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捻
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ね
ふりがな文庫
“
捻
(
ね
)” の例文
毛と云う毛は悉く蛇で、その蛇は悉く首を
擡
(
もた
)
げて舌を吐いて
縺
(
もつ
)
るるのも、
捻
(
ね
)
じ合うのも、
攀
(
よ
)
じあがるのも、にじり出るのも見らるる。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手紙を三四行読みかけた時、お文がこんなことを言つたので、源太郎は手紙の上に
俯
(
うつぶ
)
いたなりに、首を
捻
(
ね
)
ぢ向けて、お文の方を見た。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
毛といふ毛は
悉
(
こと/″\
)
く蛇で、其の蛇は悉く首を
擡
(
もた
)
げて舌を吐いて、
縺
(
もつ
)
るゝのも、
捻
(
ね
)
ぢ
合
(
あ
)
ふのも、
攀
(
よ
)
ぢあがるのも、にじり出るのも見らるゝ
毒と迷信
(新字旧仮名)
/
小酒井不木
(著)
惣太は
面
(
かお
)
の色を失って荷田の手を押し払って、それを拾い取って懐中へ
捻
(
ね
)
じ込もうとしますから、いよいよ
嫌疑
(
けんぎ
)
が深くなるわけです。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼らのひげ根は、水に洗われていよいよかぼそく白く、生きもののようにふるえ、しかも川筋をさえぎり
捻
(
ね
)
じ曲げる力をもっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
▼ もっと見る
亭主は吸ひつけられたやうに小判の顔を見てゐたが、暫くすると忘れてゐたやうに慌てて承知の旨を答へて、小判を
懐中
(
ふところ
)
に
捻
(
ね
)
ぢ込んだ。
青磁の皿
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
襖のあく音を聞くなり、彼女はそれを逆手に持って胸を刺そうとした、然し主馬はその
肱
(
ひじ
)
を
掴
(
つか
)
み、烈しく
捻
(
ね
)
じ上げながら懐剣を奪った。
山椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
二人はそれでも負けず劣らず
捻
(
ね
)
じ合いました。あまりに
咄嗟
(
とっさ
)
の出来事で、遠ざけられた近習達が、駆け付ける暇もなかったのです。
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それと同時に、日ごろ
頑固
(
かたくな
)
な叔父の鼻を
捻
(
ね
)
じ折ったような一種の愉快をも感じた。彼は口の上の薄い髭を撫でながらほくそえんだ。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この上に生きた物でも戴せて、瓦斯のコックを開いて電気のスイッチを
捻
(
ね
)
じると、取りあえず瓦斯が飛び出して窒息させてしまう。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼はあわてて紙幣束を懐中に
捻
(
ね
)
じ込んだ。持ちつけない額なので、
能
(
よ
)
く目算は出来なかったが少くとも五百円はあるらしかった。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
ごとごとと溝板を踏み乍ら、勝手の方から濡れ手を拭き拭き駈けて来た下女のおすめが
周章
(
あわ
)
ててランプの心を馴れた手付きで
捻
(
ね
)
じ細めた。
かやの生立
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
煙突は斜めに
捻
(
ね
)
じられ、
平坦
(
へいたん
)
にして長き胴体が波を破って進む形、それらの集合せる艦隊のレヴュー風の行進、大観艦式の壮大なる風景
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
そして、
縛
(
しば
)
るのが商売の目明し万吉、あべこべに孫兵衛のために
捻
(
ね
)
じつけられ、両手両足、ギリギリ巻きにくくられてしまった。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると、
捻
(
ね
)
じれた寒い気流が無数の層を造って鉄の中から迫って来た。高重は棉の粉を顔面に降らせながら、傍の女工を指差していった。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
(
畜生
(
ちくしょう
)
。)といったが馬は出ないわ。びくびくと
蠢
(
うごめ
)
いて見える
大
(
おおき
)
な
鼻面
(
はなッつら
)
をこちらへ
捻
(
ね
)
じ向けてしきりに
私等
(
わしら
)
が居る方を見る様子。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
金力と云ったものが、丸切り奪われている父が、黄金魔と云ってもよいような相手から、
赤児
(
あかご
)
の手を
捻
(
ね
)
じるように、
苛責
(
いじめ
)
られる。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そこをロイドは、いきなり頭を
