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不束
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ふつつか
ふりがな文庫
“
不束
(
ふつつか
)” の例文
はじめは、我身の
不束
(
ふつつか
)
ばかりと、
怨
(
うら
)
めしいも、
口惜
(
くちおし
)
いも、ただ
謹
(
つつしん
)
でいましたが、一年二年と経ちますうちに、よくその心が解りました。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
『悪意にお執りなされては、内匠頭、
当惑仕
(
とうわくつかまつ
)
りまする。至らぬかど、
不束
(
ふつつか
)
な
節
(
ふし
)
は、何とぞ、
仮借
(
かしゃく
)
なく、仰せくだされますように』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『
不束
(
ふつつか
)
な
娘
(
むすめ
)
でございますが、
何
(
ど
)
うぞ
今後
(
こんご
)
とも
宜
(
よろ
)
しうお
導
(
みちび
)
きくださいますよう……。さぞ
何
(
なに
)
かとお
世話
(
せわ
)
が
焼
(
や
)
けることでございましょう……。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「その女は拙者の知人、汝らに担がれ行くような、
不束
(
ふつつか
)
のある身分の者ではない。……放せ! 置け! 汝等消えろ!」
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「それは申上げません。私は大谷夫人と違って、縁の下の力持になる外に、何の取柄もない
不束
(
ふつつか
)
ものでございますから」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
▼ もっと見る
またしてもその様に、思ひもせぬ事、お
調戯
(
からか
)
ひあそばすゆゑ、真実の事を申しまする。釣合はぬと申したは、御名誉のあなた様に、私如き
不束
(
ふつつか
)
もの。
移民学園
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
自分の
不束
(
ふつつか
)
なこと、先生の高恩に報ゆることが出来ぬから自分は故郷に帰って農夫の妻になって
田舎
(
いなか
)
に埋れて
了
(
しま
)
おうということを涙交りに書いた時
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
妾
(
わたくし
)
めは
吉
(
きち
)
と申す
不束
(
ふつつか
)
な田舎者、
仕合
(
しあわ
)
せに御縁の端に
続
(
つな
)
がりました上は
何卒
(
なにとぞ
)
末長く
御眼
(
おめ
)
かけられて
御不勝
(
ごふしょう
)
ながら
真実
(
しんみ
)
の妹とも
思
(
おぼ
)
しめされて下さりませと
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかしこの贅沢心のために、自分は
発作性
(
ほっさせい
)
の急往生を思いとまって、
不束
(
ふつつか
)
ながら今日まで生きている。全く今はの
際
(
きわ
)
にも弱点を引張っていた御蔭である。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
不束
(
ふつつか
)
ながら行末は儒者とも
相
(
あい
)
なり家名を揚げたき心願にて有之候処、十五歳の春、父上は殿様御帰国の
砌
(
みぎり
)
御供廻
(
おともまわり
)
仰付
(
おおせつ
)
けられそのまま
御国詰
(
おくにづめ
)
になされ候に
依
(
よ
)
り
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
さりとは余りに勿体ないこと。就きましては、
不束
(
ふつつか
)
ながらこの玉藻に雨乞いの祈祷をお許しくださりませぬか
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そしてこちらの親族の一人一人に「
不束
(
ふつつか
)
な者でございますが
何卒
(
なにとぞ
)
よろしく」と挨拶してはお盃を出します。
獄中への手紙:07 一九四〇年(昭和十五年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「いや、我らが持っていてはどうなるみ仏の行末であるか分らぬ、そなたならそんな
不束
(
ふつつか
)
はあるまい。」
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
私の様な
不束
(
ふつつか
)
な者が、
彼様
(
あのやう
)
な偉い方の妻となりたいなど思ふのは、身の程を知らぬものと悟りましてネ、其れに彼人は既に家庭の幸福など云ふ問題は打ち忘れて
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
塵
(
ちり
)
をだに
容
(
ゆる
)
さず澄みに澄みたる添景の
中
(
うち
)
に立てる彼の
容華
(
かほばせ
)
は清く
鮮
(
あざやか
)
に
見勝
(
みまさ
)
りて、
玉壺
(
ぎよくこ
)
に白き花を
挿
(
さ
)
したらん
風情
(
ふぜい
)
あり。静緒は女ながらも
見惚
(
みと
)
れて、
不束
(
ふつつか
)
に
眺入
(
ながめい
)
りつ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
何者にか聞れし一向
蹤跡
(
あとかた
)
なき事なり拙者
毛頭
(
もうとう
)
左樣
(
さやう
)
の事存じ申さずと
虚嘯
(
そらうそぶ
)
き
何
(
な
)
にも
不束
(
ふつつか
)
なる挨拶なるにぞ六郎右衞門は
勃
(
むつ
)
とし
彼奴
(
きやつ
)
多分の金子を掘り出しながら
少
(
すこし
)
