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徒
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いたずら
ふりがな文庫
“
徒
(
いたずら
)” の例文
ろくに親切とかサービスとか良心も知らず
徒
(
いたずら
)
にゼネストばやりの世相に比べれば飲み屋の良心の復活は、まだしも見どころがある。
ちかごろの酒の話
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
右にも左にも向くことができず、舌がもつれてものもいえず、
仰臥
(
ぎょうが
)
したまま
徒
(
いたずら
)
に意識ばかりはっきりしてる母の手をとって一日を暮す。
母の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
千句を示せとならば千句を示すべし。しかれどもそは
徒
(
いたずら
)
に
煩
(
はん
)
を増すのみ。千句万句
尽
(
ことごと
)
く皆この種の句たることを明言しなば則ち足らん。
古池の句の弁
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
又親里の事を誇りて讃め語る可らずとは念入りたる注意なり。
徒
(
いたずら
)
に我
身中
(
みうち
)
の美を
吹聴
(
ふいちょう
)
するは、婦人に限らず誰れも慎しむ可きことなり。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ああこの物語を書いた頃には自分はまだ何歳であったかと
徒
(
いたずら
)
に
耽
(
ふけ
)
る追憶の夢の中に、唯うつらうつらとのみその日その夜を送り過した。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
徒
(
いたずら
)
に
歳月
(
としつき
)
を送ッたを惜しい事に思ッているのか? 或は母の言葉の放ッた光りに我身を
縈
(
めぐ
)
る
暗黒
(
やみ
)
を破られ、始めて今が浮沈の
潮界
(
しおざかい
)
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
徒
(
いたずら
)
に台の上に並んで腕組みをしたまま、勝手に跳ねる石油や石炭を傍観しているというような情景は、全く観客の共感をよびおこさない。
ソヴェトの芝居
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
これに反して
徒
(
いたずら
)
に美人の名に誘われて、目に
丁字
(
ていじ
)
なしと云う
輩
(
やから
)
が来ると、玄機は
毫
(
ごう
)
も仮借せずに、これに侮辱を加えて逐い出してしまう。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「私も何も
徒
(
いたずら
)
に消極主義を称える訳じゃないのです。署長殿がそう云う御決心なら、大いに気強い訳です。必ず死体を探し出しましょう」
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
資本家が資本を投じ、事業家が事業を営むのは、ただ
徒
(
いたずら
)
に自己の福利を
慮
(
おもんぱか
)
り、一家の繁栄を祈るがためのみではありますまい。
国民教育の複本位
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
その外妾となれるこの婦人も定めてこの情を知りつらんとの嫌疑を受けつ、既に一年有余の
永
(
なが
)
き日をば
徒
(
いたずら
)
に未決監に送り来れる者なりとよ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
それゆえ、古拓をただ
徒
(
いたずら
)
に肉筆で模し、殊に其の欠磨のあとの感じまで、ぶるぶる書きに書くようになっては
却
(
かえっ
)
て俗臭堪えがたいものになる。
書について
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
「それはあの男のやりそうなことだけれど、職掌上怪しからんな。
徒
(
いたずら
)
に泥棒のために気焔を吐いたようなもんじゃないか?」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
徒
(
いたずら
)
に外国の真似をして、池さえあればボートを浮べ、公園でさえあれば自動車道を作らなければならぬとは限るまい、せめて一ヶ所や二ヶ所位
尾瀬の昔と今
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
しかして彼らの生活態度に共通なものの多くの中で、私はいま特に空間的生活という特徴をみて私自身の
徒
(
いたずら
)
に拡りゆかんとする心を
警
(
いま
)
しめたい。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
徒
(
いたずら
)
に明るく蔽う蒼空をながめた旅の終りに、雲の暗い、この今日のスウィスの旅に急ぐのが、もの悲しくもまた、うれしくも思われたのである。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
もしもこれに大いに用途があったなら大した民用をなすのであろうが、只今それ程満点の利用も無いから従って
徒
(
いたずら
)
に山野に枯れ果てる事が多い。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
仏法はいまだ漸く
現世利益
(
げんぜりやく
)
か
乃至
(
ないし
)
は迷信の域を脱しない。さもなくば政略の具であった。諸家の仏堂は
徒
(
いたずら
)
に血族の
屍
(
しかばね
)
の上に