掴
(
つか
)
んで、やにわに股の間へ
捻
(
ね
)
じ込んでしまった。そしてしばらく満身の力でおさえつけていた。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
力をこめて
捻
(
ね
)
じって見た。金が腐っていたのであろう、何んの苦もなく捻じ切れた。とたんに鉄の扉がギーと開いて冷たい風が吹いて来た。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それ故にネヂソデまたはネヂッコとも謂うのである。中国地方から東では是をモヂリまたはムヂリ、ムジルというのも
捻
(
ね
)
じることであった。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼は、自分の唐突な説が、私の上に影響したであろう反応を見きわめるために、
身体
(
からだ
)
を
捻
(
ね
)
じ向けて、私の顔を下から仰いだ。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
立てて
捻
(
ね
)
じ
込
(
こ
)
んだ多分養父ではない実父だったのであろう何ぼ修行だからと云って年歯も行かぬ女の子を
苛
(
さいな
)
むにも程がある
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と呶鳴るにも構わず小平は拳を固めて力まかせに打落せば、提灯は地に落ちて燃え上り、小平は多助を
捻
(
ね
)
じ倒し、乗りかゝって続け打にする。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
其鴨みたいに、首を
捻
(
ね
)
じちぎられて、何も訣らぬものになったことも。こうつと——姉御が、墓の戸で哭き喚いて、歌をうたいあげられたっけ。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
彼は順じゅんに骨牌札に賭けると、果てしもなく勝ってゆくので、その金貨を掻きあつめ、紙幣をポケットに
捻
(
ね
)
じ込んだ。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
そして、彼等が折重なって、今や賊を
捻
(
ね
)
じ伏せようとした時である。どうしたというのだ。彼等はアッと叫んで、タジタジとあとじさりをした。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
何の気なしに押した無尽の請判で百円といふ大金を支払はされるのだと聞いて小半年の間世話人のところに文句を
捻
(
ね
)
ぢこんで手こずらせたこと
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
その薄気味のわるい顔を、早く動かすと
壊
(
こわ
)
れるおそれがあるとでもいうように、山城守はソウッと客のほうへ
捻
(
ね
)
じ向けた。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
死体は、そのほとんど右はずれに
俯臥
(
うつむけ
)
の姿勢で横たわり、右手は、背の方へ
捻
(
ね
)
じ曲げたように甲を
臀
(
しり
)
の上に置き、左手は寝台から垂れ下っていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
両人が相手の顔を
捻
(
ね
)
じて天井へ向けたときに、そこにぴったり吸いついている前夜のトランクを両人が同時に発見した。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
悪漢の手を
捻
(
ね
)
ぢあげて
抛
(
ほう
)
りだし「
様
(
ざま
)
あ見やがれ」と云ひ、懐手にてゆうゆうと上手に入るところすつきりとしてよし。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
わたしがそばへ行くと、彼女は片手をわたしの頭にのせて、いきなり
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
をつかむと、ぎりぎり
捻
(
ね
)
じ回し始めた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
勇は反動をつけて飛び起き、ミチの髪を片手に、片手を腕にかけて
捻
(
ね
)
じ伏せ様とした。二つの若い肉体はぶつかり合い、もつれ、折重なり、息が乱れた。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
襖
(
ふすま
)
と廊下を隔てて向側にある事務所は電話の叫喚と足音に入り乱れ、人間が人間を
捻
(
ね
)
じ伏せたり、人間が人間を
撫
(
な
)
でまくる、さまざまのアクセントを放つ。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
またその試験というのが人工的に
無闇
(
むやみ
)
に程度を高く
捻
(
ね
)
じり上げたもので、それに手の届くように
鞭撻
(
べんたつ
)
された受験者はやっと数時間だけは持ちこたえていても
アインシュタインの教育観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
蒲田屋
(
かばたや
)
の
奧
(
