トップ
>
此方
>
こちら
ふりがな文庫
“
此方
(
こちら
)” の例文
此方
(
こちら
)
は
焚火
(
たきび
)
どころで
無
(
な
)
い。
汗
(
あせ
)
を
垂
(
た
)
らして
掘
(
ほ
)
り
進
(
すゝ
)
むのに、いや、
土龍
(
むぐろ
)
のやうだの、
井戸掘
(
ゐどほり
)
の
手間
(
てま
)
だの、
種々
(
いろ/\
)
な
批評
(
ひひやう
)
を
頭
(
あたま
)
から
冠
(
かぶ
)
せられる。
探検実記 地中の秘密:20 大森貝塚の発掘
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
此凄まじい日に照付られて、一滴水も飲まなければ、
咽喉
(
のど
)
の
炎
(
も
)
えるを
欺
(
だま
)
す
手段
(
てだて
)
なく
剰
(
あまつ
)
さえ
死人
(
しびと
)
の
臭
(
かざ
)
が
腐付
(
くさりつ
)
いて
此方
(
こちら
)
の体も
壊出
(
くずれだ
)
しそう。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
烈々
(
れつ/\
)
と
燃
(
も
)
える
暖炉
(
だんろ
)
のほてりで、
赤
(
あか
)
い
顔
(
かほ
)
の、
小刀
(
ナイフ
)
を
持
(
も
)
つたまゝ
頤杖
(
あごづゑ
)
をついて、
仰向
(
あふむ
)
いて、ひよいと
此方
(
こちら
)
を
向
(
む
)
いた
父
(
ちゝ
)
の
顔
(
かほ
)
が
真蒼
(
まつさを
)
に
成
(
な
)
つた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
此方
(
こちら
)
には葡萄棚もあり其の他
種々
(
いろ/\
)
な
菓物
(
くだもの
)
も作ってありまして、彼是一町
許
(
ばか
)
り入ると、屋根は
瓦葺
(
かわらぶき
)
だが至って風流な
家作
(
やづく
)
りがあります。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ある日見知らぬかみさんが来て、
此方
(
こちら
)
の犬に食われましたと云って、汚ない風呂敷から血だらけの
軍鶏
(
しゃも
)
の頭と足を二本出して見せた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
その後どんな風にして暮しているのやら、気にかかりながらつい
此方
(
こちら
)
から尋ねても見ず、先方からも何のたよりもありませんでした。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
けれども、
此方
(
こちら
)
の請求を
容
(
い
)
れて下さらなければ
已
(
や
)
むを得んので、実は事は穏便の方が双方の利益なのですから、更に御一考を願ひます
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
物事がアベコベになって、世間では漢書を
読
(
よん
)
でから英書を学ぶと
云
(
い
)
うのを、
此方
(
こちら
)
には英書を学んでから漢書を学ぶと云う者もあった。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
行きさへすれば
此方
(
こちら
)
で黙つてゐても、それと察して出してくれる金をあてに、始終龍一の処に行くのも苦しくてたまらないのであつた。
惑ひ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
次第に離れて行く岸には、支那人やロシア人が大勢集まつて
此方
(
こちら
)
を見てゐた。中には
此方
(
こちら
)
を指して何か言つてゐる者などもあつた。
アンナ、パブロオナ
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
この時火を焚き付けていた悪者は、もう火が燃え上ったので
此方
(
こちら
)
に歩いて来たが男の前にあった桶を一つ持って渓川へ水を
汲
(
くみ
)
に行った。
捕われ人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その味と素麺のつるつるした冷たさ 歯ぎれ工合が異常な感覚的実現性をもってモスクヷの一米ある壁の
此方
(
こちら
)
まで迫って来たのだ。
一九二九年一月――二月
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
後にて店の
若衆
(
わかいしゅ
)
にきけば腹ちがひの妹とやら言はれて何ともつかず
此方
(
こちら
)
が気まりわるくなり、更に近処の烟草屋で内々にきいて見れば
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
趣味からいっても今の方がいい。経済から見ても
此方
(
こちら
)
が有利とすれば、この上に昔風論者の反対する根拠は無いわけだからである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
真事はその間を向う側へ
馳
(
か
)
け抜けて、朝鮮人の
飴屋
(
あめや
)
の前へ立つかと思うと、また
此方
(
こちら
)
側へ戻って来て、金魚屋の軒の下に
佇立
(
たたず
)
んだ。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
阿修羅のように荒れ出した金蔵が、血刀を振りかざして、遥かの
彼方
(
あなた
)
の野原から
此方
(
こちら
)