建立
(
こんりゅう
)
されたかにみえる。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
あわれ、高坂が
緊乎
(
しっか
)
と
留
(
と
)
めた手は
徒
(
いたずら
)
に茎を
掴
(
つか
)
んで、
袂
(
たもと
)
は空に、美女ヶ原は
咲満
(
さきみ
)
ちたまま、ゆらゆらと前へ出たように覚えて、人の姿は遠くなった。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
絶体絶命の性慾のさせる
仕業
(
しわざ
)
である。それを
徒
(
いたずら
)
に観念の上で
弄
(
もてあそ
)
んではいられない。鶴見はそう思ってひとり
憮然
(
ぶぜん
)
とする。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
これを一読するに
惜
(
おし
)
むべし論者は
幕末
(
ばくまつ
)
外交の
真相
(
しんそう
)
を
詳
(
つまびらか
)
にせざるがために、
折角
(
せつかく
)
の評論も全く事実に
適
(
てき
)
せずして
徒
(
いたずら
)
に一篇の
空文字
(
くうもんじ
)
を
成
(
な
)
したるに過ぎず。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
徒
(
いたずら
)
に筆をとったに過ぎなかったがために、それらの雑誌すら、今では、毎月の筆者に憂えているような有り様である。
子供は虐待に黙従す
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
私は妻の顔を見つめました。あらゆる表情を失った、眼ばかり
徒
(
いたずら
)
に大きく見開いている、気味の悪い顔でございます。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
時に室の戸を内から
検
(
しら
)
べて見た、何も戸を開いてどうしようと云う目的が有るでは無い、
徒
(
いたずら
)
に、水の圧力がどう変化したかを見届けようとするのだ。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
『では
私
(
わたくし
)
などは
徒
(
いたずら
)
に
苦
(
くるし
)
み、
不満
(
ふまん
)
を
鳴
(
なら
)
し、
人間
(
にんげん
)
の
卑劣
(
ひれつ
)
に
驚
(
おどろ
)
いたりばかりしていますから、
白痴
(
はくち
)
だと
有仰
(
おっしゃ
)
るのでしょう。』
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
彼は恐るべきまた驚くべき
色魔
(
しきま
)
なのだ。一切の穢濁を断じて
聖浄
(
せいじょう
)
の楽土に住む
得道出家
(
とくどうしゅっけ
)
の身にてありながら、
徒
(
いたずら
)
にただ肉を追う餓鬼畜生の
類
(
たぐい
)
なのだ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「恐るべき怪賊、憎むべき兇漢、——我等は
徒
(
いたずら
)
に警察力を頼まず、各自武器を
執
(
と
)
って自警のために
決起
(
けっき
)
すべきだ!」
天狗岩の殺人魔
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
徒
(
いたずら
)
に逃たりとて後にて証拠と為る可き懐中物などを遺しては何んの甲斐も無しと思いしか床の間の方に飛び行かんとするに其うち早や後より背の辺りを
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
その内に三十七、八年戦役になって、兄は出征されましたので、あの袖無しを
著
(
き
)
てお祝の席に出ると楽しみにされたのも
徒
(
いたずら
)
になって、時が過ぎました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
愛書家も
徒
(
いたずら
)
に華装ばかりを尊重したがらずに、こうした所に平明直截な美を打ち立てることに留意してほしい。
書籍の風俗
(新字新仮名)
/
恩地孝四郎
(著)
六畳の室に
徒
(
いたずら
)
に明らかな
洋燈
(
ランプ
)
も、
却
(
かえ
)
って
侘
(
わび
)
しさを増すの種であったが、今は
如何
(
いか
)
に
夜更
(
よふ
)
けて帰って来ても、洋燈の下には白い手が巧に編物の針を動かして
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「お光ちょうい。内のお光ちょうい」。老夫婦が力の限り
根
(
こん
)
限り叫ぶ声は
徒
(
いたずら
)
に
空明
(
くうめい
)
に散ってしまって、あとはただ
淼々
(
びょうびょう
)
たる霞が浦の水渦まいて流れるばかり。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
如何となれば、もし薄弱なる背景があるだけならば、
徒
(
いたずら
)
にインデペンデントを悪用して、唯世の中に弊害を与えるだけで、成功はとても出来ないからである。
模倣と独立
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
かたく
怺
(
こら
)
えて、
徒
(
いたずら
)
にも陣地を出ず、かりそめにも退かれな。ただよく敵の猛撃をその位置において死守応戦せられよ、とある。急いで諸所の大将へ触れられい
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一本立ちをしようとする
健気
(
けなげ
)
な妹の志を思えば、
徒
(
いたずら
)
