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もと
ふりがな文庫
“
旧
(
もと
)” の例文
旧字:
舊
(御宅の御新造
様
(
さん
)
は、
私
(
わし
)
ン
処
(
とこ
)
に居ますで案じさっしゃるな、したがな、また
旧
(
もと
)
なりにお前の処へは来ないからそう思わっしゃいよ。)
清心庵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
家に、防ぐ筈の石城が失せたからだと、天下中の人が騒いだ。其でまた、とり壊した家も、ぼつぼつ
旧
(
もと
)
に戻したりしたことであった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
法水も、その刺戟を隠し了せることはできなかったが、彼は、検事の言葉がなかったもののように、そのまま
旧
(
もと
)
の語尾を繰り返した。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そつと
旧
(
もと
)
のやうに書物の
間
(
あひだ
)
に収めて、
猶
(
なほ
)
もその
辺
(
へん
)
の一冊々々を
何心
(
なにごゝろ
)
もなく
漁
(
あさ
)
つて
行
(
ゆ
)
くと、今度は思ひがけない一通の手紙に
行当
(
ゆきあた
)
つた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
尤
(
もつと
)
も取返しが附いて
旧
(
もと
)
の身の上になつたからつて、
些
(
ちつ
)
とも好い事はない、もつと
不好
(
いけな
)
い事もあつた……で、
臥反
(
ねがへ
)
りを打つて、心の中で
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
▼ もっと見る
「丞相は国の大老である。一失ありとて、何で官位を
貶
(
おと
)
してよいものぞ。どうか
旧
(
もと
)
の職にとどまってさらに、士気を養い、国を治めよ」
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「浅井さんを、
旧
(
もと
)
の人間にしようっていうにゃ、どうしたってあなたの体から手を入れてかからなけあ、駄目だと私は思うがね。」
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
幸「
旧
(
もと
)
お出入りをしたお屋敷の
御妾腹
(
ごしょうふく
)
と云うが、けれどもお眼に懸った事もねえが、何んだかお可愛そうな様な
筋合
(
すじあい
)
があるのだよ」
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「君、僕ももう
旧
(
もと
)
の徳蔵ではないよ、お金は
唸
(
うな
)
る程出来るし、
加之
(
おまけ
)
に弟は貴族院に
入
(
い
)
るし、何一つこの世に不足は無くなつたよ。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
次には硯の面をまた砂紙でこすって新しくし
旧
(
もと
)
くらいの粗さにして、別の墨で全く同様な実験を繰り返すという具合にして実験を進めた。
墨並びに硯の物理学的研究
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
暫くしてから氷に手を添へた
心程
(
こゝろほど
)
身を起して
気恥
(
きはづか
)
しさうに鏡子が
辺
(
あたり
)
を見廻した時、まだ新しい
出迎人
(
でむかへにん
)
も
旧
(
もと
)
の
伴
(
つれ
)
の二人も影は見えなかつた。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
旧
(
もと
)
は牧場の跡である。草原はゆるやかなスロープで更に村境の峰に続き、峰の頂きには、楢の古木が一株、烈風を受けて枝を張つてゐる。
泉
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「あの方なら屹度菊太郎を褒めて下さいますわ。この頃はまた
旧
(
もと
)
の我儘に戻りましたけれど、入院中は申分なかったんですから」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
退職の敬之進は
最早
(
もう
)
客分ながら、何となく名残が惜まるゝといふ風で、
旧
(
もと
)
の生徒の後に
随
(
つ
)
いて同じやうに階段を上るのであつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
すべきようもないので、よんどころなしに
旧
(
もと
)
のなりわい、むかしの
朋輩
(
ほうばい
)
に顔を見らるるも恥ずかしい。して、お師匠さまはどうしてござる
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
室に入りて相対して見れば、形こそ
旧
(
もと
)
に比ぶれば
肥
(
こ
)
えて
逞
(
たくま
)
しくなりたれ、依然たる快活の気象、わが
失行
(
しっこう
)
をもさまで意に介せざりきと見ゆ。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
フト思い付いて帳場の隅に立てかけてある親方用の、銀金具の短かい
鳶口
(
とびぐち
)
に手をかけたが、又、思い直して
旧
(
もと
)
の処に置いた。
芝居狂冒険