の配分を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
伜定昭事
不束
(
ふつつか
)
を致して恐入る、よろしく朝廷向のお取成をという挨拶をせられたが、これは朝敵となられたわけでもなく、従四位少将はそのままでいられるのだから
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
こう二つ並べて見ると、「内等の者の」は「家内揃うて」よりも表現が
不束
(
ふつつか
)
なように思われる。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
あるいは両親よりの依托を受けて途中ここに妾を待てるには
非
(
あら
)
ざる
乎
(
か
)
と、
一旦
(
いったん
)
は少なからず
危
(
あや
)
ぶめるものから、もと妾の
郷
(
きょう
)
を出づるは
不束
(
ふつつか
)
ながら日頃の志望を
遂
(
と
)
げんとてなり
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
とにかく商売だって商売道と申します。
不束
(
ふつつか
)
ながらそれだけの道は尽くしたつもりでございますが、それを信じていただけなければお話には
継
(
つ
)
ぎ穂の出ようがありませんです。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
御部屋の中には
皮籠
(
かわご
)
ばかりか、
廚子
(
ずし
)
もあれば机もある、——皮籠は都を御立ちの時から、御持ちになっていたのですが、廚子や机はこの島の土人が、
不束
(
ふつつか
)
ながらも
御拵
(
おこしら
)
え申した
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
……神様、仏様の御恩は申すに及ばず、この世にてお世話様になりました方々や、
不束
(
ふつつか
)
なわたくしに
仮初
(
かりそめ
)
にも有難いお言葉を賜わりました方々様へは、これこの通り手を合わせまする。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「わたしはこんなことをするつもりではなかったのであります、思わず
識
(
し
)
らずこんな
不束
(
ふつつか
)
なまねをして、まことに申しわけがありません。おとよさんどうぞ気を悪くしないでください」
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「唯の浪人、土岐亥太郎殿なら、喜んで
不束
(
ふつつか
)
な娘を差上げましょうが、——」
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
おはずかしい次第でございますが、わたくしが
不束
(
ふつつか
)
なばっかりに、主人の心を
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
美佐こと
素
(
もと
)
より
不束
(
ふつつか
)
ながら日頃左様なる不所存者のようには養育
不致
(
いたさず
)
候処、俗に魔がさしたと申すにや、拙老
此
(
こ
)
の歳に及び
斯
(
か
)
かる憂きことを耳にいたし候は何の因果かと悲歎やる方なく候。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
文「何うか貴方、
然
(
そ
)
うでもして下さいませんと、
私
(
わたくし
)
は貴方に御恩返しの仕方がございません、
不束
(
ふつつか
)
でございますが、私を貴方の子にして下されば、どんなにでも御恩返しに御孝行を尽します」
文七元結
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
橘南谿
(
たちばななんけい
)
の『
西遊記
(
さいゆうき
)
』五に広島の町に家猪多し、形牛の小さきがごとく、肥え膨れて色黒く、毛
禿
(
は
)
げて
不束
(
ふつつか
)
なるものなり、京などに犬のあるごとく、家々町々の軒下に多し、他国にては珍しき物なり
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「今までの
不束
(
ふつつか
)
は、どうぞお許し遊ばして、ねえ……」
入婿十万両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「
不束
(
ふつつか
)
でござりまするが、御教訓、忘れは致しませぬ」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
このたびはまた
不束
(
ふつつか
)
な者を差し上げまして……。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
これはいかにも
不束
(
ふつつか
)
なものであった。
うすゆき抄
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
送りおり参らせ候 お留守の事にも候えば何とぞ母上様の
御機嫌
(
ごきげん
)
に入り候ようにと心がけおり参らせ候えども
不束
(
ふつつか
)
の身は何も至り兼ね候事のみなれぬこととて何かと
失策
(
しくじり
)
のみいたし誠に困り入り参らせ候 ただただ一日も早く
御
(
おん
)
帰り遊ばし健やかなるお顔を
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「神慮の鯉魚、
等閑
(
なおざり
)
にはいたしますまい。略儀ながら
不束
(
ふつつか
)
な田舎料理の庖丁をお目に掛けまする。」と、ひたりと直って
真魚箸
(
まなばし
)
を構えた。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も、
修行
(
しゅぎょう
)
次第
(
しだい
)
でわが
娘
(
こ
)
に
逢
(
あ
)
わしてもらえることが
判
(
わか
)
りましたので、それからの
私
(
