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沈着
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おちつ
ふりがな文庫
“
沈着
(
おちつ
)” の例文
日本人の仕事が一も二もなく
抑
(
おさ
)
えつけられて手も足も出せない当時の哈爾賓の事情を見ては、この上永く
沈着
(
おちつ
)
く気になれなくなった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
生徒も心を
沈着
(
おちつ
)
けて
碌々
(
ろく/\
)
勉強することが出来ないといふ風だ。でも此節はいくらか慣れて、斯の混雑の中で、講義を続けることが出来る。
突貫
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「お待ちなされい!」と
沈着
(
おちつ
)
いた声。紋太夫が
背後
(
うしろ
)
に立っている。オンコッコの腕は紋太夫の手の中にしっかり握られているのであった。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
白い肩掛を
引掛
(
ひっか
)
けた
丈
(
せい
)
のすらりとした
痩立
(
やせだち
)
の姿は、
頸
(
うなじ
)
の長い目鼻立の
鮮
(
あざやか
)
な色白の
細面
(
ほそおもて
)
と
相俟
(
あいま
)
って、いかにも
淋
(
さび
)
し気に
沈着
(
おちつ
)
いた様子である。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
『この次に。』と智惠子は
沈着
(
おちつ
)
いた聲で言つて、『貴女も早くお歸りなすつたが可いわ。お客樣が
被來
(
いらし
)
つたぢやありませんか。』
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
私の母は店の商売の方に気を配らなければならないことが余りにあつて十分と
沈着
(
おちつ
)
いて私達と向ひ合つて居るやうなことはありませんでした。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
と幸三郎は
沈着
(
おちつ
)
いた人ゆえ
悠々
(
ゆう/\
)
と玄関の処へ来ますとステッキがあります。これを
提
(
さ
)
げ、片手に
紙燭
(
ししょく
)
を
点
(
とも
)
したのを持って
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
権田は聊か心が
沈着
(
おちつ
)
いたのか、余り気狂いじみた様子も見えなくなった、静かに秀子の其の創の手を弄ぶ様にして居る
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
お政は始終顔を
皺
(
しか
)
めていて口も
碌々
(
ろくろく
)
聞かず、文三もその通り。独りお勢
而已
(
のみ
)
はソワソワしていて更らに
沈着
(
おちつ
)
かず、
端手
(
はした
)
なく
囀
(
さえず
)
ッて
他愛
(
たわい
)
もなく笑う。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
葡萄酒と絹物との産地だから富裕な事は勿論であるが、商業地としてよりも
沈着
(
おちつ
)
いた遊覧地としての感の方が深い。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
彼女の唇からそうした
詞
(
ことば
)
が聞けるものなら、その場で生命を投出したところで惜しくはなかったでしょう、私はとても
静
(
じっ
)
と
沈着
(
おちつ
)
いては居られませんでした。
流転
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
しかしブーレー博士は私と反比例に、
沈着
(
おちつ
)
いた態度で鼻眼鏡を
外
(
はず
)
した。微笑しいしい両手の指を組み合わせた。
幽霊と推進機
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
『
私
(
わたし
)
どもは
小
(
ちひ
)
さい
時
(
とき
)
に』と
終
(
つひ
)
に
海龜
(
うみがめ
)
が
續
(
つゞ
)
けました、
尚
(
な
)
ほ
折々
(
をり/\
)
少
(
すこ
)
しづゝ
歔欷
(
すゝりなき
)
して
居
(
ゐ
)
たけれども、
以前
(
まへ
)
よりは
沈着
(
おちつ
)
いて、『
私
(
わたし
)
どもは
海
(
うみ
)
の
中
(
なか
)
の
學校
(
がくかう
)
へ
行
(
ゆ
)
きました。 ...
