“不束:ふつつか” の例文
“不束:ふつつか”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花16
吉川英治6
幸田露伴3
国枝史郎3
宮本百合子3
“不束:ふつつか”を含む作品のジャンル比率
哲学 > 心理学 > 超心理学・心霊研究9.1%
文学 > 日本文学 > 戯曲1.5%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「その女は拙者の知人、汝らに担がれ行くような、不束ふつつかのある身分の者ではない。……放せ! 置け! 汝等消えろ!」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
曰く、不束ふつつかなる女ども、みだり卿等けいらの栄顧を被る、真に不思議なる御縁の段、祝着に存ずるものなり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしこの贅沢心のために、自分は発作性ほっさせいの急往生を思いとまって、不束ふつつかながら今日まで生きている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それと申すもこのわたくし不束ふつつかからでござります。どうあろうともご老師様を決して他へはやりませぬ——お父上様!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何にも存じません、不束ふつつかものでございますけれど、貴客あなた、どうぞ御ふびんをお懸けなすって下さいまし。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、我らが持っていてはどうなるみ仏の行末であるか分らぬ、そなたならそんな不束ふつつかはあるまい。」
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
こう二つ並べて見ると、「内等の者の」は「家内揃うて」よりも表現が不束ふつつかなように思われる。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
心を山伏に語ると、先達もこぶしを握って、不束ふつつかながら身命に賭けて諸共もろともにその美女たおやめを説いて、あしき心を飜えさせよう。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そんな御遠慮は、わが子に御無用なこと。妻のおすすめが、不束ふつつかなのでござりましょう」
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無拠よんどころなく不束ふつつかをも申候まをしさふらふ次第に御座候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「神慮の鯉魚、等閑なおざりにはいたしますまい。略儀ながら不束ふつつかな田舎料理の庖丁をお目に掛けまする。」と、ひたりと直って真魚箸まなばしを構えた。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「外国の使臣として、はるばる参りながら、あえて丞相の御心に逆らうとは、いやはや、不束ふつつか千万。再度のお怒りが降らぬうち、く、疾く蜀へ帰り給え」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はじめは、我身の不束ふつつかばかりと、うらめしいも、口惜くちおしいも、ただつつしんでいましたが、一年二年と経ちますうちに、よくその心が解りました。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いえ、当家の料理人にございますが、至って不束ふつつかでございまして。……それに、かような山家辺鄙やまがへんぴで、一向お口に合いますものもございませんで。」
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
省作はその不束ふつつかとがむる思いより、不愍ふびんに思う心の方が強い。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「唯の浪人、土岐亥太郎殿なら、喜んで不束ふつつかな娘を差上げましょうが、——」
『悪意にお執りなされては、内匠頭、当惑仕とうわくつかまつりまする。至らぬかど、不束ふつつかふしは、何とぞ、仮借かしゃくなく、仰せくだされますように』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
修行しゅぎょう次第しだいでわがわしてもらえることがわかりましたので、それからのわたくしは、不束ふつつかおよかぎりは
不束ふつつかですが、主君のお申しつけ、もだし難く、私がしたためまする」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おいらんのようにはいきません。お酌は不束ふつつかですよ、許して下さい。」
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「……小県さん、女が、女の不束ふつつかで、絶家を起す、家を立てたい——」
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十兵衛は不束ふつつかに一礼して重げに口を開き、明日の朝参上あがろうとおもうておりました、といえばじろりとその顔下眼ににらみ、わざと泰然おちつきたる源太、おお
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
静緒は女ながらも見惚みとれて、不束ふつつか眺入ながめいりつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
不束ふつつかながらごじょうなれば一矢仕るでござりましょう」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
釣合はぬと申したは、御名誉のあなた様に、私如き不束ふつつかもの。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「承りますれば、関白さまの御沙汰として、独り寝の別れというお歌を召さるるとやら。不束ふつつかながらわたくしも腰折れ一首詠みでましたれば、御覧にりょうと存じまして……」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「わたしはこんなことをするつもりではなかったのであります、思わずらずこんな不束ふつつかなまねをして、まことに申しわけがありません。おとよさんどうぞ気を悪くしないでください」