に義兄の味方をして弱い者いじめをしたくはなかった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その鼠は、あの
敏捷
(
びんしょう
)
さをもってしても、このぬらぬらした急坂を駈けのぼることができないで、
徒
(
いたずら
)
にあえいでいる——これが
鼠坂
(
ねずみざか
)
という名のついたいわれであった。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
明人大勢にて押し寄するを知りて、
徒
(
いたずら
)
に退く時は逃げたるに当るべし。是非茲は一ト合戦致し退かでは叶わぬ所なり。と云って全軍にて戦わば、大勢退き難からん。
碧蹄館の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
が、不幸にして私はたゞ
徒
(
いたずら
)
にその微妙な啼き声を聴き、愛らしい姿を見るだけで、その名を知らぬ。
沼津千本松原
(新字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「一日の
苟安
(
こうあん
)
は、数百年の大患なり、
今
(
い
)
ま
徒
(
いたずら
)
に
姑息
(
こそく
)
以て処せば、その我を軽侮するもの、
豈
(
あ
)
に独り露人のみならん。四方の
外夷
(
がいい
)
、我に意あるもの、
踵
(
くびす
)
を接して起らん」
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ほんにほんに人の世には
種々
(
いろいろ
)
な物事が出来て来て、
譬
(
たと
)
えば変った子供が生れるような物であるのに、己はただ
徒
(
いたずら
)
に疲れてしまって、このまま寝てしまわねばならぬのか。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
そうならないためには、今から教育者の地位にある当局者は、この眼前の生きた現象を
徒
(
いたずら
)
に回避する代りに、これに直面してもう少し積極的な手段を取るべきではないか。
教育映画について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「なんでも人間は信用が無くちゃ駄目だ。俺なんかも、十年一日のごとしで、志ばかり
徒
(
いたずら
)
に大きいようなものだが、信用を失わないように心掛けているんで持ってる……」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
人の踏むこと少きためと、寒さの早いために、落葉は道を埋めて、二、三尺も積もっている。カサカサと
徒
(
いたずら
)
に音のみ高くて、泳ぐような足つきでは一歩を運ぶにも困難である。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
徒
(
いたずら
)
に旧時代の遺物たる特権の擁護に熱中するのは、予輩の甚だ遺憾とするところである。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
熱に汗蒸れ
垢
(
あか
)
臭き
身体
(
からだ
)
を
嫌
(
いや
)
な様子なく
柔
(
やさ
)
しき手して介抱し
呉
(
くれ
)
たる嬉しさ今は風前の雲と消えて、
思
(
おもい
)
は
徒
(
いたずら
)
に都の空に
馳
(
は
)
する事悲しく、なまじ最初お辰の難を助けて
此家
(
このいえ
)
を出し
其折
(
そのおり
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
かくのごとく
展転
(
てんでん
)
して、悪を
作
(
な
)
し苦を受け、
徒
(
いたずら
)
に生まれ徒に死して、
輪転
(
りんでん
)
して
際
(
きわまり
)
なし。
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
余りに狼狽したジルベールにはルパンの謀計を了解する
由
(
よし
)
もなく、
徒
(
いたずら
)
に亢奮して
悶
(
もが
)
き騒いだ。ボーシュレーは別に何等の抵抗もせず自暴自棄の体
で
(
てい
)
で、ジルベールの態度を
嗤
(
あざわ
)
らって
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
何故と云って、禁制のものを願う慾望は
徒
(
いたずら
)
に人間の魂を虐げるばかりだから。……魂を癒すものは感覚に他ならないし、感覚を癒すものは魂に他ならない。これは人生の大きな秘密だ。
絵姿:The Portrate of Dorian Gray
(新字新仮名)
/
渡辺温
、
オスカー・ワイルド
(著)
花の色はうつりにけりな
徒
(
いたずら
)
に我が身世にふるながめせしまに (春下、小野小町)
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
女がこう云い切った時、
室
(
へや
)
の中は全く墓場の光景と化し去っていた。ゴンクール氏の眼は空しく女の影を反映し、耳は
徒
(
いたずら
)
に女の声を反響するばかり……顔面に何等の反応もあらわさない。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“徒”の意味
《名詞》
(かち)徒歩。
(かち)江戸時代、騎乗を許されなかった下級の武士。
(ただ)普通。凡庸。ありきたり。
(ただ)何事も無いこと。
(むだ)役に立たない、効果の無い又は不要に贅沢なもの。
(ト)仲間。同類の人。
(ズ)五刑の一つ。懲役刑。一年から三年まで半年毎に五段階設けられた。
(出典:Wiktionary)
徒
常用漢字
小4
部首:⼻
10画
“徒”を含む語句
徒歩
徒然
徒事
基督教徒
聖徒
徒爾
徒輩
徒労
清教徒
悪徒
徒為
徒士
徒渉
博徒
徒弟
徒跣
徒党
兇徒
耶蘇教徒
徒手
...