)” の例文
だが、どうしたのかいっこうにつれない、一時間ばかりたっても、一の小魚さえかからない。ドノバンは断念だんねんしてさおをあげた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「そいつは變だ、俺のところへ來たのは、九の狐が化けたやうな、凄い年増だ。——何か、恐ろしい行違ひがあるに違ひない」
公之をうれへ、田中不二麿ふじまろ、丹羽淳太郎等と議して、大義しんほろぼすの令を下す、實に已むことを得ざるのきよに出づ。一藩の方向はうかう以て定れり。
いまかく空腹くうふくかんじて塲合ばあひに、あのさかなを一とらへたらどんなにうれしからうとかんがへたが、あみ釣道具つりどうぐのたゞこゝろいらだつばかりである。
吾輩も種取りけん人間研究のため、主人にして忍びやかにえんへ廻った。人間を研究するには何か波瀾がある時をえらばないと一向いっこう結果が出て来ない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
このときわが先鋒隊は比叡赤城をする敵の三艦を一戦にけ散らし、にぐるを追うて敵の本陣に駆り入れつつ、一括してかなたより攻撃にかかりぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そうするとその中に九きつねが現れて玉藻の前をい殺す場面があって、狐が女の腹を喰い破って血だらけなはらわたくわえ出す、その膓には紅い真綿を使うのだと云う。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これを見ました老爺おやじは、やがて総身そうしんに汗をかいて、荷を下した所へ来て見ますと、いつの間にか鯉鮒こいふな合せて二十もいた商売物あきないものがなくなっていたそうでございますから
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ベンジヤミン・フランクリンは僧侶ばうさんのやうに菜食主義で暫く押し通して来たが、ある時何かの折に魚をれうつてゐた事があつた。すると、その魚の腹から小魚が二三出て来た。
そう駿すんえんのうの間に流行し、昨年中は西は京阪より山陽、南海、西国まで蔓延まんえんし、東はぼうそうじょうしんの諸州にも伝播でんぱし、当年に至りてはおう州に漸入するを見る。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「魚が、こぎゃん、えっと、えっと、れたんどう、一やろうか、何がええんな」
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
抱主がけちんぼで、食事にも塩鰯一という情けなさだったから、その頃お互い出世して抱主を見返してやろうと言い合ったものだと昔話が出ると、蝶子は今の境遇きょうぐうが恥かしかった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
うまつたか、身軽みがるになつて、ちひさなつゝみかたにかけて、に一こひの、うろこ金色こんじきなる、溌溂はつらつとしてうごきさうな、あたらしいそのたけじやくばかりなのを、あぎとわらとほして、ぶらりとげてた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きになったこともあるでしょうが、じつはわたしは、むかしなにがしのいんさまの御所ごしょ使つかわれた玉藻前たまものまえというものでございます。もとをいいますと天竺てんじくんだ九のきつねでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
江戸宗家を初めすいの御三家が並々ならぬ信仰を寄せているゆえ、将軍家自らが令してこれに法格を与え、貫主かんすは即ち十万石の格式、各支院の院主は五万石の格式を与えられているところから
蒙り駿すんゑんの四ヶ國の巡見使じゆんけんしとして松平縫殿頭罷越まかりこせし處なり然ば其方共願ひの筋江戸表へ御差出に相成天下の御評定ひやうぢやうにも相成に付願書の趣き一通り御吟味ぎんみ有之により有難く存ずべしとの仰にけり扨是より一通り糺問たゞしの上藤八お節の兩人江戸表へ差立さしたてとなりたり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日蓮の生れた日に、鯛が二いそに打ち上げられていたとかいう言伝いいつたえになっているのです。それ以来村の漁師が鯛をとる事を遠慮して今に至ったのだから、浦には鯛が沢山いるのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
海中かいちう魚族ぎよぞくにも、優勝劣敗ゆうしやうれつぱいすうまぬかれぬとへ、いまちいさ沙魚ふかおよいでつたなみそこには、おどろ巨大きよだいの一りて、稻妻いなづまごとたいをどらして、たゞくちわたくしつりばりをんでしまつたのだ。
馬は売ったか、身軽になって、小さな包みを肩にかけて、手に一こいの、うろこ金色こんじきなる、溌剌はつらつとして尾の動きそうな、あたらしい、そのたけ三尺ばかりなのを、あぎとわらを通して、ぶらりと提げていた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
速力大なる先鋒隊の四艦をつかわして、赤城比叡をする敵の三艦を追い払わせつつ、一隊五艦依然単縦陣をとって、同じく縦陣をとれる敵艦を中心に大なるじゃの目をえがきもてかつはしりかつ撃ち
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
蒙り駿すんゑんのう四ヶ國巡見として罷越し駿州吉原宿とまりの節長門守殿御領分りやうぶん水呑村名主九助妻せつ并に駿州島田宿藤八と申者愁訴しうその趣き吟味に及び候所再應さいおう糺明きうめいの筋有之に付右の段江戸表御老中方へ縫殿頭より御屆けに及び右節藤八とも差立さしたて相成候間本人九助并に九郎兵衞夫婦下伊呂村々役人其外掛合かゝりあひの者一同勘定奉行兼郡奉行松本理左衞門始め掛り役人殘らず江戸表へ早々差出し三番町松平縫殿頭屋敷迄相送あひおくらるべく旨申入候やう縫殿頭申付候之に依て此段御たつしに及び候以上
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)