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丹
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に
ふりがな文庫
“
丹
(
に
)” の例文
いま、秋の日が一ぱい金堂や講堂にあたって、
屋根瓦
(
やねがわら
)
の上にも、
丹
(
に
)
の
褪
(
さ
)
めかかった古い円柱にも、松の木の影が鮮やかに映っていた。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その白牡丹のような白紗の鰭には更に
菫
(
すみれ
)
、
丹
(
に
)
、
藤
(
ふじ
)
、薄青等の色斑があり、更に墨色古金色等の斑点も交って
万華鏡
(
まんげきょう
)
のような絢爛
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
用いられた顔料は
丹
(
に
)
や
朱土
(
しゅど
)
や
白緑
(
びゃくろく
)
や
黄土
(
おうど
)
や
胡粉
(
ごふん
)
等。古き仏画には金をも用いたようである。紙地には黄土を引くのを通則とする。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
無動寺の奥ふかく閉じ籠っているのが多いので、色は白く、唇は
丹
(
に
)
のようであった。眉は濃く太く、おそろしく男性的である。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……門も朱塗だし、金剛神を安置した右左の像が
丹
(
に
)
であるから、いずれにも通じて呼ぶのであろう。住職も智識の聞えがあって、寺は名高い。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
旧記によると、仏像や仏具を打砕いて、その
丹
(
に
)
がついたり、金銀の
箔
(
はく
)
がついたりした木を、路ばたにつみ重ねて、
薪
(
たきぎ
)
の
料
(
しろ
)
に売っていたと云う事である。
羅生門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
流石
(
さすが
)
の甚兵衛も惣八郎を見失ってしまった。夕闇の迫って来るに従って、ますます
丹
(
に
)
の色に燃え盛る原城を見つめながら、彼は不覚の涙を流したのである。
恩を返す話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
燃焼的な
烈
(
はげ
)
しい表情や、
丹
(
に
)
を塗ったような赤い唇や、伸び切った四肢やの醸し出す、片輪で未完成で、そして不調和でさえある、いろいろの条件の集まった
奇談クラブ〔戦後版〕:01 第四の場合
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
社殿の
丹
(
に
)
の色と
銀杏
(
いちょう
)
の葉の黄が、やわらかさをました日ざしのなかで、くっきりと浮きあげになっている。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そして、その行くての空に、伝法院のいちょうの
額
(
ぬか
)
ずくごときしげりの影をしたがえた仁王門が……これだけは昔ながらの
丹
(
に
)
の褪せた建てものが、おりからの夕日に映えて
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
ほめられて見ると、なるほどちょっとおもしろくその
丹
(
に
)
ぬりの色の古ぼけ加減が思われる。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「
山車
(
だし
)
引くと花笠つけし玉垂の
細
(
くわ
)
し
少女
(
め
)
の
丹
(
に
)
の頬忘らえね」という
香取秀真
(
かとりほずま
)
氏の歌は、山車を引く花笠であり、くわし少女の丹の頬であるから、更に美しいけれども、朱拙の句も祭の句だけに
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
雲あかる山の
真洞
(
まほら
)
に啼くこゑは
丹
(
に
)
の
頬
(
ほ
)
の
子雉子
(
こきぎす
)
早や巣立つらし
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
沃度
(
ヨウド
)
に、鹽に、さ
丹
(
に
)
づらふ海の寶のもろもろは
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
ねたみや、
悔
(
くい
)
や、
丹
(
に
)
の雨、
瑠璃
(
るり
)
のあらし
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
丹
(
に
)
を
頬
(
ほ
)
に
粉
(
ぬ
)
りし
未通女子
(
をとめご
)
の
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
新
(
あらた
)
なる
丹
(
に
)
の
皿
(
さら
)
に
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
丹
(
に
)
の
頬鳥
(
ほほどり
)
の
短歌集 日まはり
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
山内の修復を
勧進
(
かんじん
)
しましょう、塔を寄進いたそう、
丹
(
に
)
を塗ろう、
瑤珞
(
ようらく
)
を飾ろう、
法筵
(
ほうえん
)
には
能
(
あた
)
うかぎり人をよび、後では世話人たちで田楽を舞おう。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
舊記によると、佛像や佛具を
打砕
(
うちくだ
)
いて、その
丹
(
に
)
がついたり、金銀の
箔
(
はく
)
がついたりした木を、路ばたにつみ重ねて、
薪
(
たきぎ
)
の
料
(
しろ
)
に賣つてゐたと云ふ事である。
羅生門
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
御堂は薄墨の雲の中に、朱の柱を
聯
(
つら
)
ね、
丹
(
に
)
の扉を合せ、
青蓮
(
せいれん
)
の釘かくしを装って、棟もろとも、雪の
被衣
(
かつぎ
)
に包まれた一座の宝塔のように
浄
(
きよ
)
く
厳
(
いつく
)
しく
聳
(
そび
)
えて見ゆる。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……そして、その行くての空に、伝法院のいちょうの
