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とうわく
ふりがな文庫
“
当惑
(
とうわく
)” の例文
旧字:
當惑
それも
神様
(
かみさま
)
のお
使者
(
つかい
)
や、
大人
(
おとな
)
ならば
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も、
斯
(
こ
)
うした
小供
(
こども
)
さんの
場合
(
ばあい
)
には、いかにも
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
で
甚
(
はなは
)
だ
当惑
(
とうわく
)
するのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
それを聞いて、甚兵衛はひどく
当惑
(
とうわく
)
しました。大事に
可愛
(
かわい
)
がってる黒馬の腹を、悪魔の宿に貸そうなどとは、夢にも思わないことでした。
天下一の馬
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
私が
当惑
(
とうわく
)
しきっているのにはお
構
(
かま
)
いなしに、白木はボーイにいいつけ、持って来させた銀の盆の上の
酒壜
(
さけびん
)
を眺め、にたにたと笑いながら
暗号音盤事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
岬へ
赴任
(
ふにん
)
ときまったとき、はたと
当惑
(
とうわく
)
したのはそれだった。
途中
(
とちゅう
)
まであったバスさえも、戦争中になくなったまま、いまだに開通していない。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
大
(
おお
)
きな
無花果
(
いちじく
)
の
木
(
き
)
に、
実
(
み
)
がいっぱいなっていたのです。
男
(
おとこ
)
は、
驚
(
おどろ
)
きました。かつ
当惑
(
とうわく
)
しました。しかたがなく、
掘
(
ほ
)
って、
車
(
くるま
)
に
載
(
の
)
せて
帰
(
かえ
)
りました。
ある男と無花果
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
彼女がこう彼をたしなめると、面白そうに彼の
当惑
(
とうわく
)
を見守っていた二人の女たちも、一度に小鳥のごとくしゃべり出した。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
胸の中で、こう呟いたとき、彼はもうすっぱりと眉根の
当惑
(
とうわく
)
を掻き消していた。人間である。間違いや過ちは信長にだってある。自分は神ではない。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は、
当惑
(
とうわく
)
して小さくなっていた。すると恵美は、ついと、
抱
(
いだ
)
いていたお人形を
抛
(
ほう
)
り出すと、戸の所に出ていった。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
春信
(
はるのぶ
)
の、いささか
当惑
(
とうわく
)
した
視線
(
しせん
)
は、そのまま
障子
(
しょうじ
)
の
方
(
ほう
)
へおせんを
追
(
お
)
って
行
(
い
)
ったが、やがて
追
(
お
)
い
詰
(
つめ
)
られたおせんの
姿
(
すがた
)
が、
障子
(
しょうじ
)
の
際
(
きわ
)
にうずくまるのを
見
(
み
)
ると
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
とはいえわたしは、自分をとらえている
当惑
(
とうわく
)
を表にあらわさず——まず自分の部屋へ引取って、新しいネクタイと小さなフロックコートを着けることにした。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
すると、そこには、
当惑
(
とうわく
)
して
天井
(
てんじょう
)
を見ている顔や、にがりきって演壇をにらんでいる顔がならんでいた。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「いえ、人に見せぬと申す訳ではありませぬが」と
当惑
(
とうわく
)
そうにオドオドして、実はその品物を取り出す前には、七日の間
潔斎
(
けっさい
)
せよと云う先祖からの云い伝えがある
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
老中等は事の
要不要
(
ようふよう
)
を問わず、
乞
(
こ
)
わるるまま一々
調印
(
ちょういん
)
したるにぞ、小栗もほとんど
当惑
(
とうわく
)
せりという。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
先ず最も
当惑
(
とうわく
)
するのは、われ等の使用する大切な機関——霊媒の頭脳が、神学上の先入的偏見に
充塞
(
じゅうそく
)
され、われ等の思想を伝えるのに、多大の困難を感ずることである。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
当惑
(
とうわく
)
顔を突き合わせていると、ちょうど湯殿のうらで、
櫺子窓
(
れんじまど
)
の隙間からほのぼのと
湯気
(
ゆげ
)
が逃げて誰か
入浴
(
はい
)
っているようす、ポシャリ、ポシャリ、忍びやかに湯を使う音がする。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
わたしはすっかり