おく
)
に
飾
(
かざ
)
つてあるやうな
本當
(
ほんたう
)
のを、
重
(
おも
)
くても
搆
(
かまい
)
はしない、やつちよいやつちよい
譯
(
わけ
)
なしだと
捻
(
ね
)
ぢ
鉢卷
(
はちまき
)
する
男子
(
をとこ
)
のそばから、
夫
(
そ
)
れでは
私
(
わたし
)
たちが
詰
(
つま
)
らない
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
アメリカでは樹枝の分れ目に細い鉄の棒を
捻
(
ね
)
じ込み、それの両端を止めて置くのである。かくすればもし降雪があって、枝に雪の重量がかかっても、枝は割けない。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
根が貴族的に
生立
(
おいた
)
った人だから、材料がいつでも
素直
(
すなお
)
な
温和
(
おとな
)
しい上品なウブな恋であって、深酷な悲痛や
捻
(
ね
)
じくれたイキサツや皮肉な
譏刺
(
きし
)
が少しも見られなかった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
というのは、兄貴とルピック氏が、彼の
捻
(
ね
)
じくれた足の
趾
(
ゆび
)
を見て、へんてこな
戯談
(
じょうだん
)
をいったからだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「ああ、すこしありますよ」女房は入口の方へ体を
捻
(
ね
)
じ
向
(
む
)
けて、客を
透
(
すか
)
すようにしたが、障子の陰になって客の姿は見えなかった。が、それでも、「いらっしゃいまし」
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
すこし暑いと肌ぬぎで銀ぐさりをかけて、紺の腹掛と、真白い
晒布
(
さらし
)
の腹巻、トンボほどな小さな
丁字髷
(
ちょんまげ
)
が、滑りそうな頭へ、
捻
(
ね
)
じ鉢巻で、負けない気でも年は年だけに
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
僕はなんということなしに恐怖の観念に
駆
(
か
)
られながら窓をしめて、鍵をかけて、その上に僕の頑丈なステッキを真鍮の環の中へ通して、丈夫な金物が曲がるほどにうんと
捻
(
ね
)
じた。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
お銀はそれから、親類の若い男と一緒にそこへ
捻
(
ね
)
じ込んで行ったことなどを話した。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ある褐色カプシン猴はよく
竈箒
(
かまどほうき
)
の柄を
捻
(
ね
)
じ入れまた捻じ戻した。最初柄の孔に合わぬ端を孔に当て正しく捻じ廻したがはいらぬを見て、他の端に振り替え孔に当て正しく捻じ初めた。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「おや、富士。」と呟いて、私の背後の
長押
(
なげし
)
を見あげた。私も、からだを
捻
(
ね
)
ぢ曲げて、うしろの長押を見上げた。富士山頂大噴火口の
鳥瞰
(
てうかん
)
写真が、額縁にいれられて、かけられてゐた。
富嶽百景
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
ただ一
ト
揉みに
屑屋
(
くずや
)
を飛ばし二
タ
揉み揉んでは二階を
捻
(
ね
)
じ取り、三たび揉んでは
某寺
(
なにがしでら
)
をものの見事に
潰
(
ついや
)
し
崩
(
くず
)
し、どうどうどっと
鬨
(
とき
)
をあぐるそのたびごとに心を冷やし胸を騒がす人々の
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
カチリと電燈を
捻
(
ね
)
じる響と共に、
黄
(
きいろ
)
い光が
唐紙
(
からかみ
)
の隙間にさす。先生はのそのそ置炬燵から次の間へ
這出
(
はいだ
)
して
有合
(
ありあ
)
う
長煙管
(
ながギセル
)
で二、三
服
(
ぷく
)
煙草を吸いつつ、余念もなくお妾の化粧する様子を眺めた。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
揉みはじめたのだがその足裏は、どうしたことかひどく硬くて
凹
(
へこ
)
まない。どうやら大きな
胼胝
(
たこ
)
らしい。博士は、今度はもう少し足を持ちあげて、その
拇
(
おや
)
指の
尖端
(
さき
)
を灯の前へ
捻
(
ね
)
じ向けるようにした。
三狂人
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
話が外れていきそうなので、サト子は、あわてて
捻
(
ね
)
じもどした。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
『本当がね。』と目を輝かして、懐に
捻
(
ね
)
じ込む真似をしたが
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
捻
常用漢字
中学
部首:⼿
11画
“捻”を含む語句
紙捻
一捻
捻上
逆捻
捻向
捻込
捻廻
捻切
捻倒
捻伏
観世捻
捻紙
引捻
捻取
捻返
豆捻
捻合
捻鉄
爪捻
捻釘
...