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
起居
(
たちい
)
もしとやかで、
挨拶
(
あいさつ
)
も
沈着
(
おちつ
)
いた様子のよい子だから、そなたたちも無作法なことをして
不束者
(
ふつつかもの
)
、田舎者と笑われぬようによく気をつけるがよいと言われた。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
さうして汐の靜かにさしてくる日沒後の傾斜面は
沈着
(
おちつ
)
いた紫色の光を帶びて幽かに夕づつのかげを浮べる。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
座敷へかえってもそれから何だか気に懸るようなことが出来て、しかも心配は
毫
(
すこ
)
しもないが胸さわぎがするので、烟草も
沈着
(
おちつ
)
いて吸えずに半分で灰吹の
裡
(
うち
)
へ葬った。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
うむその
沈着
(
おちつ
)
いていて気性が高くて、まだ入用ならば学問が深くて腕が確かで男前がよくて品行が正しくて、ああ
疲労
(
くたび
)
れた、どこに一箇所
落
(
お
)
ちというものがない若者だ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
が、何だか
沈着
(
おちつ
)
いても居られないので、市郎は洋服身軽に
扮装
(
いでた
)
って、
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
庭前
(
にわさき
)
へ
降立
(
おりた
)
った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
古風の湯宿と
今樣
(
いまやう
)
の旅館とが入り交つてゐる
温泉
(
ゆ
)
の
香
(
か
)
の高い小さな村であるが、何となく人をゆつたりと
沈着
(
おちつ
)
かせてしまふやうなところが、實際山奧の湯村の氣分でもあらう。
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
幾度も通ったことのある畳廊下を冬子は
沈着
(
おちつ
)
いた心持で歩くことが出来た。重厚なやや古びた造作が親しみ深い。そして川風がせせらぎの音につれて、そよ/\と流れ入って来た。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
座敷には
窘
(
くるし
)
める遊佐と
沈着
(
おちつ
)
きたる貫一と相対して、
莨盆
(
たばこぼん
)
の火の消えんとすれど呼ばず、彼の
傍
(
かたはら
)
に
茶托
(
ちやたく
)
の上に伏せたる
茶碗
(
ちやわん
)
は、
嘗
(
かつ
)
て肺病患者と知らで
出
(
いだ
)
せしを恐れて
除物
(
のけもの
)
にしたりしをば
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
時雄は常に
苛々
(
いらいら
)
していた。書かなければならぬ原稿が幾種もある。
書肆
(
しょし
)
からも催促される。金も
欲
(
ほ
)
しい。けれどどうしても筆を執って文を
綴
(
つづ
)
るような
沈着
(
おちつ
)
いた心の状態にはなれなかった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「お待遠さま。兄さん、済みません」と、吉里の声は存外
沈着
(
おちつ
)
いていた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
年
(
とし
)
を
言
(
い
)
はゞ二十六、
遲
(
おく
)
れ
咲
(
ざき
)
の
花
(
はな
)
も
梢
(
こづゑ
)
にしぼむ
頃
(
ころ
)
なれど、
扮裝
(
おつくり
)
のよきと
天然
(
てんねん
)
の
美
(
うつ
)
くしきと二つ
合
(
あは
)
せて五つほどは
若
(
わか
)
う
見
(
み
)
られぬる
徳
(
とく
)
の
性
(
せう
)
、お
子樣
(
こさま
)
なき
故
(
ゆゑ
)
と
髮結
(
かみゆひ
)
の
留
(
とめ
)
は
言
(
い
)
ひしが、あらばいさゝか
沈着
(
おちつ
)
くべし
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「私が開けました」と妻の
沈着
(
おちつ
)
き払った答。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
お春はそれとも気付かずに、何となく
沈着
(
おちつ
)
かないという様子をして、別なことを考えながら働いていた。何もかもこの娘には楽しかった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
『この次に。』と智恵子は
沈着
(
おちつ
)
いた声で言つて、『貴女も早くお帰りなすつたが
可
(
い
)
いわ。お客様が
被来
(
いらつしや
)
つたぢやありませんか。』
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
続いて同じ用件で数回の会見を重ね、或時は家では
沈着
(
おちつ
)
いて相談が出来ないからと、半日余りも
旗亭
(
きてい
)
で談合した事もあった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「さて、これからが愚老の領分じゃ」老師は悠々
沈着
(
おちつ
)
きながら法衣の下に隠していた例の幻灯の機械を引き出し、シューッと光を
迸
(
ほとば
)
しらせた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
夫
(
それ
)
から又沈んでまた浮く、其の
中
(
うち
)
にがぶ/\水を飲んで苦しむので
断末間
(
だんまつま
)
の
苦
(
くるし
)
みをして死ぬのだと云う事で、
沈着
(
おちつ
)
いた人は水へ落ちても死なぬと申します
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
博士が「手術をしよう」と
沈着
(
おちつ
)