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
柔かそうな腕が、時とすると二の腕まで
露
(
あら
)
われて、も少し
持上
(
もちゃ
)
げたら腋の下が見えそうだと、気を揉んでいる
中
(
うち
)
に、又
旧
(
もと
)
の位置に戻って了う。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
その晩二人は寝床へ入ってから、
明朝
(
あした
)
自分達を生んでくれた
旧
(
もと
)
の母さんを尋ねに三里
彼方
(
あなた
)
の、隣村の杉の木の森を
探
(
たず
)
ねに出る約束をしたのです。
迷い路
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
一間ばかりの所を一朝かかって
居去
(
いざ
)
って、
旧
(
もと
)
の処へ
辛
(
かろ
)
うじて
辿着
(
たどりつ
)
きは着いたが、さて新鮮の空気を呼吸し得たは束の間
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
一旦は否定してそこからはもう自分の生活感情が舟出してしまっている筈の女の歴史の
旧
(
もと
)
の港をふりかえるのである。
女の歴史:そこにある判断と責任の姿
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
三人は殆ど息もつかずに螺旋階段を
馳登
(
かけのぼ
)
った。頂上は
旧
(
もと
)
の発光室を改造した夜行虫観測所で、幾種類もの観測鏡や特殊の分光器などが
備付
(
そなえつ
)
けてある。
廃灯台の怪鳥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
会釈
(
えしゃく
)
して春日は
旧
(
もと
)
の客間へ還った、善兵衛は苦り切って居た。併しまだ少し既往について直聴して置く必要があった。
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
「壊れた水車」は檻をまた
旧
(
もと
)
のように床下に下ろした上で、二人を一座の中央に引据えて、その黒い服を
剥
(
は
)
ぎとった。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
二幕目
丹吾兵衛
(
たんごべえ
)
住家の場は光俊戦場を逃れて
旧
(
もと
)
明智の臣なる漁師丹吾兵衛を訪ひて、そこにかくまはれし明智の妾
菖蒲
(
あやめ
)
の方に明智の系図を渡す処なり。
明治座評:(明治二十九年四月)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
二成は金を還した後で、きっと間違いがあるだろうと思ってみたが、もう
旧
(
もと
)
の財産が買いもどされたと聞いたので、ひどく不思議に思ったのであった。
珊瑚
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
あるいは
阿多福
(
おたふく
)
が思をこらして
容
(
かたち
)
を
装
(
よそお
)
うたるに、
有心
(
うしん
)
の鏡はその
装
(
よそおい
)
を写さずして、
旧
(
もと
)
の醜容を反射することあらば、阿多福もまた不平ならざるをえず。
学者安心論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
没義道
(
もぎどう
)
に頭を切り取られた
高野槇
(
こうやまき
)
が二本
旧
(
もと
)
の姿で台所前に立っている、その二本に
干
(
ほ
)
し
竿
(
ざお
)
を渡して小さな
襦袢
(
じゅばん
)
や
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
水夫長のジョーブ・アンダスンが船中では一番適任だったので、水夫長という名称は
旧
(
もと
)
通りであったけれども、幾分か副船長の役を勤めることになった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
稲荷坂というのは、
旧
(
もと
)
布哇
(
はわい
)
公使の別荘の横手にあって、坂の中ほどに小さい稲荷の
祠
(
ほこら
)
がある。社頭から坂の両側に続いて桜が今を盛りと咲き乱れている。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
しかし細君の熱心な介抱により段々と良くなり、一八四四年には
旧
(
もと
)
の体になって、また研究にとりかかった。
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
およそ一町あまりにして
途
(
みち
)
窮まりて後戻りし、一度
旧
(
もと
)
の処に至りてまた右に進めば、幅二尺ばかりなる
梯子
(
はしご
)
あり。このあたり窟の内闊くしてかえって物すさまじ。
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「これでお前さん方が来てくれて、内が
賑
(
にぎや
)
かに成つただけ、私も
旧
(
もと
)
から見ると
余程
(
よつぽど
)
元気には成つたのだ」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
葛籠
(
つゞら
)
の底に納めたりける
一二枚
(
いちにまい
)
の
衣
(
きぬ
)
を
打
(
うち
)
かへして、
浅黄
(
あさぎ
)
ちりめんの
帯揚
(
おびあげ
)
のうちより、五
通
(
つう
