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もうさっぱりした気分になりましたか。でも御恢復かいふくになったかいもありませんね。今までのあなたでこうしてくおなりになったのを
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
花を枕頭まくらもと差置さしおくと、その時も絶え入っていた母は、呼吸いきを返して、それから日増ひましくなって、五年経ってから亡くなりました。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何てえんでしょう、私ちっとも知りませんでしたよ。それでも、もうそんなにくおなんなすって。汽車に乗ってもいいんですか。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ねえ、浪路さま、しっかりあそばして、くなって下されませ——な、その中に、屹度、楽しい日もまいりましょうほどに——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
あくる朝はなんだか気分がくなかった。ゆうべよく眠れなかったのと、寝衣ねまきで夜露に打たれたのとで、からだがだるいようにも思われた。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
京都大学の講師富岡謙蔵氏は、長らく病気でせつてゐる。幾人いくたりかその道の博士をたのんで診ては貰つたが、一向にくならない。
お通の体があれから急にくなっているというわけはないから、お通がここまで歩いて来たのは、よくよく悲壮な覚悟でなければなるまい。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「本当におからださえ普通のひとのようであったなら、どれほど助かることか分からないのになあ、なんとかしてくなっていただきたい」
父の病気がいっこうにくならなかったのだ。薬屋の店台は自分と同じくらいの高さで、質屋の店台はさらにその倍くらいの高さであった。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
お島がお昼を持って来た時に聞いて見たら、乃公は忠公のくなるまで蔵の中にいるのだそうだ。忠公は何時快くなるだろう。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「いや、ありがとう。自分でも不思議なくらいにね、ますますい方に向いて来たよ。こうして隠居しているのがもったいないくらいさ。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わたくしのほうも、いまいった大久保の奥様が風邪かぜでふせっていらっしゃるので、それがくなるのを待っているのですから。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
私は伯母を見舞ひに百マイルの旅をして來た。そして彼女がくなるか——でなければくなるまで彼女の許に留つてゐなくてはならないのだ。
さりとて打ち捨ておかば清吉の乱暴も命令いいつけてさせしかのよう疑がわれて、何も知らぬ身に心地からぬ濡衣ぬれぎぬせられんことの口惜しく
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
千代ちいちやん今日けふすこはうかへと二枚折まいをり屏風べうぶけてまくらもとへすは良之助りやうのすけだせし姿すがたはづかしくきかへらんとつくもいたくせたり。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
文造はこの二人ふたりつむりをさすって、ねえさんの病気は少しはくなったかと問い、いま会うことができようかと聞いて見た。
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
みんなが大抵くなった今、最後に彼に感染したらしく、熱を出している。近頃彼のことを戯れにデイヴィ(バルフォア)と呼ぶことにしている。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
もしこの人がくなって起きるようになったらどうしようか? と、そのとき、あの恐ろしい考えが、ふとわたくしの心に浮かんだのでございます!
度々お見舞下されては痛入いたみいります。それにこれの病気も最早うなるばかりじやで御心配には及ばんで、以来おで下さるのは何分お断り申しまする
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「こんな田舎の医者なんかあかへん。少しうなつたら京へおなはい。伯父おつさん病院入れて癒したるよつて。」
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
秀雄ちゃんは早速お医者さんに来てもらいましたら大腸加答児カタルだそうで昨日あたりからやっとくなって来ました。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
自分は黙然もくねんとしてわがへやに帰った。そうして胡瓜きゅうりの音でひとらして死んだ男と、革砥かわどの音をうらやましがらせてくなった人との相違を心の中で思い比べた。
変な音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしおりに園の部屋へ見舞に参りますと、直ぐ布団の上へ起きなおりまして、もうなにおおきに宜しゅうございますなどゝ云って、まことにふりをして居るから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼はわたしのことを聞いたので、下士は私のくないということを話して、たぶん日射病か何かにかったのであろうと言うと、彼は悩ましげに見えたそうです。
容態が思はしくない間は、誰れしも警戒しますが、少しくなるとついお調子に乗つて瑣細なことを等閑なほざりにして、そのために飛んだ失敗しくじりを引きおこし易いものです。
〔婦人手紙範例文〕 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