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
もと妾のきょうを出づるは不束ふつつかながら日頃の志望をげんとてなり、かのかきを越えてはしるなどのみだりがましき類ならねば、た何をか包みかくさんとて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
不束ふつつかでござりまするが、御教訓、忘れは致しませぬ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
神慮しんりょ鯉魚りぎょ等閑なおざりにはいたしますまい。略儀ながら不束ふつつか田舎いなか料理の庖丁をお目に掛けまする。」と、ひたりと直つて真魚箸まなばしを構へた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「あまりに不束ふつつかにて恐れ入るばかりでございます。」
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
……神様、仏様の御恩は申すに及ばず、この世にてお世話様になりました方々や、不束ふつつかなわたくしに仮初かりそめにも有難いお言葉を賜わりました方々様へは、これこの通り手を合わせまする。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
うぞわたくしつみをおゆるあそばして、もとのとおりこの不束ふつつかおんな可愛かわいがって、行末ゆくすえかけておみちびきくださいますよう……。
自体それがしは今天が下に並びない大剛の者を尋ね出いて、その身内に仕へようずる志がおぢやるによつて、何とぞこれより後は不束ふつつかながら、御主『えす・きりしと』の下部の数へ御加へ下されい。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
——はい、店口にござります、その紫の袈裟けさを召したのはてまえが刻みました。祖師のおすがたでござりますが、喜撰法師のように見えます処が、わざの至りませぬ、不束ふつつかゆえで。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
文「何うか貴方、うでもして下さいませんと、わたくしは貴方に御恩返しの仕方がございません、不束ふつつかでございますが、私を貴方の子にして下されば、どんなにでも御恩返しに御孝行を尽します」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
橘南谿たちばななんけいの『西遊記さいゆうき』五に広島の町に家猪多し、形牛の小さきがごとく、肥え膨れて色黒く、毛禿げて不束ふつつかなるものなり、京などに犬のあるごとく、家々町々の軒下に多し
ほかならぬ先生の御口添じゃあるし、伺った通りで、河野さんの方も申分も無い御家です。実際、願ってもない良縁で、もとよりかれこれ異存のあるはずはありませんが、ただ不束ふつつかな娘ですから、」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
少くとも私は、ほら、ブランカと云われると、すりよりながら身をひきしめて自分の生れながらの不束ふつつかさをきまりわるく思いながら、やはり傍からどけない(くことは出来ない)というような思いになります。
不束ふつつかながら行末は儒者ともあいなり家名を揚げたき心願にて有之候処、十五歳の春、父上は殿様御帰国のみぎり御供廻おともまわり仰付おおせつけられそのまま御国詰おくにづめになされ候に
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「これはどうも、手前不束ふつつかものでございます、へい、実は奥様にはお目にかかってよく御礼をと申しつけられましたものでございますから。ええ、何でございましょうか、奥様はお邸でいらっしゃいましょうか。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不束ふつつかなすさびですが」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その不束ふつつかな不奉公を以て、高禄をむのは心ぐるしくてならないから——という一書を、内蔵助に残して、不破数右衛門は、その後、松山城受取の藩の大任がすむと程なく、赤穂にも江戸にも、その姿をかくしてしまった。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしめはきちと申す不束ふつつかな田舎者、仕合しあわせに御縁の端につながりました上は何卒なにとぞ末長く御眼おめかけられて御不勝ごふしょうながら真実しんみの妹ともおぼしめされて下さりませと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼人あのかた良人をつとにすると云ふことは事情のるさないものと思ひあきらめ、又た一つには、私の様な不束ふつつかな者が、彼様あのやうな偉い方の妻となりたいなど思ふのは、身の程を知らぬものと悟りましてネ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
さて宗山とか云う盲人、おの不束ふつつかなを知って屈死した心、かくのごときは芸の上の鬼神おにがみなれば、自分は、葬式とむらい送迎おくりむかい、墓に謡を手向きょう、と人々と約束して、私はその場から追出された。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「嬉しゅう存じます市之丞様。この不束ふつつかな私のためにそれほどまでのご決心。何んとお礼を申してよいやら、あなたとご一緒に参るなら鬼の住むいわやであろうとも奈落ならくの底であろうとも決していといは致しませぬ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「一昨日会社から使で解雇通知と金一封をいただきました。あけて見ましたら、百五十円也入っておりました。不束ふつつかながら私が七年間こんな体になるまで会社につくした労力は、百五十円のねうちでございましたのね。ホホホホ………」
舗道 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