いた小声で言はれた時、わたしは真白な死の
崖
(
きりぎし
)
に棒立になつた感がした。
産褥の記
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
それだけに至極
沈着
(
おちつ
)
いているようであったが、しかし這入ってから出るまで一言も口を利かず、何気もない挙動の中に緊張味がみちみちて、油断のない態度であった。
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
幸福といわずして幸福を楽んでいたころは家内全体に
生温
(
なまぬる
)
い春風が吹渡ッたように、総て
穏
(
おだやか
)
に、和いで、
沈着
(
おちつ
)
いて、見る事聞く事が
尽
(
ことごと
)
く自然に
適
(
かな
)
ッていたように思われた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
小菊は別に私を恨む樣子もなく、然しまるで昔の人ではないやうな、
沈着
(
おちつ
)
いた
聲音
(
こわね
)
になつて
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
光代は傍に聞いていたりしが、それでもあの綱雄さんは、もっと若くって上品で、
沈着
(
おちつ
)
いていて気性が高くって、あの方よりはよッぽどようござんすわ。と調子に確かめて
膝
(
ひざ
)
押し進む。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
剥
(
は
)
いで
除
(
の
)
けたままの皮どうなるものかと
沈着
(
おちつ
)
きいたるがさて
朝夕
(
ちょうせき
)
をともにするとなればおのおのの心易立てから
襤褸
(
ぼろ
)
が現われ俊雄はようやく冬吉のくどいに飽いて抱えの小露が
曙染
(
あけぼのぞ
)
めを
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
樺は一見神経質らしい、それでいやに
沈着
(
おちつ
)
きすました若い男で、馬も
敏捷
(
びんしょう
)
な
相好
(
そうごう
)
の、足腰の
締
(
しま
)
った、雑種らしい灰色なんです。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
みんなソワ/\して、
沈着
(
おちつ
)
いてる顔は一人も無かった。且
各自
(
めいめい
)
が囲んでる火鉢は何処からか借りて来たと見えて、どれも皆看馴れないものばかりだ。
灰燼十万巻:(丸善炎上の記)
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
郡兵衛今は魂消え気
萎
(
な
)
え、怒りばかりは燃え狂っていたが、頭は乱れ胸は動悸、
沈着
(
おちつ
)
きことごとく失われてしまった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そうして二人ともタッタ今血を見た人間とは思えぬ
沈着
(
おちつ
)
いた態度で、街道の
傍
(
わき
)
に立止まった。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
幸「ムヽー、おい…マアこれ
沈着
(
おちつ
)
かないかよ、静かにしなくっちゃアいけねえじゃアねえか」
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
凉しいランプの光の中に、
彼
(
か
)
の
女
(
をんな
)
は美しくも夕化粧した上に
外出
(
そとで
)
の着物まで着換へて、私の歸りを待つて居たらしい樣子であつた。「お歸んなさい」と如何にも
沈着
(
おちつ
)
いた一聲。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
先頃免職が種で油を取られた時は、文三は
一途
(
いちず
)
に叔母を薄情な婦人と思詰めて恨みもし立腹もした事では有るが、その後
沈着
(
おちつ
)
いて考えて見るとどうやら叔母の心意気が飲込めなくなり出した。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「いや、それはすこし違います。あの人の心持が
沈着
(
おちつ
)
いては来ましょうが、馬鹿々々しいことをしたとは考えまいと思います」
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この夜、
燈火
(
ともしび
)
の下で、総司とお力とは、しめやかに話していた。従軍を断念したからか、総司の態度は却って
沈着
(
おちつ
)
き、
容貌
(
かお
)
なども穏やかになっていた。
甲州鎮撫隊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
勇気に富みながら平生は
沈着
(
おちつ
)
いて
鷹揚
(
おうよう
)
である
咄
(
はなし
)
をして、一匹仔犬を世話をしようかというと、苦々しい顔をして
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
見物「気が
長
(
なげ
)
えじゃアねえか、喧嘩の中で煙草を呑んで
沈着
(
おちつ
)
いて居る
豪
(
えれ
)
えじゃアねえか」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
先生は極めて
沈着
(
おちつ
)
いた調子で
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
「こう薬の手伝いでもして、子のことを考えて行くような、
沈着
(
おちつ
)
いた心には成れないものですかねえ。その方が可いがナア」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
せむしの老人——いずれも人の世の
惨苦者
(
さんくしゃ
)
であったが、信仰を失ってはいないと見えて、その動作にも話しぶりにも、穏かな
沈着
(
おちつ
)
いたところがあった。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
沈
常用漢字
中学
部首:⽔
7画
着
常用漢字
小3
部首:⽬
12画
“沈着”で始まる語句
沈着払
沈着家