困
(
こま
)
ってしまった。わたしの
当惑
(
とうわく
)
を見つけて、
検事
(
けんじ
)
は
厳
(
きび
)
しく問いつめた。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
ルピック氏は、この
選
(
よ
)
り好みで、気をよくするどころか、むしろ、
当惑
(
とうわく
)
の
体
(
てい
)
である。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
夫人は、
当惑
(
とうわく
)
したらしい、その実は少しも当惑しないらしい表情でそう答えた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
下宿
(
げしゅく
)
から通学していたとき、友人
某
(
ぼう
)
が九州の親
許
(
もと
)
より来る学資金が
後
(
おく
)
れたために寄宿料、食料、月謝の支払いに
滞
(
とどこお
)
りが起こり大いに
当惑
(
とうわく
)
せるを見、僕は彼を自分の下宿につれて来たことがある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
ですから天皇がおかくれになると、おあとをお
継
(
つ
)
ぎになるお方がいらっしゃらないので、みんなはたいそう
当惑
(
とうわく
)
して、これまでのどの天皇かのお
血筋
(
ちすじ
)
の方をいっしょうけんめいにお
探
(
さが
)
し申しました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
そう
云
(
い
)
われる度に真佐子は、取り返しのつかない絶望に
陥
(
おちい
)
った、蒼ざめた顔をして、復一をじっと見た。深く蒼味がかった真佐子の
尻下
(
しりさが
)
りの大きい眼に
当惑
(
とうわく
)
以外の敵意も
反抗
(
はんこう
)
も、少しも見えなかった。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
手塚はひどく
当惑
(
とうわく
)
してだまったが、もうこらえきれずにいった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
御行 (きわめて情無さそうな表情。しばし
当惑
(
とうわく
)
)
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
また
当惑
(
とうわく
)
してかしらをふったようにも見えた。
マリヴロンと少女
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
といって、常日ごろ、ばかに年寄りじみたことをいうので、“お
爺
(
じい
)
”と
綽名
(
あだな
)
のある丸本水夫だが、すこし
当惑
(
とうわく
)
の色が見える。
火薬船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
医者
(
いしゃ
)
は、たとえ、なんといっても、お
嬢
(
じょう
)
さんがいうことをきかないのを
知
(
し
)
っていましたから、
当惑
(
とうわく
)
してしまいました。
楽器の生命
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
が、こう云う場合には粟野さんに対する礼儀上、
当惑
(
とうわく
)
の風を
装
(
よそ
)
うことに全力を尽したのも事実である。粟野さんはいつも
易
(
やす
)
やすと彼の疑問を解決した。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これには
私
(
わたくし
)
もいささか
当惑
(
とうわく
)
して
了
(
しま
)
いました。
果
(
はた
)
して
滝
(
たき
)
の
竜神
(
りゅうじん
)
さんが
快
(
こころよ
)
く
母
(
はは
)
の
依
(
たの
)
みを
諾
(
き
)
いてくださるか
何
(
ど
)
うか、
私
(
わたくし
)
にもまったく
見当
(
けんとう
)
がとれないのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
さすがの
龍太郎
(
りゅうたろう
)
も、ここまできて、はたと
当惑
(
とうわく
)
した。もう
濠
(
ほり
)
までわずかに五、六尺だが、そのさきは、満々とたたえた
外濠
(
そとぼり
)
、橋なくして、渡ることはとてもできない。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのむくいは、てきめんで、あくる日わたしは
傍屋
(
はなれ
)
へ出かける道々、ひどい
当惑
(
とうわく
)
を感じた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
しかし、いざ蚊帳の
裾
(
すそ
)
をまくるという段になって彼は
当惑
(
とうわく
)
した。あまり手を使いすぎると、眼をさましていることが発覚しそうである。彼は先ず頭の方から這入る計画を立てた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
さされるので大いに
当惑
(
とうわく
)
した近頃師匠の晩酌の相手をして少しばかり手が上ったけれども余り行ける口でなかったしよそへ行っては師匠の許可がない限り一
滴
(
てき
)
といえども飲むことを
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
おしまいにはもうわたしの手におえないことを
白状
(
はくじょう
)
しなければならなくなったほど、かれはむずかしい
質問
(
しつもん
)
を出して、わたしを
当惑