時はもう明末にかかり、万事不束ふつつかで、人も満足なものもなかったので、一厨役いちちゅうやくの少し麁鹵そろなものにその鼎を蔵した管龠かんやくを扱わせたので、その男があやまってその贋鼎の一足ひとあしを折ってしまった。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「おはずかしい次第でございますが、わたくしが不束ふつつかなばっかりに、主人の心を慰めることができません、連添って十年にもなりますが、子というものが出来ませんので、夫婦の中の愛情に変りはございませんが、家名のことを考えますると……」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しょうをして常にこの心を失わざらしめば、不束ふつつかながらも大きなる過失は、なかりしならんに、こころざし薄く行い弱くして、竜頭蛇尾りゅうとうだびに終りたること、わが身ながら腑甲斐ふがいなくて、口惜くちおしさの限り知られず。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
三人連で、軽井沢、碓氷うすいのもみじを見た汽車のうちに、まさしく間違うまい、これに就いた事実があって、私は、不束ふつつかながら、はじめ、淑女画報に、「革鞄かばんの怪。」後に「片袖。」と改題して、小集のうちに編んだ一篇を草した事がある。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なお前藩主勝成公もこの際堅田総督に面会されて、伜定昭事不束ふつつかを致して恐入る、よろしく朝廷向のお取成をという挨拶をせられたが、これは朝敵となられたわけでもなく、従四位少将はそのままでいられるのだから、それ相当の態度を以て応接せられたのである。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
その間にお嫁さんは立って黒の裾模様を訪問着にかえ、すこし坐っていて又立って、こんどは友禅のものにかえ、又すこし立って別の着物にかえ、そしてこちらの親族の一人一人に「不束ふつつかな者でございますが何卒なにとぞよろしく」と挨拶してはお盃を出します。
御部屋の中には皮籠かわごばかりか、廚子ずしもあれば机もある、——皮籠は都を御立ちの時から、御持ちになっていたのですが、廚子や机はこの島の土人が、不束ふつつかながらも御拵おこしらえ申した、琉球赤木りゅうきゅうあかぎとかの細工さいくだそうです。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
何にも知らない不束ふつつかなものですから、余所よその女中にいじめられたり、毛色の変った見世物みせものだと、邸町やしきまちの犬にえられましたら、せめて、貴女方あなたがた御贔屓ごひいきに、私をかばって下さいな、後生ですわ、ええ。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やって見ようかとも惑う程小さき胸のくるしく、すてらるゝは此身の不束ふつつか故か、此心の浅き故かと独りくやしゅう悩んでりましたに、あり難き今の仰せ、神様も御照覧あれ、辰めが一生はあなたにと熱き涙わが衣物きものとおせしは、そもや
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
梅子さん、私、貴嬢あなただから何ももお話しますがネ——矢張有るんですよ——つまり、私の不束ふつつか故に、良人をつとに満足を与へることが、出来ないのですから、罪は無論私にありますけれど、——男もた余り我儘わがまゝ過ぎると思ひますの——梅子さん
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
いや、余事を申上げまして恐入りますが、唯今ただいま私が不束ふつつかに演じまするお話の中頃に、山中孤家ひとつやの怪しい婦人おんなが、ちちんぷいぷい御代ごよ御宝おんたからと唱えて蝙蝠こうもりの印を結ぶ処がありますから、ちょっと申上げておくのであります。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「唯今も仰せられました通り、あらゆる神社仏閣の雨乞いが少しも効験しるしのないと申すは、世も末になったかのように思われて、神ほとけの御威光も薄らぐと存じられまする。さりとは余りに勿体ないこと。就きましては、不束ふつつかながらこの玉藻に雨乞いの祈祷をお許しくださりませぬか」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一度は芳子が厚い封書を寄せて、自分の不束ふつつかなこと、先生の高恩に報ゆることが出来ぬから自分は故郷に帰って農夫の妻になって田舎いなかに埋れてしまおうということを涙交りに書いた時、一度は或る夜芳子が一人で留守番をしているところへゆくりなく時雄が行って訪問した時、この二度だ。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
とにかく商売だって商売道と申します。不束ふつつかながらそれだけの道は尽くしたつもりでございますが、それを信じていただけなければお話にはぎ穂の出ようがありませんです。……じゃ早田君、君のことは十分申し上げておいたから、これからこちらの人になって一つ堅固にやってあげてくださいまし。
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「ハイ、これは初めまして……わたくしはこれの叔父の家内でございまして、実はこれのお袋があいにく二、三日加減が悪いとか申しまして、それで今日は私が出ましたようなわけで、どうかまあ何分よろしく……。このたびはまた不束ふつつかな者を差し上げまして……。」とだらだらと叔母が口誼こうぎを述べると
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
去る七月十五日香港よりお仕出しのおなつかしき玉章たまずさとる手おそしとくりかえしくりかえしくりかえし拝し上げ参らせ候 さ候えばはげしき暑さのおんさわりもあらせられず何より何より御嬉おんうれしゅう存じ上げ参らせ候 このもと御母上様御病気もこの節は大きにお快く何とぞ何とぞ御安心遊ばし候よう願い上げ参らせ候 わたくし事も毎日とやかくとさびしき日を送りおり参らせ候 お留守の事にも候えば何とぞ母上様の御機嫌ごきげんに入り候ようにと心がけおり参らせ候えども不束ふつつかの身は何も至り兼ね候事のみなれぬこととて何かと失策しくじりのみいたし誠に困り入り参らせ候 ただただ一日も早くおん帰り遊ばし健やかなるお顔を拝し候時を楽しみに毎日暮らしおり参らせ候
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)