仰有おつしや)” の例文
今日こんにちはその事で上つたのではないのですから、今日こんにちの始末をお付け下さいまし。ではどうあつても書替は出来んと仰有おつしやるのですな」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
人情の機微を知りつくした媒妁人のやうに仰有おつしやられては困るのです。僕が秋子さんを愛してゐるといふことは一応ほんとかも知れません。
狼園 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「それでも良寛さん、主人は私に、針仕事をして来いと仰有おつしやいましただ。足袋のつくろひでも何でもしますから、私にさせてくだされ。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
しかもその後からはすばえをふり上げた若殿様が「柑子かうじ盗人ぬすびとめ、待て。待て。」と仰有おつしやりながら、追ひかけていらつしやるのではございませんか。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なんぞほかに新しい花を召しますのなら、どうか名を仰有おつしやつて下さいまし、女の胸の上、戀人の床の上にしほれる花の名はみんな存じてをりますから。
わるい花 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
何處どこまでゝも——けれど、それがもしあなたの御迷惑ごめいわくになるとでも仰有おつしやるなら、わたし此處ここでおわかれします。でも、うちへはもうかへらない覺悟かくごです。』
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
今朝程一人のお客さんがお見えになりまして、このペンキは此方こちらの店で買つたのだが、不用になつたから原価もとねで買ひ戻して呉れまいかと仰有おつしやいます。
それでもまだ私から別れると云ふのですもの、貴方が譯をききたいと仰有おつしやるのは當り前の事なのです。ねえ、貴方。それは今はきかずにゐて下さい。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
うぞ、貴方あなたわたし今夜こんや此處こゝりましたことを、だれにも仰有おつしやらないでくださいまし。……たゞそれだけでございます。」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ことつたら、しゆきみも、それをおりにならうとなさらないのだらう。ときに、あの子供こどもたちもいやうだ。しゆきみかへつて其方そのはういと仰有おつしやるだらう。
仰有おつしやる通りみな後世にのこりて、後世は一々これが批判に任ぜざるからずとせば、なりたくなきは後世なるかな。後世はまさ塵芥ぢんかい掃除さうぢよの請負所の如くなるべし。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
お父さまは敏ちやんの寢顏を打戍うちまもり乍ら仰有おつしやいます「圭一郎に瓜二つぢやなう」とか「燒野の雉子きゞす、夜の鶴——圭一郎は子供の可愛いといふことを知らんのぢやらうか」
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
内海さんが、あゝ仰有おつしやるんだから、思ひ切つて保養にでも行つて來ちやどうだい。兄さんのやうに夭死わかじにをしちや大變だから、家の事は心配しなくつてもいゝから、繪を
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
早速、先生の許へ持つて行くと、篤と目を通して居られたが、忽ちはたと膝を打つて、これでいゝ、その儘でいゝ、生じつか直したりなんぞせぬ方がいゝ、とかう仰有おつしやる。
余が言文一致の由来 (旧字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
「さうねえ。でも玄関で帰るつて仰有おつしやりはしないかしら」着ずまひを直しながら常子はもう小刻みに扉口ドアぐちに急いだ。「よくつてよ、わたしがよくお礼云つて置きますから」
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「あら、さう。」と花子は思出して、「うつかりして気がつかなかつた。お隣の奥さん、門の外でお目にかゝつたら銀行へ行くつて仰有おつしやつてたけれど、わたしもうつかりしてゐたよ。」
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ただ貴方あなたうちが淋しくツて不愉快だと仰有おつしやツたから、それは誰のせいでもない、貴方あなた御自身の體が惡いからとツたまでのことなんです。男らしくもない、弱い者いぢめも加減かげんになさるものですよ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「なるほど坊さんは、坊さんみたいなことを仰有おつしやるだ。だが坊さん、ああして難儀させにや、子供は一人前になれませんだ。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
『おのれは、阪本の狐ぢや。今日、殿の仰せられた事を、言伝ことづてせうほどに、近う寄つて、よう聞きやれ。』と、かう仰有おつしやるのでございまする。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
仰有おつしやつたが、御手おんて錫杖しやくぢやうをづいとげて、トンとろしざまに歩行あゆらるゝ……成程なるほど御襟おんゑり唾掛よだれかけめいたきれが、ひらり/\とれつゝらるゝ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
禅問答のやうに仰有おつしやらないで下さいよ! 五十円の結納金なら明らかに人間の方式ですぜ。獣の方式なら今迄通り山の畑でお綱とねる方がいいでせう。
禅僧 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
『いえ、わたしはあなたがなん仰有おつしやつても、あなたにいてゆくのです。それよりほかわたしくみちはないんです。』
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
「違つてよ。」となかから突走つつぱしつた声が聞えた。「トオマス博士はかせだつたら、『Itイテ isイス meミイ』なんて仰有おつしやらずに、『Itイテ isイス Iアイ』と仰有つてよ。」
然し先程、薔薇と鈴振花と茉莉花まつりくわの香と仰有おつしやいましたでは御座いませんか、ひとつ品の良い香のする奇麗な花環はなわをおつくり申しませう、庚申薔薇かうしんばら葉鷄頭はげいとうでもあしらひまして。
わるい花 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
