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牽
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ひ
ふりがな文庫
“
牽
(
ひ
)” の例文
それは、
牽
(
ひ
)
かれているというより、
曳
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
られている形だった。青は、二歩歩いては立ち
停
(
ど
)
まり、三歩歩いては立ち停まるのだった。
狂馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
清逸が学問をするために
牽
(
ひ
)
き起される近親の不幸(父も母もそのためにたしかに老後の安楽から少なからぬものを奪われてはいるが)
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
これも後で
訊
(
たず
)
ね合せて見ると、母親の術であるらしく、ほんのちょっとした
口叱言
(
くちこごと
)
を種に、子供の同情を
牽
(
ひ
)
かんための手段であった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
何か
渾沌
(
こんとん
)
の気があって二二ガ四と割切れないところに心を
牽
(
ひ
)
かれるのか、それよりももっと真実なものがこの歌にあるからであろう。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
伴藏の女房おみねは
込上
(
こみあが
)
る
悋気
(
りんき
)
の角も奉公人の手前にめんじ我慢はしていましたが、
或日
(
あるひ
)
のこと馬を
牽
(
ひ
)
いて店先を通る馬子を見付け
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
家の者もそれを怪しんで、県の役所へ
牽
(
ひ
)
いてゆくと、犬はその庭に伏して又しきりに吠えつづけた。その様子をみて、役人もさとった。
中国怪奇小説集:11 異聞総録・其他(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
公爵家の紋章で
美々
(
びび
)
しく装われた三十三頭の牛が、羅馬の街上に、その尨大な石材を
牽
(
ひ
)
いて、ノメンタナ街の
邸
(
やしき
)
へ練り込みました。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
モーツァルトやベートーヴェンやシューベルトが光輝ある一生を託したウィーンの魅力はブラームスを強く
牽
(
ひ
)
きつけたのであろう。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
その折左衛門尉は自分が毎朝馬で馬場先を運動する事を話したので、石黒氏は
父親
(
てゝおや
)
に
牽
(
ひ
)
かれて
朝
(
あさ
)
夙
(
はや
)
くから馬場先に出掛けて往つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
僕は先に立ちて暗き
梯
(
はしご
)
を登りゆくに、我は詞もあらでその後に隨ひぬ。僕は戸外の
鈴索
(
れいさく
)
を
牽
(
ひ
)
いたり。内より
誰
(
た
)
ぞやといふは女の聲なり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
梅花
(
うめ
)
はもう眼を
遣
(
や
)
る所に咲いていた。けれど
山峡
(
やまあい
)
の冷気が肌身に
沁
(
し
)
みて、梅花に楽しむよりも、心は人里にばかり
牽
(
ひ
)
かれていた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
離るるとも、
誓
(
ちかい
)
さえ
渝
(
かわ
)
らずば、千里を繋ぐ
牽
(
ひ
)
き
綱
(
つな
)
もあろう。ランスロットとわれは何を誓える? エレーンの眼には涙が
溢
(
あふ
)
れる。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
最後に
小泉孤松
(
こいずみこしょう
)
の書いた「
農家
(
のうか
)
義人伝
(
ぎじんでん
)
」の中の一篇によれば、平四郎は伝吉の
牽
(
ひ
)
いていた馬に
泥田
(
どろた
)
へ
蹴落
(
けおと
)
されたと云うことである。(註三)
伝吉の敵打ち
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この事が桑田の好奇心を
牽
(
ひ
)
きはじめた初まりで、次に桑田は二人の食事をする茶ぶ台には飯茶碗だけは二ツ別々にしてあるが
人妻
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
私が彼に
牽
(
ひ
)
かれて居る間は、冷淡に放って置いて、こちらが落付くと、哀願やら感傷的辞句で私をサレンダーさせようとする。
日記:10 一九二四年(大正十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
梢の切れ目に
隠顕
(
いんけん
)
する湿地帯の彼方を、バンカを水牛に
牽
(
ひ
)
かせて三四人の男達がそれに乗りゆるゆると動いて行くのが見える。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
憎まれるという場合はもちろん、さげすまれるという場合でも、まだ彼は相手にとってはその心を
