人夫にんぷ)” の例文
三十七ねんぐわつ十四幻翁げんおう望生ぼうせい二人ふたりとも馬籠まごめき、茶店ちやみせ荷物にもつ着物きものあづけてき、息子むすこ人夫にんぷたのんで、遺跡ゐせきむかつた。
はやし林学士を統領とうりょうとして、属員ぞくいん人夫にんぷアイヌ約二十人、此春以来此処ここ本陣ほんじんとして、北見界きたみざかいかけ官有針葉樹林しんようじゅりんの調査をやって居るのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そのあとについて、八、九人の足軽あしがると十数名の人夫にんぷたちが、おのや、まさかりや、木槌きづちなどをかついで、なにかザワザワと話しながら歩いてゆく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて或る日、巳之助がランプのしんを仕入れに大野の町へやって来ると、五、六人の人夫にんぷが道のはたに穴を堀り、太い長い柱を立てているのを見た。
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
誰かいないかと思って周囲を眺めると半ちょうばかりの先きに道路を修繕している人夫にんぷがいたのでともかく「私は今死にかかっています、早く来て下さい」
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
他の部屋には人夫にんぷ蝙蝠傘こうもりがさ直しや易者えきしゃ手品師てじなしたたき大工といったような手輩てはいが一緒くたにゴタゴタ住んでいた。
本所会館の隣にあるのは建築中の同愛どうあい病院である。高い鉄のやぐらだの、何階建かのコンクリイトの壁だの、こと砂利じやりを運ぶ人夫にんぷだのは確かに僕を威圧するものだつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
馬の平首ひらくびをたたいてなげきながら、毎日備前守びぜんのかみ受け持ちの工事場へ出て、人夫にんぷのさしずをしていた。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
うぬれの強いかの女はまた、莫迦ばか莫迦しくひがみやすくもある。だが結局人夫にんぷは人夫の稼業かぎょうから預けられた土塊つちくれや石柱をかかえ、それが彼等かれらの眼の中にいっぱいつまっているのだ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
出口でぐち煉瓦れんがかべに、かせぎ人夫にんぷ募集ぼしゅうのビラがられていました。生活せいかつのために、未知みち土地とちへいくひとのことをかんがえると、なんとなく、むねをしめつけられるようながしました。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
黒いのは一箇の両掛りょうがけで、浅黄あさぎ模様の被布おおいをした長櫃ながもちあとに一箇、れも人夫にんぷかついで
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
人夫にんぷは自分の疎開して居る、十右衛門の炉辺ろへんで夕飯を食ひ酒を飲んで帰つて行つた。
三年 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「いや、かかる折こそだ。名は人夫にんぷでもなんでも好い、戰地へ行つて働きたい。」
日本橋あたり (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
人夫にんぷたちが運河のつつみをなおしたり、大きな水門すいもんにタールをったりしていました。
山頂に滞在せる大工だいく石工せきこう人夫にんぷら二十余名が手をむなしくして徒食せるにもかかわらず、予約の賃金は払わざるべからず、しかもその風雨は何時いつ晴るべき見極みきわめも付かず、あるいは日光のために
山蔭にかまどを据えて、炭を焼くようにして、始終見廻るのでした。頼んだ人夫にんぷに心懸けのよくないのがあって、そっと牛の頭を混ぜて持って来て、そのためにひどく面倒になったことがあるそうです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
これを人夫にんぷに使役した話を書いてある。
放免考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
京王電鉄調布上高井戸間の線路せんろ工事こうじがはじまって、土方どかた人夫にんぷ大勢おおぜい入り込み、鏡花君の風流線にある様な騒ぎが起ったのは、夏もまだ浅い程の事だった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
れいかつたのを今回こんくわい見出みだしたのだ。俵形ひやうけい土器どきから植物しよくぶつさがしたのは、じつである。あやう人夫にんぷてやうとしたのを、引取ひきとつて調しらべたからである。
とおせていた目を、すぐ真下ました作事場さくじば——内濠うちぼりのところにうつすと、そこには数千の人夫にんぷ工匠こうしょうが、朝顔あさがおのかこいのように縦横たてよこまれた丸太足場まるたあしばで、エイヤエイヤと
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
変な男女が、毎朝、同じ方向から出かけて来ると思ってるだろうね、人夫にんぷ達が。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その鳥の巣のやうな髪と云ひ、ほとんど肌も蔽はない薄墨色うすずみいろの破れころもと云ひ、或は又けものにもまがひさうな手足の爪の長さと云ひ、云ふまでもなく二人とも、この公園の掃除をする人夫にんぷたぐひとは思はれない。
東洋の秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
人夫にんぷとして茶店ちやみせ息子むすこくわつたが、もなく石匙いしさじ掘出ほりだした。(第四圖ホ參照)
もっとも、作事奉行さくじぶぎょう棟梁とうりょう工匠目付こうしょうめつけも、四方にかけあるいている使番つかいばんもすべてかみ鎧装がいそう陣羽織じんばおりしも小具足こぐそく、ことに人夫にんぷを使っているものなどは抜刀ばっとうをさげて指揮しきしているありさま。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坪井博士つぼゐはかせは、石田學士いしだがくし大野助手等おほのぢよしゆらともに、かね集合しうがふさしてある赤鉢卷あかはちまき人夫にんぷ三十餘名よめいとくして、いよ/\山頂さんちやう大發掘だいはつくつ取掛とりかゝり、また分隊ぶんたいして、瓢箪山西面ひようたんやませいめんに、なかばうづもれたる横穴よこあな
甲州の坑掘あなほ人夫にんぷ扮装ふんそうして、いく度か、自分の衣髪に苦慮を払った。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)