わたくし
)
は、
不束
(
ふつつか
)
な
身
(
み
)
に
及
(
およ
)
ぶ
限
(
かぎ
)
りは、一
生
(
しょう
)
懸命
(
けんめい
)
に
修行
(
しゅぎょう
)
を
励
(
はげ
)
みました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
さようお城から出た
理由
(
わけ
)
は、ご城主様の厚い好意でこの
不束
(
ふつつか
)
な私
奴
(
め
)
を、ご城中にても誉れの高い浪人組のその中へお加えくださろうと仰せられた時
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「外国の使臣として、はるばる参りながら、あえて丞相の御心に逆らうとは、いやはや、
不束
(
ふつつか
)
千万。再度のお怒りが降らぬうち、
疾
(
と
)
く、疾く蜀へ帰り給え」
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すりよりながら身をひきしめて自分の生れながらの
不束
(
ふつつか
)
さをきまりわるく思いながら、やはり傍からどけない(くことは出来ない)というような思いになります。
獄中への手紙:10 一九四三年(昭和十八年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
試
(
やっ
)
て見ようかとも惑う程小さき胸の
苦
(
くるし
)
く、
捨
(
すて
)
らるゝは此身の
不束
(
ふつつか
)
故か、此心の浅き故かと独り
悔
(
くや
)
しゅう悩んで
居
(
お
)
りましたに、あり難き今の仰せ、神様も御照覧あれ
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
貴嬢
(
あなた
)
だから何も
角
(
か
)
もお話しますがネ——矢張有るんですよ——つまり、私の
不束
(
ふつつか
)
故に、
良人
(
をつと
)
に満足を与へることが、出来ないのですから、罪は無論私にありますけれど
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「承りますれば、関白さまの御沙汰として、独り寝の別れというお歌を召さるるとやら。
不束
(
ふつつか
)
ながらわたくしも腰折れ一首詠み
出
(
い
)
でましたれば、御覧に
入
(
い
)
りょうと存じまして……」
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
妾
(
しょう
)
をして常にこの心を失わざらしめば、
不束
(
ふつつか
)
ながらも大きなる過失は、なかりしならんに、
志
(
こころざし
)
薄く行い弱くして、
竜頭蛇尾
(
りゅうとうだび
)
に終りたること、わが身ながら
腑甲斐
(
ふがい
)
なくて、
口惜
(
くちお
)
しさの限り知られず。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
自体それがしは今天が下に並びない大剛の者を尋ね出いて、その身内に仕へようずる志がおぢやるによつて、何とぞこれより後は
不束
(
ふつつか
)
ながら、御主『えす・きりしと』の下部の数へ御加へ下されい。
きりしとほろ上人伝
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
省作はその
不束
(
ふつつか
)
を
咎
(
とが
)
むる思いより、
不愍
(
ふびん
)
に思う心の方が強い。おとよの心には多少の疑念があるだけ、直ちにおはまに同情はしないものの、真に悲しいおはまの泣き音に動かされずにはいられない。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
こんな
不束
(
ふつつか
)
な者でも、同じに生れた人間
一人
(
いちにん
)
が、貴方の為には
全
(
まる
)
で
奴隷
(
どれい
)
のやうに成つて、しかも今貴方のお
辞
(
ことば
)
を
一言
(
ひとこと
)
聞きさへ致せば、それで死んでも惜くないとまでも思込んでゐるので御座います。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「あまりに
不束
(
ふつつか
)
にて恐れ入るばかりでございます。」
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「
神慮
(
しんりょ
)
の
鯉魚
(
りぎょ
)
、
等閑
(
なおざり
)
にはいたしますまい。略儀ながら
不束
(
ふつつか
)
な
田舎
(
いなか
)
料理の庖丁をお目に掛けまする。」と、ひたりと直つて
真魚箸
(
まなばし
)
を構へた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それと申すもこの
妾
(
わたくし
)
の
不束
(
ふつつか
)
からでござります。どうあろうともご老師様を決して他へはやりませぬ——お父上様!」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
何
(
ど
)
うぞ
私
(
わたくし
)
の
罪
(
つみ
)
をお
恕
(
ゆる
)
し
遊
(
あそ
)
ばして、
元
(
もと
)
のとおりこの
不束
(
ふつつか
)
な
女
(
おんな
)
を
可愛
(
かわい
)
がって、
行末
(
ゆくすえ
)
かけてお
導
(
みちび
)
きくださいますよう……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
いわんや、初歩の修行をやっと踏んで、これから第二歩の遊学に出ようとする途中で、もうそんな心の
弛
(
ゆる
)
みを起したというのは、われながら
口惜
(
くちお
)
しい
不束
(
ふつつか
)
でした。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
不
常用漢字
小4
部首:⼀
4画
束
常用漢字
小4
部首:⽊
7画
“不束”で始まる語句
不束者
不束之筋有之