牽
(
ひ
)
くに足りる一つの存在であるのだから。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
その後ちブルガンデー州(Burgundy)でも、小児を殺した豚を法廷に
牽
(
ひ
)
き出して審問、弁論の上、これを絞罪に処したことがある。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
信州では辻の
道祖神
(
どうそじん
)
の祭をこの日行う例も多い。
藁苞
(
わらづと
)
の馬に藁苞の餅を背負わせて、道祖神の前まで
牽
(
ひ
)
いて行って置いて来る。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
しかしその様子を知りたくもあったのでじっと見て居りますと、ヤクはとぼとぼとただ
牽
(
ひ
)
かれて行くその後の方から二人で押して来るです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「私がですか」兵衛は眼を
瞠
(
みは
)
り、「私が木登りを——あの子供がやっているあいつを」こう云って急に
屠場
(
とじょう
)
へ
牽
(
ひ
)
かれる羊のような声をだした
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その列国を往来するや、駒を
牽
(
ひ
)
き鷹を
臂
(
ひ
)
し、従者おおかた一百人、まことに堂々たるものであり、その権式に至っては武将大名と等しかった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
親らしい男は馬を
牽
(
ひ
)
いて、其小供の群に声を掛けて通り、姉らしい若い女は細帯を巻付けた
儘
(
まゝ
)
で、いそ/\と二人の側を影のやうに
擦抜
(
すりぬ
)
けた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼の好んで読書し文章を書く廊下の硝子窓は、甲州の山に向うて居る。彼の気は彼の
住居
(
すまい
)
の方向の如く、
彼方
(
あっち
)
にも
牽
(
ひ
)
かれ、此方にも牽かれる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その
美貌
(
びぼう
)
とかの方へ
牽
(
ひ
)
かれがちなため、彼女の魂の美しさを物語る遺文がともすれば、
好事家
(
こうずか
)
の
賞玩
(
しょうがん
)
にのみ
委
(
ゆだ
)
ねられてゐることではあるまいか。
ジェイン・グレイ遺文
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
二十四、五かと思われる屈強な
壮漢
(
わかもの
)
が
手綱
(
たづな
)
を
牽
(
ひ
)
いて僕らの方を見向きもしないで通ってゆくのを僕はじっとみつめていた。
忘れえぬ人々
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
たまたま一童強くその尾を
牽
(
ひ
)
いたので、さては露われたか定めて棗売りの仕返しだろうと早合点してその童子の側を通り
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
飼主や村の青年に
牽
(
ひ
)
かれる牛は、もう、うおうと唸って、その声は遠方からきこえてくる。既に殺気立っている前景だ。
越後の闘牛
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
彼もそれは承知の上だったが、いっぽう彼の方でもやはり、何かの力に
牽
(
ひ
)
かれて女の方へおびき寄せられるのであった。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
彼は時々芳太郎の気分を、数学や英語の方へ
牽
(
ひ
)
きつけようと力めた。その結果、彼は時々思ひのほか
苛辣
(
からつ
)
な言葉を口へ出さなければならなかつた。
花が咲く
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
この二つの珠は、「相
牽
(
ひ
)
く珠」といふ名で呼ばれてゐる、この世にたゞ二つしかない、不思議な力をもつた珠です。
虹色の幻想(シナリオ)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
かうした淋しいやうな、なつかしいやうな、一種絶望的な、
或
(
あるひ
)
は落ちつき払つた考が私の心を私の歩みにつれて
牽
(
ひ
)
いた。次第に私の眼には涙が浮んだ。
愛は、力は土より
(新字旧仮名)
/
中沢臨川
(著)
杖頭
(
こづかい
)
がないのでしかたなしに通りすがりのカフェーやおでんやの
燈
(
ひ
)
に心を
牽
(
ひ
)
かれながら帰っているところであった。
馬の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
を弾き
乍
(
なが
)
ら山を
彷徨
(
さまよ
)
うた。勿論、この
計
(
はかりごと
)
は成就した。山の夜更けの三味の音は、甚七の注意を
牽
(
ひ
)
くに充分であった。
新訂雲母阪
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
車
轔々
(
りんりん
)
馬
蕭々
(
しょうしょう
)
。
行人
(
こうじん
)
の
弓箭
(
きゅうせん
)
各腰にあり。
爺嬢
(
やじょう
)
妻子走って相送り、
塵埃
(
じんあい
)
見えず
咸陽橋
(