(
とうわく
)
させた。でもこの白状はわたしをひどくしょげさした。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
「そっちへつれていってくれ」と手塚が
当惑
(
とうわく
)
らしくいった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
「さあ、それは……」と彼女は明かに
当惑
(
とうわく
)
している様子で
口籠
(
くちごも
)
ったが、「誰なんですか、よく存じません」と答えた。
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
公園、カフェ、ステエション——それ等はいずれも気の弱い彼等に
当惑
(
とうわく
)
を与えるばかりだった。殊に
肩上
(
かたあ
)
げをおろしたばかりの三重子は当惑以上に思ったかも知れない。
早春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
おとなしい、
目
(
め
)
のよく
見
(
み
)
えない
娘
(
むすめ
)
は、どんなに、この
母親
(
ははおや
)
のいいつけを
当惑
(
とうわく
)
したでありましょう。
めくら星
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ところが彼女は、目でわたしを制して、彼女から二歩ほどのところにある
小径
(
こみち
)
を、指さして見せた。どうしたらいいのかわからず、
当惑
(
とうわく
)
して、わたしは小径の
縁
(
ふち
)
にひざまずいた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
していらっしゃるんで? ……見れば、なにか、
当惑
(
とうわく
)
そうなご様子にも思われますが
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
子どもは赤くなって、
当惑
(
とうわく
)
を顔に表して、しばらくもじもじしていた。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
文子は
当惑
(
とうわく
)
した、母に秘密をあばかれては大変である。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
あてがった積りの大人たちもここに至ってすこぶる
当惑
(
とうわく
)
した毎夜おそくまで琴や三味線の音が聞えるのさえやかましいのに
間々
(
まま
)
春琴の
激
(
はげ
)
しい語調で叱り飛ばす声が加わりその上に佐助の泣く声が夜の
更
(
ふ
)
けるまで耳についたりするのであるあれでは
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と、
田毎
(
たごと
)
大尉は、
啣
(
くわ
)
えていた紙巻煙草をぽんと灰皿の中になげこむと、
当惑
(
とうわく
)
顔で名刺の表をみつめた。前には当番兵が、
渋面
(
じゅうめん
)
をつくって、起立している。
空中漂流一週間
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
姉
(
あね
)
と
妹
(
いもうと
)
は、
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
で
当惑
(
とうわく
)
いたしました。けれど、
前
(
まえ
)
の
約束
(
やくそく
)
をどうすることもできませんでした。
木と鳥になった姉妹
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
僕は
当惑
(
とうわく
)
した。考えて見ると、何のためにこの船に乗っているのか、それさえもわからない。まして、ゾイリアなどと云う名前は、
未嘗
(
いまだかつて
)
、一度も聞いた事のない名前である。
Mensura Zoili
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
やがて、
当惑
(
とうわく
)
そうにつぶやく声がきこえた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これが女性というものなんだろうか。深山理学士は早くもこのピンク色の物体が
発散
(
はっさん
)
するものに
当惑
(
とうわく
)
を感じた。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
俊助は
当惑
(
とうわく
)
そうな顔をして、何度も
平
(
ひら
)
に辞退しようとした。が、藤沢はやはり愛想よく笑いながら、「御迷惑でもどうか」を繰返して、容易に出した切符を引込めなかった。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
主人
(
しゅじん
)
も、まだ
老人
(
ろうじん
)
とはいえぬながら、もはや
工場
(
こうじょう
)
へいって
働
(
はたら
)
ける
年
(
とし
)
ではなく、さればといって、ぼんやり、その
日
(
ひ
)
を
暮
(
く
)
らす
気
(
き
)
にもなれず
当惑
(
とうわく
)
していると、ちょうど
総選挙前
(
そうせんきょまえ
)
で
心の芽
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
弦之丞はいささか
当惑
(
とうわく
)
の
面
(
おも
)
もち。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
当
常用漢字
小2
部首:⼹
6画
惑
常用漢字
中学
部首:⼼
12画
“当惑”で始まる語句
当惑仕
当惑顔