貴方は蕪木も承知の上で手を切つたと仰有おつしやつたが、蕪木の心中はどうだつたんでせうか。私には分からなかつたのです。貴方は私と連名で蕪木へ發信した事があつたね。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
龜藏が宵から急にじゆつながつて仕樣がありませんから、お醫者さんを呼びに來たら、村長の仕打ちが氣に入らんからに行つてやらんと仰有おつしやる。……旦那樣に早う行つて譯を
避病院 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「今度なんて仰有おつしやらずに、旦那も明日あしたあたり電信でお呼寄よびよせになつたら如何いかがで御座います」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いや御安心なさい。お父さんは、書物なぞ一か八かの食事にはならないと仰有おつしやいます。お父さんは高潔な方です。道を求めてゐる方です。石だの竹だの雲だのを友達にして、生命を
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
、ひどい言葉でなじつたのです。わたしはれふしどものところへ帰ると、代官さまの仰有おつしやつたことを、そのまま伝へました。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
それまでは苦い顏をなさりながら、良秀の方をじろ/\睨めつけていらしつたのが、思はず知らず膝を打つて、「出かし居つた」と仰有おつしやいました。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これけては御親父樣ごしんぷさま御新造樣ごしんぞさま大概たいがい御心配下ごしんぱいくだすつたことではござりません。友造ともざうや、身體からだつゝしめ、ともさん、さけをおみでないよ、と親身しんみ仰有おつしやつてくださります。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貴方は蕪木も承知の上で手を切つたと仰有おつしやつたが、蕪木の心中はどうだつたんでせうか。私には分からなかつたのです。貴方は私と連名で蕪木へ発信した事があつたね。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)
「あの方は大層内気でいらつしやるから、御自分には阿父様に申しあげかねると仰有おつしやつてよ。」
旦那、多分、おいたはしいお心からでは御座んせんか。暴風あらしの晩にたつた一邊かいだばかりで、一生忘られない花の香もありますから。たしか、今暴風の晩と仰有おつしやいましたね。
わるい花 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
だから退きならぬ人間の相しか現はれぬし、動じない美しい形しか現はれない、と仰有おつしやる。生きてゐる人間を観察したり仮面をはいだり、罰が当るばかりだと仰有るのである。
「あら、そんな事を仰有おつしやらずに、私は何方でもよろしいのでございます」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「ぢや、早く仰有おつしやいな。」
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
さうではないと仰有おつしやつても、私にはよくわかつて居ります。何時ぞや御一しよに帝劇を見物した晩、御姉様は私に俊さんは好きかと御尋おききになりました。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「え、貴下あなたかもわからん、貴下あなたかもれません。先生せんせい仰有おつしやつてください、一生いつしやうのおねがひです。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貴方がそれほどに仰有おつしやるなら、私もしひて反對はしません。私はただ貴方の病氣を心配するんです。毎晩の樣に不眠症にかかつて、ねつけばすぐ盜汗ねあせがすると云ふぢやありませんか。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
精神の恋が清らかだなどゝはインチキで、ゼスス様も仰有おつしやる通り行きすぎの人妻に目をくれても姦淫に変りはない。人間はみんな姦淫を犯してをり、みんなインヘルノへ落ちるものにきまつてゐる。
悪妻論 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
なに仰有おつしやるのですか。」と牝牛めうしけずにいひました。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
かはいたゆみ黒塗くろぬりのえびらたか征矢そやが十七ほん、——これはみな、あのをとこつてゐたものでございませう。はい、うま仰有おつしやとほり、法師髮ほふしがみ月毛つきげでございます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
警察へ行つてこれこれだと申上げると、警部さんが一一聞き取つて、何やら書いたものに判を押せと仰有おつしやるんです。判は持参致しませんと申しましたら、爪印つめいんでもいいつて仰有るんでせう。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
へい、それ引込ひきこめ、と仰有おつしやりますから、精々せい/″\目着めつかりませんやうに、突然いきなり蝋燭らふそくしてたでござります。やまかげりますで、くるまだい月夜つきよでも、一寸ちよいとにはきますまいとおもひまして、へい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「へえ、出ます。出ろと仰有おつしやらないでも出ますがね。ねえさんはまだ立ち退かなかつたんですかい?」
お富の貞操 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
貴方あなた、……仰有おつしやいましたんですねえ。」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかしかう仰有おつしやる大殿樣の御聲には、何故なぜか妙に力の無い、張合のぬけた所がございました。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかしかう仰有おつしやる大殿様の御声には、何故なぜか妙に力の無い、張合のぬけた所がございました。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
はてな、すると、フランシス様が、云つてはならないとでも、仰有おつしやつたのでございますか。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)