくろてられたらむように、婦女等おんなたちさんを乱して手荷物の間によこたわれり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さんなき死骸をそのあとに捨てみだし、逆に新田軍は、多くの投降者やまた新たな“馳せ参じ”を容れていたから、その兵力はいよいよ激増をみせていた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あはせ、ござ、むしろとなりして、外濠そとぼりへだてたそらすさまじいほのほかげに、およぶあたりの人々ひと/″\は、おいわかきも、さんみだして、ころ/\とつて、そしてなえたやうにみなたふれてた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
城兵は桐山、吉年村、森屋などの方へ、さんをみだして逃げて行った。また、水ノ手の高塚山を掻き分けて、無二無三、奥へさして落ちて行く一群も先にあった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もつともいとけなしといへども、のちおのづから設得まうけえんと。はたせるかなひととなりて荊州けいしう刺史ししとなるや、ひそか海船かいせんあやつり、うみ商賈しやうこ財寶ざいはう追剥おひはぎして、とみいたすことさんなし。のち衞尉ゑいゐはいす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
高廉こうれんも望楼へあがってみた。打ち見れば、暁の曠野こうやには、敵の梁山泊軍が、さんをみだして騒いでいる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ツになり、散々ちりぢりにちらめいて、たちまさんく、くれないとなく、紫となく、緑となく、あらゆる色が入乱いりみだれて、上になり、下になり、右へ飛ぶかと思ふと左へおどつて、前後にひるがえり、また飜つて
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
見れば、はるかかなたの火が、風に吹き散らされたほたるのごとく、さんをみだしてきはじめたのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぴつたりめたふすままい……臺所だいどころつゞくだゞつぴろ板敷いたじきとのへだてる……出入口ではひりぐちひらきがあつて、むしや/\といはらんゑがいたが、年數ねんすうさんするにへず、で深山みやまいろくすぼつた、引手ひきてわき
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「や、左様でございますか。勘定に間違いのない心算つもりでございますが、では、念の為もう一さん
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぴったり閉めた襖一枚……台所へ続くだだっ広い板敷とのへだてになる……出入口ではいりぐちひらきがあって、むしゃむしゃといわの根に蘭を描いたが、年数さんするにえず、で深山みやまの色にくすぼった、引手ひきてわき
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)