をのぞんで走って来る光景がありありと見えます。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
『彼女は、たゞ恥かしがつてゐるのだ。処女としての恥かしさに過ぎないのだ。それは、
此方
(
こちら
)
から取り去つてやればそれでいゝのだ!』
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
凡
(
およ
)
そ失望は落胆を生み落胆は愚痴を生む。「叔母の
言艸
(
いいぐさ
)
を
愛想尽
(
あいそづ
)
かしと聞取ッたのは全く
此方
(
こちら
)
の
僻耳
(
ひがみみ
)
で、或は愚痴で有ッたかも知れん」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
『さうですか、まあ厭だ。この間もね、今日はすつかり
此方
(
こちら
)
へ行つてお話して来た。すつかりお話して来たなんか云つて居るのですよ。』
女が来て
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
處が、そこへ
此方
(
こちら
)
のご主人が出ておいでなすつて、折角登りかけた梯子から泥沼の中へ突き落しておしまひなさらうといふんだ。
人形の家
(旧字旧仮名)
/
ヘンリック・イプセン
(著)
「へエ/\、早速
此方
(
こちら
)
から、お屆けする筈でしたが、
取紛
(
とりまぎ
)
れてこの始末でございます。もう、あの、お聽きでございましたか、親分さん」
銭形平次捕物控:073 黒い巾着
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
何しろ、久し振りで
此方
(
こちら
)
の師匠が
雛段
(
ひなだん
)
へ据ったのが、あれが、こうっと——四日前の大
浚
(
さら
)
えでげしたから、未だ耳の底に残っていやすよ。
助五郎余罪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
大原は携え来りし大風呂敷を大切そうに脇へ置き「奥さんお登和さんは
此方
(
こちら
)
に来ておいでですか」と挨拶より先にその事を問う。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
何ういう心であるか、
余処
(
よそ
)
ながら見て置かねばならぬ。もし間違って、
此方
(
こちら
)
の察した通りでなかったならば、其れこそ幸いだが。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
福岡の方では今度のことを言ひがゝりにして、だから
老人
(
としより
)
に子供を任せては置けない、三人とも
此方
(
こちら
)
へ寄越せと
酷
(
きび
)
しく云つて來るんだらう。
孫だち
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
話す時、大げさな身振りをするので
此方
(
こちら
)
が恥かしくなるわ。でもフランス娘は敏感で、とてもこちらの気持を直ぐ汲み取るわ。
母と娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
……それゆえに、実はわざと、てまえが
此方
(
こちら
)
から、渡られい、渡られい、と幾度も、
罠
(
わな
)
へ
誘
(
いざな
)
うつもりで、お呼びしたのじゃが。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
先に進んで行くW君の姿も薄暗く
此方
(
こちら
)
を向いてもよく顔が分らない程の光を辿って、
猶
(
なお
)
奥深く進んだ。すべての物は暗い夜の色に包まれた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あゝ云ふことになると云ふも、皆な前世からの約束事と
諦
(
あきら
)
めてネ——それに
斯
(
か
)
うやつて
此方
(
こちら
)
の先生様が御親切にして下ださるもんですから
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
十七、八の金髪の娘が一人、向うの隅っこに身をひそませていたが、何か青い毛糸の編針を動かし動かし、キッと
此方
(
こちら
)
を見た。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
すると向こうから、
姫苦蓬
(
ひめにがよもぎ
)
や
荒地野菊
(
あれちのぎく
)
の
雑叢
(
ざっそう
)
の間を、静枝が
此方
(
こちら
)
ヘ歩いて来るのだった。静枝は女優のように着飾っていた。
接吻を盗む女の話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
言譯は後にしまするとて手を取りて引けば彌次馬がうるさいと氣をつける、何うなり勝手に言はせませう、
此方
(
こちら
)
は此方と人中を分けて伴ひぬ。
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
可憐
(
いとし
)
の
女
(
ひと
)
よと手を取らむとすれば、若衆姿の奈美女、恥ぢらひつゝ払ひ
除
(
の
)
け。心
急
(
せ
)
き給ふ事なかれ。まづ
此方
(
こちら
)
へ入らせ給へ。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「馬の
飼葉
(
かひば
)
に牡蠣をやつてくれ。」——それを聞いたお客達は、今迄話してゐたお
喋舌
(
しやべり
)
を
止
(
や
)
めて、一斉に
此方
(
こちら
)