額
(
ぬか
)
ずくごとき茂りの影をしたがえた仁王門が……これだけは昔ながらの
丹
(
に
)
の褪せたすがたが、おりからの夕日に映えて
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
なにげなく見やっていた或る森のうえの塔に急に心をひかれ出して暑い
田圃
(
たんぼ
)
のなかを
過
(
よ
)
ぎっていったり、或る大寺の
希臘風
(
ギリシアふう
)
なエンタシスのある
丹
(
に
)
のはげた円柱を手で撫でながら
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
樹の
下
(
もと
)
に
出
(
い
)
で立つ
女
(
をみな
)
丹
(
に
)
の
頬
(
ほ
)
して
陽
(
ひ
)
は豊かなる
香
(
かぐ
)
はしき空
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
沃度
(
ヨウド
)
に、塩にさ
丹
(
に
)
づらふ海の宝のもろもろは
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
あるは藍、あるは
丹
(
に
)
に描ける花の
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
この人、面は
丹
(
に
)
で塗った
棗
(
なつめ
)
の如く、目は朗らかにして巨きな星に似ていた。生れは義陽。
魏延
(
ぎえん
)
、
字
(
あざな
)
は
文長
(
ぶんちょう
)
という。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
丹
(
に
)
も見るかげがなくはげて、抜けかかった屋根がわらの上に
擬宝珠
(
ぎぼうし
)
の金がさみしそうに光っていた。
日光小品
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
麓
(
ふもと
)
の里に、
錣頭巾
(
しころずき
)
を取って
被
(
かず
)
き、
薙刀
(
なぎなた
)
小脇に
掻込
(
かいこ
)
んだ、
面
(
つら
)
には
丹
(
に
)
を塗り、
眼
(
まなこ
)
は
黄金
(
こがね
)
、
髯
(
ひげ
)
白銀
(
しろがね
)
の、六尺有余の大彫像、
熊坂長範
(
くまさかちょうはん
)
を安置して、
観音扉
(
かんのんびらき
)
を八文字に、格子も
嵌
(
は
)
めぬ
祠
(
ほこら
)
がある。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丹
(
に
)
の
柱
(
はしら
)
黄金甍
(
こがねいらか
)
の
端
(
つま
)
にして
寝陵
(
しんりよう
)
は見ゆ
円
(
まろ
)
き
枯山
(
からやま
)
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
社
(
やしろ
)
に
丹
(
に
)
を塗り、番地に数の字を
記
(
か
)
いた、これが
白金
(
しろかね
)
の地図でと、おおせで、老人の前でお手に取って
展
(
ひら
)
いて下され、尋ねます
家
(
うち
)
を、あれか、これかと、いやこの目の
疎
(
うと
)
いを
思遣
(
おもいや
)
って
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、みな
見恍
(
みと
)
れた。——といっても、
蒲柳
(
ほりゅう
)
で
柔弱
(
にゅうじゃく
)
な型ではなく、四肢は伸びやかに、眉は
濃
(
こ
)
く、頬は小麦色に、
唇
(
くちびる
)
は
丹
(
に
)
のごとく、いかにも健康そうな、美丈夫、偉丈夫の風があった。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
崩れた土は
丹
(
に
)
のやうに赤い。崩れぬ
土手
(
どて
)
は青芝の上に
不相変
(
あひかはらず
)
松をうねらせてゐる。
其処
(
そこ
)
にけふも三四人、裸の人人が動いてゐた。何もさう云ふ人人は
酔興
(
すゐきやう
)
に泳いでゐる
訣
(
わけ
)
ではあるまい。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
丹
(
に
)
の
雉子
(
きぎし
)
立ちはばかり
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「もう、出来かかっているんです。図取は新聞にも出ていました。台石の上へ、見事な白い石で大きな糸枠を据えるんです。刻んだ糸を巻いて、
丹
(
に
)
で染めるんだっていうんですわ。」
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
眸
(
ひとみ
)
は強くやさしく、
唇
(
くち
)
は
丹
(
に
)
を
噛
(
か
)
んでいるかのごとく
朱
(
あか
)
い。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鮮紅
(
からくれなゐ
)
と、
朱鷺
(
とき
)
と、
桃色
(
もゝいろ
)
と、
薄紅梅
(
うすこうばい
)
と、
丹
(
に
)
と、
朱
(
しゆ
)
と、くすんだ
樺
(
かば
)
と、
冴
(
さ
)
えた
黄
(
き
)
と、
颯
(
さつ
)
と
點滴
(
したゝ
)
る
濃
(
こ
)
い
紅
(
べに
)
と、
紫
(
むらさき
)
の
霧
(
きり
)
を
山氣
(
さんき
)
に
漉
(
こ
)
して、
玲瓏
(
れいろう
)
として
映
(
うつ
)
る、
窓々
(
まど/\
)
は
恰
(
あたか
)
も
名
(
な
)
にし
負
(
お
)
ふ
田毎
(
たごと
)
の
月
(
つき
)
のやうな
汽車
(
きしや
)
の
中
(
なか
)
から
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
美童は、
彫
(
ほ
)
って
丹
(
に
)
を点じたような
唇元
(
くちもと
)
で
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“丹”の意味
《名詞》
(タン、に)硫黄と水銀が化合した赤土。辰砂。
(タン)黄色がかった赤色顔料。鉛丹。
(タン)薬。特に、不老不死の薬。
(タン、異表記:短) 花札の札で、文字の書かれない赤色の短冊があしらわれたもの。
(出典:Wiktionary)
丹
常用漢字
中学
部首:⼂
4画
“丹”を含む語句
丹波
丹生
牡丹
牡丹花
甲比丹
牡丹餅
丹塗
丹羽
青丹
丹左衛門尉基康
加比丹
切支丹宗
切支丹
丹精
丹前
丹青
吉利支丹
雲丹
丹頂
宝丹
...