かんようきょう
)
。衣を
牽
(
ひ
)
き足を
頓
(
す
)
り道を
攔
(
さえぎ
)
り
哭
(
こく
)
す。哭声ただちに上って
雲霄
(
うんしょう
)
を
干
(
おか
)
す。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
歴々としてなお
閻王
(
えんおう
)
の法廷に
牽
(
ひ
)
かれて照魔鏡の前に立たせられたるに異ならず、しかして今しも吹くる風、怪しくも墓の煙を彼が身辺に吹きよせたり
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
陣容が漸く整うて世人の注目を
牽
(
ひ
)
くようになったのは実に此の『俳人蕪村』を以って始まると言っていいのである。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
わが死によりてこのこよなき喜び汝に缺けしならんには、そも/\世のいかなる物ぞその後汝の心を
牽
(
ひ
)
きてこれを求むるにいたらしめしは 五二—五四
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
凡
(
すべ
)
ての分子が上下左右前後から、同じ力で
牽
(
ひ
)
かれて
居
(
お
)
りますけれど、液の表面におきましては、
其処
(
そこ
)
にある分子は、裏側からは液体の分子によって牽かれ
人工心臓
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
脱穀小屋の
庇
(
ひさし
)
の下に、貯蔵庫から玉蜀黍のそりを
牽
(
ひ
)
いて来た二
疋
(
ひき
)
の馬が、首を垂れてだまって立って居ました。
耕耘部の時計
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
長い材木の頭と尻とにそれを一つずつ
履
(
は
)
かせたような
恰好
(
かっこう
)
に材木を積み上げ、その前の橇を馬が
牽
(
ひ
)
くのである。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
祇園林
(
ギヲンバヤシ
)
・松囃子・
林田楽
(
ハヤシデンガク
)
などのはやしが、皆山の木を伐つて、其を中心にした、祭礼・神事の
牽
(
ひ
)
き物であつた。
万葉集研究
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
正道はなぜか知らず、この女に心が
牽
(
ひ
)
かれて、立ち止まってのぞいた。女の乱れた髪は
塵
(
ちり
)
に
塗
(
まみ
)
れている。顔を見れば
盲
(
めしい
)
である。正道はひどく哀れに思った。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ぢゃによって、
戀
(
こひ
)
の
神
(
かみ
)
の
御輦
(
みくるま
)
は
翼輕
(
はねがる
)
の
鳩
(
はと
)
が
牽
(
ひ
)
き、
風
(
かぜ
)
のやうに
速
(
はや
)
いキューピッドにも
双
(
ふた
)
つの
翼
(
はね
)
がある。あれ、もう
太陽
(
たいやう
)
は、
今日
(
けふ
)
の
旅路
(
たびぢ
)
の
峠
(
たうげ
)
までも
達
(
とゞ
)
いてゐる。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
まず、イゾンゾ方面に、兵力集結の偽装をおこない、そうして、伊軍の注意を、その方面に
牽
(
ひ
)
きつけておいて、その
間
(
かん
)
に、こっそり攻勢の準備を整えていた。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
鶴見に取ってはそこに出てくる、今の言葉でいえば、分析とか弁証とか超克とかいうものは、ただそれだけのものとして、そう深くは心を
牽
(
ひ
)
かされていない。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
拝殿の観覧席には相沢知吉の顔が見えた。彼の持馬も出場したのである。相沢は例のカーキ色のズボンをはいて来たが、馬には乗らずに
牽
(
ひ
)
いて来たのだつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
〔評〕南洲
胃
(
い
)
を病む。英醫
偉利斯
(
いりす
)
之を
診
(
しん
)
して、
勞動
(
らうどう
)
を
勸
(
すゝ
)
む。南洲是より山野に
游獵
(
いうれふ
)
せり。人或は病なくして犬を
牽
(
ひ
)
き兎を
逐
(
お
)
ひ、自ら南洲を學ぶと謂ふ、
疎
(
そ
)
なり。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
「起きる、ああ、今起きる。さあ、起きた。起きたけれど、手を
牽
(
ひ
)
いてくれなければ僕には歩けませんよ」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それにもかかわらず、何となく心を
牽
(
ひ
)
かれる俳句であり、和歌の恋愛歌に似た音楽と、蕪村らしい純情のしおらしさを、
可憐
(
かれん
)
になつかしく感じさせる作である。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
牽
漢検準1級
部首:⽜
11画
“牽”を含む語句
牽引
牽強附会
牽強
牽牛子
牽引力
牽牛星
牽引車
牽牛花
牽綱
相牽
牽索
牽制
牽付
牽強付会
牽牛
猿牽
牽挺
牽引性
牽出
牽牛織女
...