を振り向いた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
此方
(
こちら
)
も藤原同様、叔母御が
斎姫
(
いつき
)
で、まだそんな年でない、と思うているが、又どんなことで、他流の氏姫が、後を襲うことにならぬとも限らぬ。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
「白髪を清めて元日を
待
(
まつ
)
所に、汝何人なれば我が白桜下に来り、我と対して座せるや」というに筆を起して、
此方
(
こちら
)
が何かいうと、向うも何かいう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
それで今度は
此方
(
こちら
)
から誘ふやうにして迄、転々として遊蕩生活に陥り込んで行つたんだ。失恋、——飲酒、——遊蕩。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
此方
(
こちら
)
は山が自然に開けて、少しばかり山畠が段〻を成して見え、粟や黍が穂を垂れて居るかとおもへば、兎に荒されたらしい至つて不景気な豆畠に
観画談
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「あのね塀和さん、此梅ちやんとはね、私が
吉原
(
あちら
)
にゐた時分姉妹のやうにしてゐたのですよ。
此方
(
こちら
)
はね、宅のお友達で京都からいらつしやつたのよ」
俳諧師
(旧字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
壑の
前方
(
むこう
)
の峰の凹みに陽が落ちかけていた。情熱のなくなったような冷たいその光が
微赤
(
うすあか
)
く
此方
(
こちら
)
の峰の一角を染めて、どこかで
老鶯
(
ろうおう
)
の声が聞えていた。
陳宝祠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
すると、いいえ、何事もありません、と云って、そのまま
此方
(
こちら
)
へ来た筈なんですのに——それで、今思い出したもんですから、ひょいと呟いたんですわ
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「あれがもしか
此方
(
こちら
)
へまいっていはしませんでしょうか、いましがた犬を追って出てから戻らないんで……夜分でしたがおうかがいしに上ったのです。」
後の日の童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そしてこの場合にもまた均衡点の
此方
(
こちら
)
においては、商品の供給はその需要より大であり、これは価格の下落を生ぜしめる。すなわち均衡点を離れしめる。
純粋経済学要論:01 上巻
(新字新仮名)
/
マリー・エスプリ・レオン・ワルラス
(著)
入口
(
いりくち
)
の
彼方
(
あちら
)
は
長
(
なが
)
い
縁側
(
えんがは
)
で三
人
(
にん
)
も
小女
(
こむすめ
)
が
坐
(
すわ
)
つて
居
(
ゐ
)
て
其
(
その
)
一人
(
ひとり
)
は
此方
(
こちら
)
を
向
(
む
)
き
今
(
いま
)
しも十七八の
姉樣
(
ねえさん
)
に
髮
(
かみ
)
を
結
(
ゆ
)
つて
貰
(
もら
)
ふ
最中
(
さいちゆう
)
。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
男は「八なら
此方
(
こちら
)
で買わあ、一万でも二万でも……」と笑いながら出て行く。電話の
鈴
(
べる
)
は相変らず鳴っている。
一日一筆
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
桶を担うた人に連れられて、リツプがこの異人の群に近寄つた時に、渠等は俄に遊を廃めて、
此方
(
こちら
)
を見ました。
新浦島
(新字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
どうも人の話を聴いているのは
間
(
ま
)
だらしくて
堪
(
たま
)
らぬ。それであるから
対手
(
あいて
)
が誰でもかまわぬ、御先にご免をして、
此方
(
こちら
)
からさっさと独りで話し出すのである。
我輩の智識吸収法
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
やがて
此方
(
こちら
)
へ向き直った博士に、ぼつぼつ事情を訴えたが、博士のいわく、若旦那からは何もきいていない。
荒蕪地
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
白い着物をつけた助手は自分の脚の方に椅子へ腰をかけて黙って脇を向いていたが断えず
此方
(
こちら
)
に注意していた。看護婦も一人来て頭の方に黙って控えていた。
病中記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
忘れしが
此方
(
こちら
)
の旦那が歸られたる
跡
(
あと
)
にて
心付
(
こゝろづき
)
見
(
み
)
るに其の金子何れへ
紛失
(
ふんじつ
)
せしにや一向分らず因て
嚴重
(
げんぢう
)
に家内を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
此
漢検準1級
部首:⽌
6画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“此方”で始まる語句
此方様
此方側
此方衆
此方面
此方等
此方向
此方持
此方組
此方樣
此方人等