かへ)” の例文
新字:
雀の子が遽しく羽をかへして飛び廻った。柘榴の樹の立ってるあたりに黄ろい蜻蛉がいくつとなく群を成して、風に吹き流されて居た。
奥間巡査 (新字旧仮名) / 池宮城積宝(著)
女は身をかへすと、掛けかうを三十もブラ下げたやうなあやしく、艶めかしい香氣を發散させて、八五郎の膝へ存分に身を技げかけるのでした。
ニヤ/\とりやうほゝくらくして、あの三日月形みかづきなり大口おほぐちを、食反くひそらしてむすんだまゝ、口元くちもとをひく/\としたあかかへるまで、うごめかせたわらかた
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
珍しい発見をしたやうに、彼は馬から身をかへしておりた。二人の資人はすぐ馳け寄つて手綱を控へた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
青年も、美奈子が、——一度あんなに彼に親しくした美奈子が、又掌をかへすやうに、急に再び疎々うと/\しくなつたことが、彼の責任であることに、彼も気が付いてゐなかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
かぶの葉に濡れし投網とあみをかいたぐり飛びかへ河豚ふぐを抑へたりけり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
また尾羽をはかへあしたもあらず。
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
虹をばかへすあの上衣ロオヴ
“MONICO” (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
ひく手にかへる秋の波
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
と言つた調子、荒い浴衣の袖をかへして、ニツコリすると、其邊中へんぢう桃色のこびが撒き散らされて、何も彼も匂ひさうです。
いてストンと貴女あなたくつうらかへしてげた、げるとるとはやこと!……卷狩まきがりゐのしゝですな、踏留ふみとまつた學生がくせい突退つきのけて、眞暗まつくら三寶さんばう眞先まつさき素飛すつとびました。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
巻きかへる波のなだりに飛ぶ珠のとどろきの泡ぞ白く競へる
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しろがね衣かへして
『二十五絃』を読む (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
眼をかへすと喜太郎が草鞋を作つて居たむしろの座と、その前に据ゑた藁打臺と藁打槌わらうちづちと、小さいなたが一梃と、それから藁のふくを取るのに使ふ、鐵の小さい熊手
わたしかへして、裏窓うらまど障子しやうじけた。こゝで、一寸ちよつとはぢはねばきこえない迷信めいしんがある。わたし表二階おもてにかいそらながめて、そのあしすぐ裏窓うらまどのぞくのを不斷ふだんからはゞかるのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
風波の穂立の迅さ浅々あさあさに見えつつは走れ白く白くかへ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
右手に閃めく龕燈、そのまゝ、後ろの焔硝樽へ投げ込まうとするのを平次は得意の投げ錢、を宙にかへすと、青錢が一枚飛んで、曲者の拳をハタと打ちます。
あつさに一まいしめのこした表二階おもてにかい雨戸あまど隙間すきまからのぞくと、大空おほぞらばかりはくもはしつて、白々しろ/″\と、おとのないなみかとせて、とほりをひとへだてた、むかうのやしき板塀越いたべいごしに、裏葉うらはかへつてあきゆる
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
朴ならむ岩石層に吹きあつる風ことごとく光葉てりはかへせり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
外から聲をかけて、障子へ寄り添ふやうに開けると、身をかへして、女はスルリと入つて來ました。お粂です。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
しな受取うけとつて、あを状袋じやうぶくろ上書うはがきをじつとながら、片手かたてれて前垂まへだれのさきをつまむでげつゝ、素足すあし穿いた黒緒くろを下駄げたそろへてつてたが、一寸ちよつとかへして、うらむと、かほいろうごいて
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
鵲は雪ふり乱る空にして色まぎれなしかへばたく
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
身をかへすとお紋は、大きい揚羽あげはてふのやうに、ヒラリと襖の蔭へ隱れました。多分お勝手の指圖でせう。
木尻座きじりざむしろに、ゆたかに、かどのある小判形こばんがたにこしらへてんであつたもちを、一枚いちまい、もろ前脚まへあし抱込かゝへこむと、ひよいとかへして、あたませて、ひとかるうねつて、びざまにもとの障子しやうじあなえる。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さとえあがるこそあれ、かへると見れば
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
八五郎が追つかけるひまもありません。權八は身をかへすと宵闇の中に影を隱してしまつたのです。
いちき、ろくで、さんかはり、かへり、ならぶ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
サツと身をかへすと、眼にも止まらぬ早業で、早くも二三人の捕方は淺傷あさでを負はされた樣子。
が、曲者は早くも身をかへして、路地の向う側へ、眞の飛鳥の如き素早さです。
父親にさう言はれると、梯子段の下から平次に挨拶して、お初はそろりと身をかへしました。ドタバタと重量的なものを感じさせない、爽やかな身輕さは、踊りに堪能なたしなみのせゐでせうか。