)
六通、数ふれば十二
通
(
つう
)
の
文
(
ふみ
)
を
出
(
いだ
)
して
旧
(
もと
)
の座へ
戻
(
もど
)
れば、
蘭燈
(
らんとう
)
のかげ少し暗きを
軒もる月
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
解官されて源氏について
漂泊
(
さすら
)
えた
蔵人
(
くろうど
)
もまた
旧
(
もと
)
の地位に
復
(
かえ
)
って、
靫負尉
(
ゆぎえのじょう
)
になった上に今年は五位も得ていたが、この好青年官人が源氏の
太刀
(
たち
)
を取りに戸口へ来た時に
源氏物語:18 松風
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
欣之介から取上げられて再び小作人たちの手に
委
(
ゆだ
)
ねられた裏の畑地は、何事も起らなかつたもののやうに、間もなく、以前と少しの変りもない
旧
(
もと
)
の姿に
復
(
かへ
)
つて行つた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
「お知らせいたそうかとも思いましたが、こちらはあんまり片寄った処でございますので。本当に、せめてもう一度なりと、
旧
(
もと
)
の処でお会いいたしとうございました」
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
本箱も机も、違い棚の上の置物も、それから衣桁にぬぎすてた褞袍までが、皆
旧
(
もと
)
の位置を保っていた。そしてそれらのものが、私の内生活をまざまざと私に蘇えらした。
運命のままに
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
大層ふるえているね……おれ達の
旧
(
もと
)
の家は暖かくて、気持がよかったな。お前も思いだすだろう。
暗中の接吻
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
されば「エホバ、ヨブの
艱難
(
なやみ
)
を解きて
旧
(
もと
)
に
復
(
かえ
)
ししかしてエホバ
遂
(
つい
)
にヨブの
所有物
(
もちもの
)
を二倍に増し給」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
お前の
旧
(
もと
)
の亭主といふ、助三さんといふ人にも。この春以来、さる所で、ちよくちよく顔を合はす己れ。未練たらたら聞いても居る。まさかに、そんな、寝醒めの悪い事は出来ぬ。
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
その時まで彼の唯一の
規矩
(
きく
)
だった合法的肯定とはまったく異なった一つの感情的啓示が、彼のうちに起こってきた。
旧
(
もと
)
の公明正大さのうちに止まるだけでは、もう足りなくなった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
伝統は丁度大木のようなもので、長い年月を経て、根を張ったものでありますから、不幸にも嵐に会って倒れてしまうと、再び
旧
(
もと
)
のように
樹
(
た
)
ち直るのは容易なことではありません。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
故郷の風景は
旧
(
もと
)
の通りである、しかし自分は最早以前の少年ではない、自分はただ
幾歳
(
いくつ
)
かの年を
増
(
ま
)
したばかりでなく、幸か不幸か、人生の問題になやまされ、生死の問題に深入りし
画の悲み
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
仰々しく礼を述べられて私は、薬などほんの気休めに過ぎぬ故、少しでも早く医者に見せねば——と重ねて注意した。宿坊は、たちまち
旧
(
もと
)
の静寂へ……なにごとも無かったかの如く。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
田畑は
七八
荒れたきままにすさみて、
旧
(
もと
)
の道もわからず、
七九
ありつる
人居
(
いへゐ
)
もなし。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
あの一本の木を
旧
(
もと
)
の位置の
儘
(
まゝ
)
保存する為に
這麼形
(
こんなかたち
)
の家を建てたのだとヌエが云つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
書斎に行って見れば、仙崖の画も、隠元の書も、
旧
(
もと
)
の通りであるが、床の間には老師の油画の懸物に線香を上げてある。在りし人の面影のみはいくらか留めて居る、併しその人は見えぬ。
楞迦窟老大師の一年忌に当りて
(新字新仮名)
/
鈴木大拙
(著)
源十郎は
旧
(
もと
)
どおりに左膳をその邸内に潜伏させることになったのだけれど。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「処が、そーで無い。見給へ、二服呑めば
旧
(
もと
)
に帰ると書いて有るよ」、と白頭が真面目で云ふ。と幽霊が、「三服呑めば死ぬると書いてあるだらう」と笑ふ。すると三人が一時にドツと笑つた。
俺の記
(新字旧仮名)
/
尾崎放哉
(著)
旧
常用漢字
小5
部首:⽇
5画
“旧”を含む語句
旧来
旧時
旧臘
旧家
旧弊
旧跡
旧態
旧通
旧冬
旧交
旧道
依旧
故旧
旧暦
旧蹟
旧馴染
旧悪
旧草
旧友
旧弊人
...