平常ふだんからひと方ならず目をかけてやっていた女房も喜んだものであるが、いまだに八王子からやってこないところを見ると、まだほんとうにはくならないらしい。
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)
心附かぬ様子、まずよかッたと安心し、何喰わぬ顔をしてまた両人の話を聞出すと、また眼の皮がたるみ、引入れられるような、い心地になッて、ねむるともなく
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
有り合う下駄を取り上げて、お八代さんの頭をサモ気持さそうに打って打って打ち据えられました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私はふと咽喉を痛めて、薬を飲んだり、湿布したりしても、咳ばかり出て少しもくならなかった。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
「わたしがくなったら如何でもして恩報じをするから、今夜は苦艱くげんだから、済まないが阿爺さん起きて居てお呉れ、阿母おっかさんは赤ん坊や何かでくたびれきって居るから」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
患者としてはこの病院内で一番の古顏となつたかはりに、私は思のほかだんだんくなつて行つた。
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
指輪ゆびわって、おとうと病気びょうきくしようというやさしいじょう感心かんしんせずにはいられなかったのでした。
トム吉と宝石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「一足違いだッた。その事を聴かしたら病気もくなって、死なずに出世も出来たろうのに……」
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
前後も知らぬ高鼾たかいびきで、さも心持さそうに寝ておりますから、めた! おのれ画板め、今乃公おれが貴様の角を、残らず取り払ってやるからにわ、もう明日あしたからわ角なしだ
三角と四角 (その他) / 巌谷小波(著)
それがなかなかくならず、いつ一人で帰れるようになるか分からなかったので、とうとう役所に電話をしてすべてを浜之助に告げた。浜之助はすぐ役所から飛んできた。
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
帝国書院刊本『塩尻』三四に、主上疱瘡の御事ある時は坂本山王の社に養える猴必ず疱瘡す、御痘軽ければ猿の病重く、皇家重らせたまえば猴やがてくなるといい伝う。
萎縮腎は一時くなりましたので、大晦日おおみそかには米や野菜を持って箱根へ湯治とうじにまいりました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
考えるのですか。お部屋に帰って横におなりなさい。そしてぐっすりおやすみなさい。あなたはもっと睡眠をらなくちゃいけませんよ。よく眠りさえすれば、じきくなりますよ。
「お母さんもうなんか。今日は天気がすぎる。のぼせるといかんせに帰なんか」
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
「でもちっとも今だってこの間じゅうにくらべてくならないじゃありませんか」
勝ずば (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「夫が、このとおり、空襲で頭部あたまに負傷いたしまして、なかなかくならないんですの。早く名医めいいの手にかけないと、悪くなるという話ですから、これからロンドンへ急行するんです」
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
中村楼の雨傘を借りて、それを片手にさしながら、片手には例の折詰をげて、少し、ほろ酔い加減に、い気持で、ぶらぶらと、智恩院ちおんいん山内さんないを通って、あれから、粟田あわだにかかろうとする
狸問答 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
これを飲んだらあれを買ってやるからと云ったような事で、枕元には玩具おもちゃや絵本がうずたかくなっていた。少しくなる頃はもう外へ遊びに出ようとする、それを引き止めるための玩具がまた増した。
枯菊の影 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ところでもはや二日ばかり療養して大分に身体もくなりましたから
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
今日は少しかったから起きてみました。夜は早く床に就きましたが、よく眠れました。夜中になって、ふと妙な音が耳に入りましたから目を覚まして、音のする方を見て、我知らず身を起しました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
病気が少しもくならず、医者から肺炎だと診断されてからも、私が行くと急に元気になって話し出すので、私は、かえって病気によくないだろうと思った。で、しばらくは見舞いにも行かなかった。
「もうくなりましたよ」と、クラチットの主婦かみさんは云った。
「大丈夫でございます。お蔭様で傷の方は一日一日くなるようで、もう少しくらい話しても障るようなことはございません。それに、銭形の親分さんなら、ぜひお耳に入れておきたいこともございます」
「阿闍利さま、童子はきっとくなるにちがいありません。」
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)
すぐにくおなりですわ。男のかたもやはり、私ども罪深い女と同じにお弱くいらっしゃるのね。本当にお二人とも今が一番お辛い時ですわ……お察ししますわ。で、あなた、あのお返事はいかが? お話を
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)