氷柱つらゝ)” の例文
うなじてたとまふなばた白銀しろがねに、珊瑚さんごそでるゝときふねはたゞゆきかついだ翡翠ひすゐとなつて、しろみづうみうへぶであらう。氷柱つらゝあし水晶すゐしやうに——
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
力草ちからぐさ漸々やう/\と山へ這上はひあがりて見ば此はいかに山上は大雪おほゆきにて一面の銀世界ぎんせかいなり方角はうがくはます/\見分がたく衣類いるゐには氷柱つらゝさがしほぬれし上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我がかみ越後には名をよぶ奇岩きがんおほき中にこれもその一ツ也。此笈掛岩おひかけいは氷柱つらゝこそ我が国の人すら目をおどろかすなれ。
曲者は蝋燭を吹消さずに逃去りしと見え燭台の頂辺てっぺん氷柱つらゝの如く垂れたる燭涙しょくるいは黒き汚れの色を帯ぶ、は蝋燭の自から燃尽すまで燃居もえいたるしるしなり。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
大きな氷柱つらゝは軒に下るだらう。なつかしき少年達よ。Kはかう思つて、長い手紙をまた繰返して読んだ。
田舎からの手紙 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
堺老人は、笑ひながら、さう云つて、富岡から煙草を一本貰つて、の火をつけた。硝子戸は、暗くなつて来た。ひくいひさしには氷柱つらゝのさがつてゐるところもある。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
文吾(五右衞門の幼名)は、唯一人畦の小徑こみちを急いでゐた。山國の秋の風は、冬のやうに冷たくて、崖の下の水車に通ふ筧には、槍の身のやうな氷柱つらゝが出來さうであつた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
もうその話をきいたゞけで全身が氷柱つらゝのやうにゾーツとしてしまつて、昏倒しさうであつた。
天狗洞食客記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
馬丁は馬に食はせて、今度は自分も乘つて、氷柱つらゝの垂下つた暗い隧道とんねるを指して出掛けた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
内端うちは女心をんなごゝろくにもかれずこほつてしまつたのきしづくは、日光につくわう宿やどしたまゝにちひさな氷柱つらゝとなつて、あたゝかな言葉ことばさへかけられたらいまにもこぼれちさうに、かけひなか凝視みつめてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
とあるが、即ち其の文樣が氷柱つらゝなどの如くなつて居るのであらうから、此が唐の時代に我邦に渡つて、平安朝頃迄盛に使用せられた綾地切と稱するものと同じであらうと想像される。
染織に関する文献の研究 (旧字旧仮名) / 内藤湖南(著)
助手の一人は解剖臺に取りつけてある龍頭をひねると、水は氷柱つらゝでもつるしたやうに音もなく磁器製の解剖臺に落ちて、小さな幾條かの溝を傳つて、中央の孔からゆかの下に流れて行つた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
ああ 空に向つて垂れる氷柱つらゝの先端
気象台風景 (新字旧仮名) / 仲村渠(著)
いはけづつて點滴したゝみづは、階子ばしごに、垂々たら/\しづくして、ちながら氷柱つらゝらむ、とひやゝかさのむのみ。何處どこいへほのほがあらう。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
踏分々々ふみわけ/\たどり行て見ば殊の外なる大家なり吉兵衞は衣類いるゐ氷柱つらゝれ其上二日二夜海上にたゞよ食事しよくじもせざれば身體しんたいつかはて聲もふるへ/\戸のそとより案内を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これらは我家わがいへ氷柱つらゝにてめづらしからず、宮寺みやてらのつらゝは猶大なり、又山中のつらゝは里地さとちしがたし。
シエードのまはりにはきらきらとしたビードロの氷柱つらゝがさがり
沼辺より (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
もる処を修治つくろはんとするに雪まつたくきえざるゆゑ手をくだす㕝ならず、漏は次第にこほりて座敷ざしきの内にいくすぢも大なる氷柱つらゝを見る時あり。是暖国だんこくの人に見せたくぞおもはる。
もう一度いちどおぼえてない。いづれも大事だいじいたらなかつたのは勿論もちろんである。が、家中いへぢうみづつて、こほつた。三年目さんねんめときごときは、翌朝よくあさめししるてて、のき氷柱つらゝいたかつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もる処を修治つくろはんとするに雪まつたくきえざるゆゑ手をくだす㕝ならず、漏は次第にこほりて座敷ざしきの内にいくすぢも大なる氷柱つらゝを見る時あり。是暖国だんこくの人に見せたくぞおもはる。
高島田たかしまだ前髮まへがみつめたやいばあり、まどつらぬくはすだれなす氷柱つらゝにこそ。カチリとおとしてつてかしぬ。ひとのもしうかゞはば、いとめてほとばしらす匕首あひくちとやおどろかん。新婦よめぎみくちびるふくみて微笑ほゝゑみぬ。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
児曹こどもらが手遊のそりもあり。氷柱つらゝの六七尺もあるをそりにのせて大持の学びをなし、木やりをうたひ引あるきて戯れあそぶなど、暖国だんこくにはあるまじくきゝもせざる事なるべし。
はだかなる所以ゆゑん人気じんきにて堂内のねつすることもゆるがごとくなるゆゑ也。願望ぐわんまうによりては一里二里の所より正月三日の雪中寒気はだへいるがごときをもいとはず、はしらのごとき氷柱つらゝ裸身はだかみ脊負せおひて堂押にきたるもあり。